余市ウイスキーはまずい?飲んだ評価と定価7,700円
余市は、飲む前の評判と一口目の印象がいちばん食い違うウイスキーだ。「まずい」と書かれた感想は多いが、まずいのではなく、石炭直火蒸溜が生む香ばしさとピート香、そこに重なる潮の気配が強い。軽やかな一杯を想像して口に運ぶと、この三つが一度に押し寄せる。ただし一口目のあとに、別の層が来る。この記事では、2026年4月に「北海道 余市蒸溜所」へ名を改めたつくり手の現在地から始めて、「まずい」の中身、実際に飲んだ評価、飲み方、ニッカのモルト30本との比べ方、参考小売価格7,700円という値段の順にたどる。後半では、酒税法がウイスキーそのものの味を一度も判定していないことを条文で確かめる。
余市ウイスキーとは|北海道 余市蒸溜所が生むシングルモルト

余市は、北海道余市町のひとつの蒸溜所だけでつくられたモルト原酒から仕立てられるシングルモルトだ。複数の蒸溜所の原酒を混ぜるブレンデッドとは成り立ちが違い、産地の性格がそのまま瓶の中に残る。手がけたのはニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝である。
竹鶴政孝はスコットランドで蒸溜を学び、本場に近い気候の土地を探して余市にたどり着いた。冷涼で湿った空気と、日本海から吹きつける潮まじりの風が、この銘柄の骨格をつくっている。1934年に蒸溜所を構えて以来、ここのモルトは同じ土地で寝かされ続けてきた。
そして2026年、つくり手の側で一つの動きがあった。ニッカウヰスキーは同年2月5日のリリースで、4月1日から三つの拠点の名前を変えると発表している。「余市蒸溜所/北海道工場」は「北海道 余市蒸溜所」へ、「宮城峡蒸溜所/仙台工場」は「仙台 宮城峡蒸溜所」へ、「栃木工場」は「栃木エイジングセラー」へ。同じリリースは、目指す位置として「プレミアムウイスキーカテゴリーでグローバルトップ10入り」を挙げ、その脚注でカテゴリーの範囲を数字で切っている。
アサヒビール/ニッカウヰスキー ニュースリリース 2026年2月5日「ニッカウヰスキー 蒸溜所・工場の名称変更に関するお知らせ」脚注※1: 日本では参考小売価格2,000円(700ml)以上のウイスキー
三つとも、工場という語を外して地名を頭に置く形に揃えられた。つくる場所を売り物の一部として扱うという宣言に近い。余市がどんな味なのかという問いは、その場所で何が起きているのかという問いと切り離せない。
その場所は、いまも見学を受け付けている。ニッカウヰスキーの北海道 余市蒸溜所の公式ページから予約でき、蒸溜所限定のボトルは現地でしか買えないので、お土産として選ばれることも多い。
次の章では、その場所が生む個性が「まずい」という言葉に翻訳されてしまう理由を三つに分けて見ていく。
「余市はまずい」と言われる三つの理由|ピート・潮・石炭直火

「まずい」と書かれた感想を読むと、味そのものを否定しているものは少ない。多くは、想像していた味と違ったという驚きの記述だ。その驚きをつくっている要素は、はっきり三つに分けられる。
一つめ|ピート香が一口目の前に立つ
余市の香りは、グラスに鼻を寄せた瞬間に煙とヨードを思わせる方向から立ち上がる。バニラや蜂蜜のような甘い立ち上がりを期待していると、順番が逆に感じられる。ピート香は好みが最も割れる要素で、慣れるまでは強さがそのまま雑味に読み替えられやすい。同じ理由でアイラのモルトも評価が二分される。ピートの強い銘柄を横に並べて飲むと、余市の位置がつかみやすくなる。
二つめ|潮の気配が甘みの手前に来る
海から数百メートルの土地で寝かされた原酒には、しばしば塩気に近いニュアンスが宿ると言われる。余市の場合、この気配が中盤にはっきり出る。甘い酒として飲もうとすると、この塩気が邪魔に感じられる。逆に、食事と合わせる酒として飲むと同じ塩気が働き手に変わる。
三つめ|石炭直火蒸溜の香ばしさが重い
ポットスチルを石炭の直火で熱する方式は、世界でもごく限られた蒸溜所しか続けていない。釜肌が高温になることで、麦の成分がわずかに焦げ、香ばしさと厚みが生まれる。この厚みは長所として語られる一方、軽さを求める飲み手には重さとして届く。度数45%という現行のノンヴィンテージの設定も、その重さを後押しする。
つまり「まずい」の正体は、品質の問題ではなく方向のずれだ。やわらかさを求めるなら宮城峡のような姉妹蒸溜所の一本が応えるし、力強さを楽しみたいなら余市が応える。次の章では、その力強さが実際にどう出るのかを、一段ずつ確かめていく。
実際に飲んだ評価|外観・香り・味わい

ここからは、現行のシングルモルト余市(700ml・45%)を基準に、レビューとして外観と香り、味わい、そして総評の順で記す。年数表記のある一本と迷う人が多いので、比べやすいように余市10年 新ボトルの印象も並べて添える。
外観と香り
グラスに注ぐと、赤みの寄った深い琥珀色が立つ。香りは三段に分かれて届く。最初に石炭直火由来の香ばしさとピートの煙、次に潮とヨード、そして最後に麦芽と熟したりんごの甘い層が来る。その甘い層は最初から鼻に届くのではなく、二呼吸ほど置いてから現れる。この時間差が、一口目の印象を大きく左右する。
味わい
口に含むと、香ばしい煙とモルトの厚みが同時に広がる。ピートの苦みとかすかな塩気が中盤を支え、そのあとから麦芽とドライフルーツの甘みが追いかけてくる。質感は重くオイリーだが、後半は素直にほどけていく。余韻は長めで、最後に香ばしさと塩気が残る。10年は同じ骨格のまま角が丸く、甘みが早い段階で顔を出す。年数表記のぶんだけ、初めての一本としては入りやすい。
総評
結論として、余市は「飲みやすさ」を基準に選ぶ酒ではない。個性の強さを基準に選ぶ酒だ。同じニッカでも、りんごや洋梨を思わせる宮城峡は正反対の方向を向いている。二本を並べると、どちらが優れているかではなく、自分がどちらを求めていたのかがわかる。それが「まずい」という感想への一番早い答えになる。なお、個性が強いことと評価が低いことは別で、ニッカのモルトは国際的な品評会で賞を重ねてきた。受賞の一覧はニッカウヰスキーの公式サイトで公開されている。
「余市ウイスキーはまずい?飲んだ評価と定価7,700円」に関連するおすすめ商品
ここではウイスキーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
飲み方で変わる表情|ストレート・ロック・ハイボール

余市ほど飲み方で顔が変わるモルトは多くない。同じ一本を三つの飲み方で試すと、「まずい」と感じた要素がそのまま長所に反転することがある。
ストレート|個性が最も素直に出る
香ばしさとピート香を正面から受け取れるのがストレートだ。ただし一口目の刺激は強い。常温の水を数滴だけ落とすと、香りの層がほどけて麦の甘みが先に出てくる。チェイサーを別のグラスで用意し、一口ごとに口を戻しながらゆっくり進めたい。
ロック|苦みが落ち着き輪郭が締まる
氷を入れると温度が下がり、ピート由来の苦みが後ろに下がる。潮気と甘みの釣り合いが整い、香ばしさの輪郭だけが残る。氷が解けるにつれて少しずつ加水されるので、一杯の中で味の移ろいを追える。食事と合わせるならこの形が扱いやすい。
ハイボール|「まずい」と感じた人の入口
炭酸で割ると、煙の香りが軽くなって心地よいアクセントに変わる。度数45%の余市はソーダに負けず、薄めても風味の芯が残る。比率は一対三から始めて、物足りなければ一対二へ寄せる。レモンピールを一枚だけ搾ると、潮気が塩レモンのような方向に転ぶ。合わなかったという人には、まずこの一杯を勧めたい。それでも合わなければ、ウイスキー買取で手放す選択肢もある。
余市と飲み比べたいニッカのモルト30本を価格の安い順に比較

余市を一本だけ見ていても、その立ち位置はつかみにくい。リンクサス酒販の取扱実績から、余市15本・宮城峡8本・竹鶴7本の合計30本を選び、価格の安い順に並べた。三つとも産地は日本で、余市と宮城峡の原酒を重ねたのが竹鶴という関係にある。竹鶴ピュアモルトを挟むと、二つの蒸溜所の距離が味の上で測れる。
表の上のタブで、おすすめ順と価格順を並び替えできる。入口は現行のノンヴィンテージ、頂点には余市1987や竹鶴35年が立つ。終売品や蒸溜所限定が多く、継続的に公表される定価を持たない銘柄が大半なので、この表に定価欄は設けていない。並んでいるのは当店での販売価格だ。
一覧で眺めると、同じニッカのモルトの中に百倍を超える価格差があるとわかる。当店の値札でいえば、下は七千円台から上は八十八万円までだ。現行のノンヴィンテージと余市20年貯蔵の旧ボトルは、同じ石炭直火でつくられながら、寝かせた年数も度数も違う。手頃に余市の輪郭を知るなら、まずは現行のノンヴィンテージが賢い入口になる。
| 系統 | 本数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 余市 | 15本 | ノンヴィンテージ、石炭直火蒸溜500ml、10年、12年、15年、20年貯蔵、1987・1990の年号、限定の樽違い・酵母違い |
| 宮城峡 | 8本 | ノンヴィンテージ、10年、12年、15年、ウッドフィニッシュや酵母違いの限定 |
| 竹鶴 | 7本 | 白ラベル、12年角瓶、17年、21年、25年、35年初期ボトル |
定価と価格の推移|7,700円への改定と10年の復活

余市の値段を語るとき、押さえる点は二つある。2024年4月の価格改定と、年数表記が一度消えて戻ってきたという経緯だ。
まず改定から。いわゆる定価にあたる、アサヒビールの商品情報に載る参考小売価格は、シングルモルト余市700mlが税別7,000円、つまり税込7,700円だ。2024年4月1日出荷分からこの額になり、それまでは税込4,950円だった。上げ幅はおよそ56%である。年数表記のある余市10年は税別12,000円、税込13,200円で、改定前の税込8,800円からちょうど五割上がっている。宮城峡と竹鶴ピュアモルトの参考小売価格も、同じく税別7,000円だ。
| 銘柄 | 2024年3月まで | 2024年4月1日出荷分から | 上げ幅 |
|---|---|---|---|
| シングルモルト余市 | 4,950円 | 7,700円 | 約56% |
| シングルモルト余市10年 | 8,800円 | 13,200円 | 50% |
| シングルモルト宮城峡 | 4,950円 | 7,700円 | 約56% |
| 竹鶴ピュアモルト | 4,950円 | 7,700円 | 約56% |
次に年数表記の話をする。10年・12年・15年・20年は2015年に姿を消したが、10年だけは2022年に年間9,000本という数量を付けて戻ってきた。7年ぶりの復活で、いまも数量限定の扱いが続いている。「余市の年数表記はすべて終売」という説明は、この一本については当てはまらない。
では実際にいくらで買えるのか。ノンヴィンテージは市場で7,000円台から8,000円台で見かけることが多く、当店価格は8,250円だ。参考小売価格の近くで動いている。これに対して余市10年の新ボトルは当店価格33,000円で、税込13,200円のちょうど2.5倍まで開く。余市15年は99,000円、余市12年のように終売のまま戻っていない年数は、在庫が減るほど幅が広がっていく。
どこで買えるかも、この二段でほぼ決まる。ノンヴィンテージは酒販店やネットショップで見つかり、当店でも常時扱っている。年数表記や蒸溜所限定は置いている店が限られ、見かけたときが確保のタイミングだ。終売と品薄の全体像は余市の終売・品薄と希少ボトルにまとめてある。
アサヒビール 商品情報「シングルモルト余市」「シングルモルト余市10年」「シングルモルト宮城峡」「竹鶴ピュアモルト」の各ページに記載の参考小売価格(いずれも税別)酒税法はウイスキーの味を決めていない|第三条第十五号を読む

「まずい」という言葉をめぐって、少し角度を変えてみたい。日本の法律は、ウイスキーの味について何か言っているのだろうか。答えを先に書くと、ウイスキーの定義そのものは味に触れていない。酒税法第三条は「その他の用語の定義」という見出しで用語を並べており、酒類の品目にあたるのは第七号の清酒から第二十三号の雑酒までの十七だ。ウイスキーはその十七のうちの第十五号にある。
酒税法(昭和二十八年法律第六号)第三条第十五号イ・ロ十五 ウイスキー 次に掲げる酒類(イ又はロに掲げるものについては、第九号ロからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)をいう。
イ 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が九十五度未満のものに限る。)
ロ 発芽させた穀類及び水によつて穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が九十五度未満のものに限る。)
並んでいるのは、原料と、工程と、一つの数字だけだ。発芽させた穀類と水。糖化と発酵と蒸留。そして留出時のアルコール分が九十五度未満であること。熟成年数も樽の材質も、この号には一語も出てこない。実際、酒税法の全文を通しても「熟成」という語は一度も現れない。
では香りと色はどうか。続くハは、イかロにアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたものを、同じくウイスキーに含める。つまり「香味」も「色」もこの号に出てくる。ただし、どちらも加えてよい材料の名前としてであって、測る物差しとしてではない。色を測る語である「色沢」は、第十五号に一度も現れない。
ハにはもう一つ条件が付く。イかロのアルコール分の総量が、加えたあとの総量の百分の十以上であること。この一割はアルコールの量の話で、しかも水と色素は分母に数えられていない。体積で見た取り分は、この一割とはまったく別の話になる。味で線を引かないというのは、そういうことでもある。
税率の側も同じで、動かしているのは度数という数字だ。第二十三条第一項第三号は蒸留酒類を一キロリットルにつき二十万円とし、二十一度以上のものには二十度を超える一度ごとに一万円を加える。度数45%の余市なら四十五万円になる。第三項はウイスキー、ブランデー及びスピリッツでアルコール分が三十七度未満のものを一律三十七万円とし、そこから下がらない床を置いている。
ただし、税率の条文そのものが「類似」の語を書き込んでいる場所が一つだけある。第二十三条第四項第二号の「みりん及び雑酒(その性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものに限る。)」で、ここは二万円だ。酒税法に「類似」は四回。三回までは第三条、つまり品目を決める側にあり、税率の章に立っているのはこの一回だけである。ウイスキーの隣には、そのどちらも無い。
味と色で決まる酒は二つだけ|合成清酒と発泡酒

その三回の「類似」が置かれた第三条を見ると、味と色を見て品目を決めている号が二つある。目印になるのは「香味、色沢その他の性状が」という一句だ。
第八号 合成清酒|清酒に類似するもの
第八号は、アルコールやぶどう糖などを原料としてつくった酒類のうち、その香味、色沢その他の性状が清酒に類似するものを合成清酒と呼ぶ。原料の道筋は清酒と違うのに、出来上がりが清酒に似ていれば、この号に入る。
第十八号ハ 発泡酒|ビールに類似するもの
第十八号は発泡酒の号で、イとロは麦芽やホップという原料で線を引く。そのどちらにも当たらないものを拾うのがハだ。
酒税法第三条第十八号ハハ イ又はロに掲げる酒類以外の酒類で、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定めるもの
この二つが、酒税法が味と色を物差しにしている全部だ。「色沢」という語は、酒税法の本則に二回しか出てこない。その二回とも、いま挙げた二つの号にある。ウイスキーの第十五号は、この物差しの側に入っていない。
数え方でいうと、酒税法の全文で「香味」は九回使われるが、そのうち七回は「香味料」という原料の名前だ。味を測る言葉としての「香味」は、前述の二回しかない。
| 法令と条項 | 何に似ていることを見るか | そこで決まること |
|---|---|---|
| 酒税法 第三条第八号 | 清酒に類似するもの | 合成清酒という品目に入るかどうか |
| 酒税法 第三条第十八号ハ | ビールに類似するもの | 発泡酒という品目に入るかどうか |
| 酒税法施行規則 第十三条の表 | 清酒に類似しないもの | 合成清酒に混和してよい限度 |
| 酒税法施行令 第五十六条第三項第三号 | ウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツ | 製造場から出すのに税務署長の承認が要るかどうか |
| 酒税法施行規則 第十七条第一号 | ウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツ | 同上 |
五文のうち三つは清酒とビールに向いていて、ウイスキーの名が出てくるのは下の二つだけだ。しかも決めているのは、その酒がウイスキーかどうかではない。ウイスキーではないスピリッツを、製造場から出してよいかどうかである。そこで何が起きているのかを次の章で見る。
物差しは「似ているもの」の上に立つ|承認の二段

酒税法第五十条は「(承認を受ける義務)」という見出しを持ち、七つの場合を並べている。そのうち第四号は、ウイスキーのイ・ロとブランデーのイに当たる酒類を、スピリッツの製造の原料に供しようとするときだ。第七号は受け皿の号で、「前各号のほか、酒類の製造、貯蔵又は販売に関し酒税の取締り又は保全上必要がある場合で政令で定めるとき」と書いてある。中身は政令に預けられている。
政令の段|似た味と、似せた見せ方が重なったとき
その政令が酒税法施行令第五十六条第三項で、四つのときを挙げる。第一号は政令が定める特定の焼酎をつくろうとするとき、第二号は木製の容器に貯蔵したアルコールや焼酎を製造場から移出しようとするとき、第四号は財務省令への委任だ。そして第三号がこうである。
酒税法施行令(昭和三十七年政令第九十七号)第五十六条第三項第三号三 香味、色沢その他の性状がウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツを当該酒類の製造場から移出しようとするとき(酒類製造者が、当該スピリッツについて専らウイスキー又はブランデーに用いるものと同様の表示、広告その他これらに類する行為をしている場合に限るものとし、法第五十条第一項第四号又は前号に該当する場合を除く。)。
読み落としやすいのは括弧の中だ。味と色が似ているだけでは、この号は動かない。つくり手自身が、専らウイスキーとブランデーに使うのと同じような表示や広告をしている、という条件が重ねられている。似ていることと、似せて売っていること。二つが揃ってはじめて承認が要る。
省令の段|見せ方を問わずに拾う
その第四号が「その他財務省令で定めるとき」と受け、財務省令が酒税法施行規則第十七条になる。第一号にこう置かれている。
酒税法施行規則(昭和三十七年大蔵省令第二十六号)第十七条第一号一 香味、色沢その他の性状がウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツを移出しようとするとき(法第五十条第一項第四号又は令第五十六条第三項第二号若しくは第三号に該当する場合を除く。)。
「香味、色沢その他の性状がウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツを」までは、政令の第三号と一字も違わない。分かれるのはそのあとの二点だ。政令にある表示や広告の限定が、省令には無い。そして除いている相手の数が違う。政令は法第五十条第一項第四号と前号の二つを、省令は法第五十条第一項第四号と政令の第二号・第三号の三つを、それぞれ名指しで除いている。似せて売っていれば政令で、そうでなくても省令で捕まる。
ただし、この二つが覆っているのは「スピリッツという品目のもの」だけだ。第三条第二十号のスピリッツはエキス分が二度未満のものに限られるので、同じ見た目でもエキス分が二度以上あれば別の品目になり、どちらの号にも当たらない。第五十条は保税地域からの引取りにも一言も触れていない。似ているかどうかを測る網は、法が自分で引いた品目の線までしか届かない。
ここで第三条第十五号に戻る。この号はウイスキーの味を一度も測らない。ところが施行令と施行規則は、ウイスキーに似ているかどうかを二度も測る。物差しは、本体ではなく隣に立つものの上に置かれている。似ているかを判定するには似せられる側の像が要るが、像を描いているのは第十五号のイとロで、そこにあるのは原料と工程と一つの数字だけだ。ハに並ぶ香味料と色素は、足してよい材料であって像の一部ではない。目盛りの基準になる実物は、法令の外にある。
しかも、似ているかどうかが効くのは承認が要るかどうかの入口までだ。入ったあとの可否について、第五十条第二項は「酒税の取締り又は保全上特に必要があると認めるときを除いては、同項の承認を与えるものとする」と定めている。味の良し悪しは、そこにも出てこない。
法律が「飲用に供し難」と書いた一文|酒の味に最も近づいた場所

それでは、酒税法が酒の「飲めるかどうか」に触れる場面はどこか。飲めなくする側には二か所ある。第五十条第一項第六号「製造場にある酒類に酒類として飲用することができない処置を施そうとするとき」と、税務署長が酒母やもろみに同じ処置を命じられる第四十四条第三項だ。これに対して、勝手に飲めなくなった側は一か所しかない。第五十条の二第二項は、酒類製造者又は酒母等の製造者が直ちに税務署長へ届け出なければならない場合を三つ挙げており、その第二号がこれである。
酒税法第五十条の二第二項第二号二 製造場にある酒類が腐敗その他の事由により飲用に供し難くなつたとき。
「飲用に供し難」という言い回しは、e-Gov の全法令横断検索でも酒税法の一文しか返ってこない。酒の状態そのものを言葉にした、たった一つの一文だ。人が飲めなくするときは法が二度出てくるのに、勝手に飲めなくなったときは一度しか出てこない。しかもその一度には、条件が二重にかかっている。第一に、対象は製造場にある酒類に限られる。第二に、判断して届け出るのはつくり手であって、飲んだ人ではない。
続く第三項は、税務署長が相当の期間を定めてその酒類の処分を禁止できると定める。飲みにくくなった酒に法律が向ける関心は、味の評価ではなく、税をかけたものが行方をくらますことへの警戒だ。製造場の門を出たあとの一本については、法律はもう何も言わない。棚に並んだ余市がうまいかまずいかは、最初から制度の外にある。
「蒸溜所」という語も、法令には一つも無い
ついでに一つ。ニッカウヰスキーが2026年4月から名乗る「北海道 余市蒸溜所」の「蒸溜所」という語を e-Gov で引くと、現行法令の中に一文も見つからない。「蒸留所」と書き換えても、「ポットスチル」と書いても、結果は同じで零だ。法律が酒をつくる場所を数えるときに使うのは「製造場」で、この語は酒税法の本則だけで百十四回、附則を含めれば二百八十三回現れる。免許は製造場ごとに与えられ、税を納める地も製造場の所在地で決まる。
ちなみに「蒸溜」という表記そのものは現行法令に三文ある。建築基準法の別表と、大気汚染防止法の施行令・施行規則で、三つとも危険物と排煙の側の話だ。ニッカが選んだ「溜」の字は、酒の法令に一度も置かれていない。
会社は場所の名前を磨き、法律は場所を数として扱う。味についても同じで、つくり手と飲み手が言葉を尽くす領域に、制度はほとんど降りてこない。だから「まずい」は最後まで個人の言葉として残る。そして前半で見たとおり、その言葉は一杯ごとに動く。どちらが本当かを決める物差しは、ここまで見てきたとおり制度の側に用意されていない。ストレートで出した結論と、ハイボールで出した結論は、どちらも同じ資格で正しい。「まずい」の中身が方向のずれだと分かっても、どちらの方向が正しいかまでは決まらない。
飲まない余市の査定・買取はリンクサスへ

飲んでみて合わなかった一本や、贈られたまま棚に置いてある一本は、査定に出す選択肢がある。リンクサス酒販では、現行のノンヴィンテージから終売の年数表記、蒸溜所限定や年号ボトルまで、一本から査定している。
査定の方法は、写真を送っての事前見積、宅配買取、高額品の出張買取の三つだ。窓口はウイスキー買取から利用できる。販売側の在庫はリンクサス酒販トップで確認でき、ピートの強い銘柄を横に並べて試したい場合はスモーキーなウイスキーの一覧が手がかりになる。酒類の取引に関する制度は国税庁の酒類に関する情報にまとまっている。
よくある質問

余市ウイスキーはなぜ「まずい」と言われるのですか?
品質ではなく、個性の強さが理由です。石炭直火蒸溜が生む香ばしさ、ピートの煙、海辺で寝かされた原酒の潮の気配。この三つが一口目に一度に届くため、軽やかな一杯を想像していた人には驚きが先に立ちます。二呼吸ほど置くと麦芽とりんごの甘い層が出てきますし、加水やハイボールにすれば煙は軽くなります。方向の違いであって、欠点ではありません。
シングルモルト余市の定価はいくらですか?
アサヒビールの商品情報に載る参考小売価格は、700mlで税別7,000円、つまり税込7,700円です。2024年4月1日出荷分から、それまでの税込4,950円が改定されました。上げ幅はおよそ56%で、宮城峡と竹鶴ピュアモルトの参考小売価格も同じく税別7,000円です。当店の販売価格は8,250円です。
余市10年はもう買えないのですか?
買えます。10年・12年・15年・20年は2015年にいったん姿を消しましたが、10年だけは2022年に年間9,000本という数量を付けて7年ぶりに戻りました。いまも数量限定の扱いで、参考小売価格は税別12,000円、税込13,200円です。「余市の年数表記はすべて終売」という説明は、この一本には当てはまりません。
余市はどんな飲み方が向いていますか?
個性を正面から受け取るならストレート、苦みを落ち着かせたいならロック、初めての一杯ならハイボールです。ハイボールは一対三から始めて、物足りなければ一対二へ寄せてください。度数45%あるので炭酸に負けず、煙の香りだけがすっと立ちます。合わなかったと感じた人ほど、この形で印象が変わります。
余市と宮城峡・竹鶴は何が違うのですか?
つくりと立ち位置が違います。余市は北海道の単一蒸溜所のモルトで、石炭直火蒸溜による香ばしさが核です。宮城峡は仙台の姉妹蒸溜所で、スチームによる間接加熱からりんごや洋梨を思わせる華やかさが生まれます。竹鶴ピュアモルトは、その二つの蒸溜所のモルトを組み合わせた一本です。
余市蒸溜所の名前が変わったと聞きました。
2026年4月1日から「北海道 余市蒸溜所」になりました。ニッカウヰスキーが同年2月5日に発表したもので、宮城峡蒸溜所/仙台工場は「仙台 宮城峡蒸溜所」へ、栃木工場は「栃木エイジングセラー」へ改まっています。工場という語を外し、地名を頭に置く形に揃えられました。
酒税法はウイスキーの味を決めているのですか?
決めていません。第三条第十五号がウイスキーとして挙げるのは、発芽させた穀類と水を原料に糖化・発酵させ、留出時のアルコール分が九十五度未満になるよう蒸留したものです。「香味料」と「色素」は加えてよい材料として出てきますが、味や色を測る言葉としては使われていません。酒税法の全文に「熟成」という語は一度も現れず、ウイスキーの税率を動かすのは度数だけです。
味と色で品目が決まる酒はあるのですか?
あります。酒税法第三条で「香味、色沢その他の性状が」という物差しを使うのは二か所だけで、第八号の合成清酒が清酒に類似するかどうか、第十八号ハの発泡酒がビールに類似するかどうかです。「色沢」という語は酒税法の本文に二回しかなく、その二回ともこの二つの号にあります。
ウイスキーに似たお酒には規制があるのですか?
あります。酒税法施行令第五十六条第三項第三号は、香味、色沢その他の性状がウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツを製造場から出すとき、つくり手がウイスキーと同じような表示や広告をしている場合に限り、税務署長の承認を求めます。表示をしていない場合は酒税法施行規則第十七条第一号が同じ承認を求めます。ただし対象はエキス分が二度未満のスピリッツに限られ、この線の外へは網が届きません。
飲まない余市を売るときは何を用意すればよいですか?
ボトル本体に加えて、外箱と冊子があれば揃えてください。査定では年数表記の有無、液面の高さ、ラベルとキャップシールの状態、付属品の有無を見ます。写真はラベル全体と液面が入るように撮っていただくと、事前見積の精度が上がります。宅配買取と出張買取のどちらにも対応しています。
最終更新:(リンクサス酒販 鑑定士チーム監修)
▶ お酒を探す:リンクサス酒販トップ
▶ お酒の査定・買取:ウイスキー買取






































