ホットバタードラムとは|作り方と黄金比、度数とバターの八十

ホットバタードラムとは|作り方と黄金比、度数とバターの八十

ホットバタードラムは、温めたマグにバターと砂糖とスパイスを入れ、ラムを注いで熱湯で満たす一杯だ。作り方だけを見れば、材料を四つ足すだけで終わる。

ところがこの四つは、日本の制度の中でそれぞれ別の場所に住んでいる。バターは乳等命令が成分規格を置き、砂糖とスパイスは食品表示基準の別の号に並び、ラムは酒税法の蒸留酒類に入る。そして乳等命令と食品表示基準と関税率表は、測るものも線の向きも違えながら、そろって「八十」という同じ数字に線を引いている。酒税法だけが、別の数字を使う。

この記事では、まず作り方と黄金比、ベースに向くラムの選び方、度数とカロリーを実用の順に整理する。そのうえで、バターとラムが越える境目の数字を、現行法令の条文から一つずつ確かめていく。一八六二年のアメリカのレシピがバターを何で量っていたかも、原典の記述から見る。

ホットバタードラムとはどんな飲み物か

ホットバタードラムとはどんな飲み物か
ラムは色でも造りでも分かれる

ホットバタードラムは、ラムを熱湯で割り、バターと砂糖を溶かし込んだ温かいカクテルである。冷たいカクテルと違って氷もシェイカーも使わない。必要なのは、湯を注いでも割れないマグと、スプーン一本だけだ。

味の骨格は、バターの乳脂肪と砂糖の甘さが湯に溶けて、ラムの香りを丸く包むところにある。ラムを単体で湯割りにすると、アルコールの立ち上がりが鼻に来やすい。そこへ脂肪分が入ると、香りの角がとれて口当たりが厚くなる。同じ理屈で、アイリッシュコーヒーは生クリームを浮かべ、エッグノッグは卵と牛乳を使う。温かい酒と乳脂肪の組み合わせは、いくつもの土地で別々に育ってきた。

寒い季節の飲み物として扱われることが多く、暖炉やスキー場と結びつけて語られる。もっとも、そうした情景はあとから付いたもので、成り立ちの側から見ると事情はもう少し素っ気ない。バターも砂糖も、香りづけである前にまずカロリーだった。この点は歴史の章であらためて見る。

なお、国際バーテンダー協会が公認しているカクテル一覧に、この一杯は入っていない。公式サイトの一覧を全ページ取得して数えると百二品で、ホットバタードラムはその中にない。標準レシピが一つに決まっている飲み物ではなく、家庭でもバーでも配合の幅が広い、という前提で読んでほしい。

ホットバタードラムの作り方と黄金比

ホットバタードラムの作り方と黄金比
湯の量で強さが決まる

基本の配合は次のとおり。ラム四十五ミリリットルに対し、湯を百二十から百五十ミリリットル。バターは十グラム前後、砂糖は小さじ一から二が目安になる。

材料 分量の目安 役割
ラム 45ml 香りと強さの土台
無塩バター 10g前後 口当たりの厚みを作る
ブラウンシュガー 小さじ1〜2 甘さとコクを足す
熱湯 120〜150ml 全体をのばす土台
シナモン・ナツメグ 各ひとつまみ 温かみのある香りづけ
シナモンスティック 1本(好みで) 仕上げの飾りと香り

手順は三段階に分けるとうまくいく。第一に、温めたマグへ砂糖とバターとスパイスを入れ、少量の熱湯でよく溶かす。第二に、ラムを注いで軽く混ぜる。第三に、残りの熱湯を加えて仕上げる。砂糖とバターを先に溶かしてからラムを入れるのが要点で、順序を入れ替えるとバターが浮いたまま分離しやすい。

湯の量が味と強さの両方を決める。百二十ミリリットルなら濃く、百五十ミリリットルなら軽い。甘さが足りないと感じたら、砂糖より先に湯を減らしてみるほうが、全体の輪郭が締まる。

バターバッターを作り置きする

本場でよく使われるのが、バターと砂糖とスパイスをあらかじめ練り合わせておく方法だ。やわらかくしたバターにブラウンシュガー、シナモン、クローブ、ナツメグを混ぜ込み、冷蔵庫で固めておく。飲みたいときにスプーン一杯をマグへ落とし、湯とラムを注ぐだけで一杯が仕上がる。

バニラアイスを少量混ぜ込むレシピもあり、そのぶんクリーミーで甘くなる。まとめて作って冷凍しておけば、来客時にもすぐ出せる。甘さとスパイスの強さはこのバッターの配合で決まるので、最初は基本量で作り、二杯目から好みへ寄せていくとよい。

スパイスは削るか、砕くか

シナモンとナツメグとクローブは、粉で入れるか、原形を砕いて入れるかで出方が違う。粉はすぐ立ち上がるかわりに沈殿しやすく、原形は香りが出るまで時間がかかるかわりに最後まで持つ。マグ一杯を十分ほどかけて飲むなら、粉をひとつまみ入れておいて、仕上げにナツメグを削りかける組み合わせが扱いやすい。

ちなみに、この三つはどれも日本の食品表示基準の別表第一で「香辛料」の区分に並んでいる。そこではシナモン(桂皮)クローブ(丁子)ナツメグ(肉ずく)と、和名を括弧書きで添えた形で書かれている。一八六二年のレシピが指定していたオールスパイスも、同じ行にオールスパイス(百味こしょう)として載っている。

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パンペロ アニバサリオ 700ml18位定番 パンペロ アニバサリオ 700ml
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市場相場2,800〜3,800円台(700ml・実勢・2026年6月時点)

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輸入ラムの多くはメーカー希望小売価格を公表しない「オープン価格」のため、定価(list_price)は掲載せず市場相場の目安のみを記載しています(2026年6月時点の実勢)。楽天/Amazon価格は各モールの実勢で、同一銘柄・容量が見つからない場合は検索リンクのみ掲載しています。

ダーク・ゴールド・スパイストの選び分け

熱を加えると、樽由来の香りが前に出てくる。ダークラムはカラメルと糖蜜の甘い香りがバターと溶け合い、いちばん厚い一杯になる。ゴールドラムはその中間で、香りが強すぎず、砂糖の量を自分で決めたいときに扱いやすい。

スパイストラムを使うと、バニラやシナモンがもともと入っているぶん、追加のスパイスは控えめでよい。逆にホワイトラムは輪郭が素直に立つので、バターの風味をまっすぐ味わいたいときに向く。ラムの種類と選び方もあわせて見ると、色の違いが造りのどこから来るのかがつかめる。

度数の高いオーバープルーフを使う手もあるが、湯で割る前提でも香りが強く出るので、まずは四十度前後の一本で配合を決めるのが安全だ。ダイキリやモヒートで使い慣れた一本があるなら、それをそのまま温かい側へ持ち込んでも構わない。

ホットバタードラムの度数とカロリーの目安

ホットバタードラムの度数とカロリーの目安
四大スピリッツの中での位置

度数は湯の量で決まる。四十度のラムを四十五ミリリットル使い、湯を百二十ミリリットル加えると、全体は約百六十五ミリリットルになる。純アルコールは四十五掛ける〇・四で十八ミリリットル。十八を百六十五で割ると約十一パーセントになる。

湯を百五十ミリリットルにすれば全体は百九十五ミリリットルで、十八割る百九十五は約九パーセント。バターと砂糖の体積を無視した概算だが、おおむね九から十一パーセントの帯に収まると考えてよい。ワインとほぼ同じか、やや低いくらいだ。

ラム40度の量 湯の量 おおよその度数
45ml 120ml 約11%
45ml 150ml 約9%
60ml 150ml 約11%
30ml 150ml 約7%

カロリーは材料を足し合わせて見当をつける。ラム四十五ミリリットルでおよそ百キロカロリー、無塩バター十グラムでおよそ七十五キロカロリー、砂糖小さじ二でおよそ三十キロカロリー。合計で二百キロカロリー前後になる。カクテルの度数の考え方と同じ計算だが、バターが乗るぶんカロリーは高めに出る。

ここで注意しておきたいのは、温かいと飲む速度が上がりやすいことだ。度数そのものはワイン並みでも、湯気で香りが立つぶん口当たりが軽く感じられる。マグ一杯を十分から十五分かけて飲むくらいの間合いがちょうどよい。

バターを名乗る線は「八十」で引かれている

バターを名乗る線は「八十」で引かれている
乳脂肪はどこで測るのか

マグに落とす十グラムの塊をどう扱うかは、日本では二つの命令と一つの法律が別々に決めている。名乗りを決めるのは乳等命令で、あとの二つは隣の名前と輸入の分類を決めている。そして三つとも、同じ「八十」という数字を使いながら、線の引き方が違う。

まず国内で作り、国内で売る側。根拠は乳及び乳製品の成分規格等に関する命令である。長く「乳等省令」と呼ばれてきたが、二〇二四年四月一日に食品衛生基準行政が厚生労働省から消費者庁へ移ったのに伴い、題名が「省令」から「命令」へ改められた。法令番号は昭和二十六年厚生省令第五十二号のままで、本文はこの命令においてという書き出しに置き換わっている。添加物の混合割合を承認するのも、いまは内閣総理大臣だ。

その第二条第十五項が、バターの定義を置いている。

この命令において「バター」とは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から得られた脂肪粒を練圧したものをいう。

乳及び乳製品の成分規格等に関する命令 第二条第十五項

ここに数字は一つも出てこない。脂肪粒を練圧したものという工程だけで定義している。「練圧」という語は、現行の日本の法令を横断して検索しても、この命令の一か所にしか現れない。「脂肪粒」も同じ命令の二か所だけである。どちらもバターとその周辺を書くためだけに用意された語だ。

数字は定義ではなく成分規格の側にある

では八十はどこにあるかというと、同じ命令の別表二である。乳製品ごとに規格を並べた表の中に、こう置かれている。

(2)バター 成分規格 乳脂肪分八〇・〇%以上 水分一七・〇%以下 大腸菌群陰性

乳及び乳製品の成分規格等に関する命令 別表二(三)乳製品の成分規格並びに製造及び保存の方法の基準

八〇・〇%には上限が書かれていない。乳脂肪分が九十パーセントでも九十五パーセントでも、この命令の側からは何も言われない。線は下からしか引かれていない。

ついでに言うと、すぐ隣の(3)にはバターオイルが並んでいて、そちらは乳脂肪分九九・三%以上・水分〇・五%以下である。バターから水分と無脂乳固形分をほとんど抜いたものが、別の名前を与えられて別の行に立っている。

バターの項は、成分規格の三行で終わっている

この別表二の(三)の項には、乳製品が二十七種類並んでいる。ただし全部に同じ形の規定が付くわけではない。「製造の方法の基準」と「保存の方法の基準」の両方が付くのはクリーム、脱脂濃縮乳、調製液状乳、乳飲料の四つだけで、成分規格だけで終わる項は十四ある。一つ手前のクリームは、こうなっている。

(1)クリーム 1成分規格…… 2製造の方法の基準 牛乳の例によること。 3保存の方法の基準 殺菌後直ちに摂氏十度以下に冷却して保存すること。ただし、保存性のある容器に入れ、かつ、殺菌したものは、この限りでない。

乳及び乳製品の成分規格等に関する命令 別表二(三)(1)

これに対してバターの項は「成分規格」の三行だけで終わっている。製造の方法の基準も、保存の方法の基準も、番号を振られた項として存在しない。同じ表の中でアイスクリームには摂氏六十八度で三十分間という加熱殺菌の条件まで書いてあるのに、バターにはそれがない。バターだけが特別なわけではなく、すぐ隣のバターオイルも、プロセスチーズも同じ形だ。それでも、一つ手前のクリームに保存温度が書かれていてバターには書かれていない、その並びには理由がある。

別表二の(五)の項には「乳等の成分又は製造若しくは保存の方法に関するその他の規格又は基準」という一般規定が十二件並んでいる。しかしそこも、乳製品を殺菌する場合には自記温度計付きの殺菌機を使えという条件付きの規定や、運搬時に温度を超えさせるなという規定であって、バターを名指しして温度の上限を置いた項はない。

もっとも、これは扱いが緩いという意味ではない。バターは水分が一七・〇%以下と少なく、乳脂肪の中に水が細かく分散した状態にある。クリームのように水の中に脂肪が浮いているものと比べれば、微生物が増える余地がそもそも小さい。それでも、大腸菌群陰性の一行だけは規格に残っている。

市販のバターの箱に「要冷蔵十度以下」と書いてあるのは、この命令が命じたからではない。保存の方法を書くこと自体は食品表示基準が課した義務で、そこには食品の特性に従って表示するとあり、基準が定められているものだけがその基準に従う。バターには基準が無いので、値のほうは製造者が決めている。規格の側に無い数字が、表示の側から出てくる。

八十を割った先の扱いは、制度ごとに違う

八十を割った先の扱いは、制度ごとに違う
境目の向こうに別の名がある

乳等命令は、乳脂肪分八〇・〇%を下から支えるだけで、下回ったものに名前を与えない。八十という同じ数字を使う制度は、ほかに二つある。ただし分母も、線の向きも、割った先に名前を用意しているかどうかも、三つでばらばらだ。

食品表示基準は油脂含有率で八十を切る

一つ目は食品表示基準、平成二十七年内閣府令第十号である。その別表第三が「マーガリン類」という枠を立て、中を二つに割っている。

マーガリン 食用油脂(乳脂肪を含まないもの又は乳脂肪を主原料としないものに限る。以下マーガリン類の項において同じ。)に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないで作られた可そ性のもの又は流動状のものであって、油脂含有率(食用油脂の製品に占める重量の割合をいう。以下この表及び別表第十九のマーガリン類の項において同じ。)が八十パーセント以上のものをいう。

食品表示基準 別表第三

読みどころは二つある。第一に、ここでの八十は乳脂肪分ではなく油脂含有率だ。植物油でも動物油でも、油脂であればまとめて数える。第二に、括弧の中に乳脂肪を含まないもの又は乳脂肪を主原料としないものに限るという限定が入っている。この一句が、バターがマーガリンを名乗る道をふさいでいる。乳脂肪分八〇・〇%のバターは、油脂含有率で見ても必ず八十パーセント以上になるのに、括弧の限定で最初から外れる。

しかもこの括弧には以下マーガリン類の項において同じと付いているので、限定はファットスプレッドの側にも引き継がれる。乳脂肪を主原料とするものは、油脂含有率が八十パーセントを割っても、この府令の上ではファットスプレッドにもならない。

そして油脂含有率が八十パーセントを割ると、名前が変わる。

ファットスプレッド 次に掲げるものであって、油脂含有率が八十パーセント未満のものをいう。

食品表示基準 別表第三

この「ファットスプレッド」という九文字は、現行の日本の法令を全部さらっても、食品表示基準の中に九回出てくるだけである。ほかの法令には一度も現れない。省令にも政令にも、ほかの内閣府令にもない。表示の場面だけで生きている語だ。

ここで注意しておきたいのは、この定義が置かれているのが表示の基準だという点である。食品表示基準は、何を作ってよいかを決める規格ではなく、作ったものに何と書くかを決める府令だ。だから油脂含有率が七十五パーセントの商品を作ること自体は禁じられていない。禁じられているのは、それを「マーガリン」と名乗って売ることのほうである。

面白いのは表示義務の方向で、油脂含有率を書けと命じられているのはファットスプレッドの側だけである。別表の表示事項の欄には油脂含有率(ファットスプレッドに限る。)とわざわざ括弧で限っている。八十を超えている側は数字を出さなくてよく、割った側だけが何パーセントかを申告する。

関税率表は乳脂肪分で八十を切り、上に蓋もする

二つ目は関税定率法の別表、いわゆる関税率表である。第四類の注三が、輸入されるバターを定義している。

「バター」とは、専らミルクから得た天然のバター、ホエイバター及び還元バター(生鮮のもの及び加塩し又はランシッドしたものに限るものとし、缶詰バターを含む。)をいうものとし、乳脂肪分が全重量の八〇%以上九五%以下で、無脂乳固形分が全重量の二%以下であり、かつ、水分が全重量の一六%以下のものに限る。

関税定率法 別表 第四類 注三(a)

ここには乳等命令に無かったものが二つある。一つは九五%という上限。もう一つは水分一六%以下という数字だ。国内の成分規格は水分一七・〇%以下だから、両者は一ポイントずれている。水分が一六・五%のバターは、乳等命令の規格には適合するが、関税率表の第〇四・〇五項が言う「バター」の枠には入らない。

そして八十を割った先には、また別の名前が用意されている。

「デイリースプレッド」とは、油中水滴型の展延性のある乳化したものをいうものとし、脂肪としては乳脂肪のみを含有し、乳脂肪分が全重量の三九%以上八〇%未満のものに限る。

関税定率法 別表 第四類 注三(b)

整理すると、こうなる。同じ八十でも、乳等命令は乳脂肪分で下限だけを引き、食品表示基準は油脂含有率で上下に分け、関税率表は乳脂肪分で上下に分けたうえに九五という蓋まで置く。割った先の名前は、輸入の分類では「デイリースプレッド」が用意されているのに、国内の表示ではバターの側に名前が無い。ファットスプレッドは、乳脂肪を主原料としないものの名前だからだ。

制度 八十で測るもの 八十以上の名前 八十未満の名前
乳等命令 別表二 乳脂肪分(上限なし) バター 規定なし
食品表示基準 別表第三 油脂含有率 マーガリン ファットスプレッド(いずれも乳脂肪主原料のものを除く)
関税定率法 別表 第四類注三 乳脂肪分(九五%まで) バター デイリースプレッド(三九%以上)

八十をまたいでも税率は変わらない

もっとも、関税率表の側で名前が変わったからといって、払う額が変わるわけではない。第〇四〇五・一〇号のバターは三五%及び一キログラムにつき一、一五九円(脂肪分が全重量の八五%を超えるものは一、三六三円)。第〇四〇五・二〇号のデイリースプレッドも三五%及び一キログラムにつき一、一五九円である。八十の線をまたいでも、税率表の数字は動かない。動くのは名前だけだ。

ちなみに第四類の号注二は、第〇四〇五・一〇号の「バター」に無水バターとギーを含めないと断っている。インド料理で使うギーは、乳脂肪をほぼ百パーセントまで詰めたものなので、バターの号ではなく第〇四〇五・九〇号「その他のもの」へ回る。ただしこの号も脂肪分八五%で二段に分かれるので、ギーは三五%及び一キログラムにつき一、三六三円の側に当たる。八十の線では動かない税額が、八五の線では動く。

エキス分二度と、三十七万円の床

エキス分二度と、三十七万円の床
甘みが入ると分類が動く

バターの側の話が済んだので、ラムの側に移る。こちらにも境目の数字があり、しかもマグの中で実際にまたいでしまう。

酒税法は酒類を四種類に分ける。発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の四つだ。ラムは蒸留酒類の中の「スピリッツ」に入る。その定義がこれである。

スピリッツ 第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のものをいう。

酒税法 第三条第二十号

清酒でもビールでもウイスキーでもない、という消去法のあとに、たった一つの数値条件が残る。エキス分二度未満である。エキス分は同じ第三条の第二号に定義があり、温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。要するに、蒸発しないで残る成分の量だ。

そして二度を超えた側には、別の名前が待っている。

リキュール 酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のもの(第七号から第十九号までに掲げる酒類、前条第一項に規定する溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く。)をいう。

酒税法 第三条第二十一号

マグの中で、ラムはスピリッツの定義から外れる

ここで作り方を思い出してほしい。砂糖を小さじ二杯入れ、バターを十グラム落とす。砂糖もバターも、蒸発しないで残る成分そのものだ。百六十五から百九十五ミリリットルの液体に十五グラム前後の不揮発性成分が入るのだから、エキス分は二度どころではない。

つまり、湯を注ぎ終えた時点で、マグの中身はもう「エキス分二度未満」ではない。もしまったく同じものを瓶か缶に詰めて売れば、それは酒税法の分類上スピリッツではなく、混成酒類のリキュールとして扱われることになる。

では家やバーで作るぶんはどうか。第四十三条第一項は、酒類に水以外の物品を混和して混和後のものが酒類であるときは新たに酒類を製造したものとみなす、と定めている。バターも砂糖も水以外の物品だから、文言の上ではここに当たる。それを外しているのが同条第十項で、酒税法施行令第五十条第十三項が、その「政令で定めるとき」を酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときと書いている。バーの一杯も家の一杯も、ここで適用の外に出る。梅酒のように仕込んで置いておく混和を外すのは同条第十一項のほうで、そちらだけは第十二項が販売を禁じている。

三十七度未満は、税額が水平になる

では、線をまたぐと税額はどう変わるのか。第二十三条を並べてみる。

蒸留酒類は一キロリットルにつき二十万円で、アルコール分が二十一度以上なら二十度を超える一度ごとに一万円が加わる。二十一度以上のスピリッツは、結局度数に一万円を掛けた額になる。四十度なら四十万円だ。

甘味果実酒とリキュールを並べた号は一キロリットルにつき十二万円で、十三度以上なら十二度を超える一度ごとに一万円。こちらも十三度以上なら度数に一万円を掛けた額である。四十度なら同じく四十万円になる。二つの分類は、同じ一本の直線に乗っている。

ところが蒸留酒類の側には、ずっと高い位置に床が置かれている。

蒸留酒類のうちウイスキー、ブランデー及びスピリッツであつてアルコール分が三十七度未満のものに係る酒税の税率は、第一項の規定にかかわらず、一キロリットルにつき三十七万円とする。

酒税法 第二十三条第三項

三十七度未満なら、何度であろうと三十七万円。二十五度でも三十七万円、十五度でも三十七万円である。リキュールの側にも十二万円という床があるが、位置が二十五万円ぶん低い。だから両者の差は度数が下がるほど開き、十三度を割ったところで二十五万円のまま止まる。

アルコール分 スピリッツ(1kLあたり) リキュール(1kLあたり) 差
40度 40万円 40万円 なし
37度 37万円 37万円 なし
30度 37万円 30万円 7万円
20度 37万円 20万円 17万円
12度 37万円 12万円 25万円

読み替えるとこうなる。エキス分二度という線は、三十七度以上の酒では税額を一円も動かさない。十三度未満の酒では一キロリットルあたり二十五万円、つまり一リットルあたり二百五十円を動かし、そこで頭打ちになる。同じ線が、置かれた場所によって効いたり効かなかったりする。

ホットバタードラムを缶に詰めた既製品をあまり見かけない理由をここに求めるのは行き過ぎだが、乳脂肪が入った温かい飲み物を常温流通させる難しさとは別に、分類の帳簿の上でもこの一杯は落ち着きが悪い、とは言える。リキュールとは何かを見ると、砂糖を足しただけで名前が変わる例が他にもいくつも並んでいる。

一八六二年のレシピは、バターを栗の半分で量った

一八六二年のレシピは、バターを栗の半分で量った
スパイスは古くから添えられてきた

アメリカで最初に出版されたバーテンダーの手引きは、ジェリー・トーマスが一八六二年に出した『How to Mix Drinks; or, The Bon-Vivant's Companion』とされる。その二〇七番に、この一杯の祖先が載っている。

項目名は「Hot Spiced Rum」。小さいバーグラスを使い、砂糖を小さじ一杯、ジャマイカラムをワイングラス一杯、混合スパイス(オールスパイスとクローブ)を小さじ一杯、そして栗の半分ほどの大きさのバターを一片入れ、タンブラーを湯で満たす、と書かれている。続く二〇八番は「Hot Rum」で、スパイスを省き、上からナツメグを少し削りかけるとある。

ここで気づくことが二つある。

一つは、この本に「Hot Buttered Rum」という項目名が存在しないこと。バターは確かに材料に入っているのに、名前には出てこない。バターが名前の位置へ上がってくるのは、もっとあとの話になる。

もう一つは、バターの量り方だ。一八六二年の指定は重さでもスプーンでもなく、栗の半分である。木の実の大きさを物差しにして、読み手がその場で見当をつける。ワイングラス一杯という指定も同じで、当時のバーで使われていた小さなワイングラスの容量を前提にしているが、同書の巻末にある度量衡の一覧にも、ワイングラスの換算は載っていない。

その同じバターを、いまの日本の制度は乳脂肪分八〇・〇%以上、水分一七・〇%以下と小数第一位まで書き、輸入の場面ではさらに上限九五%と水分一六%以下を足す。百六十年ほどのあいだに、物差しは栗から小数点へ移った。ホットバタードラムというカクテルそのものは、その間ずっと配合が決まらないままである。

なぜラムとバターだったのか

背景にあるのは、十七世紀以降のニューイングランドとカリブ海の交易だ。カリブ海の製糖で出る糖蜜が北へ運ばれ、ニューイングランドの蒸留所でラムになった。黒糖焼酎と同じく、砂糖づくりの副産物から酒を作る発想である。

そこへバターと砂糖を加えたのは、風味づけである前に熱量の確保だった。冬の寒さの中で、脂肪と糖と酒精を一杯にまとめて摂る。装飾ではなく実用として始まった飲み物が、暖炉のイメージをまとうのは、実用が実用でなくなったあとの話になる。

ホットトディ・グロッグとの違い

ホットトディ・グロッグとの違い
器から違う仲間たち

温かい酒には近縁の呼び名がいくつもある。境目は材料の一つか二つで決まる。

名前 ベース 甘み 脂肪分 特徴
ホットバタードラム ラム 砂糖 バター 脂肪でコクを出す
ホットトディ 蒸留酒全般 蜂蜜・砂糖 なし レモンでさっぱり
グロッグ ラム 砂糖(任意) なし 水で割るのが原型
ホットワイン 赤ワイン 砂糖 なし 果実と香辛料で煮る

ホットトディは蒸留酒を湯で割り、蜂蜜か砂糖とレモンで整える。バターを使わないぶん口当たりが軽く、喉の調子が悪いときに飲まれてきた。ベースはウイスキーでもブランデーでもよく、ラムに限られない。

グロッグはもともと海軍でラムを水で割って配ったのが始まりとされ、砂糖やレモンは後から加わった。温かい形で作れば、砂糖を入れたホットトディにかなり近づく。

ホットワインはグリューワインの名で知られ、赤ワインに砂糖と香辛料と柑橘を入れて温める。ベースが蒸留酒でないぶん度数は低く、鍋でまとめて作るのが前提になる点も違う。焼酎のお湯割りのように、割り材が湯そのものである飲み方とも、甘みと脂肪の有無で線が引ける。

四つを並べると、ホットバタードラムだけが脂肪分を持っている。この一点が味の厚みを作り、同時にバターという別の制度を一つ引き連れてくる。ホットトディやグロッグなら、材料はすべて酒税法と食品表示基準の枠内で済む。バターを一片落とした瞬間から、乳等命令と関税率表の第四類が話に加わる。

作り分けの目安としては、香りをまっすぐ立てたい日はトディ、体を芯から温めたい日はバタードラム、と考えるとよい。トディは蜂蜜とレモンで輪郭がはっきりするぶん、飲み口が軽く、二杯目に進みやすい。バタードラムは一杯で満足感が出るので、寝る前の一杯としてはこちらのほうが収まりがよい。

飲まないラム・洋酒の査定・買取はリンクサスへ

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眠っている一本を確かめる

棚の奥に置いたまま何年も動かないラムがあるなら、状態を確かめてみるとよい。未開栓の長期熟成ラムや、輸入が止まった銘柄は、いまも引き合いがある。

査定で見るのは、液面の位置、キャップとシールの状態、ラベルの傷み、箱や付属品の有無である。とくに液面は保管環境の履歴がそのまま出るところで、コルク栓のボトルほど下がりやすい。スピリッツの基礎も参考になる。

リンクサス酒販は品揃えの幅を持って買い取っており、当日十四時までのご注文で当日発送に対応している。まとまった本数でも一本でも、まずは状態を伝えてもらえれば見当をお伝えできる。

よくある質問

よくある質問
迷いやすい点をまとめた
ホットバタードラムの度数はどのくらいですか?

湯の量で決まります。四十度のラムを四十五ミリリットル使い、湯を百二十から百五十ミリリットル加えると、おおむね九から十一パーセントの帯に収まります。純アルコールは四十五掛ける〇・四で十八ミリリットルなので、これを総量で割った値です。ワインとほぼ同じか、やや低いくらいと考えてください。温かいと香りが立って飲む速度が上がりやすいので、マグ一杯を十分から十五分かけて飲む間合いが目安になります。

バターは有塩と無塩のどちらを使いますか?

基本は無塩バターで、十グラム前後が目安です。有塩でも作れますが、塩気が出るぶん砂糖をやや多めにすると味がまとまります。なお、日本の乳等命令が定めるバターの成分規格は乳脂肪分八〇・〇%以上、水分一七・〇%以下、大腸菌群陰性の三項目だけで、有塩と無塩を分ける規定はそこに置かれていません。有塩か無塩かは、この成分規格ではなく商品ごとの表示で確かめることになります。

マーガリンで代用できますか?

作ること自体はできますが、味は別物になります。食品表示基準の定義では、マーガリンは油脂含有率が八十パーセント以上のもので、しかも乳脂肪を含まないか主原料としないものに限られます。乳脂肪のコクを期待する飲み物なので、そこを別の油脂に置き換えると香りの出方が変わります。油脂含有率が八十パーセント未満のものはファットスプレッドになりますが、これも乳脂肪を主原料としないものに限られます。

どんなラムが向いていますか?

熱を加えると樽由来の香りが前に出るので、ダークラムやゴールドラムが扱いやすいです。ダークはカラメルと糖蜜の甘い香りがバターと溶け合い、いちばん厚い一杯になります。スパイストラムはバニラやシナモンがもともと入っているため、追加のスパイスは控えめでかまいません。ホワイトラムを使うと輪郭が素直に立ち、バターの風味をまっすぐ味わえます。まずは四十度前後の一本で配合を決めるのが安全です。

ホットトディとは何が違いますか?

いちばん大きな違いは脂肪分の有無です。ホットトディは蒸留酒を湯で割り、蜂蜜か砂糖とレモンで整える軽い温飲で、バターを使いません。ベースもウイスキーやブランデーなど幅広く選べます。ホットバタードラムはバターと砂糖のコクが持ち味で、ベースはラムに限られます。グロッグやホットワインも近縁ですが、この四つの中で脂肪分を持つのはホットバタードラムだけです。

国際バーテンダー協会の公認カクテルですか?

入っていません。国際バーテンダー協会が公式サイトで公開している一覧を全ページ取得して数えると百二品で、その中にホットバタードラムはありません。したがって、どこかに唯一の公式レシピがあるわけではなく、配合はバーごと家庭ごとに幅があります。この記事で挙げた分量も、広く使われている目安の一つとして読んでください。

バターは冷蔵庫から出してすぐ使えますか?

やわらかくしておくほうが溶けやすく、分離しにくくなります。冷たいまま入れると、湯の温度が下がったときに脂肪が固まって表面に浮きます。室温にしばらく置くか、少量の熱湯で先に溶かしてからラムを注いでください。なお、乳等命令の別表には、クリームには保存の方法の基準が置かれているのに対し、バターの項には成分規格しか置かれていません。箱に書かれた保存温度は、書くこと自体が食品表示基準の義務で、値のほうを製造者が決めている、という分かれ方をしています。

作り置きはできますか?

飲む一杯そのものは作り置きに向きませんが、バターと砂糖とスパイスを練り合わせた「バターバッター」は作り置きできます。冷蔵で固めておき、飲みたいときにスプーン一杯をマグへ落として湯とラムを注ぐだけです。冷凍しておけば来客時にもすぐ出せます。甘さとスパイスの強さはこのバッターの配合で決まるので、最初は基本量で作って、二杯目から好みへ寄せるのがおすすめです。

ノンアルコールでも作れますか?

作れます。ラムを抜き、バニラエッセンスやシナモン、ナツメグで風味を補うと、運転前の人や子どもでも楽しめる甘口のホットドリンクになります。湯の代わりに温めた牛乳やりんごジュースを使うと、さらに厚みが出ます。お酒を入れる版と入れない版を分けて作れば、同じ席で同じ雰囲気を分け合えます。

飲まないラムは買取してもらえますか?

はい、リンクサス酒販の買取窓口で査定できます。未開栓のプレミアムラムや長期熟成のボトル、輸入が止まった銘柄は安定した需要があり、箱や付属品がそろっているほど評価が伸びやすいです。液面やキャップの状態、ラベルの傷みが査定額を左右しますので、状態の良いうちにご相談いただくのがおすすめです。まとまった本数でも一本でも承ります。

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