デザートワインの飲み方と合う料理 おつまみと温度を公式ガイドで選ぶ
甘いワインをどう飲むかは、産地の団体が自分の名前で書いた文書にかなり細かく載っている。合わせる料理も、出す温度も、開けたあと何日もつのかも、推測ではなく規則と公式ガイドから拾える。この記事はそこだけを集めた。
デザートワインとは何かを法令の言葉で確かめる

甘いワインをまとめて「デザートワイン」と呼ぶ。ところがこの言葉は、ワインの区分を定めた法令のどこにも出てこない。EUの規則 (EU) No 1308/2013 の附属書VII 第II部は、ぶどう由来の製品を番号付きで並べているが、そこにあるのは(1)ワイン、(3)リキュールワイン、(4)スパークリングワイン、(15)乾燥ぶどうから造ったワイン、(16)過熟ぶどうのワインといった項目で、「デザートワイン」という枠は立っていない。
日本側も同じで、酒税法が持っているのは第3条第13号の果実酒と第14号の甘味果実酒という2つの区分だけだ。前回の記事づくりで酒税法の全文を機械で走査したときも、条文に「貴腐」の2文字は1度も現れなかった。つまりデザートワインは、法令の分類ではなく、飲む場面から生まれた呼び名にすぎない。
この記事は、その呼び名の中身を「いつ飲むか」「何と合わせるか」「何度で出すか」「開けたあと何日もつか」の4点に絞って整理する。産地ごとの成り立ちや価格の話は貴腐ワインのおすすめと選び方の側に置いた。ここでは飲み方に軸足を置く。
甘さの造り方は大きく5つに分かれる
| 造り方 | 何をして糖を残すか | 代表的なもの |
|---|---|---|
| 貴腐 | 樹上でボトリティス・シネレア菌が果皮に付き、水分が抜けて糖が上がる | ソーテルヌ、トカイ・アスー、ドイツのTBA |
| 凍結 | 樹上で凍ったまま収穫し、凍ったまま搾って水分を氷として除く | アイスワイン、ドイツのアイスヴァイン |
| 陰干し | 収穫したぶどうを藁やすのこの上で乾かして糖を凝縮させる | ヴァン・ド・パイユ、パッシート、レチョート |
| 遅摘み | 収穫を遅らせて樹上で糖度が上がるのを待つ | シュペートレーゼ、コトー・デュ・レイヨン、ジュランソン |
| 酒精強化 | 発酵を妨げるか途中で止めて糖を残す。あるいは辛口に仕上げてから甘いものを加える | ポルト、シェリー、マデイラ、VDN |
前の4つは「ぶどうの側で糖を増やす」やり方で、最後の1つは「発酵の側で糖を残すか、あとから加える」やり方だ。この違いが度数に出る。ぶどうで糖を増やす造りは発酵が自然に止まるまで進むので度数は10〜14%程度に収まりやすいが、酒精強化はアルコールを足すぶん高くなる。EUの区分は原則として15%以上を求めていて、例外の一覧に載っている呼称だけが14%台まで下げられる。なお同じ酒精強化でも糖がどこから来るのかは産地の規則ごとに違っていて、その違いは「甘口の下限は45グラムなのか115グラムなのか」の章の最後で扱う。
貴腐は菌の働きで水分が抜けた状態を指す

ソーテルヌの仕様書は、原料のぶどうについて「過熟の状態で収穫されたぶどう(貴腐の存在)から得られる」と書き、収穫は「手で、選び摘みを重ねて」行うと定めている。数値の側は 果汁1リットルあたり 221 g 未満は適熟と認めない、自然アルコール度数は15% 以上、取得アルコール分は12% 以上、残糖は45 g/L 以上(発酵性糖=グルコースとフルクトース)、収量は 25 hl/ha(上限枠 28 hl/ha)。
日本国内で造るワインには、業界6団体でつくるワイン表示問題検討協議会の自主基準がある。「ほとんどが貴腐化されたぶどうのみを使用し、発酵前の果汁糖度(転化糖換算)が30g/100㎤以上の醪から製造したワインでなければ、貴腐ワイン又は貴腐と表示してはならない」という一文で、「ほとんど」は了解事項で4分の3程度と説明されている。国が定めた表示基準ではなく、業界の自主基準である点と、対象が国内製造ワインに限られる点は押さえておきたい。
アイスワインは凍結が条件で貴腐は条件ではない
ドイツワイン法(Weingesetz)第20条第4項第5号は、アイスヴァインについて「収穫と圧搾の時点でぶどうが凍っていなければならない」とだけ定めている。条文に貴腐への言及はない。「アイスワインは法律で貴腐を禁じている」と書かれることがあるが、禁止規定は法律の側になく、産地ごとの製品仕様書が官能の記述として「貴腐の影響を受けない」などと書いているだけだ。
同じ第20条第4項第4号には、トロッケンベーレンアウスレーゼについて「品種特性や天候の事情で例外的に貴腐が生じなかった場合は、縮んだ果粒の過熟でも足りる」という例外がある。TBAは必ず貴腐から造られる、という言い方も法文どおりではない。
酒精強化はEUの区分名で度数の幅が決まっている

ポルト、シェリー、マデイラをまとめた「酒精強化ワイン」は、EUの区分では規則 (EU) No 1308/2013 附属書VII 第II部の(3)「リキュールワイン」にあたる。条件は、取得アルコール分が15%以上22%以下であること、総アルコール分が17.5%以上であること、最初の自然アルコール度数が12%以上であること、そしてぶどうの樹に由来する中性アルコールなどを加えていることだ。ただしこの3つの数にはいずれも例外があり、条文はどれも「委員会が委任行為で作る一覧に載っている呼称については」という書き方で逃げ道を開けている。
取得度数の例外を入れたのは2021年12月2日の規則 (EU) 2021/2117 で、長期熟成のものは限度が違ってよい、という一文だ。条件は2つあり、熟成に入れる時点でリキュールワインの定義を満たすことと、熟成後の取得度数が14%を下回らないこと。ただし載せる先の一覧そのものが無かったので、この例外は3年のあいだ誰も使えなかった。委任規則 (EU) 2019/934 の附属書III 付録1にC節が加わったのは2024年12月29日になる。取得度数の一覧に載っているのはスペインの6件(Condado de Huelva、Jerez-Xérès-Sherry、Lebrija、Manzanilla-Sanlúcar de Barrameda、Málaga、Montilla-Moriles)だけだ。
総アルコール分の例外から、製品名の列が消えた
3つの数のうち、総アルコール分の例外は、もっと変わった経緯をたどっている。17.5%に届かなくてよい呼称の一覧は、同じ委任規則 (EU) 2019/934 の附属書III 付録2 B節に置かれている。2019年12月7日から効いていた当初版のこの一覧には、「1985年1月1日より前の国内法にそう定めがあった場合に限る」という時の条件が付いていた。しかも主要な欄は表で、呼称の名前の右に、その呼称のどの製品に例外が効くのかを書き込む列があった。ポルトガルの欄は1行だけで、左が Porto — Port、右が Branco leve seco だった。
2024年の委任規則 (EU) 2024/3085 が、この一覧のまわりをまとめて動かした。1985年の条件は削られた。理由書は「1985年以降にも、この適用除外を受けられそうな新しい呼称が登録されてきた。したがって時の制限はもはや正当とは思われない」と書いている。表そのものも消えて、呼称の名前を並べただけの一覧になった。こちらの理由書は「委員会には、適用除外を受ける製品をさらに記述する権限がない。その情報はむしろ、原産地呼称などの仕様書の一部であるべきだ」と述べている。あわせて附属書III B部に第5a項が新設され、「適用除外を同じ呼称の一部の製品にだけ使うのであれば、その適用除外を使える製品の一覧は、当該呼称の仕様書の一部でなければならない」と定められた。
| 付録2 B節の姿 | 2019年12月7日〜2024年12月28日 | 2024年12月29日〜 |
|---|---|---|
| 見出しの時の条件 | 1985年1月1日より前の国内法にそう定めがあった場合に限る | なし |
| 並び方 | 呼称名と製品名の2列の表 | 呼称名だけの一覧 |
| ポルトガルの欄 | Porto — Port / Branco leve seco | Porto – Port |
| スペインの欄 | 8呼称(Vino generoso などの製品名つき) | 9呼称(Lebrija が加わった) |
ポルトについて、理由書はこう書いている。「原産地呼称 Porto – Port の仕様書は、branco leve seco と記述されるリキュールワインがこの適用除外を受けられると定めている。したがって当該節のポルトガルの表に branco leve seco と書くことは、仕様書にある同じ定めの繰り返しである」。繰り返しを避けるために表を削って呼称の名前に置き換える、というのが削除の理由だった。
ところが、そう名指しされたポルトの仕様書のほうを開くと、適用除外を引いた文が見当たらない。IVDPのサイトが配っている仕様書(技術ファイル。整理番号 PDO-PT-A1540。冒頭に2011年12月23日の保存日時が入っている)にも、EUの登録簿にある2013年11月19日付の改正版にも、規則 (EU) No 1308/2013 の名も、その附属書VIIへの参照も、derrogação の語も無い。総アルコール分という項目そのものが一度も現れない。ワインの度数について書かれているのは、取得アルコール分の幅と、Branco leve seco だけは最低16,5%でよい、ということだけだ。ポルトのどれがこの適用除外を使えるのかは、いまはどちらの文書からも読み取れない。
委員会が何を見ていたのかは、同じ改正がスペインのレブリハについて書いた理由書のほうがはっきりしている。「レブリハのリキュールワインは造り方の関係で還元糖がきわめて少なく、総アルコール分の最低17.5%にはほとんど届かない」。総アルコール分は、すでにアルコールになった分と、残った糖がこれからなりうる分を足したものなので、乾いているほど後半が薄くなる。ポルトで名前が挙がっているのも乾いた側の話だとは読める。同じことは、このあと甘さの線でももっとはっきりした形で起きている。
甘口の下限は45グラムなのか115グラムなのか

「残糖が何グラム以上なら甘口か」を調べると、書いてある数字が資料ごとに違う。これは誰かが間違えているのではなく、適用される規則が違うからだ。ここでは4つの公的文書を並べて、どこで線が引かれているかを実際に見る。
EUの表示規則は45グラム以上を甘口と呼ぶ
委任規則 (EU) 2019/33 の附属書III B部が、スパークリング以外のぶどう製品の甘辛表示を4段階で定めている。糖分はフルクトースとグルコースで表す。
| 表示できる語 | 条件(1リットルあたりの糖分) |
|---|---|
| 辛口(sec / dry / trocken) | 4 g/L 以下。総酸(酒石酸換算 g/L)が残糖より 2 g を超えて低くなければ 9 g/L まで |
| 中辛口(demi-sec / medium dry) | 上の上限を超え 12 g/L まで。総酸が残糖より 10 g を超えて低くなければ 18 g/L まで |
| 中甘口(moelleux / medium / medium sweet) | 上の上限を超え 45 g/L まで |
| 甘口(doux / sweet / dulce) | 45 g/L 以上 |
いっぽうスパークリングは附属書III A部で7段階に分かれ、こちらは第47条第1項により表示が義務になる。
| 表示できる語 | 条件(1リットルあたりの糖分) |
|---|---|
| ブリュット・ナチュール(brut nature) | 3 g/L 未満。二次発酵後に糖を加えていないものに限る |
| エクストラ・ブリュット(extra brut) | 0〜6 g/L |
| ブリュット(brut) | 12 g/L 未満 |
| エクストラ・ドライ(extra dry) | 12〜17 g/L |
| セック(sec / dry) | 17〜32 g/L |
| ドゥミセック(demi-sec / medium dry) | 32〜50 g/L |
| ドゥー(doux / sweet) | 50 g/L 超 |
ここで気づくのは、同じ「甘口」でも線が違うことだ。静止ワインの doux は45 g/L以上、スパークリングの doux は50 g/L超。表示値との許容差も、スパークリングは3 g/L(第47条第3項)、それ以外は1 g/L(第52条第3項)で違う。「甘口ワインは残糖45グラム以上」と一言で書くと、泡ものの側で外れる。
ポルトの規則では85グラムからが甘口

ポルトの甘さの段は、ドウロ・ポートワイン協会(IVDP)が公布した規則が決めている。いま効いているのは2026年6月18日付の Regulamento n.º 748/2026(ポルトガル官報 第2部 第116号、翌19日施行)で、その附属書V 第3項が糖分だけで6つの段を置いている。段の数字は、この規則が置き換えた前の規則から動いていない。
| 甘さの段(規則の語) | 糖分(g/L) |
|---|---|
| Extra-seco(エクストラ・セコ) | 17,5 〜 40 |
| Seco(セコ) | 40 〜 65 |
| Meio seco(メイオ・セコ) | 65 〜 85 |
| Doce(ドセ) | 85 〜 130 |
| Muito doce ou Lágrima(ムイト・ドセ/ラグリマ) | 130 超 |
| Branco Leve Seco(ブランコ・レヴェ・セコ) | 17,5 〜 65 |
規則の側でDoce(甘口)は85〜130 g/Lで、EUの45 g/Lのほぼ2倍のところに線がある。逆に言えば、規則が Seco(辛口)と呼ぶ40〜65 g/Lの帯は、仮にEUの物差しを当てれば45 g/L以上で「甘口(doux)」の側に落ちる。同じ1本が、片方では辛口と呼ばれ、もう片方の数では甘口の帯に入る。もっともあとで見るとおり、ポルトにはEUのその物差しがそもそも掛からない。段の下端が17,5 g/Lで止まっていることにも意味があって、ポルトにはそれより乾いた帯そのものが用意されていない。この17,5 g/Lは、ポルトの技術ファイルが造りの側に課している値と同じで、同ファイルは「発酵の停止は、ワインが最低17,5 g/Lの糖を示すことを保証しなければならない」と定めている。最後の Branco Leve Seco だけは他の段と重なる別枠で、この呼び名は取得アルコール分16,5%以上という度数の条件もIVDPの規則が別に置いている。
ヘレスの表示語では115グラムからが甘口

スペインのDOPヘレスは、2026年5月13日付のオルデン(アンダルシア州公報 第95号・2026年5月20日)で統合された仕様書を持つ。タイプごとの度数と糖分は次のとおりで、糖分はグルコースとフルクトースの合計で表す。
| タイプ | アルコール(%vol) | 糖分(g/L) |
|---|---|---|
| Fino(フィノ) | 14 以上 17 以下 | 4 以下 |
| Amontillado(アモンティリャード) | 16 以上 22 以下 | 4 以下 |
| Oloroso(オロロソ) | 17 以上 22 以下 | 4 以下 |
| Palo cortado(パロ・コルタド) | 17 以上 22 以下 | 4 以下 |
| Pale Dry(ペール・ドライ) | 15 以上 22 以下 | 4 以上 50 未満 |
| Pale Cream(ペール・クリーム) | 14 以上 22 以下 | 50 以上 115 未満 |
| Medium(ミディアム) | 15 以上 22 以下 | 4 以上 115 未満 |
| Cream(クリーム) | 15 以上 22 以下 | 115 以上 140 以下 |
| Pedro Ximénez(ペドロ・ヒメネス) | 15 以上 22 以下 | 212 以上 |
| Moscatel(モスカテル) | 15 以上 22 以下 | 160 以上 |
| Dulce(ドゥルセ) | 15 以上 22 以下 | 160 以上 |
仕様書には任意表示として使える甘さの語の表も別にある。伝統的な別称が併記されているのが特徴だ。
| 表示できる語 | 伝統的な別称 | 糖分(g/L) |
|---|---|---|
| Muy Seco/Extra Seco(very dry/extra dry) | — | 2 未満 |
| Seco(dry) | — | 4 未満 |
| Semi seco(medium dry) | Abocado | 4 以上 50 未満 |
| Semi dulce(medium sweet) | Amoroso | 50 以上 115 未満 |
| Dulce(sweet) | Rich | 115 〜 212 |
| Muy Dulce(very sweet) | Very Rich | 212 超 |
ここでは Dulce(sweet)が115〜212 g/Lで、EUの45 g/Lともポルトの85 g/Lとも違う。3つの公的文書が、同じ「甘口」という語に3つの下限を与えている。しかも同じ仕様書の中で「Dulce」は二度使われていて、上の分析表にタイプ名として出てくる Dulce は糖分160 g/L以上、こちらの表示語としての Dulce は115 g/L以上と、下限が45グラムずれている。ラベルの Dulce がどちらの意味なのかは、語だけからは決まらない。
もうひとつ、仕様書は「すべてのヘネロソは辛口のワインとみなす」と明記している。フィノ、アモンティリャード、オロロソ、パロ・コルタドは分析表で糖分4 g/L以下と置かれていて、シェリーがすべて甘いわけではない。ただし12年を超える認定熟成のヘネロソは、長い熟成にともなう濃縮の結果として、総酸(酒石酸換算 g/L)が糖分より2 g/Lを超えて低くなければ9 g/Lまで達しうる、という但し書きが分析表の下に続く。付け加えると、この仕様書は2023年11月に申請され2025年7月29日の実施規則 (EU) 2025/1713 で承認された改正で、「vino(ワイン)」の区分を「vino de licor(リキュールワイン)」と並べて持つようになった。承認の規則そのものは2条しかなく、改正の中身は官報のC系列に別に載っている(C/2025/2129、2025年4月8日)。酒精強化を経ない造りもDOPヘレスの中にある、ということなので、シェリーが例外なく酒精強化ワインだという言い方も、現行の仕様書からは出てこない。改正の理由書は、フィノを区分1と区分3の両方に属するものとして扱っている。
ソーテルヌの45グラムはEUの下限とぴったり重なる
AOCソーテルヌの仕様書(2026年3月25日 homologué、BO Agri 2026年4月2日公表)は、出荷される全ロットに、発酵性糖(グルコースとフルクトース)を1リットルあたり45グラム以上と課している。この45 g/Lは、EUの表示規則が「甘口(doux)」の下限とする数値と1グラムも違わない。しかも糖分の表し方まで「グルコースとフルクトース」で一致している。ソーテルヌは、名乗った時点でEUの物差しの甘口に入ることが仕様書の側で担保されている、という関係になる。仕様書の原文と、収量や品種まで含む条件は貴腐ワインのおすすめと選び方に置いた。
割れているのではなく割れるように作られている
なぜ物差しが3つもあるのか。答えは規則の本文にある。2019/33 は、附属書III B部の語をラベルに出してよいという定めを、規則 1308/2013 附属書VII 第II部の(3)(8)(9)にあたる製品には及ぼしていない。産地の側にその条件の定めがあることが前提になる。(3)がリキュールワイン、つまり酒精強化ワインにあたる。条番号ごとの読み方と泡ものの側の扱いはスパークリングワインの辛口・甘口に置いた。
だからポルトはIVDPの規則で、シェリーはヘレスの仕様書で動く。EUの45 g/Lと食い違っているのではなく、EUがそこを外して各産地に預けている。「甘口ワインの残糖は◯g/L以上」と単一の数字で書けるのは、どの規則の下の語なのかを先に決めたときだけだ。
預けた先を並べると、甘さを決める操作が原簿ごとに違う場所に置かれていることがわかる。ポルトの技術ファイルは、醸造の節で「度数を上げ発酵を中断させる」アグアルデンテの量を「望みの甘さの度合いに応じて」収穫通達が毎年定めると書き、産地との関係を述べる節では「発酵は、未発酵の糖の量が望みの甘さを与える時点まで進む。そのあと発酵中の果汁は果梗から分けられ、アグアルデンテの添加で度数が上がり発酵が止まる」と書く。望みの甘さという語が置かれているのは、どちらも発酵を止める一点だ。さきに見た下端の17,5 g/Lが造りの側の条件と同じ数なのも、甘さを決める操作がその停止に置かれているからだ。
ヘレスの仕様書は、甘い側の一方を逆の順序で定義している。「ヘネロソ」は乾式醸造——完全なアルコール発酵——で得た酒を平均2年以上熟成させたもので、仕様書はそれを辛口とみなすと書く。分析表にある Pale Dry、Pale Cream、Medium、Cream はこれとは別の「ビノ・ヘネロソ・デ・リコール」という枠に立っていて、定義は「『ヘネロソ』、または当該『ヘネロソ』を生みうるフロールの膜の下のワインに、干しぶどうの果汁にワイン由来の中性アルコールを加えたもの、精留濃縮果汁、または『甘口自然ワイン』を加え、オークの樽で平均2年の熟成を経て供されるもの」となっている。糖はあとから来る。
発酵を止めて糖を残す道もヘレスにはある。仕様書がそれを書いているのは「甘口自然ワイン」——ペドロ・ヒメネス、モスカテル、ドゥルセ——の側で、「果汁、または発酵中の果汁をアルコールで強化して、発酵を妨げるか止める」と別立てになっている。だから逆になるのはビノ・ヘネロソ・デ・リコールの側だ。ポルトが混合を禁じているわけでもなく、技術ファイルはロタソンなどの混合を別に認めている。違うのは、それぞれの原簿が糖を決める操作を定義のどこに書いたかで、強化のアルコールをいつ加えるかとは別の話だ。アルコールを加える時点がヘレスの中でどう分かれるかはシェリー酒とはの「甘口の二つと、混ぜたもの」の節にまとめている。
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タイプと産地で30本を横断して見る

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樹上で凍ったブドウから搾る希少な甘口 |
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| 25位南アフリカの甘口 | クライン・コンスタンシア ヴァン・ド・コンスタンス | 6,000〜9,500円 |
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完熟と乾燥だけで甘さを得る南アフリカの甘口 |
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| 26位粒選り収穫 | ドイツ ベーレンアウスレーゼ(BA) | 8,000〜16,000円 |
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貴腐や過熟の粒を選り抜いた極甘口 |
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| 27位凍結収穫・希少 | ドイツ リースリング アイスヴァイン | 10,000〜20,000円 |
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酸と甘みが拮抗するドイツのアイスヴァイン |
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| 28位残糖150g/L以上のアスー | ロイヤル トケイ 6プットニョシュ | 10,000〜20,000円 |
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6プットニョシュを名乗る残糖の高いアスー |
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| 29位ドイツの最上位プレディカート | ドイツ トロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA) | 20,000〜45,000円 |
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縮んだ果粒だけを選り抜くドイツの最上位プレディカート |
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30位1855年格付けの最上位
|
シャトー・ディケム 2000(貴腐の頂点) | 当店在庫のある行のため相場欄は設けていない |
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1855年格付けで唯一の Premier Cru Supérieur |
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この表の価格欄には金額を入れていない。そのため価格順の並べ替えと価格帯の絞り込みは働かない。各行に出ている金額は当店の販売価格で、絞り込みが読む値とは別のものである点にも注意してほしい。「最安」のバッジは当店に在庫がある行へ一律に付くもので、他店との価格比較を示すものではない。度数の欄は表には描画されない。残糖とアルコール分の実数は本文の産地別の章で確認してほしい。在庫は日々動くため、最新の状態は各リンク先で確かめてほしい。2026年9月時点の情報。
いつ飲むのかは食後だけとは限らない

「デザートワインは食後に少量」と説明されることが多い。ところが産地の公式ガイドを読むと、そう単純ではない。IVDPがポルトの合わせ方をまとめたページは、見出しを4つに分けている。食事の前、食事の途中、食事の終わりに、そして食事のあと。食後だけを扱ってはいない。
IVDPが挙げる4つの場面
| 場面 | 公式ガイドが挙げている合わせ方 |
|---|---|
| Before a meal(食事の前) | ローストしたアーモンド、スモークサーモン、干しプラム、デーツに、よく冷やしたホワイト・ポート。辛口のホワイト・ポートはトニックウォーターと氷とレモンで割る「ポートニック」の要になる。パテを出すなら10年トウニー |
| During a meal(食事の途中) | サラダや脂ののったグリル(サーモンなど)の軽い食事にはホワイト・ポート。とろみのある濃厚なスープにもよい。強いチーズやパテ、ドライフルーツとくるみが出るなら冷やした10年トウニー。ローストした肉、濃いソースや胡椒とスパイスをきかせたステーキにはLBV |
| Towards the end of a meal(食事の終わりに) | ケーキとチョコレートムースには若くフルーティなLBVかヴィンテージ。卵黄と砂糖を使うポルトガルの濃厚な伝統菓子には10年か20年のトウニー。フルーツサラダ、カラメルカスタード、アーモンドタルト、バニラアイス、ドライフルーツには冷やしたトウニー・リザーブか10年トウニー。チーズケーキやマイルドでクリーミーなチーズにはルビー・リザーブかLBV。強くて硬いチーズには20年など熟成の長いトウニー |
| After the meal(食事のあと) | 葉巻に古いヴィンテージ。デカンタージュしてそれだけで飲んでもよい。コーヒーには20年トウニーかそれ以上。30年・40年超のブレンドは少し冷やして大きなグラスで |
「食事の途中」の欄に、サラダや脂ののったグリル、濃厚なスープ、胡椒をきかせたステーキが並んでいるのが目を引く。甘口の酒精強化ワインを食事の主役に合わせる想定が、産地の側から示されている。実際、同じページの最後の欄の冒頭には「ポルトが食事のどの場面でも飲めることの証拠は、葉巻に火を付けて古いヴィンテージを楽しむときに現れる」という一文がある。
ヘレスの側も同じ発想で、規制委員会はクリームについて「食前酒としても飲めるし、氷とオレンジのスライスを添えたカクテルにもできる」と書いている。「食後酒」という枠は、飲み手が後から付けたものに近い。
甘いワインに合う料理を公式ガイドから拾う

おつまみではなく料理と合わせたいとき、手がかりになるのは産地の公式ガイドだ。ヘレス規制委員会はタイプごとに合わせる料理を挙げていて、これがそのまま使える。
| タイプ | 提供温度 | グラス | 公式ガイドが挙げている合わせ方 |
|---|---|---|---|
| Pedro Ximénez | 12〜14℃ | 白ワイングラス | 苦みのあるチョコレートを使ったデザート、アイスクリーム、カブラレスやロクフォールのような強い青カビチーズ |
| Moscatel | 12〜14℃ | 白ワイングラス | 甘すぎない焼き菓子とデザート、果物とアイスクリーム |
| Cream | 10〜12℃ | 白ワイングラス、または口の広いグラスに氷 | 果物(メロン、オレンジ)、焼き菓子、アイスクリーム。フォアグラと青カビチーズにもよく合う。食前酒にも、氷とオレンジのスライスを添えたカクテルにもできる |
| Pale Cream | 7〜9℃ | 白ワイングラス、または口の広いグラスに氷 | フォアグラとパテ。洋なしなどの生の果物とも心地よく合う |
| Medium | 12〜14℃ | 白ワイングラス | パテ、キッシュ、そしてカレーライスのようなとくに香辛料のきいた料理。インド料理とタイ料理 |
香辛料のきいた料理に中甘口を合わせる
ミディアムの欄にある「カレーライスのようなとくに香辛料のきいた料理」「インド料理とタイ料理」は、日本の食卓でも試しやすい。ミディアムは仕様書で糖分4 g/L以上115 g/L未満と幅が広く、同じタイプ名でもかなり甘さが違う。ラベルに Medium Dry とあれば仕様書の表示語で50 g/L未満、Medium Sweet とあれば50 g/L以上なので、辛い料理に合わせるなら後者のほうが甘さがはっきり効く。
ポルトの側で食事に合わせるなら、IVDPが挙げているのはホワイト・ポートとLBVだ。ホワイト・ポートはサラダや脂ののった焼き魚、とろみのある濃厚なスープ。LBVはローストした肉や、濃いソース、胡椒とスパイスをきかせたステーキ。甘さで料理を包むのではなく、味の強さを釣り合わせる組み立てになっている。
フォアグラとパテには酒精強化の中甘口
フォアグラを名指ししているのはヘレスのクリームとペール・クリームだ。ペール・クリームは「フォアグラとパテに理想的なワイン」と書かれ、提供温度は7〜9℃と低い。クリームは10〜12℃で、フォアグラと青カビチーズの両方が挙がる。
この2つは仕様書の上では糖分の帯が接していて、ペール・クリームが50 g/L以上115 g/L未満、クリームが115 g/L以上140 g/L以下で、境目は115 g/Lだ。同じ料理に対して、より甘くない側と甘い側の両方が提案されている、という読み方ができる。
おつまみとチーズの合わせ方

甘口ワインのおつまみでよく挙がるのが青カビチーズとナッツ、ドライフルーツだ。これらは公式ガイドの側にも実際に書かれている。
デザートに合わせるならワインを少しだけ甘い側に
IVDPの「食事の終わりに」の欄は、デザートの種類ごとに合わせる相手を分けている。ケーキとチョコレートムースには若くフルーティなLBVかヴィンテージ。卵黄と砂糖を使う濃厚なポルトガル菓子には10年か20年のトウニー。フルーツサラダ、カラメルカスタード、アーモンドタルト、バニラアイス、ドライフルーツのように味の穏やかなデザートには、冷やしたトウニー・リザーブか10年トウニー。チーズケーキやマイルドでクリーミーなチーズにはルビー・リザーブかLBV。強くて硬いチーズには20年など熟成の長いトウニー。
ヘレスの側は、ペドロ・ヒメネスを「それ自体がデザート」と表現しつつ、「甘すぎないデザートとよく合う」と書いている。モスカテルも「甘すぎない焼き菓子とデザート、果物とアイスクリーム」だ。デザートが甘すぎるとワインの甘さが負ける、という考え方が両方の産地に共通している。
ソーテルヌとロクフォールの組み合わせは片方向だった
甘口ワインと青カビチーズといえばソーテルヌとロクフォール、と紹介されることが多い。そこでロクフォールの側の公式を確かめた。フランスのロクフォール総同盟(Confédération Générale de Roquefort)のサイトについて、サイトマップに載っている固定ページ41本をすべて取得して走査したところ、「Sauternes」、「vin doux」、「vins doux」、「Porto」、「moelleux」、「liquoreux」、「Banyuls」、「vin blanc」、「vin rouge」のいずれも0件だった。ヒットしたのは Champagne の2件だけで、それも「ロクフォールはシャンパーニュと同じようにフランス美食の国際的な評価に貢献する」というディドロの言葉を引いた文脈で、合わせ方の話ではない。
いっぽうチーズを名指ししているのはワインの側だ。ヘレス規制委員会はペドロ・ヒメネスについて「カブラレスやロクフォールのような強い青カビチーズ」と書いている。名指しは片方向で、チーズの側からワインへは向いていない。
ロクフォール総同盟が自分のサイトで書いているのは、次の一文だ。
Le Roquefort est la première appellation d’origine fromagère en 1925. C’est le seul fromage à pâte persillée au lait cru de brebis sous Appellation d’Origine Protégée (AOP).
「ロクフォールは1925年に、チーズとして最初の原産地呼称になった。羊の生乳から造る青カビチーズで原産地呼称保護(AOP)を受けているのはこれだけである」という意味になる。組み合わせの由来を語る資料はチーズ側になくても、チーズそのものの位置づけは公式に確かめられる。
温度とグラスの選び方

提供温度に一律の正解はないと産地が書いている
ヘレス規制委員会は提供温度の項目の冒頭に、「フィノとマンサニージャを除けば、提供温度に決まった規則はない」と書いている。何を合わせるかによる、というのが理由だ。そのうえで目安を4段階で示す。3行目はどの版も「その他」を冠したうえで、続く呼び方が揺れている。スペイン語版は「酸化熟成と cabeceo(混合)のもの」、英語版とドイツ語版は「酸化熟成のワインと混合したワイン」、日本語版は仕様書の枠の名前を使って「ビノ・ヘネロソ・デ・リコール」と呼び、オランダ語版は混合に触れず「酸化による熟成」とだけ書く。下の表は日本語版の呼び方に合わせた。
| 対象 | 目安の温度 |
|---|---|
| フィノとマンサニージャ | 5〜7℃ |
| ペール・クリーム | 7〜9℃ |
| その他のタイプ(酸化熟成とビノ・ヘネロソ・デ・リコール) | 12〜14℃ |
| VOS と VORS | およそ15℃ |
IVDPはポルトを4つに分ける。甘さの段と違って、こちらは両方の言語のページで数がそろっている。
| 対象 | 目安の温度 |
|---|---|
| ロゼ・ポート | 4℃ |
| ホワイト・ポート | 6〜10℃ |
| ルビー系のポート | 12〜16℃ |
| トウニー系のポート | 10〜14℃ |
2つを並べると、同じ酒精強化ワインでも4℃から16℃まで幅があることがわかる。ロゼ・ポートの4℃とルビー系の12〜16℃では、12ポイント違う。「甘口ワインは冷やして」という一言で片付くものではない。
規制委員会は小さなシェリーグラスを勧めていない
グラスについては、ヘレス規制委員会がはっきりした書き方をしている。まず「良質な汎用の白ワイングラスで、ふくらみのあるボウルと長い脚を持つもの」を勧める。そのうえで、「小さなグラス(コピータ、いわゆるシェリーグラス)の使用は勧めない。ワインが十分に表現しきれないため」と続ける。伝統的な小ぶりのグラスを、産地の団体自身が推奨から外している。ただし言い方の強さは版で違う。英語版と日本語版は「勧めない」、ドイツ語版は「選ぶべきでない」だが、スペイン語版の Nunca usar とオランダ語版の Gebruik nooit は「決して使うな」という禁止の形で、コピータもシェリーグラスも「誤ってそう呼ばれている」と断っている。
この構図は珍しくない。シャンパーニュの業界団体も、フルート型やクープ型で飲むのが一番だと思われがちだが実はそうではない、として、チューリップ型を勧めている。「その産地らしいグラス」として広まった形が、産地の公式見解と食い違っている例が2つ並ぶことになる。
ヘレスのタイプ別ページを見ると、ペドロ・ヒメネスもモスカテルもミディアムも「白ワイングラス」で、クリームとペール・クリームだけが「白ワイングラス、または口の広いグラスに氷」となっている。氷を入れる前提の提案が公式に含まれている点も、小さなグラスの想定とは違う。グラス選びの一般論はカラフェとデキャンタの違いの記事も合わせて読むと整理しやすい。
開けたあと何日もつのかを区分ごとに見る

「甘口ワインは日もちする」と言われる。度数と糖分が高いので方向としては正しいが、実際の日数は区分ごとにまるで違う。IVDPは開栓後の目安を9つに分けて示している(あくまで目安であると断り書きがある)。こちらも両方の言語で同じ数だ。
| 区分 | 開栓後の目安 |
|---|---|
| ヴィンテージ | 1〜2日 |
| LBV | 4〜5日 |
| クラステッド | 4〜5日 |
| ルビー/ルビー・リザーブ | 8〜10日 |
| トウニー/トウニー・リザーブ | 3〜4週間 |
| 年数表記のトウニー(10・20・30・40年超) | 1〜4か月(若いものほど早めに) |
| 年数表記のホワイト・ポート(10・20・30・40年超) | 1〜4か月(若いものほど早めに) |
| コリェイタ | 1〜4か月(若いものほど早めに) |
| 標準的なホワイト・ポート | モダン(フレッシュでフルーティ)は8〜10日、トラディショナル(木樽熟成)は15〜20日 |
ヴィンテージの1〜2日と、年数表記のトウニーの1〜4か月では、60倍以上の開きがある。同じポルトでも「開けたら早めに」と「ゆっくり飲める」が同居している。
ヘレスは3区分で示す。次の表は行の名前も値も注記も日本語版から採った。注記の文は「しっかりと栓をして冷蔵庫で保管してください」で、この記号が3行のどこに付くのかは、すぐあとで見るとおり公式サイトの言語版によって違う。3行目のVOS/VORSはタイプの名前ではないので、同じオロロソでも表示があればこの行に入る。表の外に置かれた箇条書きのほうは、どの版でもフィノとマンサニージャを「常に冷蔵庫で」と1行目だけ名指ししている。
| 区分 | 未開栓 | 開栓後 |
|---|---|---|
| フィノ/マンサニージャ | 未開栓は1年まで | 開栓後は1週間まで(*) |
| その他のタイプのシェリー | 未開栓は3年まで | 開栓後は2か月まで(*) |
| VOS/VORS | 未開栓は特に規定なし | 開栓後は3か月 |
期間の数字は、5つの言語版のどれでも同じだ。割れているのは、行の名前と注記記号の位置のほうだ。スペイン語版・日本語版・オランダ語版は、1行目と2行目の「開栓後」の値のうしろにだけ (*) を打ち、VOS/VORSの行には打っていない。いっぽうドイツ語版は3行すべての「開栓後」という項目名の側に打ち、英語版は項目名側の3つに加えて1行目と2行目の値にも重ねて打つ。同じページの同じ表で、冷蔵庫という条件の掛かる範囲が、2行と3行に分かれている。
ポルトの側では、甘さの表の数が言語で割れていた。ヘレスのこの表は数がそろっているのに、記号の位置が割れる。範囲を決めているのは日数ではなく記号の位置なので、数字だけを写して記号を落とすと、条件の掛かる範囲が静かに広がる。もっとも3行目に記号が無いのは冷蔵庫を禁じているという意味ではないので、迷うなら3行とも冷蔵庫でよい。
開栓後の扱いをもう少し広く知りたいときは、ワインの常温保存と賞味期限やワインストッパーの選び方も参考になる。シェリーに絞った手順は初心者でもわかるシェリー酒の飲み方の「開栓後の保存のコツと目安」の節にまとめている。
選ぶときに見るのはタイプ名と数字の2つ
ここまでを踏まえると、甘口ワインを選ぶときに見る場所は絞れる。1つはタイプ名で、これがどの規則の下の語なのかを決める。もう1つはラベルや背ラベルに書かれた数字だ。
- ラベルに doux や sweet とある静止ワインは、EUの物差しで45 g/L以上。
- ポルトで Doce や Sweet とあれば、IVDPの規則で85〜130 g/L。
- シェリーで Dulce や Rich とあれば、ヘレスの表示語で115〜212 g/L。Muy Dulce や Very Rich なら212 g/L超。
- ソーテルヌを名乗っていれば、仕様書の側で45 g/L以上が担保されている。
- 度数が14%を下回っていれば酒精強化ではない。ただし14%ちょうどの帯には、貴腐や陰干しの甘口とヘレスの例外が同居するので、この帯では度数から造りが決まらない。
初めての1本なら、開栓後にゆっくり飲める区分から入るのが失敗しにくい。年数表記のトウニーやコリェイタは1〜4か月。シェリーのオロロソ系やペドロ・ヒメネスは2か月が目安だが、ラベルに VOS か VORS の表示があれば、ヘレスの表の3か月の行に移る。この2つは認定熟成の4段のうち上の2つで、20年超・30年超に与えられる。逆にヴィンテージ・ポートは1〜2日なので、飲む人数と場面を決めてから開けたい。
度数とカロリーの実数を確かめる

度数はEUの区分が幅を決めている。リキュールワインは原則として取得アルコール分が15%以上22%以下で、長期熟成のものだけが、例外の一覧に載っていれば14%以上でよい。ヘレスの仕様書で下限が14%のタイプは2つあって、フィノが14%以上17%以下、ペール・クリームが14%以上22%以下。残る9つは15%か16%か17%が下限で、上限はいずれも22%。認定熟成のヘネロソで酸化熟成のものだけが、現行法令の範囲で分析表の幅を超えうる。ポルトの側は、IVDPの規則が取得アルコール分を定めている。2026年6月18日に公布されて翌19日から効いている規則の第44条が、原則の幅をひとつ置いたうえで、類型ごとに下限を下げる段を二つ足している。いちばん下の段は Branco Leve Seco で、甘さの表に出てきたあの呼び名と同じものだ。三段の数字と、この幅がこの1年のあいだに三度も動いた経緯はワインのアルコール度数にまとめた。
カロリーは日本食品標準成分表(八訂)増補2023年で確かめられる。100gあたりの値は次のとおり。
| 食品名 | 食品番号 | エネルギー(kcal/100g) |
|---|---|---|
| ぶどう酒 白 | 16010 | 75 |
| ぶどう酒 赤 | 16011 | 68 |
| ぶどう酒 ロゼ | 16012 | 71 |
| スイートワイン(混成酒類) | 16029 | 125 |
| ベルモット 甘口タイプ | 16031 | 151 |
| ベルモット 辛口タイプ | 16032 | 113 |
スイートワインは白ワインの1.67倍にあたる。ただし成分表の値は100gあたりで、飲む量は同じではない。甘口ワインは少量を注ぐ飲み方が前提なので、100gあたりの数字をそのまま1杯分に読み替えないほうがよい。なお成分表には「貴腐ワイン」という食品名はなく、甘口の枠に入るのは16029のスイートワイン1件だけだ。
甘口と辛口で差が見えるのはベルモットで、甘口タイプ151 kcalに対して辛口タイプ113 kcalと38 kcal違う。糖分の差がそのままエネルギーの差に出ている。ワインの度数まわりはワインのアルコール度数の平均、太りやすさの話はワインと焼酎どっちが太るかで別に扱っている。
よくある質問

甘口ワインは残糖が何グラム以上のものを指しますか。
適用される規則によって違います。EUの委任規則 (EU) 2019/33 の附属書III B部は、スパークリング以外のワインについて「甘口(doux/sweet)」を1リットルあたり45グラム以上と定めています。スパークリングは同じ附属書のA部で50グラム超です。いっぽうポルトはIVDPの規則で「Doce(sweet)」が85〜130グラム、シェリーはヘレスの仕様書で表示語の「Dulce」が115〜212グラムと、それぞれ別の線が引かれています。単一の数字にはなりません。
なぜポルトやシェリーだけ別の基準なのですか。
EUの規則がそう作っているためです。2019/33 は、附属書III B部の語をラベルに出してよいという定めを、規則 (EU) No 1308/2013 の附属書VII 第II部(3)(8)(9)にあたる製品には及ぼしていません。産地の側にその条件の定めがあることが前提です。(3)がリキュールワイン、つまり酒精強化ワインです。食い違っているのではなく、各産地に預けられている形になります。預けられた先では、甘さを決める操作の置き場所そのものが違います。ポルトの技術ファイルは、発酵を止める時点で望みの甘さが決まると書きます。ヘレスの仕様書は甘口の一方を、辛口のヘネロソ、またはそのヘネロソを生みうるフロールの膜の下のワインに甘いものを加え、樽で平均2年置いたものとして定義しています。ペドロ・ヒメネスやモスカテルはそれとは別立てで、発酵を妨げるか止めて糖を残します。
デザートワインは食後に飲むものですか。
食後だけではありません。IVDPがポルトの合わせ方をまとめたページは、食事の前、食事の途中、食事の終わりに、食事のあと、の4つに分けています。食事の途中の欄にはサラダや脂ののったグリル、濃厚なスープ、胡椒をきかせたステーキが挙がっています。ヘレス規制委員会もクリームについて食前酒やカクテルとしての飲み方を書いています。
甘いワインに合う料理には何がありますか。
ヘレス規制委員会はミディアムについて、パテ、キッシュ、カレーライスのような香辛料のきいた料理、インド料理とタイ料理を挙げています。ペール・クリームとクリームはフォアグラとパテ。IVDPはホワイト・ポートにサラダや脂ののった焼き魚と濃厚なスープ、LBVにローストした肉や胡椒をきかせたステーキを挙げています。甘さで包むのではなく味の強さを釣り合わせる組み立てです。
デザートワインに合うおつまみは何ですか。
青カビチーズ、ナッツ、ドライフルーツが公式ガイドに実際に出てきます。ヘレス規制委員会はペドロ・ヒメネスの相手として、苦みのあるチョコレートのデザート、アイスクリーム、カブラレスやロクフォールのような強い青カビチーズを挙げています。IVDPは強くて硬いチーズに20年など熟成の長いトウニー、マイルドでクリーミーなチーズにルビー・リザーブかLBVを勧めています。
ソーテルヌとロクフォールの組み合わせは公式のものですか。
ワインの側からの名指しは確認できますが、チーズの側からは確認できませんでした。ロクフォール総同盟のサイトについて、サイトマップに載っている固定ページ41本をすべて取得して走査したところ、Sauternes も vin doux も Porto も0件でした。いっぽうヘレス規制委員会はペドロ・ヒメネスの相手としてロクフォールを名指ししています。名指しは片方向です。
甘口ワインは何度で出せばよいですか。
ヘレス規制委員会は「フィノとマンサニージャを除けば決まった規則はない」と明記したうえで、ペール・クリーム7〜9℃、その他のタイプ(酸化熟成とビノ・ヘネロソ・デ・リコール)が12〜14℃、VOSとVORSはおよそ15℃という目安を示しています。IVDPはロゼ・ポート4℃、ホワイト・ポート6〜10℃、ルビー系12〜16℃、トウニー系10〜14℃です。
シェリーは小さなシェリーグラスで飲むものですか。
ヘレス規制委員会は勧めていません。公式ページは「良質な汎用の白ワイングラスで、ふくらみのあるボウルと長い脚を持つもの」を勧め、「小さなグラス(コピータ、いわゆるシェリーグラス)の使用は勧めない。ワインが十分に表現しきれないため」と書いています。クリームとペール・クリームについては、口の広いグラスに氷という提案も公式に含まれています。
開けた甘口ワインはどのくらいもちますか。
区分によって大きく違います。IVDPの目安ではヴィンテージ・ポートが1〜2日、LBVとクラステッドが4〜5日、ルビーとルビー・リザーブが8〜10日、トウニーとトウニー・リザーブが3〜4週間、年数表記のトウニーやコリェイタが1〜4か月です。ヘレスはフィノとマンサニージャが1週間まで、その他のタイプのシェリーが2か月まで、VOSとVORSが3か月です。表には「しっかりと栓をして冷蔵庫で保管してください」という注記 (*) が添えられています。この記号が3行のどこに付くかは公式サイトの言語版でそろっておらず、スペイン語版・日本語版・オランダ語版は1行目と2行目だけ、英語版とドイツ語版は3行すべてに付けています。ただしどの版も3行目で冷蔵庫を禁じてはいないので、迷うなら3行とも冷蔵庫で構いません。
世界三大貴腐ワインというのは公的な格付けですか。
法令の区分でも業界団体の格付けでもありません。この呼び方はメーカーの用語解説に出てくるもので、たとえばキリンの解説は「フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケン・ベーレン・アウスレーゼ、ハンガリーのトカイワインが世界三大貴腐ワインと呼ばれています」と書いています。呼ばれている、という書き方であって、誰かが認定した格付けではありません。












