宮城峡が売ってない?どこで買えるかを免許の区分から
「宮城峡が売っていない」の手前にある、酒屋の免許の区分
「宮城峡が売っていない」と検索したとき、返ってくる答えのほとんどは原酒不足と需要増という話に落ち着く。それはそれで正しい。ただ、同じ銘柄が街の酒販店の棚には見当たらないのに、蒸溜所のショップには当たり前のように置いてある——この置かれ方の差は、原酒の量と需要だけでは説明が閉じない。もう一枚、売る側が持っている免許の区分という層がある。免許の区分は「宮城峡が品薄かどうか」を決めないが、誰がどの品目をどの範囲まで届けられるかを決めている。
酒類を売るには販売場ごとに税務署長の免許が要る。その免許は法律の条文上ひとつしかないのに、実務では十を超える区分に枝分かれしている。どの区分を持っているかで、扱える品目も、届けられる範囲も、そもそも新規参入できるかどうかも変わる。宮城峡は酒税法上の品目でいえば「ウイスキー」で、この品目は枝分かれの中でももっとも枠のゆるい側に置かれている。
この記事は、宮城峡を材料に、酒販免許の区分がどこで線を引いているのかを条文と通達から追う。味わいや定価・相場は宮城峡の定価と余市との違いの記事、転売と免許は無免許転売の記事に置いてある。

先に結論だけ
- 酒税法の条文に「卸売業免許」「小売業免許」という語は一度も出てこない。法律にあるのは第9条の「販売業免許」ひとつだけで、小売・卸売の区別は第11条の条件として税務署長が付けている。
- 通達はその条件を整理して、酒類販売業免許を小売3種類・卸売8種類の計11種類に分けている。これに酒類販売代理業免許と酒類販売媒介業免許を加えた13が、通達が区分として掲げる販売業免許のすべて。
- 新規参入に件数の枠が置かれているのは、11種類のうち全酒類卸売業免許とビール卸売業免許の2つだけ。ウイスキーを卸す洋酒卸売業免許には枠が無く、求められる経歴も10年ではなく3年で足りる。
- 宮城県の令和7免許年度は、全酒類卸売業免許の枠が1件に対して申請が3件。ビール卸売業免許は枠6件に申請0件だった。同じ県の同じ免許年度でも、免許の区分が違えば混み方がまるで違う。
- 蒸溜所のショップで宮城峡が買えるのは、その製造場で製造免許を受けたのと同じ品目を、その製造場から出す場合だけ免許が要らないから。自社製品であっても品目が違えば、この枠から外れる。
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酒税法に「卸売業免許」という語は一度も出てこない
酒販免許の話は「小売免許」「卸売免許」という言葉から始まることが多い。ところが酒税法の条文を最初から最後まで走査しても、「卸売」も「小売」も一度も現れない。法律が持っているのは第9条第1項の一語だけである。
酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。酒税法 第9条第1項(e-Gov法令検索)
通達はまず「酒類の販売業」を広く取る。「酒類の販売業」とは、酒類を継続的に販売することをいい、営利を目的とするかどうか又は特定若しくは不特定の者に販売するかどうかは問わない。
とされ、営利かどうかも相手が誰かも問わない。免許が要るかは継続して売っているかどうかで決まる。
もう一つ効くのが「販売場ごとに」という一句だ。免許は会社ではなく売り場という場所に付く。二つ目の店を出せば二つ目の免許が要る。通達はこの「販売場」を物理的に捉え、テナントなら賃借している区画、駅の売店ならプラットホームや駅ごととし、さらに次の場合まで想定する。
運行する列車内、船舶内等において酒類の販売業をしようとする者に対し酒類の販売業免許を付与するときには、当該列車内、船舶内等を、それぞれ販売場として取り扱う。国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第9条第1項関係6(2)
区分を作っているのは第11条の「条件」
では、実務で使われている小売・卸売の別はどこから出てくるのか。答えは第11条第1項にある。
税務署長は、酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与える場合において、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持するため必要があると認められるときは、製造する酒類の数量若しくは範囲又は販売する酒類の範囲若しくはその販売方法につき条件を付することができる。酒税法 第11条第1項
「販売する酒類の範囲若しくはその販売方法につき条件を付することができる」——ここが区分の出所である。通達もそう書いている。
酒類小売業免許は、酒税の保全上酒類の需給均衡を維持するために法第11条《製造免許等の条件》に基づき、酒類の販売は小売に限る旨の条件を付されている販売業免許である。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)イ(注)1
酒類卸売業免許は、酒税の保全上酒類の需給均衡を維持するために法第11条《製造免許等の条件》に基づき、酒類の販売は卸売に限る旨の条件を付されている販売業免許である。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)ロ(注)1
つまり「小売の免許」「卸売の免許」が別々にあるのではない。ひとつの販売業免許に、売り先を消費者等に限る条件が付いたものが小売、酒類販売業者と製造者に限る条件が付いたものが卸売である。根拠は同じ第9条だ。

販売業免許は通達で11種類に分かれている
通達は第9条第1項関係8で区分に名前を与えている。酒類販売業免許は小売3種類・卸売8種類。これに酒類販売代理業免許と酒類販売媒介業免許を加えた13が、通達の定義するすべてである。
| 段階 | 免許の名称 | できること | 需給調整要件の定め |
|---|---|---|---|
| 小売 | 一般酒類小売業免許 | 販売場で原則すべての品目を小売(通信販売を除く) | あり |
| 小売 | 通信販売酒類小売業免許 | 2都道府県以上を対象に通信販売で小売 | あり |
| 小売 | 特殊酒類小売業免許 | 消費者等の特別の必要に応ずる小売 | ― |
| 卸売 | 全酒類卸売業免許 | 原則すべての品目を卸売 | あり(卸売販売地域ごとの件数の枠) |
| 卸売 | ビール卸売業免許 | ビールを卸売 | あり(卸売販売地域ごとの件数の枠) |
| 卸売 | 洋酒卸売業免許 | 果実酒・ウイスキーなど10品目の全部または一部を卸売 | ― |
| 卸売 | 輸出入酒類卸売業免許 | 輸出される酒類・輸入される酒類を卸売 | ― |
| 卸売 | 店頭販売酒類卸売業免許 | 会員の酒類販売業者に店頭で引き渡して卸売 | ― |
| 卸売 | 協同組合員間酒類卸売業免許 | 自己が加入する事業協同組合の組合員である酒類小売業者に卸売 | ― |
| 卸売 | 自己商標酒類卸売業免許 | 自らが開発した商標・銘柄の酒類を卸売 | ― |
| 卸売 | 特殊酒類卸売業免許 | 酒類事業者の特別の必要に応ずる卸売 | ― |
右端の列が、この記事の中心にあたる。第10条第11号は、需給の均衡を維持する必要があるときは免許を与えないことができる、と定めた条文で、通達の第11号関係はその具体化として販売業免許については4つ分の定めしか置いていない。一般酒類小売業免許、通信販売酒類小売業免許、全酒類卸売業免許、ビール卸売業免許——この4つである。洋酒卸売業免許の名前は、そこに無い。
洋酒卸売業免許が名指しする10品目
洋酒卸売業免許とは、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、その他の醸造酒、スピリッツ、リキュール、粉末酒及び雑酒の全て又はこれらの酒類の品目の1以上の酒類を卸売することができる酒類卸売業免許をいう。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)ロ(ハ)
清酒も焼酎もビールも入らない10品目で、宮城峡はその3番目、ウイスキーに当たる。同じ宮城県の酒でも宮城の日本酒は清酒なので、この免許では卸せない。

ウイスキーを卸す免許には、件数の枠が置かれていない
需給調整要件は、第10条第11号という短い一文から出ている。
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合酒税法 第10条第11号
抽象的なので、通達が意味を書き下している。
新たに酒類の製造免許又は販売業免許を与えたときは、地域的又は全国的に酒類の需給の均衡を破り、その生産及び販売の面に混乱を来し、製造者又は酒類販売業者の経営の基礎を危うくし、ひいては、酒税の保全に悪影響を及ぼすと認められる場合をいう。国税庁 解釈通達 第10条第11号関係1
読みどおり、これは酒税を取りはぐれないための仕組みである。売り手が増えて共倒れになれば製造者が代金を回収できず、酒税の納付が滞る。
造る側では、ウイスキーに需給調整の定めが無い
通達第11号関係2は製造免許の需給調整を品目ごとに書いているが、名前が挙がるのは清酒・合成清酒・連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎・みりん・原料用アルコールの6つだけである。ウイスキーは入っていない。同じ表に酒税法第7条第2項の最低製造数量を並べると、線の引かれ方が見えてくる。
| 品目 | 最低製造数量 | 製造免許の需給調整の定め |
|---|---|---|
| 清酒 | 六十キロリットル | あり |
| 合成清酒 | 六十キロリットル | あり |
| 連続式蒸留焼酎 | 六十キロリットル | あり |
| ビール | 六十キロリットル | ― |
| 単式蒸留焼酎 | 十キロリットル | あり |
| みりん | 十キロリットル | あり |
| 果実酒 | 六キロリットル | ― |
| 甘味果実酒 | 六キロリットル | ― |
| ウイスキー | 六キロリットル | ― |
| ブランデー | 六キロリットル | ― |
| 原料用アルコール | 六キロリットル | あり |
| 発泡酒 | 六キロリットル | ― |
| その他の醸造酒 | 六キロリットル | ― |
| スピリッツ | 六キロリットル | ― |
| リキュール | 六キロリットル | ― |
| 粉末酒 | 六キロリットル | ― |
| 雑酒 | 六キロリットル | ― |
洋酒卸売業免許が名指しする10品目は、いずれも最低製造数量が六キロリットルである。六キロリットルの品目は全11で、10品目に入らないのは原料用アルコールだけ。六十キロリットルの4品目と十キロリットルの2品目は一つも含まれない。造る側の入口の大きさと、卸す側の免許の切り方が同じところで揃っている。

卸す側でも、件数の枠があるのは2つだけ
販売業免許で需給調整要件の見出しを持つのは4つ。そのうち件数の枠まで置いているのは全酒類卸売業免許とビール卸売業免許の2つである。
卸売販売地域とは、全酒類卸売業免許の販売場数と全酒類の消費数量のそれぞれの地域的需給調整を行うために設ける地域単位であって、都道府県を一単位とする。国税庁 解釈通達 第10条第11号関係5(1)
卸売販売地域において免許年度に免許を付与等しうる免許可能件数は、以下の算式によって得た数から小数点以下を切り捨てたもの(卸売販売地域内に所在する全酒類卸売業者の販売場から直近1年間における卸売販売実績のない販売場を控除して得た数の100分の5を超える場合には、当該得た数に100分の5を乗じて計算した数から、小数点以下を四捨五入したもの。)とする。国税庁 解釈通達 第10条第11号関係5(2)
宮城峡はウイスキーなので、扱うだけなら洋酒卸売業免許で足りる。ここには卸売販売地域も免許可能件数も置かれていない。ただし枠は品目ではなく免許の区分に付いている。表1のとおり店頭販売・協同組合員間・自己商標の各卸売業免許は品目を限定せず、枠も無い。ビールを広く卸すならビール卸売業免許か全酒類卸売業免許——どちらも枠のある側——が要るが、ウイスキーは洋酒卸売業免許で足りる、というのが正確な言い方になる。
枠だけでなく、求められる経歴と数量も違う
差は件数の枠だけではない。通達は第10条第10号関係で、免許ごとに求める経歴と販売数量を書き分けている。
酒類の製造業若しくは販売業(薬用酒だけの販売業を除く。)の業務に直接従事した期間が引き続き10年(これらの事業の経営者として直接業務に従事した者にあっては5年)以上である者、調味食品等の卸売業を10年以上継続して経営している者又はこれらの業務に従事した期間が相互に通算して10年以上である者国税庁 解釈通達 第10条第10号関係6(1)(注)1
販売数量の側にも下限がある。全酒類卸売業免許は申請等販売場における年平均販売見込数量は100キロリットル以上である。
とされ、ビール卸売業免許は申請者等について、年平均販売見込数量を除き、全酒類卸売業の取扱いを準用する。
うえで申請等販売場における年平均販売見込数量は50キロリットル以上である。
ところが洋酒卸売業免許、店頭販売酒類卸売業免許、協同組合員間酒類卸売業免許及び自己商標酒類卸売業免許についての取扱い
を定めた第10条第10号関係8には、年平均販売見込数量の定めが無い。経歴も10年ではなく引き続き3年以上で足りる。件数の枠、経歴の年数、販売数量の下限——三つとも洋酒卸売業免許の側は軽い。
宮城県の実数|枠1件に申請3件、ビールは枠6件に申請0件
ここから宮城県の実数を見る。国税庁は毎年、枠と申請状況を公表している。
全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許については、卸売販売地域ごとに算定した免許を付与等することができる件数(免許可能件数)の範囲内で免許等を受けることができます。国税庁「全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許について」
仙台国税局が公表した令和7免許年度の数字は次のとおり。免許年度は通達で「免許年度」とは、9月1日から翌年の8月31日までの期間をいう。
と定められ、令和7免許年度は令和7年9月1日から令和8年8月31日までにあたる。
| 都道府県 | 免許可能件数 | 抽選対象申請書等の件数 | 差し引き残数 |
|---|---|---|---|
| 青森県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 岩手県 | 1件 | 1件 | 0件 |
| 宮城県 | 1件 | 3件 | 0件 |
| 秋田県 | 1件 | 1件 | 0件 |
| 山形県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 福島県 | 1件 | 1件 | 0件 |
| 6県の合計 | 6件 | 6件 | 2件 |
| 都道府県 | 免許可能件数 | 抽選対象申請書等の件数 | 差し引き残数 |
|---|---|---|---|
| 青森県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 岩手県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 宮城県 | 6件 | 0件 | 6件 |
| 秋田県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 山形県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 福島県 | 1件 | 0件 | 1件 |
| 6県の合計 | 11件 | 0件 | 11件 |
残数は県ごとに算定して0で下げ止まるため、合計欄は「枠の合計から申請の合計を引いた数」とは一致しない。全酒類卸売業免許は6県とも枠が1件。合計6件の枠に申請も合計6件で数の上は釣り合うが、分布は揃っていない。宮城県に3件が集中し、青森県と山形県は0件だった。枠1件に3件が並べば、少なくとも2件はその免許年度の枠の外に置かれる。
審査の結果、付与等の件数が免許可能件数に達した場合は、残余の申請書等について法第10条第11号に規定する酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるとして拒否処分を行う。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係10(9)ハ
ビール卸売業免許は正反対で、宮城県だけ枠が6件あるのに申請0件。6県合計でも枠11件に申請0件だった。同じ県・同じ免許年度でありながら、全酒類は枠の3倍が殺到し、ビールは枠が丸ごと余っている。そしてこの表そのものが、洋酒卸売業免許には存在しない。

枠を超えると、審査の順番はくじで決まる
枠を超えた申請をどう捌くか。通達は、原則として受理日順に審査すると定めたうえで、この2つの免許だけ別扱いにしている。
申請書等については、10〈全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許の申請書等の審査順位の決定及び審査等〉に定めるところにより公開抽選を実施するものを除き、受理した日付の順に審査を行う。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係9(2)
手続の日付は固定されている。申請要領を9月1日(土曜日又は日曜日の場合には、その次の月曜日)に国税局を通じて国税庁のホームページに掲載し公告する。
とされ、そのうえで通達は申請の受け付け自体を制限していない。
申請書等は、免許年度内の何時においても提出することができるものであるが、公開抽選の対象となる申請書等の提出期間は、9月1日から同月30日(土曜日又は日曜日の場合は、その次の月曜日)までの期間(以下「抽選対象申請期間」という。)とする。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係10(2)
9月1日から30日までは受付期間ではなく、公開抽選の対象になる期間である。10月に出しても申請は受理されるが、枠は抽選に乗った者から埋まる。抽選は公開抽選は、10月中のできる限り早い日に実施する。
抽選機には、1から抽選対象申請書等の件数が最も多かった卸売販売地域における最大受理番号までの通し番号が刻印等されている玉を入れる。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係10(6)ニ(ハ)
物理的な抽選機と、番号を刻印した玉である。公平さの担保も具体的で、同じ通達10(6)ニ(イ)は公開抽選場所には、抽選の公平を確保する観点から国税局職員又は税務署職員以外の第三者で国税局長又は税務署長が選任した立会人1名以上を立ち合わせる。
と定める。国税庁のウェブ案内も公開抽選は、通し番号が刻印されている玉を抽選機に入れ、これを操作して抽選機から抽出された玉の番号によって順位を決定します。
と書いている。
ただし、抽選はいつも開かれるわけではない。
ただし、抽選対象申請書等の件数が卸売販売地域において免許可能件数の範囲内である場合には、公開抽選は行わないことができる。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係10(6)ただし書
表3で枠1件に対して申請1件だった岩手県・秋田県・福島県は、これに当たる。申請が0件だった青森県・山形県も同じ範囲内なので、抽選を要したのは6県のうち宮城県だけということになる。
また、公開抽選はこの2つの免許の専有物でもない。通達は同じ第9条第1項関係9(2)にただし書を置いている。
ただし、同一日に酒類小売業免許又は酒類卸売業免許に係る申請書等を2以上受理した場合で適正かつ公平な審査を確保するために必要と認められる場合には、国税局長又は税務署長は、10〈全酒類卸売業免許及びビール卸売業免許の申請書等の審査順位の決定及び審査等〉の定めるところに準じて公開抽選を行って審査順位を決定することができる。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係9(2)ただし書
洋酒卸売業免許でも、同じ日に2件以上が受理されれば公開抽選が準用されうる。専有されているのは抽選という手続ではなく、件数の枠のほうだと押さえておきたい。
蒸溜所で買えるのは、そこだけ免許が要らないから
「宮城峡は蒸溜所に行けば買える」とよく言われる。これも制度に還元できる。第9条第1項のただし書だ。
ただし、酒類製造者がその製造免許を受けた製造場においてする酒類(当該製造場について第七条第一項の規定により製造免許を受けた酒類と同一の品目の酒類及び第四十四条第一項の承認を受けた酒類に限る。)の販売業及び酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。酒税法 第9条第1項ただし書
製造者が自分の製造場で売る分には販売業免許が要らない。ただし括弧の中が効いていて、免許不要なのはその製造場で製造免許を受けた酒類と同じ品目に限られる。通達も同じ線を引いている。
「製造場においてする酒類の販売業」とは、製造者がその製造場において、現に製造免許を受けている酒類と同一の品目の酒類又は法第44条《原料用酒類及び酒母等の処分禁止》第1項の規定により移出の承認を受けた原料用酒類を継続的に販売することをいう。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係5
宮城峡蒸溜所はウイスキーの製造免許を持つ製造場だから、そこから出すウイスキーを売るのに免許は要らない。蒸溜所の売店に限定ボトルが並ぶのはそのためだ。一方、同じ棚にビールやワインを置けば「製造場においてする酒類の販売業」から外れ、販売業免許が要る。品目が違えば自社製品でも同じである。

小売の側|店頭と通信販売を分ける線は「2都道府県」
ここまでは卸の話。消費者が買う場面は小売の側で、こちらにも線がある。
一般酒類小売業免許とは、販売場において、原則として、全ての品目の酒類を小売((ロ)に規定する通信販売を除く。)することができる酒類小売業免許をいう。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)イ(イ)
「通信販売を除く」という括弧が付いている。では通信販売とは何かというと、通達の定義はきわめて具体的だ。
「通信販売」とは、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売をいう。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)イ(ロ)(注)1
分かれ目は2都道府県以上かどうかである。裏返せば酒類の店頭小売又は一の都道府県の消費者等のみを対象として小売を行う場合は、一般酒類小売業免許に該当する。
とされ、ネット注文であっても県内だけなら一般酒類小売業免許の範囲に収まる。
ただし、同じ注のブロックには例外がもう一つ置かれている。
2都道府県以上にわたる場合であっても、販売場の所在する市町村(特別区を含む。)の近隣にある市町村の消費者等からの受注に基づき、当該消費者等に対し自ら配達する方法により小売を行う場合は、一般酒類小売業免許に該当するものとして取り扱う。国税庁 解釈通達 第9条第1項関係8(1)イ(ロ)(注)4
県境をまたいでも近隣市町村へ自分で配達する形なら一般酒類小売業免許のままでよい。線を引くのは距離ではなく、注文の取り方と届け方である。
場所と体力の要件
免許は品目と販売方法だけで決まるわけではない。第10条は第1号から第8号までで申請者本人の資格(人的要件)を、第9号で場所を、第10号で経営の体力を見ている。
正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に製造場又は販売場を設けようとする場合酒税法 第10条第9号
通達はこれを申請販売場が、製造場、販売場、酒場、料理店等と同一の場所である場合
などと具体化する。バーが同じ場所で酒屋を兼ねるのが難しいのは、この号があるからだ。これとは別に、申請販売場における申請者の営業が、販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていない場合
も同じ号の該当事由に挙げられている。区画や決済が分かれていないこと自体が拒否の方向に働くのであって、分かれていれば同一の場所であることが治るわけではない。経営の体力のほうは第10号で、通達の書き方は率直である。
酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合酒税法 第10条第10号
通達はこの「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」を、次のように読み下している。
事業経営のために必要な資金の欠乏、経済的信用の薄弱、製品又は販売設備の不十分、経営能力の貧困等、経営の物的、人的、資金的要素に相当な欠陥が認められ、酒類製造者の販売代金の回収に困難を来すおそれがある場合をいう。国税庁 解釈通達 第10条第10号関係1
末尾の「酒類製造者の販売代金の回収に困難を来すおそれ」が示すとおり、ここで見られているのも酒税がきちんと納まるかどうかである。

宮城峡と余市|制度は同じ、造りは正反対
品目の扱いに絞れば、宮城峡と余市は同じところにいる。どちらも品目はウイスキー、最低製造数量は六キロリットル、卸すなら洋酒卸売業免許で足りる。品目を理由に二つを区別する規定は見当たらない。ただし卸売販売地域は都道府県を一単位とするので、北海道の余市と宮城県の宮城峡は別の地域に属する。同じなのは品目の扱いで、地理まで同じではない。
約130℃に保たれた蒸気でじっくりと蒸溜することで、原酒になめらかさを付与するスチーム間接蒸溜を採用。ニッカウヰスキー公式「シングルモルト 余市・宮城峡」
上向きのラインアームと丸く膨らんだバルジ型ポットスチルにより、蒸気や香味成分が循環し、香りと味わいが磨かれていく。ニッカウヰスキー公式「シングルモルト 余市・宮城峡」
これに対して余市は真逆の方式をとる。
約1000℃を超えるポットスチルに石炭をくべ、原酒に独特の香ばしさを与える石炭直火蒸溜を採用。ニッカウヰスキー公式「シングルモルト 余市・宮城峡」
注意したいのは、130℃と1000℃が同じものの温度ではない点だ。前者は蒸溜に使う蒸気、後者は石炭をくべたポットスチルの温度で、公式も別々の対象について述べている。公式が味わいに結びつけるのは温度ではなく、宮城峡側の「なめらかさ」と余市側の「独特の香ばしさ」という方式ごとの効き方、そしてポットスチルの形状——バルジ型とストレートヘッド型——の違いである。

創業年と、水の話
公式によれば余市は度重なる試練を乗り越え、1934年にニッカウヰスキーのはじまりの地となる、余市蒸溜所が産声をあげた。
とされ、宮城峡はその想いと情熱は引き継がれ、1969年にニッカウヰスキーの新たな挑戦の地、宮城峡蒸溜所が誕生する。
35年の間隔がある。
この地を流れる新川の水でウイスキーを割って飲み、竹鶴は蒸溜所の建設を心に決めた。ニッカウヰスキー公式「シングルモルト 余市・宮城峡」
味わいの比較や定価・相場は宮城峡の定価と余市との違いの記事、竹鶴、ジャパニーズウイスキーの定義、グレーンウイスキーはそれぞれの記事に。
飲まないウイスキーの査定・買取はリンクサスへ
リンクサス酒販は酒類の買取と販売を行っている。宮城峡のように市場の値が定価から離れやすい銘柄は、状態と付属品で査定が動く。ウイスキーの品揃えのページから在庫の傾向も確認できる。
- 未開栓であること。開栓済みは対象外。
- 箱・冊子・キャップシールの有無。
- ラベルの汚れ、液面の下がり、日焼け。
- 蒸溜所限定品やシングルカスクなど流通の経路が限られるもの。

よくある質問

個別の免許申請は、販売場の所在地を所轄する税務署の酒類指導官が窓口になる。
宮城峡が近所の店に無いのは、免許のせいですか?
品薄そのものの理由は原酒の量と需要の関係が大きく、免許の区分は品薄を作らない。免許が決めているのは、どの店がどの品目を、どの範囲まで届けられるかという条件のほうである。ウイスキーは洋酒卸売業免許の10品目に入っており、これを広く卸すのに件数の枠を通らずに済む点で、ビールや清酒を広く卸す場合とは条件が違う。
洋酒卸売業免許があれば、日本酒も卸せますか?
卸せない。通達が挙げる10品目は果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、その他の醸造酒、スピリッツ、リキュール、粉末酒、雑酒で、清酒はここに入っていない。清酒を卸すなら全酒類卸売業免許などが必要になる。
全酒類卸売業免許はなぜ抽選なのですか?
酒税法第10条第11号が、需給の均衡を維持する必要があるときは免許を与えないことができると定めており、通達が全酒類卸売業免許とビール卸売業免許について卸売販売地域ごとの免許可能件数を置いているため。枠を超える申請があった場合、審査の順番を公開抽選で決める。抽選機に番号を刻印した玉を入れて操作する方式で、立会人が1名以上立ち会う。
宮城県の令和7免許年度は、どのくらい混んでいましたか?
仙台国税局の公表では、全酒類卸売業免許の免許可能件数が1件に対して抽選対象申請書等が3件で、差し引き残数は0件だった。一方ビール卸売業免許は免許可能件数6件に対して申請0件、残数6件。同じ県でも免許の種類で状況が正反対になっている。
蒸溜所の売店では、なぜ販売業免許が要らないのですか?
酒税法第9条第1項のただし書が、製造者がその製造免許を受けた製造場で行う販売業を免許不要としているため。ただし対象は、その製造場で製造免許を受けた酒類と同一の品目で、その製造場から移出するものに限られる。同じ売店でビールやワインを売ろうとすれば、自社の製品でも販売業免許が必要になる。
県内だけのネット販売なら、通信販売の免許は要りませんか?
通達は通信販売を2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象とするものと定義し、店頭小売または一の都道府県の消費者等のみを対象とする小売は一般酒類小売業免許に該当するとしている。したがって同一県内に限る販売であれば、一般酒類小売業免許の範囲に収まる。






































