ワインボトルが750mlである理由|EU指令の公称量と日本の特殊容器

なぜワインのボトルサイズは750ml?高さ容量とおしゃれで可愛いワインボトル

ワインボトルが750mlである理由|EU指令の公称量と日本の特殊容器

ワインが750ml、ウイスキーが700ml。この50mlの差は、少なくともEU域内では法令の文面として確かめられる。包装済み製品の公称量を定める指令2007/45/ECが、ワインと蒸留酒で別々の量の一覧を置いているからである。ただしこの指令が縛るのはEU加盟国の市場に出す行為で、日本の店頭に並ぶ瓶を決めているわけではない。一方の日本には、中身の量ではなく瓶そのものを計量器の代わりに使わせる制度がある。この記事では両方の条文を突き合わせて、750mlという数字がどこまで法令の話なのかを分ける。

なぜ750mlなのか|EUは瓶の中身の量そのものを指令で決めている

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「大人2人が1回の食事で飲み切るのにちょうどよい量だから」「ガラス職人がひと吹きで作れる量だったから」。こうした説明がよく流通しているが、どれも出典が示されないまま語られる説で、今回あたった法令・規格・行政資料のいずれにも書かれていなかった。

他方ではっきり文章になっているものがある。欧州連合の指令2007/45/EC、包装済み製品の公称量に関する規則を定めた指令である。この指令の前文(7)は、公称量は原則として規制の対象とすべきでなく、いかなる公称量でも包装済み製品を市場に出せるようにすべきだと書いている。そのうえで前文(9)が、原則から外れる分野を名指ししている。

Since the maintenance of mandatory nominal quantities should be regarded as a derogation, except in the wine and spirits sector, which has specific features(訳:義務的な公称量の維持は、固有の事情を有するワイン・蒸留酒の分野を除いて、例外として扱われるべきものであるから、)——と続けて、経験に照らした定期的な見直しを求めている。

出典:Directive 2007/45/EC 前文(7)(9)(EUR-Lex)

つまり2007年の指令は酒類の量を新たに決めたのではなく、旧指令がすでに定めていた義務量を、酒類については残したと読める。義務の中身は第3条にある。

Member States shall ensure that the products listed in section 2 of the Annex and put up in prepackages in the intervals listed in section 1 of the Annex are placed on the market only if they are prepacked in the nominal quantities listed in section 1 of the Annex.(訳:加盟国は、附属書第2節に掲げる産品であって附属書第1節に掲げる区間で包装済みにされたものが、附属書第1節に掲げる公称量で包装されている場合に限り市場に出されるよう確保しなければならない。)

出典:Directive 2007/45/EC, Article 3(EUR-Lex)

静止ワインに認められているのは8つの量だけ

附属書第1節の、静止ワイン(still wine)の行はこうである。

Still wine On the interval from 100 ml to 1 500 ml only the following 8 nominal quantities: ml: 100 — 187 — 250 — 375 — 500 — 750 — 1 000 — 1 500

100mlから1,500mlの区間では、この8つの公称量しか認められないという書き方である。750mlはそのうちの1つに過ぎない。逆にいえば、この区間で740mlや760mlのワインをEU域内の市場に出すことはできない。附属書第1節に並ぶ行は6つで、そのすべてが酒類である。牛乳・バター・乾燥パスタ・コーヒー・白砂糖については、すでに義務量を課していた加盟国が第2条第2項によりそれぞれ2012年10月11日・2013年10月11日まで国内措置を続けてよいとされたが、いずれも附属書の一覧には入っていない。前文(9)がいう「除いて」の側に残ったのは酒類だけである。

表1 指令2007/45/EC 附属書 第1節に並ぶ酒類の公称量(単位:ml)
区分 指令が縛る区間 認められる量の数 認められる公称量
静止ワイン(Still wine) 100ml〜1,500ml 8 100 / 187 / 250 / 375 / 500 / 750 / 1,000 / 1,500
黄ワイン(Yellow wine) 100ml〜1,500ml 1 620
スパークリングワイン(Sparkling wine) 125ml〜1,500ml 5 125 / 200 / 375 / 750 / 1,500
リキュールワイン(Liqueur wine) 100ml〜1,500ml 7 100 / 200 / 375 / 500 / 750 / 1,000 / 1,500
フレーバードワイン(Aromatised wine) 100ml〜1,500ml 7 100 / 200 / 375 / 500 / 750 / 1,000 / 1,500
蒸留酒(Spirit drinks) 100ml〜2,000ml 9 100 / 200 / 350 / 500 / 700 / 1,000 / 1,500 / 1,750 / 2,000

指令の原文には数値しか書かれておらず、マグナムのような呼び名は出てこない。区分の名称は附属書第2節の定義による。

出典:Directive 2007/45/EC, ANNEX(EUR-Lex)

表を横に見ると、750mlは静止・スパークリング・リキュール・フレーバードの4区分に共通して入っている。シャンパンカヴァの標準ボトルが750mlであることは、この一覧と整合している。

区間の外側は指令が縛っていない

第3条をもう一度読むと、縛りがかかるのは「附属書第1節に掲げる区間で包装済みにされたもの」に限られている。静止ワインなら100mlから1,500mlまでで、それを超える大型ボトルも100mlに満たない小瓶も一覧の外にある。3,000mlや15,000mlの瓶が自由に作れるのは、特別に認められているからではなく、縛りの区間に入っていないからである。

第1条第2項は、附属書に掲げる産品のうち域外での消費のために免税店で販売されるものを適用の外に置いている。

第6条はDirectives 75/106/EEC and 80/232/EEC shall be repealedと、旧指令2本の廃止を宣言している。「1970年代に欧州が容量を法制化した」という説明を見かけるが、その指令は2007年の指令に差し替えられ、加盟国は2009年4月11日から新しい枠組みを適用している。

ウイスキーが700ml、ワインが750mlになる理由

ウイスキーが700ml、ワインが750mlになる理由
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表1の一番下、蒸留酒(Spirit drinks)の行である。

Spirit drinks On the interval from 100 ml to 2 000 ml only the following 9 nominal quantities: ml: 100 — 200 — 350 — 500 — 700 — 1 000 — 1 500 — 1 750 — 2 000

出典:Directive 2007/45/EC, ANNEX, Section 1(EUR-Lex)

9つ並んでいるが、750mlは入っていない。代わりに700mlがある。静止ワインの側には700mlがなく750mlがある。2つの一覧は100・500・1,000・1,500mlを共有しているのに、750mlと700mlだけはどちらも相手方に入っていない

ただし、ここから日本の棚の説明に直結させることはできない。第3条が縛るのは加盟国の市場に出す行為で、日本国内で売られている700mlのウイスキーにこの指令は及ばない。欧州向けの規格に合わせた瓶が広く流通している結果だと考えるのが自然だが、それを裏づける公的な資料は見つけられなかった。

この行にはもう一つ特徴がある。区間の上限が2,000mlで、ワインの1,500mlより広い。そして1,750mlという、ワインの側には出てこない量が入っている。区分ごとに区間の幅も刻み方も違う。

一杯の量になると別の法令が出てくる。日本の法令に「ダブル」の定義がないことと、瓶に表示した量に認められる誤差の幅はウイスキーのダブルとはに、ミリリットルが法定計量単位になっている経路はクローバークラブの記事に分けてある。

日本の側にあるのは容器の制度|計量法の特殊容器

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ここまではEUの話である。日本には、ワインを何mlで売れという法令はない。代わりに別の角度から瓶に関わる制度がある。計量法の特殊容器である。

計量法に基づく特殊容器とは、体積を計量する代わりに、ある高さまで液体商品を満たした場合、正しい量が確保されるように製造された、透明又は半透明の容器(例えば、ビールびん、醤油びん、牛乳びんなど)のことです。俗に「まるしょうびん」と呼ばれます。

出典:経済産業省「特殊容器制度について」

瓶そのものが体積をはかる道具の代わりになる。日本ガラスびん協会も〇計量法の特殊容器制度(いわゆる丸正びん)の技術基準に引用されているJIS S 2350(容量表示付きガラス製びん(壜))の改正につきましてと書いており、業界では丸正びんと呼ばれている。

出典:日本ガラスびん協会「JIS S 2350のJIS規格改正について」

第16条の禁止と、第17条が開けた例外

計量法は第16条第1項で、取引や証明の場面で使ってはいけないものを列挙している。柱書と第1号はこうである。

(使用の制限)第十六条次の各号の一に該当するもの(船舶の喫水により積載した貨物の質量の計量をする場合におけるその船舶及び政令で定める特定計量器を除く。)は、取引又は証明における法定計量単位による計量(第二条第一項第二号に掲げる物象の状態の量であって政令で定めるものの第六条の経済産業省令で定める計量単位による計量を含む。第十八条、第十九条第一項及び第百五十一条第一項において同じ。)に使用し、又は使用に供するために所持してはならない。一計量器でないもの

禁じられているのは計量器でないものを計量そのものに使うことである。検定に合格した計量器で量り取った酒を普通のガラス瓶に詰めて売るのは、瓶を計量器として使っているわけではないので禁止に当たらない。丸正マークのない750mlのワインが問題なく流通しているのはそのためである。瓶そのもので量を示したいときの例外を開けているのが第17条第1項である。

第十七条経済産業大臣が指定した者が製造した経済産業省令で定める型式に属する特殊容器(透明又は半透明の容器であって経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)であって、第六十三条第一項(第六十九条第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の表示が付されているものに、政令で定める商品を経済産業省令で定める高さまで満たして、体積を法定計量単位により示して販売する場合におけるその特殊容器については、前条第一項の規定は、適用しない。

条件が5つ重なっている。大臣が指定した者が製造したこと、省令で定める型式に属すること、第63条第1項の表示が付されていること、政令で定める商品を省令で定める高さまで満たすこと、そして体積を法定計量単位により示して販売することである。この5つがそろって初めて第16条第1項の適用が外れる。第17条は義務ではなく例外であり、この道を使わない瓶は最初から関係がない。

満たす高さについては、第2項が裏側から念を押している。

2第六十三条第一項の表示が付された特殊容器に前項の経済産業省令で定める高さまでその特殊容器に係る商品を満たしていないときは、その商品は、販売してはならない。ただし、同条第二項(第六十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定により表記した容量によらない旨を明示したときは、この限りでない。

出典:計量法(平成四年法律第五十一号)第十六条・第十七条/e-Gov法令検索

ただし書に注意したい。表記した容量によらない旨を明示すれば、その高さまで満たしていなくても売ってよい。「丸正マークの付いた瓶には必ず表記どおりの量が入っている」と言い切れないのは、この但し書きがあるからである。

高さの用語も定義されている。経済産業省は特殊容器内に充填される内容物の液面の最下部から特殊容器を置いた平面までの垂線の長さを「入味線高さ」といいます(右図のaに該当)。と説明し、使う側については特殊容器に商品を入れて使用するときには、特殊容器の容量に応じた「入味線高さ」まで内容物を満たせば、容器に表示されている容量に相当する量が満たされていることになります。としている。

出典:経済産業省「特殊容器制度について」

政令が挙げる12の商品と、経産省の資料との食い違い

第17条第1項がいう「政令で定める商品」は計量法施行令第8条にある。現行の条文は(特殊容器の使用に係る商品)第八条法第十七条第一項の政令で定める商品は、次のとおりとする。として12号を並べており、ワインが関係するのは第11号である。

十一酒類(酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類(同法第三条第二十二号に規定する粉末酒を除く。)をいう。)

出典:計量法施行令(平成五年政令第三百二十九号)第八条/e-Gov法令検索

酒税法第2条第1項の酒類がまとめて入っており、果実酒つまりワインも含まれる。除かれているのは粉末酒だけである。ところが経済産業省の解説資料は、同じ第8条を18号として引用している。

表2 施行令第8条の対象商品──現行条文と経産省の解説資料の食い違い
出どころ 号の数 並んでいる商品
現行の施行令第8条(e-Gov) 12号 一〜九は牛乳から酸性飲料まで/十 みりん/十一 酒類/十二 液状の農薬
経産省「特殊容器制度について」の引用 18号 一〜九は同じ/十 ビール/十一 清酒/十二 しょうちゅう/十三 ウイスキー/十四 ブランデー/十五 果実酒/十六 みりん/十七 合成清酒/十八 液状の農薬

現行条文では酒類が第11号に一括りにされ、みりんは「次号に掲げる酒類に該当するものを除く」として第10号に残っている。解説資料は品目別に列挙していた時期の条文を引いている。

出典:計量法施行令 第八条/e-Gov法令検索

この資料は施行令を「平成5年政令第392号」と書いているが、e-Gov法令検索が示す計量法施行令の法令番号は平成五年政令第三百二十九号である。引かれている施行規則第25条も「日本工業規格」のままで、現行は「日本産業規格」に改まっている。制度の骨格を知るには読みやすいが、条文はe-Gov側で確かめたほうがよい

型式も材質も高さも公差も、JIS S 2350に預けられている

型式も材質も高さも公差も、JIS S 2350に預けられている
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計量法施行規則は第4章がまるごと特殊容器製造事業に当てられている。ガラス溶融炉や成形機の要件のように規則自身が直接書いている基準(第30条第1項)もあるが、型式・材質・高さ・公差という中核の4つは、1本の日本産業規格に委ねられている

表3 特殊容器の要件がどこで決まっているか
決めている事項 委任元の条文 受けた省令 省令が指しているもの
型式(どの形・容量の瓶を作ってよいか) 法 第17条第1項 施行規則 第25条 日本産業規格 S 2350 による
容器の材質 法 第17条第1項 施行規則 第26条 日本産業規格 S 2350 の材質を有する容器
満たすべき高さ 法 第17条第1項 施行規則 第27条 日本産業規格 S 2350 による
容量公差(器差の許容幅) 法 第63条第1項第2号 施行規則 第33条 日本産業規格 S 2350 による

4つとも同じ日本産業規格を指している。呼び容量・容量公差・充填する商品は附属書A、形状と寸法は附属書B、入味線高さは附属書Eにある。

出典:計量法施行規則(平成五年通商産業省令第六十九号)第二十五条〜第三十三条/e-Gov法令検索

JIS S 2350の適用範囲は、2017年版の規格自身がこう書いている。

この規格は,液体を充塡したときに入味線が見えるソーダ石灰ガラス製のびんであって,液体をある一定の入味線高さまで充塡したときに,容量が呼び容量と同じ値となる容量表示付きガラス製びん(以下, “容量表示付きびん”という。)について規定する。

目次には附属書A(規定)容量表示付きびんの呼び容量,容量公差,商品などという附属書が立っており、形状と寸法は附属書Bにある。特殊容器として認められる呼び容量は、法律でも政令でも省令でもなくこの規格の附属書で決まっている。一覧そのものは有償の規格本体にあり、本稿が確かめられたのは閲覧できる前付までである。経済産業省が挙げている型式の例は型式の例 JS-43-2 633ml ビールびん JS-52 1800ml 一升びんで、一升瓶にはJS-52という番号が振られている。

入味線高さについても経済産業省はこれらの高さは特殊容器の型式や商品毎に異なり、具体的には、JIS S2350 附属書Eの表.1に「入味線高さ」が、表 E.2に「下限入味線高さ」が規定されています。と説明している。使うときの高さと、販売時に超えなければならない下限の高さの2本立てである。

出典:JIS S 2350:2017(日本規格協会 閲覧用PDF)/経済産業省「特殊容器制度について」

丸正マークはJISマークではない

取り違えやすいのが瓶に付く印の意味である。2017年版の序文には、規格自身による断りが3つ置かれている。まず、規格の要求事項と計量法の要求事項は同じではないという括弧書きがある。

(全ての要求事項が計量法の要求事項ではない。)

そのうえで、こう続く。

ただし,この規格の適合だけをもって,容量表示付きガラス製びんが計量法で定める特殊容器ということにはならない。

また,この規格においては,この規格に適合するものであることを示す工業標準化法第19条の表示を付することはできない。

出典:JIS S 2350:2017 序文(日本規格協会 閲覧用PDF)

規格に適合しているだけでは特殊容器にならず、この規格ではJISマークを付けられない。ここでいう工業標準化法は2019年7月に産業標準化法へ改称されており、現行版(2020年版)の序文の書きぶりは有償の本体を見ないと分からない。いずれにせよ瓶に付いているのは計量法第63条第1項の表示、いわゆる丸正マークである。

第六十三条指定製造者は、その指定に係る工場又は事業場において製造した特殊容器が次の各号に適合するものであるときは、経済産業省令で定めるところにより、これに表示を付することができる。一第十七条第一項の経済産業省令で定める型式に属すること。二その器差が経済産業省令で定める容量公差を超えないこと。

付けられるのは指定製造者(第69条第1項が準用する指定外国製造者を含む)だけで、条件は型式に属することと器差が容量公差を超えないことの2つ。大きさは施行規則第32条第1項第2号にある。

二表示の大きさ及び形状は、七ミリメートル以上の短径とし、短径と長径の比が三対四となる大きさで、次のとおりとする。

短径7mm以上、短径と長径の比が3対4。あの小さな印にも寸法の規定がある。記号と容量を一緒に表記することは第63条第2項の義務であり、第3項はまぎらわしい表示を禁じている。

2指定製造者は、前項の表示をするときは、その特殊容器に、経済産業省令で定める方法により、第五十九条第四号の規定により同条の申請書に記載した記号及びその型式について第十七条第一項の経済産業省令で定める容量を表記しなければならない。

3何人も、第一項(第六十九条第一項において準用する場合を含む。)に規定する場合を除くほか、特殊容器に第一項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。

出典:計量法 第六十三条/計量法施行規則 第三十二条/e-Gov法令検索

国産ワインの720mlと750ml|制度の側から見ると何が違うのか

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国産のワインには720mlのものと750mlのものがある。720mlは日本酒の四合瓶と同じ容量で、一升(1,800ml)の4合分、つまり5分の2にあたる。ここまで見てきた制度に当てはめると、2つの違いはこう整理できる。

まず日本国内では720mlも750mlも同じように売れる。日本の制度は中身の量を何mlにせよとは言っていない。特殊容器の道を使うなら型式に載っている容量に限られるが、それは義務ではなく例外の道である。経済産業省が挙げる型式の例はビールびんと一升びんで、ワインの瓶に型式が用意されているかどうかは有償の規格本体を見ないと分からない。一升瓶で仕込む国産ワインについては山梨ワインの記事で触れている。

次にEUに向けて出す場合は事情が変わる。表1のとおり静止ワインで認められているのは8つで、この中に720mlはない。100mlから1,500mlの区間に入る以上、第3条の縛りがそのままかかる。もっとも、720mlを避ける理由は輸出だけとは限らない。コルク・キャップシール・化粧箱・ラックといった資材が750mlの寸法で流通していることも、同じ結論を後押しする。逆に一升瓶(1,800ml)は区間の上限1,500mlを超えているので、指令の公称量の縛りは最初からかからない。

出典:果実酒等の製法品質表示基準を定める件(国税庁)

なお720mlと750mlは30mlしか違わないが、瓶が違えば箱もラベルも別に用意することになる。流通の側から見ると、30mlの差ではなく別規格として扱われる。

サイズと呼び名の一覧|法令に載っているのは数字だけ

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マグナム、ジェロボアム、ナビュコドノゾール。大型ボトルには独特の呼び名が付いている。ただしこれらの名前は今回あたった資料のどこにも出てこなかった。指令の附属書は数字だけで書かれており、計量法・同施行令・同施行規則・経済産業省の解説資料・JIS S 2350の閲覧できる範囲にも、マグナムという語は一度も現れない。呼び名は流通上の慣用であって、規格でも法令でもない

表4 容量と、指令2007/45/EC 附属書 第1節での扱い
容量 流通上の呼び名(慣用) 指令での扱い
375ml ハーフ/ドゥミ・ブテイユ 静止○・発泡○
750ml ブテイユ(標準) 静止○・発泡○
1,000ml リットルボトル 静止○・発泡×
1,500ml マグナム 静止○・発泡○
3,000ml ドゥブル・マグナム/ジェロボアム 区間の外
4,500ml ジェロボアム/レオボアム 区間の外
6,000ml アンペリアル/マチュザレム 区間の外
9,000ml サルマナザール 区間の外
12,000ml バルタザール 区間の外
15,000ml ナビュコドノゾール 区間の外

「静止○・発泡×」は静止ワインの一覧にはあるがスパークリングワインの一覧にはないという意味で、表1の再掲である。呼び名の欄は法令にも規格にも根拠がない。同じ容量に別の名前が当たることも、同じ名前が別の容量に当たることもある。

表を縦に見ると、指令が縛っているのは1,500mlまでで、それより大きいボトルは区間の外にある。容量のほうは750mlの整数倍でそろっているが、呼び名がそろっていないのは、そろえる制度が働いていないからだと説明が付く。大容量の瓶は熟成が穏やかに進むとよく言われるが、これは法令や規格の話ではない。保管の実務はワインの保存の記事ワインセラーの記事に譲る。

ラベルの内容量表示の根拠は計量法ではない

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混同されやすいのがラベルに内容量を書く義務である。これは計量法ではなく酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律に基づく。国税庁の「酒のしおり」はこう書いている。

酒類の容器及び包装には、酒税の検査取締上の見地から、当該酒類の品目等、所定の事項を表示することが義務付けられています(酒類業組合法86の5、酒類業組合法施行令8の3)

出典:国税庁「酒のしおり」17 酒類の表示義務

同じ資料が挙げる表示事項は、製造業者の氏名または名称、製造場の所在地、内容量、品目、アルコール分などで、食品表示基準の側でも内容量が求められている。

一方、特殊容器の制度で瓶に表記される容量は第63条第2項に基づく指定製造者側の表記である。ラベルに印刷された内容量と、瓶のガラスに表記された容量は根拠条文が違う。見た目には同じ数字が2か所にあるだけだが、義務を負う人も目的も別である。

ボトルの色と、光でワインが劣化するという話

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ワインボトルには濃い緑、茶色、透明とさまざまな色がある。「紫外線から中身を守るため」という説明が一般的で、光に当たったワインに好ましくない香りが生じることは広く知られている。ただしボトルの色を定めた法令や規格は今回あたった範囲では見つからなかった。計量法が特殊容器について置いている「透明又は半透明の容器」という要件も、経済産業省が例に挙げるのが濃い茶色のビールびんや一升びんである以上、特定の色を締め出すものではない。

言えるのは、濃い色のガラスのほうが光を通しにくく、長期熟成を前提とする銘柄で濃色の瓶が選ばれる傾向がある、という程度である。

瓶底のへこみ(パント)に決定的な理由はない

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瓶の底が内側にへこんでいるのをパント、またはキックアップと呼ぶ。注ぐときに親指を入れて持ちやすい、立てたときに澱を底の縁に集められる、内圧に耐える強度が上がる、手吹きで瓶を作っていた時代の継ぎ目を内側に押し込んだ名残り。よく挙がる説明は4つあるが、今回あたった資料のどれにも根拠は書かれていない

制度の側から言えることが一つある。特殊容器では、型式ごとに定められた入味線高さまで満たせば表記どおりの容量になる。底の形を含めた瓶の形状が附属書Bで固定されていて、その形に対して高さが決めてあるからである。ただしこれは丸正マークの付いた瓶の話で、ワインの瓶がこの型式に含まれるかは確かめられていない。パントの深いワイン瓶について、量が減るという説明も、深いほど格が上だという説明も、根拠を示した資料は見つからなかった。

抜栓の道具や扱い方はワインコルクの開け方の記事にまとめてある。

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細長くシャープな「アルザス(フルート)型」ボトル。アルザスを代表する辛口白で、華やかなアロマと美しい瓶が魅力。

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ルイ・ジャド ブルゴーニュ ピノ・ノワール4 ルイ・ジャド ブルゴーニュ ピノ・ノワール
★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約2,500〜3,500円)
💎 プロのおすすめ

なだらかな「なで肩」が特徴のブルゴーニュ型ボトル。滓が溜まりにくい形状で、ピノ・ノワールの入門に最適な1本。

LINXASで探すコレクション 価格を見るAmazon ¥2,992 楽天 査定 買取
シャトー・ムートン・カデ ルージュ5 シャトー・ムートン・カデ ルージュ
★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約1,500〜2,500円)
💎 プロのおすすめ

肩の張った「いかり型」のボルドー型ボトル。長期熟成で底に溜まる滓を受け止める形状で、ボルドー入門の定番。

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ドクター・ローゼン リースリング6 ドクター・ローゼン リースリング
★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約2,000〜3,200円)
💎 プロのおすすめ

緑色の細身「モーゼル型」ボトル。フルーティで上品な甘みの白ワインで、緑のボトルがフレッシュさを演出する。

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ゾンメラッハー カッツェンコップ ドミーナ7 ゾンメラッハー カッツェンコップ ドミーナ
★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約2,000〜3,200円)
💎 プロのおすすめ

丸みを帯びた「ボックスボイテル型」ボトル。ドイツ・フランケン地方独特の形で、飾るだけで様になる甘口の赤。

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サンデマン ポート ルビー8 サンデマン ポート ルビー
★★★☆☆3/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約1,800〜3,000円)
💎 プロのおすすめ

球根のように膨らんだ首が特徴のポートワイン専用ボトル。酒精強化ワインらしい甘く濃厚な味わいで、独特の瓶も飾り映えする。

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フレシネ コルドン ネグロ9 フレシネ コルドン ネグロ
★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約1,200〜2,200円)
💎 プロのおすすめ

炭酸圧に耐える黒い厚手ボトルが目を引くスペインの定番カバ。手頃でパーティーに使いやすく、瓶のデザイン性も高い。

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マグナムボトル スパークリングワイン 1500ml10 マグナムボトル スパークリングワイン 1500ml
★★★☆☆3/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約3,000〜6,500円)
💎 プロのおすすめ

通常の2倍「マグナム(1500ml)」サイズ。熟成がゆるやかで品質が安定しやすく、パーティーや記念日に映える大容量。

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マテウス ロゼ11 マテウス ロゼ
★★★☆☆3/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約1,300〜2,000円)
💎 プロのおすすめ

平たく丸い独特の瓶で世界的に親しまれるポルトガルのロゼ。微発泡でフルーティ、空き瓶はランプや花瓶にも転用される。

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ステンレス ワインボトル オザークトレイル 真空断熱12 ステンレス ワインボトル オザークトレイル 真空断熱
★★★☆☆3/ J.S.A.認定ソムリエスコア
オープン価格(実勢 約2,000〜3,500円)
💎 プロのおすすめ

二重壁・真空断熱のステンレス製ワインボトル。750ml形状ながら保冷保温に優れ、ピクニックやアウトドアで活躍する。

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価格は各銘柄の実勢相場(2026年5月時点)。ワインの多くはオープン価格のため、メーカー定価ではなく市場での販売価格帯を記載しています。ボトル形状は同一銘柄でもヴィンテージや仕様により異なる場合があります。

ワインボトルの容量についてよくある質問

ワインボトルの容量についてよくある質問
ワインボトルの容量についてよくある質問の参考画像

店頭でよく聞かれるものをまとめた。

ワインボトルはなぜ750mlなのですか?

EUでは指令2007/45/ECが公称量を定めており、静止ワインは100mlから1,500mlの区間で100・187・250・375・500・750・1,000・1,500mlの8つしか認められていません。750mlはそのうちの1つです。ただしこの指令はEU域内の市場に出す場合の規律で、日本の流通には及びません。「大人2人で飲み切る量」といった由来の説明は広く流通していますが、今回あたった法令・規格・行政資料には書かれていませんでした。

ウイスキーが700mlでワインが750mlなのはなぜですか?

EU域内については、指令2007/45/ECの附属書で区分が別の行になっているためです。蒸留酒は100mlから2,000mlの区間で9つが認められていますが、その一覧に750mlは入っておらず700mlがあります。逆に静止ワインの一覧には700mlがありません。ただしこの指令は日本国内の流通には及びません。日本の棚に同じ容量が並んでいるのは、EU向けの瓶が国際的な既定値として使われているからです。

日本では720mlのワインを売ってもよいのですか?

国内で売る分には問題ありません。日本の法令はワインの内容量を何mlにせよとは定めていないためです。ただしEU域内に出す場合は、静止ワインの区間で認められた8つの公称量に720mlが入っていないため、そのままでは市場に出せません。

瓶に付いている丸い印は何ですか?JISマークですか?

計量法第63条第1項の表示で、業界では丸正マークと呼ばれています。JISマークではありません。JIS S 2350は2017年版の序文で、この規格では当時の工業標準化法第19条の表示を付けられないと明記しています。付けられるのは経済産業大臣の指定を受けた製造者だけで、型式に属することと器差が容量公差を超えないことが条件です。

大きいボトルの容量がまちまちなのはなぜですか?

指令2007/45/ECが公称量を縛っているのは1,500mlまでで、それを超える大型ボトルは区間の外にあるためです。3,000ml以上の容量に統一の規格はなく、マグナムやジェロボアムといった呼び名にも法令や規格の根拠がありません。

瓶底のへこみが深いほど高級なワインですか?

根拠を示した資料は見つかりませんでした。パント(キックアップ)については持ちやすさ・澱を集める・強度・手吹き時代の名残りといった説明が挙げられますが、いずれも法令や規格に書かれているものではありません。へこみが深いと中身が少ないという疑いについても、裏づけとなる資料は見当たりませんでした。

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