スパークリングワインの辛口・甘口|表示語の出どころと種類
スパークリングワインのラベルには、ブリュット、エクストラ・ブリュット、ドゥミセックといった語が並んでいる。日本語では辛口・甘口と説明されることが多い。ところが、その「甘口」「辛口」という語を日本の法令の側で探すと、一件も見つからない。
e-Gov の全法令横断検索を「辛口」で叩くと結果は0件、「甘口」も0件になる。ひらがなでもカタカナでも同じだった。国税庁の果実酒等の製法品質表示基準にも、消費者庁の食品表示基準にも、国税庁が配っている酒類の表示の説明資料にも、この二語は一度も出てこない。
では瓶に書いてある表示語は、どこから来ているのか。この記事は、日本側に定義が無いという実測から出発して、表示を義務づけている規定がどこにあるのか、その義務が名指しされた四つの類型にだけ及んでいること、そして当店の在庫では同じ語が三通りの表記で現れることまでを、条文と実数で確かめていく。
「甘口」も「辛口」も、日本の法令には一度も出てこない

最初に確かめたのは、日本の法令の側に甘辛の物差しがあるのかどうかだった。e-Gov の法令検索には、収録されている法令の全文を横断して語を探す仕組みがある。ここに「辛口」と入れると、返ってくるのは0件を意味する応答だった。「甘口」も同じく0件になる。
表記を変えても、結果は動かなかった
漢字で当たらないだけかもしれないので、表記を変えて叩き直した。「からくち」「カラクチ」「辛くち」、「あまくち」「アマクチ」「甘くち」、さらに「甘み」「あまみ」。いずれも0件だった。ただし「甘味」だけは別で、酒税法第3条第14号に「甘味果実酒」という品目名がある。甘さが品目の名前になっている例はあるが、甘辛の度合いを測る物差しは法令の側には無い。
ついでに周辺の語も測った。「残糖」0件、「ドサージュ」0件、「シャンパン」0件、「シャンパーニュ」0件。「スパークリング」は3件あったが、中身を見ると3件とも「スパークリングワイン」という一語の一部で、関税の三本の法令にしか出てこない。単独の「スパークリング」という用例は、日本の法令に一つも無い。
もう一つ意外だったのは「ワイン」と「ぶどう酒」だ。酒税法・酒税法施行令・酒税法施行規則の三本を通しても、どちらの語も0件だった。酒税法に出てくる「ぶどう」は第3条第8号の「ぶどう糖」で、これは合成清酒の原料の話であって酒の種類の話ではない。
告示にも、食品表示基準にも、説明資料にも無い
法律・政令・省令の層に無いとしても、告示や基準の層にあるのではないか。そう思って三本を別々に数えた。
一本目は国税庁の果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月30日国税庁告示第18号)。日本ワインの表示を定めているこの告示を、本文と別記様式と附則と別表まで通して数えた。「甘口」0回、「辛口」0回、「残糖」0回、「スパークリング」0回だった。「発泡」は2回出てくるものの、いずれも別記様式の備考にある一行で、内容は品目と税率適用区分の表示の話に送っているだけだった。
二本目は食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)。全文を平坦化すると387,285字になるが、ここでも「甘口」0件、「辛口」0件。しかも酒類は、表示を足される側ではなく引かれる側に置かれている。第5条の表は「酒類を販売する場合」を上欄に掲げて、原材料名・アレルゲン・原産国名の表示を要しないと下欄に書く。栄養成分の量及び熱量も、省略できるものの二番目に「酒類」と名指しされている。
三本目は国税庁が配っている「酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)」。全11ページを数えて、「甘口」0件、「辛口」0件、「スパークリング」0件だった。
義務を出しているのは、売られている国の外側にある

日本側に無いとすれば、瓶に書いてあるブリュットやドゥミセックは誰の要求で載っているのか。出どころは欧州連合の委任規則(EU)2019/33で、甘さの表示語について二つの条が並んでいる。第47条と第52条だ。
同じ制度が、条によって義務と任意に分かれる
第47条第1項の英語正文はこう書く。The terms listed in Part A of Annex III to this Regulation indicating the sugar content shall appear on the label of the grapevine products provided for in Article 119(1)(g) of Regulation (EU) No 1308/2013。附属書IIIの第A部に並んだ語は、ラベルにshall appearする、つまり載せなければならない。
一方、第52条第1項はこうなっている。The sugar content ... as provided for in Part B of Annex III to this Regulation, may appear on the label。構文は同じで、動詞はmay appear、宛先はその四つ以外になる。載せてよい、という書き方だ。
二つの条を分けているのは、酒の格でも産地でもない。第47条が向いている先は規則(EU)1308/2013の第119条第1項(g)が名指しする四つの類型で、第52条は残りに向く。ただし第52条第4項が、加盟国または産地の第三国の側に表示条件の定めがあることを前提に、リキュールワインと微発泡の三つの号を第1項の外に置く。義務として掛かるのは、名指しされた四つに限られる。
同じ第119条第1項は、この表示義務の及ぶ範囲をmarketed in the Union or for exportと書いている。域内で売られるものだけでなく、輸出向けにも同じ義務が掛かる。日本の棚に並ぶ瓶に語が載っているのは、この一句による。
数えている糖の種類が、条によって違う
もう一段細かいところで、二つの条は数え方まで違えている。第47条第2項は糖分をfructose, glucose and sucroseで表すと書く。果糖とぶどう糖としょ糖の三つだ。ところが第52条第1項はThe sugar content expressed as fructose and glucoseで、しょ糖が入っていない。
第47条の側では、二次発酵のあとに加える糖の分まで数に入る書き方になっている。第52条の側では、その項目そのものが数式から外れている。同じ「糖分」という語が、条をまたぐと中身の違う数を指す。
第B部は「第A部に載っていないもの」と書かれている
附属書IIIの柱書も、対称にはなっていない。第A部の見出しはto be used for sparkling wine, aerated sparkling wine, quality sparkling wine or quality aromatic sparkling wineと、対象を名指しで四つ挙げる。対して第B部はto be used for other products than those listed in Part Aで、「第A部に挙げたもの以外」という引き算の書き方をしている。
つまり第B部は赤白のスティルワイン専用と書かれているわけではない。名指しされているのは四つの類型だけだ。ただし第52条第4項が三つの号を第1項の外に置きうるので、残りが全部第B部に落ちるわけでもない。デザートワインの甘口の下限をどこに置くかという話が産地ごとに割れるのも、この残余的な書き方と無縁ではない。
関連商品ラインナップ

下のラインナップは、ここまでで見た表示語が実際にどんな瓶に付いているのかを確かめる材料になる。商品名にブリュットやドゥミセックが入っているものと、銘柄名だけで甘辛の語が無いものが混ざっている。その混ざり方そのものが、次の章で数える対象になる。
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ここではワインの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
ラベルの甘辛表示語が付いた在庫30本

下の表は、2026年8月27日に管理画面から取った在庫のうち、商品名に甘辛の表示語が入っている37本から、30本を価格順に並べたものだ。「甘辛」の欄に入れてあるのは、こちらで分類し直した語ではなく、当店の商品名にそのまま書かれている語になる。
度数の欄が空いている行があるのは、瓶のラベルに度数が無いという意味ではない。当店の商品名に度数まで書いてあるものが30本中11本しかない、という当店側の事情による。
価格は2026年8月27日に管理画面から取得した当店の販売価格で、最安値を保証する一覧ではない。容量・年・箱の有無で価格は動く。アルコール度数は当店の商品表記に記載のある11本だけを載せた。残る19本は瓶のラベルには度数があるが、当店の商品名には書かれていないため空欄にしてある。甘辛の表示語はEU規則(EU)2019/33の附属書III第A部の語で、日本の法令には「甘口」「辛口」を定義する規定がない。在庫は取得時点のもので、購入前に各リンク先で確認してほしい。
並べ終えてから気づいたことが一つある。ブリュットとドゥミセックが一つの商品名に同居している行があった。表示語としては片方しか選べないところで、商品名の途中にブリュットがあり、そのうしろにドゥミセックが続いている。表示語と商品名は別の層にあるということが、こういう行に出る。
在庫177本のうち、表示語が付いているのは37本だった

規則が用意している表示語は7つある。実際の売り場で、その語がどれだけ商品名に上がってくるのか。当店の在庫を数えてみた。
37本にしか、甘辛の語が付いていない
2026年8月27日時点で、商品タイプがシャンパンで在庫のあるものは177本あった。このうち商品名に甘辛の表示語が入っているのは37本で、率にすると20.9パーセントになる。残る140本は、ほとんどが銘柄名と容量と外装の別だけで名前ができている。
37本の内訳はこうだった。ブリュットが21本、ドゥミセックが10本、エクストラ・ブリュットが4本、ブリュット・ナチュールが2本。ブリュット21本のうち1本は、カタカナではなくラテン文字でBrutと書かれている。
第A部の語は、売り場では三通りの表記で現れる
数えていて厄介だったのは、同じ表示語が違う姿で書かれることだ。第A部の各行は、一つの帯に対して欧州各言語の語を横並びに置いている。たとえば17から32グラム毎リットルの行にはsec, trocken, secco, asciutto, dryと続く。同じ帯を指す語が最初から複数ある。
当店の在庫でも三通りが出た。カタカナの「ブリュット」、ラテン文字のBrut、そして英語のdryを訳した「ドライ」。「ドライ」を含む商品名も1本ある。第A部でsecと同じ行に並ぶ語だが、上の37本には数えていない。カタカナで「セック」だけを探しても、この1本には当たらない。
逆に、「セック」を含む商品名は10本あるが、10本とも「ドゥミセック」の一部だった。文字列で数えると多く見え、語として数えると別の帯に入る。表示語を数えるときは、どの言語のどの表記を数えているのかを先に決めておかないと、同じ在庫から違う数が出る。
そのうえで数え方を決め直すと、数はまた動く。カタカナだけを数えれば36本、ラテン文字を含めれば37本、訳語まで含めれば38本になる。同じ在庫を同じ日に数えても、どの表記までを語と認めるかで二本ずれる。表示語の集計は、母集団より先に表記の範囲を決めないと再現しない。
語が無い140本も、瓶の側には語がある
語が無い140本は、表示が無い瓶ということではない。第47条第1項が義務づけている以上、瓶のラベルには語が入っている。落ちているのは当店の商品名の側で、つまり当店では、甘辛の語を商品名に持ち上げる扱いにはなっていない。
日本語に直した語となると、さらに少ない。177本のうち商品名に「甘口」が入っているのは1本、「辛口」が入っているのも1本で、どちらもEUの表示語としては数えていない140本の側にある。日本の法令に定義が無く、売り場でも名前に上がってこない語が、瓶の上では義務として印刷されている。表示を出させている制度と、その表示が読まれる場所が、別の法域に置かれたままになっている。
「瓶内二次発酵」と「トラディショナル方式」は、規則の上では別の語

製法を指す語も、規則の側に条件が書いてある。委任規則(EU)2019/33の第53条がそれで、第3項と第4項に別々の語が置かれている。この記事は以前、この二つを同じものとして扱っていた。条文を読み直すと、同じではない。
第3項は「瓶内発酵」で、澱引きに濾過を認めている
第53条第3項が扱うのはbottle-fermentedという語で、条件は四つある。瓶のなかでの二次発酵で泡を得ていること。キュヴェの発酵開始から数えて、造り手のところでの熟成を含む工程が9か月を下回らないこと。泡を立てる発酵と澱の上に置いた期間が合わせて少なくとも90日あること。そして澱からの分離が、英語正文でby filtering in accordance with the racking method or by disgorgingと書かれていること。
最後の一つが効いてくる。澱引きは、デゴルジュマンでもよいし、移し替えながらの濾過でもよい。中身を別の容器に移して漉す作り方でも、この語は名乗れる。
第4項は「トラディショナル方式」で、デゴルジュマンに限られる
第53条第4項が扱うのはbottle-fermented by the traditional methodとtraditional method、classical method、classical traditional methodの四つの言い回しだ。条件は三つに絞られている。瓶のなかでの二次発酵で泡を得ていること。キュヴェを組んだ時からwithout interruption、つまり中断なく、少なくとも9か月、同じ造り手のところで澱と接していること。そして澱からの分離がby disgorgingであること。
第3項と比べると、9か月の数え方が違う。第3項は工程全体を9か月で測るが、第4項は澱と接している期間そのものを9か月で測る。さらに第4項は途中で中断してはならないと書き、澱引きの手段をデゴルジュマンだけに絞る。移し替えて漉す作り方は、第4項の語を名乗れない。
日本語の紹介では、この二つがしばしば重ねられている
日本語で書かれた解説では、瓶内二次発酵という語のうしろに括弧でトラディショナル方式と添えられていることが多い。当記事も以前はその書き方をしていた。条文に当たると、二つは別々の条件表になっている。9か月をどこから数えるかも違えば、第3項にある90日の条件は第4項に無い。片方を満たせばもう片方も満たす、という関係ではない。
この差は買う側にも意味がある。カヴァの熟成の段は仕様書の側で決まっているし、シャンパーニュには産地の規定が定める別の熟成期間がある。第53条が定めているのは、産地の規定とは別に、製法の語をラベルに載せるための最低条件になる。
クレマンは、定義の上でいちばん甘い区分になれない

同じ第53条の第5項が、クレマンという語を扱っている。ここに、甘辛の区分とぶつかる数字が一つ入っていた。
五つの条件が並んでいる
第5項は、クレマンを名乗れるのは保護原産地呼称または第三国の地理的表示が付いた白またはロゼの高品質発泡性ぶどう酒に限る、としたうえで、次の五つを課している。ぶどうを手摘みで収穫していること。全房または除梗したぶどうを搾って得た果汁から造ること、そのときThe quantity of must obtained shall not exceed 100 litres for every 150 kg of grapes、つまり150キログラムのぶどうから100リットルを超えて搾らないこと。亜硫酸の上限が150ミリグラム毎リットルを超えないこと。the sugar content is less than 50 g/lであること。そして第4項の要件、すなわちトラディショナル方式の条件を満たすこと。
五つ目が入っていることで、クレマンは自動的に、澱と中断なく9か月接してデゴルジュマンで澱を外した酒に限られる。移し替えて漉す作り方は、クレマンでは使えない。
50グラムという線が、甘い側の区分と接している
四つ目の条件が、附属書III第A部の甘い側の線とちょうど接している。第A部でいちばん甘い語は、糖分が50グラム毎リットルを超えるものに使われる。クレマンの条件は50グラム毎リットル未満だ。
つまり、クレマンを名乗る酒は、定義の上で第A部のいちばん甘い語には決して届かない。50グラムちょうどの一点は、甘辛の側ではドゥミセックの帯(32から50)に収まるが、クレマンの条件(50グラム未満)からは外れる。二つの線は接して見えて、その一点だけ噛み合っていない。
単独では名乗れず、1986年3月1日という日付の例外がある
第5項の第2段はもう一つ縛りを置く。クレマンという語は単独では使えず、保護原産地呼称または第三国の地理的表示の区域のもとになっている地理的単位の名称と組み合わせて表示する、と書かれている。クレマン・ド・ブルゴーニュやクレマン・ダルザスのように地名が続くのは、この規定による。
そのうえで第3段が例外を作っている。手摘みの条件と、地名を併記する条件は、producers who own trade marks containing the term ‘Crémant’ registered before 1 March 1986には適用されない。1986年3月1日より前にクレマンを含む商標を登録していた造り手だけが、この二つから外れる。日付が条文にそのまま書き込まれている数少ない箇所になる。
泡の類型のあいだに、泡の号が拾わない帯がある

甘辛の語がどの酒に使えるかは、その酒がどの類型に入るかで決まる。類型を定めているのは規則(EU)1308/2013の附属書VII第II部で、ここに圧力の数字が並んでいる。数字を追っていくと、条文が埋めていない帯が出てきた。
上の類型の下限と、下の類型の上限が接していない
第4号の発泡性ぶどう酒は、20度に保った密閉容器のなかで、溶けている炭酸ガスによる過剰圧がnot less than 3 barであることを条件にする。3バールを下回らない、という書き方だ。
下の類型を見ると、第8号の微発泡性ぶどう酒は同じ条件でnot less than 1 bar and not more than 2,5 barとなっている。1バールを下回らず、2.5バールを超えない。第9号のガスを加えた微発泡性ぶどう酒も同じ幅だ。
並べると、2.5バールを超えて3バールに届かない酒は、どちらの類型にも入らない。第II部の17の号を読み直しても、泡を名乗る号でこの帯を拾うものは無い。第1号のワインという居場所は残るが、第47条第1項が名指しする四つに入らないので、第A部の甘辛の語は使えないことになる。
脱アルコールが認められている号も、限られている
第II部の柱書は2021年の改正で書き換えられていて、脱アルコール処理について一文が入った。全部または一部の脱アルコール処理を受けられるのは、第1号と第4号から第9号までだ、と書いてある。ワインと、発泡性・微発泡性の全類型だけが対象になる。
リキュールワインの第3号や、濃縮果汁の第13号・第14号はここに入っていない。脱アルコールの泡は、元がどの類型だったかで書ける語が変わることになる。
産地の名前と甘辛の語は、ラベルの別の欄にある

スパークリングワインの種類を説明するとき、たいていはプロセッコ、カヴァ、クレマン、フランチャコルタ、ゼクト、アスティといった名前が並ぶ。これらは産地や呼称の名前で、甘辛の語とは違う欄に載る。混ぜて覚えると、選ぶときに迷いが増える。
呼称の名前は、それ自体が甘さを示さない
プロセッコもカヴァもフランチャコルタも、名乗るための条件は産地と品種と製法と熟成の側にある。そのうえで、それぞれの瓶に甘辛の語が別に載る。カヴァのブリュットとシャンパーニュのブリュットは、産地の規定は別だが、ブリュットという語が指す糖分の範囲は同じ附属書III第A部から来ている。
逆に言えば、呼称の名前を見ても甘さは分からない。飲みやすさで選ぶときに見るべきなのは呼称の名前ではなく、その隣にある語のほうになる。
当店の在庫では、泡はシャンパーニュに集中している
正直に書いておくと、この記事で数えた当店の在庫のうち、スパークリングとして在庫があるのはシャンパーニュに寄っている。2026年8月27日時点で、プロセッコ、カヴァ、フランチャコルタ、アスティ、ゼクト、クレマンを名乗る在庫は確認できなかった。比較表を30本ともシャンパーニュで組んだのは、そのためになる。
だから、この記事の比較表は「スパークリングワイン全体の売れ筋30本」ではない。「当店の在庫のうち、商品名に甘辛の語がある30本」だ。産地の広がりを見たい場合は、表ではなく本文の側を読んでほしい。
弱い泡を指す語からは、甘さも類型も読めない
1バールから2.5バールの帯にあたるのは、附属書VII第II部の第8号と第9号だ。フランス語の正文では、この二つの名前は vin pétillant と vin pétillant gazéifié、イタリア語の正文では vino frizzante と vino frizzante gassificato になる。どちらの正文でも、ペティアンとフリッツァンテは前の語を受ける形容詞にあたる。附属書III第A部の柱書が名指すのは別の四つなので、この二つに第A部の語は使えない。そのうえで第52条第4項が、加盟国または産地の第三国の側に表示条件の定めがあることを前提に、第B部の語を任意で載せてよいとする第52条第1項の外へこの二つを置いている。
ただし、ラベルにペティアンやフリッツァンテとあることは、その瓶がこの帯に入っている証拠にはならない。香味付けぶどう酒製品を扱う別の規則には、どちらの語も形容詞ではなく販売名称の頭に立つ欄がある。ペティアンの名前を持つ一本がどちらに入るかも、語ではなく条件のほうで決まっている。
選ぶときにラベルのどこを見るか

ここまでで分かったことを、買う場面の手順に直しておく。日本側に定義が無い以上、頼りになるのは瓶に印刷された語そのものになる。
まず、甘辛の語が一つだけあることを確かめる
ラベルの上で甘辛を示す語は一つに絞られる。ところが商品名になると、そうとは限らない。比較表の30行のうち一行は、商品名の途中にブリュットがあり、そのうしろにドゥミセックが続いていた。前者は商品名に紛れ込んだ語で、甘辛を示しているのは後者になる。
語が見つからない場合は、泡のない酒か、微発泡の類型に入る酒の可能性がある。第52条第1項は任意表示で、しかも微発泡の二つの号は第4項で第1項の外に置かれうる。
次に、製法の語がどちらなのかを見る
トラディショナル方式、メトード・トラディショネル、クラシック方式と書いてあれば、澱と中断なく9か月接して、デゴルジュマンで澱を外した酒になる。瓶内発酵とだけ書いてある場合は、移し替えて漉した作り方も含まれる。どちらが上等という話ではなく、通ってきた条件が違う。
クレマンと書いてあれば、手摘みと搾汁量と亜硫酸の上限まで含めて、第53条第5項の五つを全部通っている。名前が一つ増えるごとに、背後の条件が積み上がっていく。
価格の欄は、甘辛とは独立している
比較表を価格順に並べてみると、いちばん安い3,850円の行がブリュットで、いちばん高い132,000円の行がドゥミセックだった。甘辛の語と価格のあいだに順序は無い。公表価格の見え方は銘柄ごとの事情で決まっていて、糖分の欄とは別の話になる。
迷ったら、まず語の意味を確かめてから価格を見る。順番を逆にすると、同じ価格帯のなかで甘辛が正反対の二本を並べて比べることになりやすい。
飲まないシャンパンの査定・買取はリンクサスへ

贈られたまま開けていない泡が家にある、という相談は多い。リンクサス酒販では未開栓のシャンパンの査定を承っている。洋酒の買取窓口から品名を送ってもらえれば、状態の確認に進める。
査定で見ているところ
見るのは主に四つになる。ラベルの状態、液面の下がり、保管されていた環境、そして箱や付属品がそろっているかどうか。プレステージやヴィンテージ、マグナムは評価が付きやすい傾向がある。
甘辛の表示語そのものが値段を決めるわけではないが、同じ銘柄の別仕様を見分けるときの手がかりにはなる。ドゥミセックの仕様だけ流通量が少ない銘柄もあり、表示語まで書いてもらえると照合が速くなる。
送るときに書いてもらえると助かること
銘柄名、容量、箱の有無、そして裏ラベルの表示語。この四つがそろっていると、写真の枚数が少なくても話が進む。保管していた場所が冷暗所だったかどうかも、あわせて教えてほしい。
当店は品揃えを広げているところなので、在庫に無い産地の泡も相談の対象になる。当日14:00までのご注文で当日発送にも対応している。
よくある質問

日本の法律に「辛口」「甘口」の定義はありますか。
ありません。e-Gov の全法令横断検索で「辛口」「甘口」はいずれも0件で、ひらがな・カタカナの表記に変えても0件でした。国税庁の果実酒等の製法品質表示基準(平成27年国税庁告示第18号)、消費者庁の食品表示基準、国税庁の「酒類の表示に関する説明事項(各品目共通)」の三本を別々に数えても、この二語は一度も出てきません。瓶に載っている甘辛の語は、日本の制度ではなく欧州連合の委任規則(EU)2019/33が義務づけているものです。
甘辛の表示は、どのスパークリングワインにも必ず載っていますか。
名指しされた四つの類型では義務になります。委任規則(EU)2019/33の第47条第1項は、附属書III第A部の語がラベルに載らなければならないと書いています。一方、それ以外の製品については第52条第1項が「載せてよい」という書き方になっていて、任意表示です。つまり、赤白のスティルワインで甘辛の語が書かれていないことはありますが、第47条が名指しする四つの類型では語が入っています。なお第52条第4項は、加盟国または産地の第三国の側に条件の定めがあることを前提に、リキュールワインと微発泡の三つの号を第1項の外に置いています。
ブリュットとエクストラ・ブリュットは、どちらが辛口ですか。
糖分の数字で見ると、エクストラ・ブリュットのほうが辛い側の範囲に置かれています。実際にどちらが表示されるかは、造り手が選んだ結果です。当店の在庫では、ブリュット表示が21本、エクストラ・ブリュット表示が4本でした。
瓶内二次発酵とトラディショナル方式は同じ意味ですか。
同じではありません。委任規則(EU)2019/33の第53条第3項が定める「瓶内発酵」は、澱からの分離を移し替えながらの濾過で行っても名乗れます。第4項の「トラディショナル方式」は、キュヴェを組んだ時から中断なく9か月以上、同じ造り手のところで澱と接し、デゴルジュマンで澱を外したものに限られます。二つは別々の条件表で、9か月をどこから数えるかも違います。
クレマンは甘口もありますか。
いちばん甘い区分には入れません。第53条第5項がクレマンの条件として糖分50グラム毎リットル未満を課しているのに対し、附属書III第A部でいちばん甘い語は50グラム毎リットルを超えるものに使われます。したがってクレマンを名乗る酒は、定義上その語には届きません。やや甘い側の区分までは可能です。
微発泡のワインにも甘辛の表示語は使えますか。
附属書III第A部の語は使えません。第A部の柱書は、発泡性ぶどう酒・ガス添加発泡性ぶどう酒・高品質発泡性ぶどう酒・アロマティック高品質発泡性ぶどう酒の四つを名指しています。規則(EU)1308/2013の附属書VII第II部で1バールから2.5バールと定められた微発泡性ぶどう酒は、この四つに入りません。第52条第4項は、加盟国または産地の第三国の側に条件の定めがあることを前提に、これを第52条第1項の外に置きます。
スパークリングワインという語は日本の法令にありますか。
3件あります。ただし3件とも関税の三本の法令で、関税率表のなかの区分名として出てくるものです。酒税法・酒税法施行令・酒税法施行規則の三本には、「ワイン」も「ぶどう酒」も0件でした。ワインを酒の種類として定義するのは、国税庁の告示です。
比較表の度数が空いている行があるのはなぜですか。
当店の商品名に度数の記載があるものだけを載せているためです。2026年8月27日時点で、表に並べた30本のうち商品名に度数が入っているのは11本でした。瓶のラベルには度数の表示があります。推測で数字を補うことはしていません。






































