ニューヨークとは|作り方と黄金比、度数とベースのウイスキーの選び方
ニューヨークは、ウイスキーにライム果汁とグレナデンシロップを重ね、シェイクして仕上げるショートカクテルだ。グラスのなかで赤と琥珀が溶け合い、夕暮れの空のような色になる。この記事では分量と度数の計算、ベースの選び分け、シェイクの手順を順に確かめる。そのうえで、名前を都市名から普通名詞の「街」に戻して、日本の法律がその街をどう区切っているかを読む。建築基準法は十七万字を超える本則に「バー」とも「飲食店」とも一度も書いていない。二つの語は、法律の末尾に置かれた別々の表に、離ればなれに置かれている。
ニューヨークとは|夕焼け色に染まるウイスキーのショートカクテル

ニューヨークは、ウイスキーを土台に、ライムの酸味とザクロ由来のグレナデンシロップ、そして少量の砂糖を合わせ、氷とともに振って作る一杯だ。シェイカーから冷えたカクテルグラスへ漉すと、赤みを帯びた琥珀色が沈み、上のほうがわずかに明るく残る。その色の落差が、名前より先に覚えられている。
味の骨格は、ウイスキーの重さを柑橘で切り、切りすぎたところを甘みで戻す構造だ。だから同じ配合でも、土台に何を選ぶかで印象が入れ替わる。スパイシーなライなら酸味と噛み合って引き締まり、甘いバーボンならグレナデンとなじんで丸くなる。
ショートカクテルとしての位置
ショートカクテルは、割り材で大きく薄めずに、小さなグラスへ少量を注いで冷たいうちに飲みきる形を指す。ニューヨークもその一つで、氷を入れたグラスに継ぎ足していく飲み方はしない。カクテルの基本を押さえておくと、同じ材料でもロングとショートで狙いが違うことがはっきりする。
同じウイスキーのショートカクテルと並べると、性格の差がわかりやすい。マンハッタンはベルモットで甘さと厚みを足す方向、ウイスキーサワーはレモンと砂糖で酸味を前に出す方向だ。ニューヨークはその中間に立って、酸味と甘みの両方を薄く重ねる。
「ニューヨークサワー」とは別の一杯
名前のよく似たニューヨークサワーは、まったく別の構成をしている。あちらはウイスキーサワーの表面に赤ワインを静かに浮かべ、赤い層を作るアレンジだ。層が分かれて見えるのがニューヨークサワー、全体が均一に夕焼け色へ染まるのがニューヨークだと覚えておくと、注文でも検索でも取り違えにくい。
赤い色をグレナデンで作るカクテルはほかにもある。ジャックローズはアップルブランデーとライム、ピンクレディーはジンと卵白を組み合わせる。土台の酒が違えば、同じ赤でも見え方と味の重心が変わる。
名前だけが場所を指している
材料を並べてみると、この一杯のどこにも都市の要素はない。ウイスキーはアメリカ産とは限らず、ライムもザクロも産地を問わない。都市を指しているのは名前だけだ。
ただし、名前を固有名詞のままにせず、ふつうの名詞に戻すと景色が変わる。ニューヨークは、まず街だ。そして街をどう区切り、どこに何を建てられるようにするかは、日本では二つの法律が担っている。都市計画法と建築基準法である。この記事の後半は、その二本を開いて「バーで一杯飲む」という行為が置かれている場所を確かめていく。
レシピと黄金比|四十五対十五に、少しの甘みを足す

ニューヨークの材料は四つだ。ベースのウイスキー、ライム果汁、グレナデンシロップ、そして少量の砂糖。広く使われている分量は、ウイスキー45ミリリットル、ライム果汁15ミリリットル、グレナデンシロップ2tsp、砂糖1tspになる。
| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| ウイスキー | 45ml | 味と度数の土台 |
| ライム果汁 | 15ml | 酸味と輪郭 |
| グレナデンシロップ | 2tsp(10ml) | 赤い色と甘み |
| 砂糖 | 1tsp | 角を取る甘み |
比率にすると、ウイスキー3に対してライム1。ここへ甘みを少量だけ足す形だ。三対一という骨格を覚えてしまえば、グラスの大きさが変わっても割り出せる。60ミリリットルのウイスキーで作るなら、ライムは20ミリリットルになる。
作り方の手順
シェイカーに材料をすべて入れ、氷を詰めて手早く振る。回数の目安は10回から15回で、シェイカーの表面がしっかり曇るまでが合図になる。振り終えたら、あらかじめ冷やしておいたカクテルグラスへ漉して注ぐ。
仕上げに、オレンジピールかレモンピールを軽く絞って香りを乗せる。皮は飲むものではないが、口をつける前に鼻へ届く香りを作る役割がある。柑橘の皮を絞る所作はオールドファッションドなど古典的なウイスキーカクテルに共通していて、覚えておくと応用が利く。
甘さと酸味は割合で動かせる
グレナデンを増やせば甘くなり、色も濃くなる。ライムを増やせば酸味が立ち、色は薄いまま輪郭だけが鋭くなる。どちらも1tsp、5ミリリットル刻みで動かすと違いがわかりやすい。砂糖は入れすぎると舌に残るので、まずは省いてみて、足りなければ加えるほうが調整しやすい。
ライムは生の果実を搾ったものが望ましい。市販の果汁でも成立するが、搾りたてには皮由来の香りがわずかに混じるので、仕上がりの立ち上がりが違う。ライムが手に入らないときはレモンでも作れて、その場合は酸味がやわらぎ、全体が少し甘い方向へ寄る。ギムレットのようにライムそのものが主役の一杯と飲み比べると、この材料の効き方がつかめる。
度数はどのくらいになるか
液体の合計は、45と15と10で70ミリリットル。ここへシェイクで溶けた氷の水分が加わる。加水を2割前後と見込むと、グラスに入るのは84ミリリットル前後になる。ベースを40度のウイスキーとすれば、純アルコールは45掛ける0.40で18ミリリットル。18を84で割ると、およそ21パーセントだ。
| シェイクの加水 | 仕上がりの量 | おおよその度数 |
|---|---|---|
| 1割 | 約77ml | 約23% |
| 2割 | 約84ml | 約21% |
| 3割 | 約91ml | 約20% |
加水が少なければ23度あたりまで上がり、多めなら20度を割る。ベースが43度なら計算し直す必要があり、そのときは純アルコールが19.4ミリリットルになる。いずれにしても、ソーダで割るロングドリンクとは桁が違う。カクテルの度数の考え方を一度たどっておくと、目の前の一杯をおおよそ見積もれるようになる。
グラスと温度
ショートカクテルは注いだ瞬間から温度が上がる。グラスを冷やしておくかどうかで、飲み終わりの印象が変わる。冷凍庫に数分入れるか、氷水を張って直前に捨てるだけでも足りる。
グラスは仕上がりの84ミリリットル前後がゆとりを持って収まる大きさを選ぶ。小さすぎると漉した液が入りきらず、大きすぎると表面積が増えてぬるくなるのが早い。色を楽しむ一杯なので、脚付きの形が向いている。
ベースに向くウイスキーのラインナップ

リンクサス酒販の在庫から、ニューヨークの土台に向くウイスキーをまとめて掲載する。各カードから商品ページへ進むと、容量と度数、付属品の有無、価格、在庫の状況を確認できる。品揃えはライとバーボンを中心に、香りに個性のあるスコッチやジャパニーズまで幅を持たせている。
「ニューヨークとは|作り方と黄金比、度数とベースのウイスキーの選び方」に関連するおすすめ商品
ここではウイスキーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
カードの見方
気になる一本が品切れの場合でも、近いタイプの銘柄をカードからたどれる。まず味わいの方向を決め、次に価格帯で絞ると迷いにくい。ウイスキーの一覧からは、ここに載っていない銘柄も含めて在庫を横断して探せる。
ベースのウイスキー三十銘柄を比較

下の比較表は、ニューヨークの土台に使いやすい銘柄を三十本集めたものだ。ライとバーボンを中心に、スコッチのブレンデッドやジャパニーズまで含めている。表は並べ替えができるので、まず味わいの方向を決め、そのあと価格帯で候補を絞る使い方が分かりやすい。
価格は各モールの実勢(2026年6月時点)で、ウイスキーの多くはオープン価格のためメーカー定価は掲載していません。楽天/Amazon価格は同一品が見つからない場合は空欄になります。在庫・価格は変動するため、最新情報は各リンク先でご確認ください。最安値を保証する一覧ではありません。
表の読み方と注意点
価格欄の楽天とAmazonは流通している高値帯の参考値で、最安値を案内する一覧ではない。ウイスキーの多くはオープン価格のため、メーカー定価が存在しない銘柄も含まれる。在庫の状況とあわせて確認してほしい。当日14:00までのご注文で当日発送に対応している。
ベースの方向は大きく四つに分かれる。ライウイスキーはスパイシーで、ライムの酸味と重なって輪郭が立つ。バーボンはトウモロコシ由来の甘さがグレナデンとなじむ。スコッチは麦の甘みとほのかな煙で奥行きが出て、ジャパニーズはクセが少なく、ライムとグレナデンのあいだで輪郭がきれいに残る。
「バー」という語を、建築基準法は本則に一度も書いていない

ここから、名前を街に戻して読み進める。街をどう区切るかを決めるのは都市計画法で、区切られた場所に何を建てられるかを決めるのは建築基準法だ。都市計画法第十条は、その受け渡しを一文で書いている。
出典:都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十条
地域地区内における建築物その他の工作物に関する制限については、この法律に特に定めるもののほか、別に法律で定める。
受け取る側の建築基準法は、条文の量でいえば大きな法律だ。本則を空白を除いて数えると十七万一千五百字あり、条は枝番を含めて二百九十一本ある。ところが、その本則を全文検索しても出てこない語がある。
本則に「酒」も「飲食店」も「バー」もない
実際に数えるとこうなる。「酒」がゼロ回。「飲食店」がゼロ回。「バー」がゼロ回。「料理店」「キャバレー」「カフェー」「ナイトクラブ」「食堂」「喫茶店」も、すべてゼロ回だ。二百九十一本の条のどこにも、飲む場所の名前は書かれていない。
ゼロでない語が一つだけある。「ダンスホール」で、出現は一回。それは第二条第二号、特殊建築物の定義のなかにある。
出典:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第二号
学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。
この列挙は二十三語ある。学校から汚物処理場まで並べて、最後に「その他これらに類する用途」で受ける形だ。踊る場所は入っているのに、飲む場所は入っていない。
二つの語は、法律の末尾で別々の表に入っている
では、どこにあるのか。答えは本則の外、法律の末尾に置かれた別表だ。そして重要なのは、二つの語が同じ表に入っていないことである。
| 語 | 本則 | 別表第一 | 別表第二 |
|---|---|---|---|
| バー | 0 | 1 | 0 |
| 飲食店 | 0 | 0 | 9 |
| 料理店 | 0 | 0 | 2 |
| キャバレー | 0 | 1 | 2 |
| カフェー | 0 | 1 | 0 |
| ナイトクラブ | 0 | 1 | 5 |
| ダンスホール | 1 | 1 | 0 |
| 酒 | 0 | 0 | 0 |
「バー」は別表第一に一度だけ。「飲食店」は別表第二に九回。この二語が同じ表に並ぶ場面は、建築基準法のなかに一度もない。両方の表に顔を出すのはナイトクラブとキャバレーだけで、この二つが橋渡しの位置に立っている。
二つの表は、そもそも目的が違う
別表第一は、火事と避難を想定した表だ。用途と階と床面積の組み合わせで、耐火や避難の要求が掛かるかどうかを決める。別表第二は、土地の側の表になる。用途地域ごとに、建てられるものと建てられないものを並べている。
つまり「バー」という語は、燃えたときどうなるかを決める表にだけ書かれていて、どこに建てられるかを決める表には書かれていない。土地の側の表にある語は「店舗、飲食店」と「キャバレー、料理店」で、そこに「バー」はない。ただし(四)項の行は「その他これらに類するもので政令で定めるもの」で終わり、これを受ける施行令第百十五条の三第三号が、(四)項に類する用途として公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗の五つを挙げている。火の側では、政令をたどればバーも飲食店も同じ(四)項に入る。土地の側の別表第二は、政令をたどっても「バー」に行き着かない。この記事の後半は、その別表第二を段ごとに読んでいく。
別表第二の十三段|置ける広さは地域で変わる

用途地域は十三ある。都市計画法第九条が第一項から第十三項までで、一つずつ一文で定義している。たとえば第一項はこうだ。
出典:都市計画法第九条第一項
第一種低層住居専用地域は、低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
十三の定義文を並べると、書き方に癖があることに気づく。「主として」という語が付くのは第二項、第四項、第六項、第十項、第十一項、第十二項の六つで、残る七項には付かない。第一項や第十三項のように守る対象を絞りきる書き方と、幅を持たせる書き方が入り混じっている。
十三という数はまだ新しい
この十三という数は、法律の歴史のなかでは新しい。田園住居地域は平成二十九年法律第二十六号で追加され、平成三十年四月一日に施行された。それまで用途地域は十二だった。第八項の定義は次のとおりで、農業と住居の両立を正面から書いている。
出典:都市計画法第九条第八項
田園住居地域は、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域とする。
制限の中身を書くのは建築基準法第四十八条で、こちらは全十七項ある。第一項から第十三項までが十三の用途地域に一対一で対応し、第十四項が用途地域の指定のない区域を受け持つ。
「以外は不可」と「これは不可」の書き分け
第四十八条を読むと、書き方が二通りに割れている。前半の一部は、第一項なら「別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない」と書く。残りは、第四項なら「別表第二(に)項に掲げる建築物は、建築してはならない」と書く。前者は建てられるものの列挙、後者は建てられないものの列挙である。
「以外は不可」と書くのは四つ。第一項の第一種低層住居専用地域、第二項の第二種低層住居専用地域、第三項の第一種中高層住居専用地域、そして第八項の田園住居地域だ。残りの九つ、すなわち第二種中高層住居専用地域から工業専用地域までは、田園住居地域を除いて「これは不可」と書く。書き方が反転する境目は第一種中高層住居専用地域と第二種中高層住居専用地域のあいだにあり、第八項の田園住居地域だけがもう一度前者に戻る。
床面積の階段
別表第二の「店舗、飲食店」の欄だけを抜き出し、(ち)田園住居地域を上限の近い位置へ移すと、前半が階段になる。条文の並びでは(ち)は(と)準住居地域の次だ。
| 欄 | 用途地域 | 店舗・飲食店に付く床面積の上限 |
|---|---|---|
| (い) | 第一種低層住居専用地域 | 独立した欄はない(兼用住宅は次章) |
| (ろ) | 第二種低層住居専用地域 | 150㎡以内・三階以上の部分は不可 |
| (ち) | 田園住居地域 | 農業の利便のためのものは500㎡以内、その他は150㎡以内 |
| (は) | 第一種中高層住居専用地域 | 500㎡以内・三階以上の部分は不可 |
| (に) | 第二種中高層住居専用地域 | 1,500㎡を超えると不可 |
| (ほ) | 第一種住居地域 | 3,000㎡を超えると不可 |
| (へ)(と) | 第二種住居地域・準住居地域 | 10,000㎡を超えると不可 |
| (り)(ぬ)(る) | 近隣商業・商業・準工業 | 面積の欄なし |
| (を) | 工業地域 | 10,000㎡を超えると不可 |
| (わ) | 工業専用地域 | 物品販売業を営む店舗又は飲食店は不可 |
なお別表第二には、この十三段のあとに用途地域の指定のない区域を受ける(か)項がもう一段あり、そこでも一万平方メートルの線が引かれている。百五十、五百、千五百、三千、一万。この五段で上限が緩み、近隣商業から準工業までの三つで面積の欄が消える。そして工業地域でふたたび一万の線が戻り、工業専用地域では飲食店そのものが落ちる。
結果として、この欄の上で飲食店を置けない用途地域は二つになる。第一種低層住居専用地域と工業専用地域だ。いちばん静かな住宅地と、いちばん工場に寄った地域という両端で、同じ結論に行き着く。ただし(い)項は、住まいと兼ねる形だけを別に開けている。次の章で見る。
この一杯を出せる最初の土地はどこか

床面積の階段だけを見れば、第二種低層住居専用地域でも百五十平方メートルまでは飲食店を置けることになる。ところが別表第二(ろ)項第二号には、面積のほかにもう一つ条件が付いている。「政令で定めるもの」という一句だ。ここで話は建築基準法施行令へ移る。
施行令が挙げる飲食の場は食堂と喫茶店だけ
(ろ)項第二号と(ち)項第五号を受けるのは、施行令第百三十条の五の二である。この条は五つの号を並べていて、その第一号がこう書く。
出典:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百三十条の五の二第一号
日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
残る四つの号は、理髪店や美容院などのサービス業、洋服店や自転車店で作業場が五十平方メートル以内のもの、パン屋や豆腐屋など自家販売のための食品製造業でこれも作業場が五十平方メートル以内のもの、そして学習塾や華道教室である。酒を出す場所の名前は、どの号にも出てこない。
この条文にある「食堂」と「喫茶店」は、施行令全文でも珍しい語だ。二十三万四千字あまりの施行令のなかで、どちらもわずか二回しか出てこない。しかもその二回は、第百三十条の五の二と第百三十条の三という二つの条の、まったく同じ一文にあるだけである。
第一種低層住居専用地域でも、住まいと兼ねるなら開く
もう一方の第百三十条の三は、第一種低層住居専用地域の兼用住宅を定める条だ。別表第二(い)項第二号が「住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの」と書いており、その中身がここにある。
出典:建築基準法施行令第百三十条の三
…延べ面積の二分の一以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えるものを除く。)とする。
七つの号のうち第二号が、先ほどと同じ「日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店」だ。つまり第一種低層住居専用地域でも、住まいの半分以上を居住に使い、店の部分を五十平方メートル以内に収めるなら、食堂か喫茶店は成り立つ。ただし条文が名前を呼ぶのは、あくまで食堂と喫茶店である。
「飲食店」の限定が外れる最初の用途地域
次の段、第一種中高層住居専用地域を受けるのが施行令第百三十条の五の三だ。この条は三つの号からなり、その第二号がこう書く。
出典:建築基準法施行令第百三十条の五の三第二号
物品販売業を営む店舗(専ら性的好奇心をそそる写真その他の物品の販売を行うものを除く。)又は飲食店
括弧のなかで除かれるのは物品販売業の一部で、そのあとの「又は飲食店」には限定が付いていない。食堂とも喫茶店とも書かず、ただ飲食店と書く。田園住居地域を受ける施行令第百三十条の九の四第二号も「飲食店」と書くが、そこには「前号の農産物を材料とする料理の提供を主たる目的とする」という限定が付く。限定が何も付かず、号の列挙にただ飲食店とだけ書かれるのは、別表第二が委ねる政令を上から順に読んで、この第一種中高層住居専用地域が最初になる。
ここに掛かる面積は五百平方メートル以内、そして三階以上の部分は不可だ。カウンター中心の小さな店なら、この枠は十分に広い。夜に一杯だけ飲みに寄る店の話をするとき、条文が用途を絞らずに扉を開けるのは、商業地域でも繁華街でもなく、中高層の住宅が並ぶ地域だということになる。
「キャバレー、料理店」が建てられるのは十三のうち二つ

別表第二には、飲食店とは別枠で扱われる用途がある。(り)項第二号と(を)項第三号に、同じ文言で置かれているものだ。
出典:建築基準法別表第二(り)項第二号および(を)項第三号
キャバレー、料理店その他これらに類するもの
(り)は近隣商業地域、(を)は工業地域で、どちらも「これは不可」の書き方だから、この二つの地域では建てられない。
引用の連鎖をたどる
この禁止は、ほかの項へ次々に伝わっていく。(に)項第一号は「(り)項第二号及び第三号」を引く。(へ)項第一号と(と)項第一号は「(り)項に掲げるもの」をまるごと引く。(ほ)項第一号は「(へ)項第一号から第五号まで」を引き、その(へ)項第一号が(り)項を引いている。(わ)項第一号は「(を)項に掲げるもの」を引く。
いっぽう(い)(ろ)(は)(ち)の四つは「以外は不可」の書き方なので、列挙に載っていないものは建てられない。キャバレーも料理店も、これらの項の列挙には現れない。
残るのは商業地域と準工業地域
差し引くと、(ぬ)商業地域と(る)準工業地域の二つだけが残る。(ぬ)項が禁じるのは(る)項第一号・第二号の工場と危険物、原動機を使う工場、一定の事業を営む工場、危険物の貯蔵処理であって、キャバレーと料理店は入っていない。(る)項が禁じるのは工場と危険物と個室付浴場業に係る公衆浴場の三号だけだ。
| 用途 | この欄の上で建てられる用途地域の数 | 置けない地域 |
|---|---|---|
| 店舗、飲食店 | 十三のうち十一 | 第一種低層住居専用地域(兼用住宅を除く)・工業専用地域 |
| キャバレー、料理店 | 十三のうち二つ | 商業地域と準工業地域を除く十一 |
もっとも、この表でいちばん狭いのはこれではない。(り)項第三号と(る)項第三号の個室付浴場業に係る公衆浴場は、(ぬ)項が(る)項の第一号と第二号しか引いていないので、十三のうち商業地域の一つにしか残らない。それでも、同じ「飲む場所」でも条文の側では扱いが正反対になる。飲食店は欄の上では十三のうち十一で成り立ち、キャバレーと料理店は十三のうち二つでしか成り立たない。そして別表第二には「バー」という語がないので、この表だけを見ているかぎり、どちらの側に置かれるのかは字面から読み取れない。
敷地が二つの地域にまたがったら
用途地域の境目は、道路や区画にきれいに沿っているとは限らない。敷地が二つの地域にまたがることもある。そのときの扱いは、建築基準法第九十一条にある。
出典:建築基準法第九十一条
…その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の建築物に関するこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定を適用する。
建物の位置ではなく、敷地の過半がどちらに属するかで決まる。境目に立つ一軒は、線のどちら側に半分より多くの土地があるかで、掛かる規定が丸ごと入れ替わることになる。ただしこの条は容積率や建蔽率などいくつかの規定を適用の対象から外していて、条文自身が第五十二条や第五十三条などを括弧のなかで除いている。
バーが名指しされる場所は、火事の表と統計の箱だった

建築基準法で「バー」という語が現れる唯一の場所へ戻る。別表第一の(い)欄(四)項だ。
出典:建築基準法別表第一(い)欄(四)項
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場その他これらに類するもので政令で定めるもの
バーは、百貨店とマーケットと展示場の並びに置かれている。別表第一は(一)項から(六)項までの六行しかなく、(一)項が劇場や映画館、(二)項が病院やホテル、(三)項が学校や体育館、(五)項が倉庫、(六)項が自動車車庫だ。飲む場所の居場所は(四)項しかない。
五百平方メートルという線
(四)項に付く数字は、(ろ)欄が三階以上の階、(は)欄が五百平方メートル以上である。ただし(は)欄の柱書は、(二)項と(四)項については二階の部分に限ると断っている。つまり(四)項でこの線に触れるのは、二階部分の床面積の合計が五百平方メートル以上になったときだ。
(は)欄の数字を(四)項まで上から並べると、(一)項が二百平方メートル(屋外観覧席は千平方メートル)、(二)項が三百平方メートル、(三)項が二千平方メートル、(四)項が五百平方メートル。学校の二千に対して、(四)項の五百は四分の一の線になる。さらに建築基準法第二十七条第一項第三号は、(四)項の用途で床面積の合計が三千平方メートル以上のものを、階に関係なく拾い上げる。
施行令のなかで、バーは三か所にしか出てこない
施行令のほうも数えてみた。全文で「バー」を検索すると五件あたるが、うち二件は語の内側にたまたま含まれているだけだ。第十三条の二の「照明カバー」と、第百三十六条の四の「リバース・サーキュレーション・ドリル」である。店を指す「バー」は三か所しかない。
一つ目は第百二十一条第一項第三号イで、「キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー」の階に客席や客室があるとき、二以上の直通階段を求める規定だ。二つ目は第百三十七条の十八で、用途を変えるとき確認が要らなくなる類似の用途を並べている。ここでバーは第九号に置かれ、「待合、料理店」は第十号という別の号にある。
三つ目が第百四十七条の二第三号で、工事中の安全計画を届け出るべき建築物を並べる。劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、ホテル、旅館、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店若しくは飲食店
。バーと飲食店が一つの列挙に並ぶのは、法律と政令の条文を通じてこの一か所だけだ。
統計の側でも、バーは同じ箱に入れられている
もう一つ、まったく別の制度で同じまとめ方が現れる。日本標準産業分類だ。第十四回改定が令和五年七月二十七日に告示され、令和六年四月一日から適用されている。中分類七六の「飲食店」には小分類が九つある。管理補助的な事業所を集める七六〇を除く八つは、次のように並ぶ。
| 小分類 | 名称 | 事業所数 | 従業者数 |
|---|---|---|---|
| 761 | 食堂、レストラン | 38,025 | 303,097 |
| 762 | 専門料理店 | 134,890 | 1,117,810 |
| 763 | そば・うどん店 | 22,664 | 152,463 |
| 764 | すし店 | 17,388 | 211,651 |
| 765 | 酒場、ビヤホール | 84,595 | 384,580 |
| 766 | バー、キャバレー、ナイトクラブ | 60,217 | 178,975 |
| 767 | 喫茶店 | 52,196 | 262,106 |
| 769 | その他の飲食店 | 20,385 | 297,866 |
七六六の名称は「バー、キャバレー、ナイトクラブ」。この三つを一つの箱に入れる点は、建築基準法別表第一(四)項とも、施行令第百三十七条の十八第九号とも共通する。どちらもカフェーを加え、前者はさらに百貨店やダンスホールまで同じ枠に入れるので範囲は同じではないが、三つが束になることは変わらない。制度の目的は防火と用途変更と統計で別々なのに、束ね方だけが揃っている。
数字は令和三年経済センサス‐活動調査による。七六六は六万二百十七事業所で、飲食店全体四十三万三百六十の十四パーセントにあたる。従業者を事業所数で割ると一事業所あたり二・九七人で、七六五の酒場、ビヤホールの四・五五人より小さい。小さな店が多い、という当たり前の姿が数字にも出ている。ただしこの分類は事業所の主な事業で決まるもので、建築基準法の用途の区分とは別建てであることには注意がいる。
由来と歴史、そして家で作るとき

ニューヨークは、都市の名を冠した古典的なウイスキーカクテルとして知られてきた。名前の由来を確定させる資料は乏しく、大都市の名を借りた命名が定着したと説明されることが多い。材料の側に都市とのつながりを示すものはない。
似た構成の一杯たち
ウイスキーに柑橘と甘みを合わせる形は、古典のなかで繰り返し現れる。レモンと砂糖ならウイスキーサワー、そこへ赤ワインを浮かべればニューヨークサワー。ライムとグレナデンに替えたものがニューヨークだと考えると、系譜のなかでの位置が見えてくる。
グレナデンで色を作る一杯はテキーラサンライズのようにロングにも広がっていて、そちらは混ぜずにグラデーションを残す。ニューヨークはシェイクして色を均一にするので、同じ材料でも仕上げの思想が逆になる。ウイスキーを使ったカクテルを横に並べると、この振る・振らないの差が味の設計に直結していることがわかる。
家で作るときの現実的な手順
家庭で作るなら、ウイスキー45ミリリットル、ライム果汁15ミリリットル、グレナデン10ミリリットル前後、砂糖は少々から始めるとよい。砂糖は粉砂糖のほうが溶けやすく、口当たりが滑らかにまとまる。シェイカーがなければ、蓋のできる耐熱でない容器でも代用はできるが、氷で手が冷えるので短時間で振り切ることになる。
慣れてきたら、ライムを10ミリリットルに減らして甘さを前に出したり、グレナデンを5ミリリットルに絞って色を薄くしたりと、両端を試すとよい。
読み終えて、もう一度グラスを見る
ここまで読むと、グラスのなかの液体と、それを置いてある建物とが、まったく別の言葉で語られていることがわかる。酒税法は液体を分類し、建築基準法は場所を分類する。そして建築基準法の側から見ると、この一杯は「酒」ではない。本則に「酒」という字は一度も出てこないからだ。
出てくるのは、店の名前でもない。土地の側の表が呼ぶのは「店舗、飲食店」という機能の名前で、火の側の表が呼ぶのが「バー」という具体的な名前だ。しかも火の側では、政令をたどればバーも飲食店も同じ箱に入る。二つの名前が一つの列挙に並ぶのは、法律と政令を通じて一か所だけだった。夕焼け色の一杯を飲むあいだ、法律は液体ではなく、天井と階段のほうを見ている。
飲まないウイスキーの査定・買取はリンクサスへ

カクテルの土台を探して棚を見直すと、しばらく開けていない一本が出てくることがある。ニューヨークに向かない銘柄や、贈答で受け取ったまま置いてあるボトルは、状態が落ちる前に手放したほうが結果がよくなる。
リンクサス酒販では、ウイスキーを中心にブランデーや日本酒まで査定を受け付けている。ラベルと液面、外箱の有無がわかる写真があれば、目安を先にお伝えできる。品揃えの入れ替えを考えている方も、まずは気軽にご相談いただきたい。
よくある質問

ニューヨークの黄金比はどのくらいですか?
ウイスキー45ミリリットル、ライム果汁15ミリリットル、グレナデンシロップ2tsp、砂糖1tspが広く使われている分量です。比率にするとウイスキー3に対してライム1で、そこへ甘みを少量加える形になります。グラスの大きさが変わっても、この三対一の骨格を保てば味の方向は崩れません。
ニューヨークとニューヨークサワーの違いは何ですか?
別のカクテルです。ニューヨークサワーはウイスキーサワーの表面に赤ワインを浮かべ、赤い層を作ります。ニューヨークはライムとグレナデンをシェイクで混ぜ、全体を均一に夕焼け色へ染めます。層が分かれて見えるならサワー、全体が一色ならニューヨークだと覚えると取り違えにくくなります。
ニューヨークの度数はどのくらいになりますか?
ベースを40度とすると純アルコールは18ミリリットルです。液体の合計は70ミリリットルで、シェイクの加水を2割前後見込むと仕上がりは84ミリリットル前後になり、計算上はおよそ21パーセントです。加水が1割なら約23パーセント、3割なら約20パーセントになります。使うボトルの表示度数が違えば、その数字で割り直してください。
グレナデンシロップがないときは何で代用できますか?
ザクロ果汁に砂糖を合わせたものや、赤い果実系のシロップで代用できます。ラズベリーシロップを使うと甘酸っぱさが前に出て、色は近づいても香りの方向が変わります。色づけと甘みを兼ねた材料なので、少しずつ加えて味と色を同時に見ながら決めるとまとまりやすくなります。
建築基準法に「バー」という言葉は出てきますか?
出てきますが、本則ではありません。本則は空白を除いて十七万一千五百字ありますが、そのなかに「バー」は一度も出てきません。現れるのは法律の末尾に置かれた別表第一の(い)欄(四)項だけで、百貨店やマーケット、キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールなどと同じ行に並んでいます。この表は用途地域ではなく、耐火や避難の要求を決めるための表です。
用途地域はいくつあり、飲食店が置けないのはどこですか?
用途地域は十三あります。都市計画法第九条の第一項から第十三項までが、一項につき一つずつ定義しています。建築基準法別表第二を「店舗、飲食店」の欄で読むと、置けないのは第一種低層住居専用地域と工業専用地域の二つです。ただし第一種低層住居専用地域でも、延べ面積の半分以上を住まいに使う兼用住宅で、店の部分が五十平方メートル以内なら、施行令が挙げる食堂と喫茶店は成り立ちます。
用途地域ごとの床面積の上限はどうなっていますか?
別表第二の面積を小さいほうから見ると、第二種低層住居専用地域と田園住居地域が百五十平方メートル以内、第一種中高層住居専用地域が五百平方メートル以内、第二種中高層住居専用地域が千五百平方メートルまで、第一種住居地域が三千平方メートルまで、第二種住居地域と準住居地域が一万平方メートルまでです。近隣商業、商業、準工業の三つには面積の欄がなく、工業地域でふたたび一万平方メートルの線が戻ります。田園住居地域だけは、農業の利便のための店舗に限って五百平方メートル以内という別枠があります。






































