マンハッタンとは|IBA公認レシピと酒税法で読む三つの材料
マンハッタンは材料が三つしかありません。ライウイスキー、スイートベルモット、アンゴスチュラ・ビターズ。それだけの杯なのに、比率もベースの選び方も資料によって違います。この記事では比率の流儀を並べるかわりに、国際バーテンダー協会の公認レシピと、三つの材料それぞれを定義している法令に当たりました。
IBAが決めているのは三つの数字と一つの順番

比率も飾りも書き手によって動くので、どれが基準なのか分かりにくい。そこで、国際バーテンダー協会(IBA)が公認レシピとして公表している一件だけを出発点に置きます。IBAの公認カクテルは全部で102品で、マンハッタンはその中のThe unforgettables
(不朽の名作)という区分に入っています。
材料欄に書かれているのは三行だけです。50 ml Rye Whiskey
、20 ml Sweet Red Vermouth
、1 dash Angostura Bitters
。作り方はPour all ingredients into mixing glass with ice cubes.
とStir well. Strain into chilled cocktail glass.
の二文、飾りはGarnish with cocktail cherry.
の一文です。
数量が三つとも書かれている
ここが同じIBA公認のオールドファッションドとの違いです。あちらの材料欄はビターズがFew Dashes Angostura Bitters
、水がFew Dashes Plain Water
で、どちらも数が入っていません。材料の量から一杯の度数を一つに決めることができない書き方です。マンハッタンは三つ目まで1 dash
と数が入っています。アサヒビールが公表している計量の目安(1ダッシュ = 約1ml
)を当てれば、体積の合計は約71ミリリットルとして扱えます。
ベースはライだけが書かれている
もう一点あります。IBAがベースとして挙げているのはRye Whiskey
の一語だけで、バーボンは書かれていません。オールドファッションドのほうは45 ml Bourbon or Rye Whiskey
と両方を並べているので、同じ協会でも杯によって扱いが分かれています。「ライとバーボンのどちらでも構いません」という説明は、少なくともIBAの公認レシピを根拠にはできません。
作り方の二文が指定しているもの
作り方も短いぶん、書かれていることが明確です。一文目が氷を入れたミキシンググラスに材料を注ぐこと、二文目がよくステアしてから冷やしたカクテルグラスへ漉すことを指示しています。シェイクという語は出てきません。氷を入れて出す杯ではないので、グラスをあらかじめ冷やしておくかどうかが効いてきます。
| 材料 | 分量 | 度数の置き方 | 純アルコール(ml) |
|---|---|---|---|
| ライウイスキー | 50ml | 40%(米国規則の瓶詰め下限) | 20.00 |
| スイートベルモット | 20ml | 15.0%(アサヒの数値からの逆算) | 3.00 |
| アンゴスチュラ・ビターズ | 1ダッシュ(約1ml として計算) | 43.75%(同上) | 0.44 |
| 合計 | 71ml | — | 23.44 |
この置き方だと出来上がりは約33.01%です。ライを45%の市販品に替えると約36.53%になります。氷が溶けた分は入っていないので、実際にグラスに残るものはこれより低くなります。度数の置き方は後の章で出どころを示します。
三つの材料は日本の酒税法で三つの品目に分かれる

グラスの中では一体になっていますが、日本の酒税法から見るとマンハッタンの材料は3つの別々の品目です。しかもベルモットは「蒸留酒類」ですらなく、ビターズもエキス分しだいで混成酒類の側に入ります。
| 材料 | 品目 | 根拠条文 | 種類 |
|---|---|---|---|
| ライウイスキー | ウイスキー | 第3条第15号 | 蒸留酒類(第5号ハ) |
| スイートベルモット | 甘味果実酒 | 第3条第14号 | 混成酒類(第6号ハ) |
| アンゴスチュラ・ビターズ | リキュール又はスピリッツ | 第3条第21号/第20号 | 混成酒類(第6号ニ)又は蒸留酒類(第5号ヘ) |
ウイスキーは第3条第15号のイからハまでの三つの類型として定義されていて、そのイが発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの
です。ベルモットは第14号の甘味果実酒、ビターズは第21号のリキュールか第20号のスピリッツのどちらかです。つまり「ウイスキーベースのカクテル」と一言で呼ばれるこの杯は、蒸留酒類と混成酒類をまたいで作られています。
条文に銘柄名も商品名も出てこない
酒税法とその施行令を通しで読むと、「ベルモット」という語も「ビターズ」という語も一度も出てきません。法令が書いているのは原料と製法と数値の枠だけで、商品の呼び名は書かないためです。ベルモットが甘味果実酒に入るのは、名前でそう決められているからではなく、作り方が第14号の書きぶりに当てはまるからです。次の章がその中身です。
果実酒に浸してよい植物は、政令が定めたオークだけ

ベルモットはワインに香草を漬けたものです。日本の酒税法では、その「香草を漬けた」という一手間が品目を動かします。
果実酒を定める第3条第13号のホは、イからニまでに掲げる酒類に政令で定める植物を浸してその成分を浸出させたもの
と書いています。「政令で定める植物」が何かは酒税法施行令の第7条第4項にあり、その全文はこうです。
法第三条第十三号ホに規定する政令で定める植物は、オーク(チップ状又は小片状のものに限る。)とする。
一つだけです。オークのチップか小片。ニガヨモギも、キナも、その他の香草も、ここには含まれていません。国税庁が公表している「酒のしおり」の分類表も、果実酒の欄に上記に掲げる果実酒にオーク(チップ状又は小片状のもの)を浸してその成分を浸出させたもの
と同じ内容を書いています。
甘味果実酒の側には限定が置かれていない
対になる第14号のニは果実酒又はイからハまでに掲げる酒類に植物を浸してその成分を浸出させたもの若しくは薬剤を加えたもの
(以下略)です。こちらの「植物」には政令の限定がありません。薬剤を加えることも明記されています。香草を漬けた時点で果実酒の枠から外れ、甘味果実酒の側に落ちる、という非対称がここにあります。
| 論点 | 果実酒(第13号) | 甘味果実酒(第14号) |
|---|---|---|
| 浸してよい植物 | オーク(チップ状又は小片状のものに限る。)だけ | 限定なし |
| 薬剤を加えること | 規定なし | 第14号ニが明記 |
| ブランデー等のアルコール分の上限 | 総量の百分の十 | 総量の百分の九十 |
| アルコール分の枠 | 二十度未満(ロからニは十五度以上を除く) | 枠の定めなし |
アルコールを足せる量も9倍動きます。第13号のニは加えたブランデー等のアルコール分の総量が「百分の十を超えないもの」に限るとし、第14号のハは同じ文型で「百分の九十を超えないもの」としています。度数を上げるためにアルコールを足す作り方は、果実酒の枠にはほとんど入りません。
度数はこの結論に効いていない
誤解を避けるために、効いていないものも書いておきます。第13号のなかで「浸してその成分を浸出させたもの」という行為を受け止めているのはホだけです。イは発酵、ロとハは糖類を加えた発酵、ニはブランデー等や糖類・香味料・水を加えたもので、浸漬はどこにも出てきません。ホが独立して置かれていること自体が、ニに浸漬が含まれないことの現れです。そのホが政令でオークに限られている以上、香草を浸したワインは度数がいくつであっても第13号のイからホまでのどれにも乗りません。「何度だから果実酒でない」のではなく、作り方の時点で外れています。柱書には二十度未満という枠(ロからニについてはさらに十五度以上のものその他政令で定めるものを除く)もありますが、この結論はその枠を使わずに出ています。
EUの規則がベルモットに求めているのはヨモギ属だけ

作る側の国のルールも見ておきます。EUのアロマタイズドワイン製品規則(規則(EU)No 251/2014)は、2026年3月18日時点の統合版が公表されています。附属書IIのAに販売名称が並び、その(3)がベルモットです。要件は二行しかありません。
to which alcohol may have been added; and
whose characteristic taste has been obtained by the use of appropriate substances of Artemisia species.
一行目はアルコールを加えてもよいという任意の許容、二行目が「特徴的な味わいがヨモギ属(Artemisia)の適切な物質によって得られていること」です。A(3)のベルモットに固有の要件はこれだけで、赤いことも甘いことも書かれていません(着色や甘味づけを認める規定は、次に見る上位の第3条第2項の側にあります)。
ベルモットは附属書IIのAに置かれているので、上位の「アロマタイズドワイン」の枠も同時にかかります。第3条第2項がその枠で、ぶどう由来の製品が総容量の七十五%以上であること、実測アルコール分が十四・五%以上二十二%未満で総アルコール分が十七・五%以上であること、着色や甘味づけは任意であること、が並んでいます。
| 分類 | ぶどう由来の割合 | アルコール添加 | 実測アルコール分 |
|---|---|---|---|
| アロマタイズドワイン(第2項) | 総容量の75%以上 | 任意 | 14.5%以上22%未満(総アルコール分は17.5%以上) |
| アロマタイズドワインベースドリンク(第3項) | 総容量の50%以上 | 附属書IIに別の定めがある場合を除き不可 | 4.5%以上14.5%未満 |
| アロマタイズドワイン製品カクテル(第4項) | 総容量の50%以上 | 不可 | 1.2%超10%未満 |
「スイート」も「レッド」も定義の外にある
IBAが書いている20 ml Sweet Red Vermouth
の「Sweet」と「Red」は、規則の側では別の扱いです。赤いことは名称の要件に入っていません。「スイート」のほうは第6条第1項の5区分のうちの一つで、糖分が1リットルあたり130グラム以上という数値の話です。
| 表示できる語 | 糖分 | アロマタイズドワインの総アルコール分の下限に置かれた例外 |
|---|---|---|
| extra-dry | 30グラム未満 | 15% |
| dry | 50グラム未満 | 16% |
| semi-dry | 50以上90未満 | なし |
| semi-sweet | 90以上130未満 | なし |
| sweet | 130以上 | なし |
右の欄が効いてきます。5区分のうち例外が置かれているのは2つ、それも辛口側だけです。extra-dryにはa minimum total alcoholic strength by volume of 15 % vol.
、dryにはa minimum total alcoholic strength by volume of 16 % vol.
と、第3条第2項(g)の下限(17.5%)から引き下げる方向の緩和が用意されています。
アルコールの添加は名称ごとに任意と必須が分かれる
附属書IIのAには6つの販売名称が並んでいて、アルコールの添加が必須と書かれているのは3つです。ベルモットは任意の側に入ります。
| 販売名称 | 条文の語 | アルコール添加 |
|---|---|---|
| (1) Aromatised wine | 第3条第2項を参照 | 任意(第3条第2項(c)) |
| (2) Wine-based aperitif | may have been added | 任意 |
| (3) Vermouth | may have been added | 任意 |
| (4) Bitter aromatised wine | has been added | 必須 |
| (5) Egg-based aromatised wine | has been added | 必須 |
| (6) Väkevä viiniglögi/Starkvinsglögg | has been added | 必須 |
(4)ビター・アロマタイズドワインはAromatised wine with a characteristic bitter flavour to which alcohol has
、(5)エッグベース・アロマタイズドワインと(6)Väkevä viiniglögiはto which alcohol has been added,
と、いずれも完了形で書かれています。(2)ワインベースアペリティフと(3)ベルモットだけが may の側です。
ライウイスキーを定義しているのは米国の規則で、日本の酒税法ではない

IBAが指定するライウイスキーは、どこが決めているのでしょうか。米国の連邦規則27 CFR 5.143です。表1の(2)行に、バーボンもライも同じ一行で並んでいます。
| 表示できる名称 | もろみの主原料(51%以上) | 日本語 |
|---|---|---|
| Bourbon Whisky | Corn | コーン |
| Rye Whisky | Rye | ライ麦 |
| Wheat Whisky | Wheat | 小麦 |
| Malt Whisky | Malted Barley | 麦芽 |
| Rye Malt Whisky | Malted Rye Grain | ライ麦麦芽 |
分かれ目は、もろみに占める割合が51%以上の穀物が何かという一点です。逐語ではFermented mash of not less than 51%, respectively: Corn, Rye, Wheat, Malted Barley, Malted Rye Grain, [Other grain]
。最後の[Other grain]が示すとおり、五つの固有名に加えて任意の穀物名を入れられる開いた枠になっています。蒸留は160プルーフ以下、詰めるのは内側を焦がした新品のオーク樽で125プルーフ以下、というのは共通です。ただし、このあと見るように添加の可否と「バーボン」という語の使用には別の制約がかかります。
添加の可否だけはバーボンが名指しで別扱い
同じ行の「着色料・香味料・ブレンド材の使用可否」の欄はYes, except for bourbon whisky.
です。バーボンだけが名指しで禁じられ、ライは規則の上では余地が残っています。熟成期間についても、プレーンなライウイスキーには最低年数の定めがありません((2)行の貯蔵欄には期間の記載がありません。期間を書かない型があることは、表1の一行目のOak barrels with no minimum time requirement
という書き方からも読み取れます)。2年以上が要るのはStraightの表示を付ける行です。またバーボンにはもう一つ、The word “bourbon” may not be used to describe any whisky or whisky-based distilled spirits not distilled and aged in the United States.
という、米国で蒸留・熟成していないものに「バーボン」の語を使ってはならないという制約もあります。
日本の酒税法には穀物での区分が無い
いっぽう日本の酒税法第3条第15号は、原料の穀物で区分していません。ライ麦を主体にした国産ウイスキーがあったとしても、酒税法上の品目は「ウイスキー」であって「ライウイスキー」という区分は存在しません。ラベルの表現は各社の説明を読むしかない、というのが日本での実態です。
ここで混同しやすいのは、名称ごとに当たる規定が変わることです。同じ27 CFR 5.143の表2は「特定の外国の特徴的な製品」として定義される種類を並べたもので、カナディアンウイスキーやスコッチという名称の中身は、それぞれの国の法律に預けられています。だから「カナディアンウイスキー」を米国の五十一%で測ることはできません。
いっぽう表1(2)の Rye Whisky という名称のほうは、米国外で造られたものにも及びます。(b)項が、表1(2)から(6)などに定義されたウイスキーは米国の特徴的な製品であり、must have the country of origin stated immediately adjacent to the type designation if it is distilled outside of the United States
(米国外で蒸留された場合は原産国を種類名のすぐ隣に書かなければならない)と定め、例としてRye Whisky distilled in Sweden
という表示を挙げているからです。つまり「ライ麦五十一%以上が世界共通の定義」も「米国外には及ばない」も、どちらも言いすぎになります。どの名称で売るかによって当たる規定が変わる、というのが正確なところです。
クラスとしてのウイスキーの条件は(a)項にあります。穀物のもろみを九十五%未満で蒸留し、オークの樽に貯蔵し(コーンウイスキーだけは貯蔵を要しません)、四十%以上で瓶詰めする、という内容です。冒頭の表でライを四十%と置いたのは、この瓶詰めの下限を使ったからでした。実際の製品は四十五%前後のものが多く、その場合の一杯は約36.53%になります。
ビターズはリキュールかスピリッツか、分けるのはエキス分2度

三つ目の材料に移ります。アンゴスチュラのアロマティック・ビターズは、公式サイトの製品ページに色・香り・味わい・栄養の記載はありますが、アルコール分の数値は載っていません。
酒税法の側では、ビターズという品目はありません。第21号のリキュールは酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のもの
、スピリッツは国税庁の分類表の要約で上記のいずれにも該当しない酒類でエキス分が2度未満のもの
とされています。分かれ目はエキス分が2度以上かどうかの一点で、手元の一本がどちらなのかは瓶に書かれた品目を見るのが確実です。
度数はアサヒの公表値から逆算できる
アサヒビールはカクテルのレシピに材料ごとの純アルコール量をグラムで併記しています。アロマティックビターズは1ダッシュで0.35グラム、2ダッシュで0.7グラムです。純アルコール量を求める一般的な換算式(量ミリリットル×度数÷100×0.8)を逆に解き、1ダッシュを1ミリリットルとすると43.75%になります。これは公表された度数ではなく、公表された二つの数値から筆者が導いた値です。
| 材料 | レシピID | 分量(ml) | 純アルコール量(g) | 逆算した度数(%) |
|---|---|---|---|---|
| スイートベルモット | 2000000192 | 15.0 | 1.8 | 15.0 |
| スイートベルモット | 2000000246 | 20.0 | 2.4 | 15.0 |
| スイートベルモット | 2000000247 | 20.0 | 2.4 | 15.0 |
| ドライベルモット | 2000000181 | 15.0 | 1.8 | 15.0 |
| ドライベルモット | 2000000182 | 10.0 | 1.2 | 15.0 |
| ドライベルモット | 2000000186 | 10.0 | 1.2 | 15.0 |
| アロマティックビターズ | 2000000192 | 1.0 | 0.35 | 43.75 |
| アロマティックビターズ | 2000000246 | 2.0 | 0.7 | 43.75 |
ここでもう一つ分かります。スイートベルモット3件とドライベルモット3件の合わせて6件が、すべて15.0%です。同社の計算上、甘口と辛口は度数で区別されていません。前の章で見たEU規則の書きぶりと、向きが揃っています。
15%という置き方の位置
この15.0%という値は、EU規則がアロマタイズドワインに求める実測アルコール分の下限(十四・五%)のすぐ上にあたります。アサヒが理由を書いているわけではありませんが、枠の下端に近い置き方であることは確かです。手元のベルモットが十八%なら計算した度数はここより高く出るので、ラベルの度数で計算し直す価値があるのはこの材料です。
関連商品ラインナップ
ベースに使えるウイスキーを当店のウイスキーのなかから並べています。IBAの指定に近づけたい場合は、ラベルにRyeの表示があるものをお選びください。
「マンハッタンとは|IBA公認レシピと酒税法で読む三つの材料」に関連するおすすめ商品
ここではウイスキーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
当店が扱うウイスキー30銘柄を並べた比較表
下の表は当店が扱うウイスキー30銘柄を価格の安い順に並べたものです。マンハッタンの想定ベースであるアメリカンだけでなく、スコッチとジャパニーズも混じった構成になっています。内訳は次のとおりです。
| 産地の区分 | 銘柄数 |
|---|---|
| アメリカン(バーボン・テネシー) | 17銘柄 |
| スコッチ | 10銘柄 |
| ジャパニーズ | 3銘柄 |
| 合計 | 30銘柄 |
表の列は画像/銘柄・スコア/定価市場相場/特徴/リンクサス酒販本命/Amazon/楽天/買取の8つです。度数と産地の列はありません。それぞれの銘柄の度数は「特徴」の欄と各商品ページでご確認ください。また、ライ麦を主体にした銘柄はこの30銘柄には含まれていません。
表の読み方を二つ補足します。「定価/市場相場」の欄は、定価が当店の販売価格と食い違う場合にだけ表示されます。同額の行と定価を登録していない行は空欄になるため、30行のうち28行が空欄です。「リンクサス酒販/本命」の欄に金額が出るのは在庫のある行だけで、残りは在庫切れの表示になります。度数・産地・味わいのタイプは列として用意されていないため、各行の「特徴」の欄と商品ページでご確認ください。
公表されている度数を、公表されている数値で検算する

アサヒビールのカクテルガイドには、マンハッタンが2件載っています。基本形(ブラックニッカ ディープブレンドを使うもの)と、宮城峡を使うものです。どちらも材料ごとの純アルコール量と、一杯の度数の両方が公表されています。
そこで材料の側の数値から度数を組み立て直します。純アルコール量の合計を0.8で割ると純アルコールの体積になり、それを液体材料の合計体積で割れば度数です。飾りのチェリーやピールは体積に入れません。ベルモットを使うレシピは同サイトに7件あり、そのうち液体の材料すべてにグラム数が併記されている6件が検算に使えます。
| レシピ | 公表度数(%) | 計算した度数(%) | 差 | 純アルコール量計(g) | 液体計(ml) |
|---|---|---|---|---|---|
| マティーニ | 39.30 | 38.96 | +0.34 | 18.7 | 60 |
| ギブソン | 42.20 | 41.67 | +0.53 | 20.0 | 60 |
| ウオッカマティーニ | 35.80 | 35.83 | -0.03 | 17.2 | 60 |
| マンハッタン | 32.30 | 37.60 | -5.30 | 18.35 | 61 |
| 宮城峡 マンハッタン | 36.00 | 36.01 | -0.01 | 19.3 | 67 |
| ブールバルディエ | 30.50 | 30.42 | +0.08 | 14.6 | 60 |
5件は最大でも0.53ポイントしかずれません。宮城峡マンハッタンにいたっては公表36.00%に対して計算36.01%と、差は0.01ポイントに収まります。ところが基本形のマンハッタンだけが5.3ポイント離れます。
同じページの二つの数値が噛み合っていない
公表されている32.30%を成り立たせるには、液体の合計が約71.01ミリリットルである必要があります。掲載されているレシピは45+15+1で61ミリリットルですから、約10.01ミリリットル足りません。逆に、掲載されている材料の数値から素直に計算すると37.6%になります。どちらが古い値なのかは公表されている資料からは判断できないので、ここでは「同じページに載っている二つの公表値が噛み合っていない」とだけ書いておきます。
検算できるのは材料ごとの数値が公表されているから
この検算が成り立つのは、アサヒが一杯の度数だけでなく材料ごとの純アルコール量まで公表しているからです。合計だけを出す作り方だと、読む側は数字を受け取るしかありません。内訳が出ていれば、こうして突き合わせることができます。実際、宮城峡マンハッタンは飾りのグリオッティン一個ぶんの0.1グラムを純アルコール量の合計から外して初めて0.01ポイント差まで寄りました(外さないと0.19ポイントずれます)。飾りは計算に入れない、という同社の扱いがここから読み取れます。
検算に使えなかったレシピも一件ありました。カティサークを使うロブ・ロイは、スイートベルモットとオレンジビターズにグラム数が併記されていません。同じサイトの同じ様式のページでも埋まっている欄と埋まっていない欄があるので、検算の前に全部の材料に数値が入っているかを見ておく必要があります。
統計で見ると、甘味果実酒は課税数量の0.14%しかない

甘味果実酒という品目は日本でどのくらいの規模なのでしょうか。国税庁「酒のしおり」の付表から令和5年度の課税数量を引きます。
| 品目 | 課税数量(kℓ) | 平成25年度比 | 対前年度比 |
|---|---|---|---|
| 果実酒 | 312,013 | 85.7% | 87.5% |
| 甘味果実酒 | 11,097 | 125.3% | 135.9% |
| ウイスキー | 205,408 | 187.5% | 107.7% |
| リキュール | 1,598,656 | 70.5% | 68.6% |
| 全品目の合計 | 8,065,124 | 89.2% | 98.8% |
甘味果実酒は11,097キロリットルで、全品目の合計に占める割合は0.14%です。果実酒は甘味果実酒の約28.12倍あります。ワイン売り場の端にひっそり並んでいる印象は、数字の上でもそのとおりです。
縮む品目が多いなかで伸びている
もっとも、方向は逆を向いています。対前年度比135.9%は14品目のなかで2番目に高い伸びです。平成25年度と比べても125.3%で、清酒(65.9%)や果実酒(85.7%)が減っているのと対照的です。ただし、この伸びが需要の増加によるものか品目のあいだの移動によるものかは、付表の数字だけからは判断できません。
家で作るとき、法令の線引きはどこにあるか

最後に実務的な話をします。酒税法の第43条第1項は、酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。
と定めています。文字どおり読むと、家でカクテルを作る行為も「製造」に触れそうに見えます。
同じ条文の第10項が消費の直前を外している
ところが同じ第43条の第10項が、前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。
と書いています。政令の側(酒税法施行令第50条第13項)は、飲食店が営業場で客の求めに応じて混和するときと、消費者が自ら消費するために混和するときを挙げています。ここで効いているのは「消費の直前」という言葉です。
マンハッタンはステアして注いだらすぐ飲む杯なので、ふつうの飲み方をしているかぎりこの適用除外のなかにあります。気をつけたいのは、あらかじめ大量に混ぜて瓶で保存しておくような使い方です。条文が外しているのは消費の直前の混和なので、作り置きはその言葉から離れていきます。判断に迷うときは所轄の税務署に確認してください。
材料をそろえる
ベースはウイスキーから、度数の高いアメリカンを試したい場合はその他スピリッツもあわせてご覧ください。当店の在庫全体は全商品から、お店の場所は心斎橋の店舗案内にございます。
よくある質問

マンハッタンの黄金比は2対1ですか。
IBAの公認レシピはライウイスキー50ミリリットルにスイートベルモット20ミリリットルなので、比でいえば5対2です。2対1と書いている資料も多くありますが、IBAを根拠にするならこの数字になります。
ベースはバーボンでもよいのですか。
IBAの公認レシピがベースとして書いているのはRye Whiskey
だけで、バーボンは書かれていません。同じIBAでもオールドファッションドは45 ml Bourbon or Rye Whiskey
と両方を挙げているので、杯ごとに扱いが違います。バーボンで作ってはいけないという意味ではなく、IBAのレシピを根拠にできないという意味です。
ベルモットはワインですか。
原料はワインですが、日本の酒税法の品目としては果実酒ではなく甘味果実酒です。果実酒に浸してよい植物は施行令第7条第4項でオーク(チップ状又は小片状のものに限る。)
だけと定められていて、ベルモットの香草はここに含まれないためです。
スイートベルモットとドライベルモットでは、どちらが度数が高いのですか。
アサヒビールが公表しているレシピの純アルコール量から逆算すると、スイート3件・ドライ3件のすべてが15.0%で、区別されていません。EUの規則も辛口側にだけ総アルコール分の下限を引き下げる例外を置いており、辛口のほうが高いという根拠は見当たりませんでした。
アンゴスチュラ・ビターズの度数はいくつですか。
公式サイトの製品ページには色・香り・味わい・栄養の記載はありますが、アルコール分の数値は載っていませんでした。アサヒが公表している純アルコール量(1ダッシュ0.35グラム)から逆算すると43.75%になりますが、これは公表値ではなく計算値です。
マンハッタンの度数はどのくらいですか。
アサヒの公表値は基本形が32.30%、宮城峡を使うものが36.00%です。ただし基本形については、同じページの材料ごとの純アルコール量から計算すると37.6%になり、二つの公表値が噛み合っていません。IBAの分量で組み立てると、ライを40%としたときで約33.01%です。
ライウイスキーは日本の法律でどう定義されていますか。
定義そのものがありません。日本の酒税法第3条第15号は原料の穀物で区分していないため、ライウイスキーという品目は存在しません。ライ麦51%以上という基準は米国の27 CFR 5.143の表1(2)に置かれたもので、同じ行でバーボンやウィートウイスキーと横並びに定義されています。
家でマンハッタンを作るのは酒税法に触れませんか。
買ってきた酒をその場で混ぜて自分で飲むことは、酒税法が規制する製造にはあたりません。注意が必要なのは、混ぜたものを貯蔵する場合や、他人に譲ったり販売したりする場合です。個別の判断に迷うときは所轄の税務署にご確認ください。






































