ノンアルコールビールとは|0.00と0.0の違い、製法と選び方、法令上の位置

ノンアルコールビールとは|0.00と0.0の違い、製法と選び方、法令上の位置

ノンアルコールビールは、入っているもので名乗る飲みものではありません。入っていないもので名乗る飲みものです。ではその「入っていない」は、どこかで線が引かれているのでしょうか。日本の法令をまるごと検索すると、「ノンアルコール」という語は三か所しか見つかりません。しかも三か所とも条文ではなく別表で、三か所ともこの飲みものを定義していません。定義がないまま、この飲みものは毎朝どこかの営業所で機械に息を吹きかける人たちの前に置かれています。この記事では、種類と製法と選び方を整理しながら、「アルコールが入っていない」ことを制度がどう確かめているのかを、条文の字数まで数えて読んでいきます。

ノンアルコールビールとは|酒税法の「一度」の外側にある飲みもの

ノンアルコールビールとは|酒税法の「一度」の外側にある飲みもの
缶とグラスに注いだノンアルコールビールの参考画像

線を引いているのは酒税法の第二条

ノンアルコールビールとは、ビールに似た味わいを持ちながら、アルコール分が一パーセント未満に抑えられたビールテイスト飲料のことです。この「一パーセント」という区切りは業界の申し合わせではなく、酒税法が引いた線をなぞったものです。酒税法第二条第一項はこの法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料と書きます。一度に届かない飲料は、そもそも酒類ではありません。

つまりノンアルコールビールは、酒税法の側から見ると「酒ではないもの」という否定形でしか位置づけられていません。清涼飲料としてビールの隣に並び、ビールの味を借りながら、酒類の制度からはすっかり外れている。免許が要る酒類の販売とも、酒税の課税とも無関係な棚に置かれます。

この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(略)を含む。)をいう。

酒税法第二条第一項

酒類でないことの効き目は、税だけにとどまりません。酒税法が酒類に課している製造免許や販売業免許の枠組みも、酒類業組合法にもとづいて酒類の容器に求められる二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示も、どれも対象は酒類です。一度に届かない飲みものは、その全部の外側に立ちます。売場でビールの隣に並びながら、制度の上ではまったく別の棚に置かれているということです。

「アルコール分」は温度十五度で測ると決まっている

その一度は、どうやって測るのでしょうか。酒税法第三条第一号が定義を置いています。アルコール分 温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。容量の百分率であること、そして測るときの温度が十五度に固定されていることが、ここで決まります。アルコール分は温度で見かけの体積が変わるので、温度を決めないと数字が決まらないからです。

この十五度という前提は、ビールでも焼酎でもウイスキーでも同じように働いています。度数の基本についてはビールのアルコール度数の一覧と種類別の比較に整理があります。本記事はそこには踏み込まず、一度に届かない側で何が起きるかだけを追います。

似た飲みものとの位置関係

ビールテイスト以外にも、ワインやシャンパンの味を借りた製品があります。ノンアルコールシャンパンの銘柄と選び方やノンアルコールワインと低アルコールの違いは、同じ「一度未満」の側にいながら、原料も造り方も別の道を歩いています。カクテルの形をとるモクテルも同じ棚の住人です。

ノンアルコールとあわせて選びたい関連商品ラインナップ
棚に並ぶ酒類と飲料の参考イラスト

ノンアルコールビールは、飲まない日をつくるための飲みものです。飲む日の一本と組み合わせて棚をつくると、どちらも減り方がゆっくりになります。以下は同じ棚に置きやすい商品の一覧です。ウイスキーのラインナップもあわせてご覧ください。

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ここではウイスキーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。

代表的なノンアルコールビール三十銘柄を比較

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売場に並ぶ缶の参考画像

国産の完全ゼロ、海外の脱アルコール、そして微アルコール。三十銘柄を横に並べると、表示の桁数と造り方の違いがそのまま並びに出ます。価格は変動しますので、購入前に各サイトでご確認ください。

ノンアルコールビール 主要30銘柄 比較|国産0.00%・海外0.0%・微アル・クラフトNA
アサヒ・サントリー・キリン・サッポロの国産0.00%から、ハイネケンやギネスなど海外0.0%、ビアリーなどの微アルコール、クラフトNAまで、ノンアルコールビール主要30銘柄を横断比較。度数・産地・タイプ・市場相場・楽天/Amazonの最新価格をまとめています(2026年6月時点)。
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アルコール0.7%の微アル生。生ビール由来の麦の香りと飲みごたえ。

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「ノンアルコール」という語は、日本の法令に三か所しかない

「ノンアルコール」という語は、日本の法令に三か所しかない
開いた本とグラスの参考画像

検索してみると、出てくるのは三つの別表だけ

電子政府の法令検索で、現行の法令の全文から「ノンアルコール」の語を探すと、返ってくるのは三件です。関税定率法、小売物価統計調査規則、そして不正競争防止法にひもづく省令。この三つだけです。

しかも三件とも、条文の中ではありません。すべて末尾の別表に載っています。関税定率法では税率表の品目名として、小売物価統計調査規則では調査品目の一覧として、省令では外国の政府が使う印章や記号の対象分野の羅列として。どれも「ノンアルコールとは何か」を説明する条文ではなく、名前が一度だけ通りすぎていく場所です。

税率表だけが、数字を持っている

三つのうち、数字とつながっているのは関税率表だけです。関税定率法の別表には、二二〇二・九一という番号でノンアルコールビールという品目が立っています。砂糖を加えたものは二二・四パーセント、その他のものは一六パーセント。この率は第二二・〇二項の他の号と共通ですが、従価税である点が目を引きます。すぐ下の二二〇三・〇〇のビールが一リットルにつき六円四〇銭の従量税であることと、税のかけ方からして違います。

そしてノンアルコールビールが属する第二二・〇二項について、第二二類の注は次のように書きます。第二二・〇二項において「アルコールを含有しない飲料」とは、アルコール分が〇・五%以下の飲料をいう。ここでようやく、この飲みものの周りに数字が現れます。

第二二・〇二項において「アルコールを含有しない飲料」とは、アルコール分が〇・五%以下の飲料をいう。アルコール飲料は、第二二・〇三項から第二二・〇六項まで又は第二二・〇八項に属する。

関税定率法 別表(関税率表)第二二類 注3

一度未満と〇・五パーセント以下は、別の線である

ここで二本の線が並びます。酒税法が引く「一度以上なら酒類」という線と、関税率表が引く「〇・五パーセント以下ならアルコールを含有しない飲料」という線です。〇・五パーセントを超えて一度に届かない飲みものは、酒税法から見れば酒ではなく、関税率表から見ればアルコールを含有しない飲料でもない。どちらの名前も付かない帯が、法令のあいだに残っています。

測り方も別です。酒税法のアルコール分は温度十五度で測ると第三条第一号が決めていますが、関税率表第二二類の注2は第二〇類からこの類までにおいてアルコール分は、温度二〇度におけるアルコールの容量分によると書きます。同じ「アルコール分」という言葉を、二つの法律が違う温度で測っている。線の位置が違うだけでなく、物差しの目盛りも違うということです。

物価統計は、コーラと炭酸水のあいだに置いた

二つめの登場先は、総務省が毎月の小売価格を調べるための小売物価統計調査規則です。その別表の一の項に、調べるべき品目がずらりと並びます。該当箇所を順番どおりに写すと、こうです。コーラ ノンアルコールビール 炭酸水 スポーツドリンク ミネラルウォーター(配達を除く。) 豆乳 ゼリー飲料 清酒 焼酎 ウイスキー ワイン ビール 発泡酒 チューハイ ビール風アルコール飲料。

ノンアルコールビールは、コーラと炭酸水にはさまれています。清酒からビール風アルコール飲料までの酒類の群は、豆乳とゼリー飲料をまたいだ向こう側です。国が毎月値段を調べるとき、この飲みものは酒の棚ではなく清涼飲料の棚の住人として扱われている。ちなみに末尾の「ビール風アルコール飲料」が品目に加わったのは平成十九年十二月一日で、附則にその日付が残っています。

三つめは、タイ王国の欄にある

最後の一件は拍子抜けするほど間接的です。不正競争防止法にひもづく省令の別表には、各国の政府が監督用・証明用に使う印章や記号と、それが使われる商品や役務が国ごとに並んでいます。そのタイ王国の欄の冒頭に農業用製品及び食品。アルコール飲料及びノンアルコール飲料。と書かれている。日本の制度がこの飲みものを説明した文ではなく、よその国の制度の対象分野を写し取った一覧の中に、語が紛れ込んでいるだけです。

整理すると、日本の法令における「ノンアルコール」は、関税の品目名と、物価調査の品目名と、外国の印章がかかる分野の名。三つとも別表で、三つとも定義ではありません。定義がないというのは、この飲みものが制度に見放されているという意味ではなく、あとで見るように、制度がまったく別の入口からこの飲みものに触れているという意味です。

0.00パーセント・0.0パーセント・微アルコールと、そのつくり方

0.00パーセント・0.0パーセント・微アルコールと、そのつくり方
泡の立ったグラスの参考画像

桁の数だけ違う三つの表示

棚に並ぶ缶の表示は、大きく三つに分かれます。0.00パーセント、0.0パーセント、そして0.5パーセント前後の微アルコール。見た目はよく似ていますが、意味している範囲は違います。

0.00パーセントは、小数第二位まで示したうえでゼロだと書いています。アルコールをまったく含まないという主張です。国産の大手ブランドはこちらが主流です。0.0パーセントは小数第一位までの表示なので、四捨五入して0.0になる範囲、つまり0.05パーセント未満のごく微量を含む場合があります。海外ブランドに多い書き方です。そして微アルコールは、0.5パーセントや0.7パーセントとはっきり数字を書きます。酒類ではないけれども、ゼロでもない。

三つの表示が示す範囲
表示 示している範囲 酒税法上の扱い 関税率表の第二二・〇二項
0.00パーセント 含まないという表示 酒類ではない アルコールを含有しない飲料に入る
0.0パーセント 0.05パーセント未満 酒類ではない アルコールを含有しない飲料に入る
0.5パーセント前後 表示どおりの数値 酒類ではない 〇・五パーセント以下なら入る

先ほどの関税率表の線を思い出してください。〇・五パーセント以下ならアルコールを含有しない飲料でした。微アルコールの0.5パーセントは、その線のちょうど内側にとまっています。0.7パーセントの製品はもう線の外です。三つの表示は、感覚の違いではなく、制度の線に対する立ち位置の違いでもあります。

造り方は大きく二系統

味の設計は、造り方でほぼ決まります。ひとつは脱アルコール製法です。ふつうにビールを醸造してから、あとでアルコールだけを取り除く。減圧蒸留や膜を使う方法があり、麦芽を発酵させた段階の香りが残るので、ビールに近い味わいになります。海外の0.0パーセント製品や、国産でも本格志向をうたう製品はこちらが多い。

もうひとつは、そもそも発酵させない、あるいは発酵を抑える方法です。麦芽エキスとホップと炭酸を組み立てて、ビールらしい味を設計する。発酵の副産物に縛られないので、カロリーや糖質を狙った値に置きやすく、機能性の成分も入れやすい。国産の0.00パーセントの多くがこの系統です。

脱アルコールという技術そのものの話は、ワインやスパークリングの側でより詳しく扱われています。脱アルコール製法のくわしい解説を読むと、同じ技術がぶどうの側でどう使われているかが分かります。

ゼロに近づけるほど、設計が難しくなる

アルコールは味の骨格を担っています。とろみ、甘みの伸び、香りの立ち上がり。それを抜いた分をどこかで埋めないと、味が薄く感じられます。だから麦芽の量やホップの使い方、炭酸の強さで輪郭を作り直す。ビールの種類ごとの味の違いを知っていると、どの製品がどのスタイルを狙っているのかが読み取りやすくなります。

カロリーや糖質の考え方は、通常のビールとは前提が違います。アルコール由来のカロリーがない分、設計の自由度が高い。数字そのものはビールのカロリーと糖質の比較と見比べると分かりやすく、麦芽比率で分類が変わる発泡酒とビールの違いとも見比べる価値があります。

「飲酒」と書かない省令|点呼が問うのは飲んだ事実ではなく酒気帯び

「飲酒」と書かない省令|点呼が問うのは飲んだ事実ではなく酒気帯び
屋外のテーブルに置かれたグラスの参考画像

法律の本体には、「酒」の字が一度も出てこない

トラックやバスの運転者は、仕事の前に必ずアルコールの確認を受けます。その根拠はどこにあるのか。まず貨物自動車運送事業法という法律を開くと、意外なことが分かります。この法律の条文は四万一千二百二十八字ありますが、そこに「酒」という字は一度も出てきません。「アルコール」も「点呼」も同じくゼロです。

酒気を扱っているのは、法律ではなく省令の側です。旅客側の親法である道路運送法も同じで、条文五万一千四百七十六字に「酒」の字はありません。貨物自動車運送事業輸送安全規則が三万三千五百二十九字、旅客自動車運送事業運輸規則が四万七千三百二字。この二つの省令が、確認の中身をすべて背負っています。法律は枠を置き、省令が現場の手順を書く。この分担そのものは珍しくありませんが、酒気帯びのように重い事柄が丸ごと省令側にあるのは、条文を数えてみるまで気づきにくいところです。

二つの省令の八万字に、「飲酒」の語がない

その二つの省令を合わせると八万八百三十一字になります。この中に「飲酒」という語は一度も出てきません。代わりに二十回ずつ出てくるのが「点呼」で、八回と九回出てくるのが「酒気」です。

使われ方も一貫しています。貨物側の第七条第一項は、業務に就こうとする運転者に対して報告を求め確認を行うべき事項を並べ、その第一号を運転者に対しては、酒気帯びの有無とします。旅客側の第二十四条第一項も、同じ言い回しを第二号に置いています。問われているのは、飲んだかどうかではありません。いま酒気を帯びているかどうか、その有無だけです。

貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の業務に従事しようとする運転者等に対して対面により、又は対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法(略)により点呼を行い、次の各号に掲げる事項について報告を求め、及び確認を行い(略)なければならない。一 運転者に対しては、酒気帯びの有無

貨物自動車運送事業輸送安全規則第七条第一項

飲んだ事実ではなく、いまの状態を見る

この書き方の意味は小さくありません。もし「飲酒の有無」と書いてあれば、昨夜飲んだかどうかが問われることになります。「酒気帯びの有無」と書けば、問われるのは点呼の瞬間の状態だけです。前の晩に何を飲んだかは、状態に出てこなければ制度の関心の外に置かれる。逆に、飲んでいなくても状態に出てしまえば、制度はそれを拾います。

ノンアルコールビールがこの制度とどう関わるかは、ここで決まります。「酒を飲んだか」という問いなら、ノンアルコールビールは酒ではないので即答できます。しかし省令の問いは「酒気を帯びているか」です。飲んだものの名前ではなく、いま体にあるかどうかを見る。名前で答えられない問いだということです。

義務は三重になっている

省令は同じ事柄を三方向から縛ります。事業者の側には酒気を帯びた状態にある乗務員等を事業用自動車の運行の業務に従事させてはならないという禁止があります。運転者の側には酒気を帯びて乗務しないことという遵守事項があります。そしてもうひとつ、酒気を帯びた状態にあるときは、その旨を貨物自動車運送事業者に申し出ることという自己申告の義務まで置かれています。

働かせない側の禁止、乗務しない側の遵守、そして自分から申し出る義務。運転者は後の二つを同時に負いながら、条は別々に置かれている。飲酒運転の一般的な話はアルコールが体から抜ける時間の考え方にまとめてありますが、運送の現場ではその手前に、こうした手続の層があります。

記録の重さは、事業によって違う

点呼をしたら記録が残ります。貨物側は第七条第五項で、点呼を行った旨と報告・確認・指示の内容、点呼を行った者と受けた運転者の氏名、車両の識別表示、日時、方法などを記録し、一年間保存せよと定めます。旅客側も似た組み立てですが、貸切バスについては電磁的記録を三年間とされ、さらに扱いが重くなります。

貸切バスは、点呼の状況を録音及び録画して九十日間保存しなければならず、さらに検知器を使うときは当該確認に係る呼気の検査を行つている状況の写真(当該運転者を識別できるものに限る。)を撮影して九十日間保存することまで求められます。ただし、その状況を録画している場合は写真は要りません。誰が息を吹き込んだのかを、録画か写真のどちらかで必ず残させる。制度がもっとも強く念を押している場所が、ここです。

数値を書かない制度|アルコール検知器の定義と週に一度の点検

数値を書かない制度|アルコール検知器の定義と週に一度の点検
拡大鏡で確かめる場面の参考イラスト

定義は一文で終わり、単位が出てこない

省令は検知器そのものも定義しています。貨物側の第七条第四項は、かっこの中でこう書きます。アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国土交通大臣が告示で定めるものをいう。以下同じ。)。旅客側の第二十四条第四項もほぼ同じ文です。

読み返すと、書かれていないものの多さに気づきます。検知するとは書いてあっても、測るとは書いていない。濃度という語がない。単位もない。実際、二つの省令の八万八百三十一字を通して「濃度」も「ミリグラム」も「リットル」も一度も出てきません。数値の基準を条文の中に置かないまま、この制度は動いています。

数字がある側は道路交通法です。呼気一リットルにつき何ミリグラムという線は、その施行令に書かれています。運送の現場の点呼は、その数字の手前で「有るか無いか」だけを見る。二つの制度が同じ運転者に対して、別々の粒度で働いているということです。

機械だけに任せてもいない

同じ第四項の後半は、検知器を営業所ごとに備えて常時有効に保持することを求めたうえで、確認のやり方をこう書きます。運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行わなければならない。

「ほか」という語が効いています。目視の代わりに機械を使うのではなく、目視に加えて機械を使う。国土交通省の説明でも、点呼の際には運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子を目視等で確認することに加えて検知器を使う、と整理されています。人の目と機械の両方を通す設計です。

週に一度、酒を口に噴いて反応を確かめる

検知器の保守についても、国土交通省が具体的な手順を示しています。毎日の確認は、電源が確実に入ること、損傷がないこと。そして少なくとも週に一回以上、次の二つを確かめることとされています。ひとつは、酒気を帯びていない者が使ったときにアルコールを検知しないこと。もうひとつは、アルコールを含有する液体またはこれを希釈したものを口内に噴霧した上で使ったときに、アルコールを検知すること。

ゼロが出るべき場面でゼロが出るか。反応が出るべき場面で反応が出るか。この二方向を毎週試す。機械が壊れていないことを、酒そのものを使って確かめるという手順です。数値の基準を条文に書かない代わりに、機械が正しく振れることを現場で保証させる。制度の重心が、どこに置かれているかがよく分かります。

国は特定の機種を推奨していない

定義は国土交通大臣が告示で定めるものと、機器の要件そのものは告示にゆだねています。そのうえで国土交通省は、個別の機種の推奨は行っていないと、よくある質問の中ではっきり答えています。表示のかたちも自由で、数値ではなく赤・黄・緑のランプで示す機器でも問題ないとされています。

記録も同じ方向です。測定結果を自動で紙に印字する必要はなく、点呼簿への記載は検知器使用の有無と酒気帯びの有無の記載で足りるとされ、測定数値そのものを記載する必要はないと明記されています。制度が保存したいのは、数字ではなく「確認したという事実」なのです。

対象は思ったより広い

この仕組みが働く範囲も確認しておきましょう。対象は一般旅客、特定旅客、一般貨物、特定貨物、貨物軽自動車の各運送事業者で、ほかに貨物自動車運送事業法第三十七条の二第三項の特定第二種貨物利用運送事業者も入ります。個人タクシーも貨物軽自動車運送事業者も対象です。遠隔地で乗務を開始・終了する場合には、携帯型の検知器を運転者に携行させることになっています。

お客を乗せて走る車という点では、飲んだあとの帰り道を担う制度もあります。そちらの成り立ちは食後酒と運転代行の法律にまとめました。同じ「酒と運転」の問題を、別の入口から扱った制度です。

海と鉄道は切り方が違う|「おそれがある状態」と、免許の適性基準

海と鉄道は切り方が違う|「おそれがある状態」と、免許の適性基準
夕暮れの海と帆船の参考画像

三万五千字のなかの、たった一か所

陸の点呼を見たあとで海に移ると、同じ問題の切り方がまるで違うことに驚きます。船舶職員及び小型船舶操縦者法の条文は三万五千七十四字あり、「酒」の字が現れるのは、別表まで含めても一か所だけです。「飲酒」という語も一か所だけで、しかもそれは同じ一文の中にあります。

その一文が、第二十三条の四十第一項です。小型船舶操縦者は、飲酒、薬物の影響その他の理由により正常な操縦ができないおそれがある状態で小型船舶を操縦し、又は当該状態の者に小型船舶を操縦させてはならない。

小型船舶操縦者は、飲酒、薬物の影響その他の理由により正常な操縦ができないおそれがある状態で小型船舶を操縦し、又は当該状態の者に小型船舶を操縦させてはならない。

船舶職員及び小型船舶操縦者法第二十三条の四十第一項

機械も数字も出てこない

この条文に、検知器は出てきません。濃度も出てきません。判断の対象になっているのは、飲んだかどうかでも、体にアルコールがあるかどうかでもなく、正常な操縦ができないおそれがある状態かどうかです。飲酒はその状態をもたらす理由のひとつとして、薬物と並んで例示されているにすぎません。「その他の理由」と続くので、疲労でも体調でも同じ扱いになります。

陸の点呼が「有るか無いか」で切り、道路交通法が「数値」で切るのに対して、海のこの条は「できるかどうか」で切っている。同じ問いに対して、運転や操縦の場面だけでも三通りの切り方が併存していることになります。ノンアルコールビールは、このうち二つ目と三つ目にはまず引っかかりません。引っかかるとすれば、一つ目の「有るか無いか」です。

鉄道の側は、免許の適性基準にだけ現れる

ついでに鉄道も開いてみました。動力車操縦者運転免許に関する省令は条文が六千六百九十八字と短く、免許の種類、試験、身体検査などを定めています。条文にも別表にも「酒」の字はありません。「アルコール」は一度だけ、別表二の身体検査の基準にアルコール中毒、麻薬中毒その他動力車の操縦に支障を及ぼす中毒の症状がないことと現れます。免許を与え、また取り消すときの適性の話であって、乗務のたびに酒気を確かめる仕組みは、この省令には置かれていません。

ひとつの主題が、乗り物ごとにまったく違う場所に、違う言葉で書かれている。「アルコールが入っていない」という一点を制度の側から見ると、そのばらつきがそのまま見えてきます。

検知器はノンアルコールビールに反応するのか

検知器はノンアルコールビールに反応するのか
ジョッキを手にした場面の参考イラスト

0.00パーセントなら、そもそも入っていない

ここまでを踏まえると、読者がいちばん知りたい問いに答えられます。0.00パーセントと表示された製品は、アルコールを含まないという表示です。含まないものが酒気帯びの原因になることはありません。ただし後で見るとおり、検知器は飲みものや食べもの一般に反応することがあります。

0.0パーセント表示は、四捨五入して0.0になる範囲、つまり0.05パーセント未満です。ごく微量を含む可能性が残ります。0.5パーセントや0.7パーセントの微アルコールは、数字どおりに含んでいます。運転や仕事の前という条件がつくなら、0.00パーセント表示を選ぶのがもっとも確実です。

「0.05」という数字が、二か所に出てくる

ここで紛らわしい符合が起きます。国土交通省のよくある質問には、取扱説明書に「0.05未満は0と表示します」と書かれた検知器を使っても問題ない、という回答があります。一方で0.0パーセント表示の飲料も、0.05パーセント未満という範囲を指しています。数字が同じ0.05なので、つい結びつけたくなります。

しかし、この二つはまったく別のものを測っています。飲料の0.05パーセントは、液体に含まれるアルコールの容量の割合です。検知器の0.05は、吐いた息に含まれるアルコールの量で、単位も測る対象も違います。片方は瓶の中身の話、もう片方は肺から出てくる空気の話です。数字が一致しているのは偶然で、換算できる関係にはありません。

酒を飲まなくても反応することがある

逆の方向にも注意が要ります。国土交通省は、飲食物や、たばこ等の影響で検知器が反応することがあるとして、ガムや発酵食品を例に挙げています。対処としては、うがいをさせる、少し時間をおいてから再度測定する、といった方法が示されています。

体に付けるものも挙がっています。アフターシェーブローションや入れ歯安定剤など、アルコールを含むものに反応することがあるため、これらもアルコールを含まないものを使うよう注意が促されています。さらに、疾病により体内から発生するアルコール以外の物質、たとえば糖尿病患者の体内で産生されるケトン体や、体内で発生した発酵ガスに反応することがある機器もあるとされ、明らかに酒気を帯びていないと考えられる場合は医師に相談するよう案内されています。

つまり検知器は「酒を飲んだ人」を見つける機械ではなく、「呼気にアルコールがある」ことを拾う機械です。だからこそ目視が併用され、だからこそ週に一度の点検が要る。ノンアルコールビールの側から見ると、0.00パーセントなら酒気を帯びる心配はないけれども、飲食物としての反応は他の飲みものと同じ、というのが結論です。飲んだ直後に確認を受けるなら、うがいをして少し時間を置いてください。

場面で選ぶ|どの表示をいつ選ぶか

場面で選ぶ|どの表示をいつ選ぶか
店の棚に並ぶ缶の参考画像

場面から逆算する

選び方は、味から入るより場面から入るほうが早く決まります。運転する日、仕事で機械の確認を受ける日、休肝日、体調を整えたい日。それぞれ求めるものが違います。

場面ごとの選び方の目安
場面 選ぶ表示 見るポイント
運転する日 0.00パーセント 小数第二位までゼロと書かれているか
仕事の前後に確認がある日 0.00パーセント 飲食後は時間をおく、うがいをする
飲まない日をつくりたい 0.00パーセントまたは0.0パーセント 味の満足度と本数の設計
ビールに近い味を求める 0.0パーセントの脱アルコール系 麦芽由来の香りの残り方
雰囲気だけ寄せたい 微アルコール 酒類ではないが数値を含む点

味の方向を決める

脱アルコール系は麦芽の香りが残るので、通常のビールから乗り換えたときの落差が小さくなります。非発酵系はすっきりして後に残りにくく、食事に合わせやすい。苦みの強さ、麦の甘み、炭酸の刺激の三点で好みを言語化しておくと、棚の前で迷いません。生ビールと熱処理の違いやクラフトビールの楽しみ方で味の語彙を増やしておくと、比較がしやすくなります。

飲まない日を意識的につくる考え方は休肝日の考え方に整理があります。あわせて、酒税法の分類がどう味の説明に効くかは焼酎の甲類と乙類の違いが参考になります。

飲まないお酒の査定・買取はリンクサスへ

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酒販店の店内の参考画像

飲まない日をつくると、棚に置いたままのお酒が見えてきます。開けていない洋酒や日本酒が眠っているなら、状態のよいうちに査定に出すという選択があります。リンクサス酒販では品揃えの拡充にあわせて買取のご相談を承っており、当日十四時までのご注文で当日発送にも対応しています。

ラベルの汚れや液面の下がりは時間とともに進みます。度数の高いお酒は比較的長持ちしますが、それでも保管環境の影響は受けます。取扱商品の一覧もあわせてご覧ください。

よくある質問

よくある質問
食卓に置かれたグラスの参考画像
ノンアルコールビールとは何ですか。

ビールに似た味わいを持ちながら、アルコール分が一パーセント未満に抑えられたビールテイスト飲料です。酒税法第二条第一項が酒類をアルコール分一度以上の飲料と定めているため、一度に届かないこの飲みものは酒類ではありません。市販品の多くは、表示上まったくアルコールを含まない0.00パーセントに仕上げられています。

0.00パーセントと0.0パーセントは何が違いますか。

0.00パーセントは小数第二位まで示したうえでゼロだという表示で、アルコールを含まないという意味です。0.0パーセントは小数第一位までの表示なので、四捨五入して0.0になる範囲、つまり0.05パーセント未満のごく微量を含む場合があります。完全なゼロを求めるなら0.00パーセント表示を選ぶのが確実です。

法令に「ノンアルコール」の定義はありますか。

この語そのものを定義した条文はありません。電子政府の法令検索で全文にこの語を含む現行法令は三件で、関税定率法の別表、小売物価統計調査規則の別表、不正競争防止法にひもづく省令の別表のいずれも、条文ではなく別表の中の品目名や分野名として現れます。数字とつながっているのは関税率表だけで、第二二・〇二項の注が「アルコールを含有しない飲料」を〇・五パーセント以下と定めています。

運転前に飲んでも問題ありませんか。

0.00パーセント表示の製品はアルコールを含まないため、運転前でも飲めます。0.0パーセント表示や0.5パーセント前後の微アルコールタイプはごく微量から表示どおりの量を含むため、運転前は避けて0.00パーセント表示を選んでください。缶の度数表示を確認する習慣をつけると迷いません。なお検知器は飲食物一般に反応することがあるため、点呼などの確認を受ける直前の飲用は避けてください。

トラックやバスの点呼では、どこまで見られますか。

省令が酒について確認を求めているのは「酒気帯びの有無」です。飲んだかどうかではなく、その時点で酒気を帯びているかどうかが問われます。確認は運転者の状態を目視等で見たうえで、営業所に備えたアルコール検知器を用いて行うこととされており、二つの省令の条文には濃度や単位を示す語がひとつも出てきません。

アルコール検知器に、国が定めた機種はありますか。

省令は機器の要件を「国土交通大臣が告示で定めるもの」とゆだねたうえで、国土交通省は個別機種の推奨を行っていないと説明しています。数値ではなく赤・黄・緑のランプで示す機器でも差し支えないとされ、点呼簿への記載も検知器使用の有無と酒気帯びの有無で足り、測定数値を書く必要はないとされています。

お酒を飲んでいないのに検知器が反応することはありますか。

あります。国土交通省は、ガムや発酵食品などの飲食物、たばこ等の影響で反応することがあると説明し、うがいや時間をおいての再測定を求めています。アフターシェーブローションや入れ歯安定剤に反応する場合もあり、疾病により体内で生じるケトン体や発酵ガスに反応する機器もあるとされています。

二十歳未満の人が飲んでもよいのですか。

酒類ではないため、酒税法や酒類業組合法にもとづく飲酒防止の表示の対象からは外れています。ただしビールの味を借りた飲みものであり、各社は二十歳以上を対象として販売するのが一般的です。0.0パーセント表示や微アルコールのように微量から表示どおりの量を含む製品もあり、子どもに勧める種類の飲みものではありません。

船や鉄道では、扱いが違うのですか。

違います。船舶職員及び小型船舶操縦者法第二十三条の四十第一項は、飲酒や薬物の影響その他の理由により正常な操縦ができないおそれがある状態での操縦を禁じており、検知器も数値も条文に出てきません。動力車操縦者運転免許に関する省令には「酒」の字がなく、「アルコール」も別表の身体検査の基準に中毒の項目として一度現れるだけで、乗り物ごとに規定の置き場所が異なります。

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