ミントジュレップとは|公表レシピ3つの違いとジュレップカップの規格
ミントジュレップは、バーボンにミントと砂糖を合わせ、砕いた氷で満たしてつくるカクテルだ。分量の書き方がまちまちで「黄金比」と呼べる一つの数字が見当たらないが、公表されているレシピを取りに行くと、その理由がはっきりする。
この記事は、味の好みではなく公表された文書の側からミントジュレップを読み直す。IBAの1本とケンタッキーダービー公式サイトの2本、合わせて3つのレシピを並べ、どこが一致してどこが割れているかを1行ずつ確かめる。そのうえで、3つのうち2つが手順文に書き込んでいる「ジュレップカップ」という道具を、貴金属の品位を証明する制度と、食品に触れる金属を縛る規格の両方から読む。
ベースの選び方はバーボンとスコッチの違いに、氷の作り方は透明氷・角氷・丸氷の作り方にまとめてある。
ミントジュレップとは|バーボンとミントでつくる一杯

ミントジュレップは、IBAが分量と手順を公表しているカクテルの一つである。IBAのページはパンくずでこの一杯を Contemporary Classics に分類しているが、同じページのグローバルメニューには The Contemporary という別の名前の区分が並んでおり、リンク先のURLも別だ。どちらを正式名とするかは1ページの中からは読み取れないので、この記事ではレシピ本体と同じ画面のパンくずに出る Contemporary Classics のほうを採った。
材料は4つだけだ。IBAの表記でバーボンが60 ml Bourbon Whiskey
、ミントが4 fresh Mint sprigs
、甘味が1 tsp Powdered Sugar
、そして2 tsp Water
。ここに砕いた氷が加わる。同じバーボンを使うオールドファッションドとはとは、ハーブが入る点と氷の砕き方で分かれる。
公表レシピ3つを並べるとそろう数字はバーボンの量だけ

今回そろえたのは、IBAの公認レシピと、ケンタッキーダービー公式サイトが載せているオールド フォレスターとウッドフォードリザーブの2本である。ダービー公式の2本は、どちらもページ上の日付が2026年3月3日だ。
3つのレシピを1行ずつ突き合わせる
単位がミリリットルとオンスに分かれているので、まず換算をそろえる。米国の27 CFR 5.1はガロンをA U.S. gallon of 231 cubic inches at 60 degrees Fahrenheit
と定義しており、1インチを2.54センチ、1ガロンを128液量オンスとすれば、1米液量オンスは29.5735295625ミリリットルになる。2オンスは59.1ml、0.75オンスは22.2ml、0.5オンスは14.8mlだ。
| 公表元 | 蒸留酒 | 甘味 | ミント | 氷 | 手順文にある容器 |
|---|---|---|---|---|---|
| IBA | 60 ml バーボン | 粉砂糖 小さじ1+水 小さじ2 | 枝4本 | cracked ice | ステンレス製のジュレップカップ |
| ダービー公式(オールド フォレスター) | 2 oz(59.1 ml)86プルーフ | シロップ 0.75 oz(22.2 ml) | 葉8〜10枚+飾りの枝3本 | crushed ice | ミントジュレップカップ+mixing glass |
| ダービー公式(ウッドフォードリザーブ) | 2 oz(59.1 ml)度数の記載なし | シロップ 1/2 oz(14.8 ml) | 葉3枚 | crushed ice | glass(材質の指定なし) |
蒸留酒の量は60mlと59.1mlで、実質同じと言ってよい。一方で甘味は、砂糖と水に分けて量るIBAに対し、ダービー公式の2本はどちらもシンプルシロップである。しかも0.75 oz Simple Syrup
と1/2 oz. Simple Syrup
で1.5倍の開きがある。ミントの数え方も、枝と葉で単位そのものが違う。
道具の書き方も割れている。IBAは
In Julep Stainless Steel Cup gently muddle the mint with sugar and water.
と、材質まで手順文に書き込んでいる。オールド フォレスターのレシピはPack mint julep cup with crushed ice.
とカップの名前を出し、ウッドフォードリザーブのレシピは glass としか書いていない。
度数を計算できるのは3つのうち1つだけという事実

カクテルの度数は、材料の量とそれぞれの度数がそろって初めて計算できる。この点で3つのレシピは同じ位置にいない。IBAは60 ml Bourbon Whiskey
とだけ書き、バーボンの度数を書いていない。ウッドフォードリザーブのレシピも2 oz. Woodford Reserve®
で、度数の記載はない。度数が読み取れるのはオールド フォレスターのレシピだけで、その理由は銘柄名に2 oz Old Forester 86 Proof
とプルーフが入っているからである。
オールド フォレスターのレシピで計算してみる
プルーフは米国の27 CFR 5.1が
Proof. The ethyl alcohol content of a liquid at 60 degrees Fahrenheit, stated as twice the percentage of ethyl alcohol by volume.
と定義している。華氏60度における容量パーセントの2倍という意味なので、86プルーフは43%だ。
バーボン59.1mlの43%だから、純アルコールは25.4ml。ここに0.75 oz Simple Syrup
、すなわち22.2mlのシロップが加わる。シロップにアルコールは入らないので、液量は81.3mlになり、度数は31.3%と出る。ただしこれは砕いた氷が溶ける前の数字で、実際のカップの中はこれより低い。融解した水の量はレシピに書かれていないので、そこから先は計算では出せない。
量そのものの目安には、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が使える。同ガイドラインは
純アルコール量(g)=摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)
という式を示しており、先ほどのバーボンを計算すると純アルコール量は20.3gになる。次の表は当店の比較表に実在するアメリカンウイスキーの度数を使い、60mlあたりの純アルコール量を同じ式で計算した。テネシーウイスキーも含むので、表題はバーボンに限っていない。
| 度数 | 当店の比較表にある該当銘柄 | 純アルコール量 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 40.0% | ジャックダニエル No.27 ゴールド 700ml | 19.2 g | 表の中でいちばん低い |
| 43.3% | エヴァン ウィリアムス シングルバレル 2012年 750ml | 20.8 g | 定価4,400円で最安 |
| 50.0% | ジャックダニエル シングルバレル 100プルーフ 700ml | 24.0 g | 100プルーフちょうど |
| 57.15% | ノアーズ ミル 750ml | 27.4 g | スモールバッチの高い帯 |
| 63.3% | ブッカーズ 2023 750ml/ブッカーズ 2022 750ml | 30.4 g | 同点で2本ある最高値 |
表の上下で純アルコール量は19.2gから30.4gまで開く。同じ60mlでも、樽出しに近い度数の一本を選べば純アルコール量が1.5倍を超える。
関連商品ラインナップ

リンクサス酒販の在庫から、ジュレップのベースに向く一本や、そのままグラスで楽しみたい一本をカード形式で並べている。各カードから商品ページへ進むと、容量と度数、価格、在庫の状況を確認できる。
掲載元はウイスキーのコレクションで、この記事を書いた時点の登録点数は1,159点だった。バーボンだけでなくスコッチやジャパニーズも同じ棚に入っているので、カクテルに使う一本と、そのまま飲む一本を見比べながら選べる。
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ここではウイスキーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
ジュレップに合わせたいウイスキー30本の比較

下の比較表には30本が並んでいる。この一覧はバーボンだけで組まれているわけではない。産地の内訳を数えると、アメリカが17本、スコットランドが10本、日本が3本で、アメリカの内訳はケンタッキーが12本、テネシーが5本である。
| 国 | 本数 | 登録値の内訳 |
|---|---|---|
| アメリカ | 17 本 | ケンタッキー12/テネシー5 |
| スコットランド | 10 本 | アイラ3/アイランズ2/スペイサイド2/ハイランド1/ローランド1/キャンベルタウン1 |
| 日本 | 3 本 | 兵庫1/滋賀1/秩父ほか1 |
| 合計 | 30 本 | ― |
ジュレップのベースとして素直なのはケンタッキーとテネシーの17本で、残りはそのまま味わう側の一本として並んでいる。表の見出しは画像・銘柄とスコア・定価と市場相場・特徴・リンクサス酒販・Amazon・楽天・買取の8列で、産地と度数の列は出ないため、この記事の側で数えて表3にまとめた。
価格は4,400円から34,000円まで並ぶが、3本は定価が登録されていない。この3本は価格での絞り込みでは「価格不明」の側に入るので、価格帯のボタンを押すと表から消えたように見える。表の上には「おすすめ順」「価格順」「希少度順」の3つの並べ替えボタンが出るが、既定は「おすすめ順」で、初期表示は定価の安い順に近い並びになる。ただし定価の登録がない3本は途中に挟まるので、厳密な昇順ではない。
定価が登録されていない3本は、価格での絞り込みでは「価格不明」に入ります。買取の欄のリンクは全30本とも同じウイスキー買取のページへつながります。
ジュレップカップはレシピに書き込まれた道具

カクテルのレシピが道具の材質まで指定することは多くない。ミントジュレップはその例外で、IBAの手順文はIn Julep Stainless Steel Cup gently muddle the mint with sugar and water.
と書き出し、続けてFill the glass with cracked ice, add the Bourbon and stir well until the cup frosts.
と締める。材質の指定と、カップが霜をまとうまで混ぜるという到達点が、どちらも手順の中にある。
霜が付くという現象は、器の側の性質に依存している。金属は熱を速く伝えるので、砕いた氷で内側が冷えると外壁の温度も下がる。レシピが材質を書いているのは、装飾ではなく手順の達成条件だからだと読める。
一方で、ダービー公式の2本は材質を書き分けていない。オールド フォレスターのレシピはPack mint julep cup with crushed ice.
とカップの名前だけを出し、ウッドフォードリザーブのレシピは glass と書く。「ジュレップは銀のカップで飲むもの」という言い方は、今回そろえた3つの公表レシピのどれにも書かれていない。
ではなぜ銀が語られるのか。その慣習の当否はレシピからは判定できない。ただし銀には、純度を制度が裏づける仕組みがある。そこだけは文書で確かめられる。次の節では、その裏づけ方が日本と英国と米国でどう違うかを条文で読む。
「スターリングシルバー」を保証する制度は日英米で違う

スターリングシルバーは、銀の純度が1000分の925であることを指す呼び名として広く使われている。ただし、その925を誰がどう保証しているかは国ごとに別の制度で、強制か任意かという性格からして一致していない。
日本の造幣局は「任意」で証明する
日本で貴金属の品位を証明しているのは独立行政法人造幣局である。独立行政法人造幣局法第3条第2項は、造幣局の目的として勲章、褒章、記章及び金属工芸品の製造等並びに貴金属の品位の証明等であって、公共上の見地から必要とされるものを行うことを目的とする
と定めており、品位証明は法律に根拠のある業務だ。もっとも、証明を受けるかどうかは事業者の判断に委ねられている。造幣局のページは
このマークは任意の制度として設けられています。そのため、市販されている貴金属製品にはマークのない製品もあります。
と明記している。マークが無いことは、それ自体では違法でも粗悪でもない。
品位の区分は金属ごとに数が違う。造幣局は品位証明は、白金製品については4区分、金製品については6区分、銀製品については5区分、白金及び金を接合した製品については5区分により行っています。
としており、銀については999・950・925・900・800の5つが掲げられている。その中の925について、造幣局はスターリングシルバーと呼ばれるものは、銀の品位(純度)が1000分の925、その他の金属(主に銅)が1000分の75含まれています。
と説明している。
| 金属 | 区分の数 | 銀の区分(品位区分表より) |
|---|---|---|
| 白金(プラチナ) | 4区分 | ― |
| 金 | 6区分 | ― |
| 銀 | 5区分 | 999/950/925/900/800 |
| 白金及び金を接合した製品(コンビ製品) | 5区分 | ― |
依頼の実務も銀だけ条件が違う。造幣局の受付要領は採取量・数は、白金製品及び金製品は0.3g(コンビ製品は各々)、銀製品は1gを100個当り1試料の割合で採取します。
としており、白金と金の0.3グラムに対して銀は1グラムを削り取る。検定が受けられない製品も11項目挙げられていて、その一つが銀製品で「銀」、「SILVER」などの表示がないもの。
である。
英国は打刻せずに「銀製」と売ると犯罪になる
英国のホールマーキング法1973は、日本とは正反対の作りになっている。同法第1条は、商売としてapplies to an unhallmarked article a description indicating that it is wholly or partly made of gold, silver, platinum or palladium
という説明を打刻のない品に付けること、およびそうした品を供給し、または供給を申し出ることを犯罪と定めている。
スターリングという語の扱いも条文にある。附則1の第3部(「Carats」「Sterling」「Britannia」の語の用法)は
If “sterling” is the word used, the description is to be presumed to be an indication that the silver is of a standard of fineness of 925.
と定める。語のほうから品位925が推定される、という構造だ。別の附則、附則2の第1部の表に載る銀の品位は800・925・958.4・999の4つで、日本の造幣局が挙げる5区分とは集合が一致しない。950も900も英国の表には無い。同じ第1部の、別に置かれた任意の絵記号の表(第3項)では、銀925にA lion passant. In the case of an article struck by the Edinburgh Assay Office, the reference to a lion passant shall be treated as a reference to a lion rampant.
と決められている。
ただし全部の品に打刻が要るわけではない。附則には重量による免除があり、銀についてはin which the total weight of the metal is less than 7.78 grams
、すなわち金属の総重量が7.78グラム未満の品が対象になる(金は1グラム、白金は0.5グラム)。ジュレップカップはこの重さをはるかに超えるので、この重量免除には当たらない。
米国は表示の許容差を法律で持っている
米国では、連邦取引委員会が宝飾品・貴金属・ピューターの表示に関する指針を16 CFR Part 23にまとめている。第23.0条の適用範囲は、貴金属やその模造品で作られたカトラリー類(flatware)や中空容器(hollowware)を含むので、銀製のジュレップカップも射程に入る。銀については
Use of the words “solid silver,” “Sterling Silver,” “Sterling,” or the abbreviation “Ster.” to mark, describe, or otherwise represent all or part of an industry product unless it is at least 925/1,000ths pure silver.
が、誤解を招きうる表示の例として挙げられている。coin や coin silver は900分率が基準だ。
数値の許容差は指針ではなく法律の側にある。同じ節の脚注はUnder the National Stamping Act, sterling silver articles or parts that contain no solder have a permissible tolerance of four parts per thousand. If the part tested contains solder, the permissible tolerance is ten parts per thousand.
と書いており、取っ手や底をはんだで接いだカップは1000分の10のほうで読むことになる。
めっき品の扱いも明文で切り分けられている。同じ節の注記は、銀めっきの品をbe stamped, branded, engraved or imprinted with the word `sterling' or the word `coin,' either alone or in conjunction with other words or marks.
することを禁じる法律の規定(15 U.S.C. 297(a))を引いている。つまり銀めっきの品に sterling や coin と刻むこと自体が許されない。
| 法域 | 根拠 | 強制か任意か | 925の位置づけ | 数値の許容差 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 独立行政法人造幣局法+造幣局の品位証明 | 任意 | 銀の5区分のうちの一つ | 公表ページに記載なし |
| 英国 | ホールマーキング法1973 | 強制(打刻のない品への表示は犯罪) | 「sterling」の語から925が推定される | 今回は確認していない |
| 米国 | 16 CFR Part 23(指針)+ National Stamping Act(法律) | 表示規制 | 925未満に sterling と表示するのは誤解を招きうる例 | はんだ無し1000分の4/有り1000分の10 |
食品に触れる金属を縛るのは品位ではなく器具の規格

ここまでの制度は、どれも「その金属が何パーセントの銀か」を扱っていた。口を付ける道具として安全かどうかは別の法律の担当で、日本では食品衛生法の第3章がそれにあたる。第15条は営業上使用する器具及び容器包装は、清潔で衛生的でなければならない。
と定める。
具体的な数値は法律ではなく告示にある。第18条第1項が内閣総理大臣に規格と基準を定める権限を与え、第2項がその規格に合わない器具の販売・製造・輸入・営業上の使用を禁じる。受け皿が食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)で、器具と容器包装は「第3」に置かれている。今回参照した抄録版は27ページ、最終改正は令和7年内閣府告示第95号である。
一般規格10項のうち金属に触れるのは5項
第3はA一般規格・B一般試験法・C試薬と試液・D材質別規格・E用途別規格・F製造基準の6節でできている。先頭のAは10項あり、そのうち金属に触れるのは次の5項だ。
| 項 | 内容 | かかる相手 |
|---|---|---|
| 1 | 銅もしくは鉛またはこれらの合金が削り取られるおそれのある構造であってはならない | 器具 |
| 2 | 食品に接触する部分に使うめっき用スズは、鉛を0.1%を超えて含んではならない | めっき用スズ |
| 3 | 鉛を0.1%を超えて、またはアンチモンを5%以上含む金属で、食品に接触する部分を製造・修理してはならない | 金属全般 |
| 4 | 食品に接触する部分の製造・修理に使うはんだは、鉛を0.2%を超えて含んではならない | はんだ |
| 6 | 電流を直接食品に通ずる装置を有する器具の電極は、鉄・アルミニウム・白金・チタン以外の金属を使ってはならない(ただし電流が微量ならステンレスは可) | 電極 |
カップとして効くのは1から4である。とくに3は
鉛を 0.1%を超えて又はアンチモンを 5%以上含む金属をもつて器具及び容器包装の食品に接触する部分を製造又は修理してはならない。
と書かれており、鉛とアンチモンで基準の立て方が違う。鉛は0.1%を「超えて」が禁止線、アンチモンは5%「以上」が禁止線で、すず合金でカップを作る場合はこの5%という数字が効いてくる。
1は構造そのものを見る規定で、器具は,銅若しくは鉛又はこれらの合金が削り取られるおそれのある構造であつてはならない。
と書かれている。含有率ではなく、削れて食品に混ざりうる作りかどうかが問われている。2は食品に接触する部分に使用するメッキ用スズは,鉛を 0.1%を超えて含有してはならない。
とめっきの側に線を引き、4は器具若しくは容器包装の食品に接触する部分の製造又は修理に用いるハンダは,鉛を0.2%を超えて含有してはならない。
とはんだの鉛を本体とは別に抑える。取っ手や底を接いだ製品では、接いだ部分が4の対象になる。
材質別規格に銀もステンレスも無い
Dの材質別規格には4つしか項目がない。ガラス製・陶磁器製・ホウロウ引き、合成樹脂製、ゴム製、金属缶である。銀にもステンレスにもすずにも、材質別の規格は置かれていない。Eの用途別規格は5つあるが、容器包装詰加圧加熱殺菌食品、乳等の器具、氷菓の製造等に使用する器具、食品の自動販売機、コップ販売式自動販売機などの器具で、手で持って飲むカップはどれにも当たらない。
つまり銀やステンレスのジュレップカップを名指しする規定は無く、効くのはAの一般規格と、Fのうち材質を問わない規定(着色料のF2、特定牛の脊柱のF4)だけである。材質ごとの溶出試験が用意されているガラスや陶磁器とは、確かめ方の枠組みが違う。
近年よく話題になる器具・容器包装のポジティブリスト制度も、金属は対象外である。食品衛生法第18条第3項は「政令で定める材質」に限って制度を適用するとしており、食品衛生法施行令第一条は
食品衛生法(以下「法」という。)第十八条第三項の政令で定める材質は、合成樹脂とする。
と定めている。合成樹脂だけが対象で、銀もステンレスも銅もすずも入っていない。
素材が変わると効く条文も変わる

同じジュレップカップでも、素材によってどの規定が働くかが変わる。整理すると次の表になる。
| 素材 | 材質別規格(D) | 製造基準(F)の名指し | とくに効く一般規格(A) |
|---|---|---|---|
| 銀・銀合金 | 無し | 銀めっきが銅製品への処置として登場 | 3・4 |
| ステンレス | 無し | 無し | 3 |
| 銅・銅合金 | 無し | 有り(全面のスズめっきか銀めっき等) | 1 |
| すず合金(ピューターなど) | 無し | 無し | 3 |
| ガラス | 有り(溶出規格) | 無し | ― |
| 陶磁器 | 有り(溶出規格) | 無し | ― |
| 合成樹脂 | 有り(材質規格・溶出規格) | 無し | 8〜9 |
銅の行だけ扱いが厚いのは、Fの製造基準1が銅を名指ししているからだ。条文は
銅製又は銅合金製の器具及び容器包装は,その食品に接触する部分を全面スズメッキ又は銀メッキその他衛生上危害を生ずるおそれのない処置を施さなければならない。ただし,固有の光沢を有し,かつ,さびを有しないものは,この限りでない。
となっており、銀めっきがスズめっきと並ぶ処置の一つとして出てくる。ただし但し書きがあり、固有の光沢があってさびていないものは処置が要らない。銅のマグを使うモスコミュールとはも、この規定の射程に入る。
すず合金の行に書いた5%という数字は、Aの3が定める禁止線である。市販されている個々の製品がその線の内側か外側かまでは、この記事では確かめていない。
ガラスや陶磁器のグラスで作ってもレシピ上の問題はない。グラスの選び方はウイスキーグラスの種類の記事も参考になる。
作り方の手順とミント・氷の扱い

手順そのものは短い。IBAの書き方に沿うと、カップの中でミントを砂糖と水と一緒に軽くつぶし、砕いた氷で満たしてバーボンを注ぎ、カップが霜をまとうまでよく混ぜて、最後にミントの枝を飾る。Fill the glass with cracked ice, add the Bourbon and stir well until the cup frosts.
とあるとおり、混ぜ終わりの合図は時間ではなくカップの表面である。
ミントは強くつぶしすぎないほうがよい。IBAの手順文も gently muddle と書いている。公表レシピのどれもミントの種類を指定しておらず、IBAは4 fresh Mint sprigs
と枝の本数で、オールド フォレスターのレシピは葉8〜10枚と飾り用の枝3本という書き方だ。スペアミントとペパーミントの香りの差はモヒートとはの記事で扱っている。
氷は3つのレシピとも砕いた状態を求めている。IBAは cracked ice、ダービー公式の2本は crushed ice で、どちらも塊のままではない。表面積が増えるぶん冷えるのが速く、そのぶん薄まるのも速い。家庭で氷から用意するなら透明氷・角氷・丸氷の作り方の手順が使える。
甘味は、IBAの粉砂糖と水に分ける書き方だと後から調整しやすく、シンプルシロップを使うダービー公式の書き方は溶け残りが出ない。
飲まないバーボン・ウイスキーの査定・買取はリンクサスへ

未開栓のまま保管しているバーボンやスコッチがあれば、ウイスキー買取で査定を受けられる。箱や付属品がそろっているか、ラベルの状態がどうかで評価は変わる。
銀のジュレップカップのような酒器そのものは、当店の買取の対象ではない。手元の銀器の刻印が造幣局のホールマークなのか製造者が自ら打った表示なのかは、記号の形で見分けられる。
よくある質問

ミントジュレップの黄金比はいくつですか。
公表されているレシピが一致していないため、一つの比率で言い切れません。IBAはバーボン60mlに粉砂糖小さじ1と水小さじ2、ケンタッキーダービー公式サイトのオールド フォレスターのレシピは2オンスにシンプルシロップ0.75オンス、同じサイトのウッドフォードリザーブのレシピは2オンスに0.5オンスです。一致しているのはバーボンが約60mlという点だけです。
ミントジュレップの度数はどれくらいですか。
レシピに酒の度数が書かれている場合だけ計算できます。オールド フォレスターのレシピは銘柄名に86プルーフと入っており、米国の27 CFR 5.1がプルーフを華氏60度における容量パーセントの2倍と定義しているので43%です。氷の融解水を含めない段階で31.3%になります。IBAとウッドフォードリザーブのレシピは度数を書いていないので計算できません。
ミントジュレップ1杯の純アルコール量は何グラムですか。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の式で計算できます。バーボン2オンス(59.1ml)を43%とすると約20.3gです。当店の比較表にある62.2%のブッカーズ 2024を60ml使うと29.9gになります。
ジュレップカップは銀でなければいけませんか。
公表レシピの側は銀を求めていません。IBAの手順文はステンレス製のジュレップカップを指定しており、ケンタッキーダービー公式サイトのオールド フォレスターのレシピはミントジュレップカップとだけ書いています。銀が結び付けられているのは慣習の側で、レシピの条件ではありません。
「スターリングシルバー」と書いてあれば純度は保証されますか。
どこで売られたものかによります。英国はホールマーキング法1973で、打刻のない品に金・銀・白金・パラジウム製という説明を付けて商売をすること自体を犯罪としており、スターリングの語は品位925を示すものと推定されます。米国は連邦取引委員会の指針が925未満の品にスターリングと表示することを誤解を招きうる例に挙げています。日本の造幣局のホールマークは任意の制度なので、マークが無いこと自体は違法ではありません。
銀のカップでお酒を飲んで体に悪くありませんか。
純度の制度とは別に、食品に触れる器具の規格が食品衛生法にあります。食品、添加物等の規格基準の第3は、鉛を0.1%を超えて、またはアンチモンを5%以上含む金属で食品に接触する部分を作ることを禁じています。銀とステンレスには材質別の規格が置かれておらず、この一般規格と製造基準が効きます。
ミントはスペアミントとペパーミントのどちらを使いますか。
IBAもケンタッキーダービー公式サイトのレシピも、種類までは指定していません。IBAは新鮮なミントの枝を4本、オールド フォレスターのレシピは葉を8〜10枚と飾り用の枝3本と書くだけです。香りの違いは当店のモヒートとはの記事で扱っています。
最終更新:(リンクサス酒販 鑑定士チーム監修)
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