かのかといいちこの違いと、混和焼酎の名前の決まり

かのかの原材料欄に並ぶ甲類と乙類の二つの数字

かのかといいちこの違いと、混和焼酎の名前の決まり

スーパーの棚で「麦焼酎 かのか」と「いいちこ」が隣に並んでいる。値段は近く、どちらも麦焼酎と書いてある。それでも中身の作り方は違い、その違いは公式サイトのどこかに必ず書かれている。ただし、書かれている場所が三社で違う。

かのかは焼酎甲類乙類混和で、アサヒビールの商品ページには甲類が七十五パーセント、乙類が二十五パーセントと数字まで出ている。いいちこは単式蒸留焼酎で、三和酒類の商品ページには品目欄そのものが無い。博多の華は品目「焼酎乙類」と分類「麦焼酎」が二行で並ぶ。三社が三つの書き方をしている。

この記事では、かのかといいちこの違いを味の印象からではなく、公式サイトに出ている数字から確かめる。あわせて、混和した焼酎の名前が三通りあること、その割合を書かせているのが法令ではなく業界の規約であること、そしてその規約がかのかには届いていないことまで見ていく。

かのかは何を混ぜた焼酎か|数字は原材料欄にある

かのかは何を混ぜた焼酎か|数字は原材料欄にある
かのかは麦だけでなく芋と米にも展開している

アサヒビールの商品情報で、かのかは焼酎・梅酒カテゴリの「甲類乙類混和」の欄に置かれている。同じカテゴリには乙類の九兵衛と刻の一滴、甲類の大五郎が別の欄で並ぶ。かのかは七品あり、その全部が混和の欄にいる。

面白いのは、商品ページの成分表に「品目」という行が無いことである。品目「焼酎甲類乙類混和」という書き方が出てくるのは、新商品やリニューアルを告知するニュースリリースの商品概要表のほうで、商品ページ側にあるのは原材料欄だけだ。そしてその原材料欄に、混ぜた割合が数字で書いてある。

原材料 焼酎甲類(国内製造)75%(糖蜜)、焼酎乙類25%(麦、麦麹)

出典 アサヒビール 商品情報「麦焼酎 かのか 25度」

甲類が七十五、乙類が二十五。この二つの数字が、かのかという焼酎の設計そのものである。糖蜜を原料に連続式蒸留機で作った甲類が四分の三を占め、麦と麦麹から単式蒸留機で作った乙類が四分の一入る。麦の香りは残るが、量としては主役ではない。

麦と芋と米で、乙類の割合が違う

七品の原材料欄を並べると、比率が品ごとに動いていることが分かる。乙類がいちばん多いのは米焼酎かのかの三十一パーセントで、いちばん少ないのは芋焼酎かのか華やかすっきり仕立ての十パーセントである。同じブランドの中で、乙類の量が三倍以上ちがう。

  • 麦焼酎 かのか 25度・20度|甲類七十五パーセント(糖蜜)、乙類二十五パーセント(麦、麦麹)
  • 麦焼酎 かのか 焙煎まろやか仕立て|甲類八十五パーセント、乙類十五パーセント
  • 麦焼酎 琥珀かのか|甲類七十七パーセント(糖蜜、コーン)、乙類二十三パーセント(麦、麦麹、米麹)
  • 芋焼酎 かのか 濃醇まろやか仕立て|甲類八十九パーセント、乙類十一パーセント
  • 芋焼酎 かのか 華やかすっきり仕立て|甲類九十パーセント、乙類十パーセント
  • 米焼酎 かのか|甲類六十九パーセント(糖蜜)、乙類三十一パーセント(米、米麹)

琥珀かのかだけ、甲類側の括弧に「糖蜜、コーン」と二つ入る。麦なのに乙類側へ米麹が加わる。樽貯蔵原酒を使う一本で、材料の数も多い。

いいちこの側には、この数字が無い。三和酒類の商品ページには原材料欄も品目欄も置かれていないからである。混ぜていないので書く数字が無い、という言い方もできるが、そう単純ではない。次の章から順に見ていく。

関連商品ラインナップ

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単式蒸留の焼酎は原料と蔵で香りが変わる

リンクサス酒販が扱っている焼酎は、単式蒸留機で造る本格焼酎が中心である。かのかのような混和タイプの量販品は取り扱いが無く、かわりに二次流通で値の付く芋焼酎や麦焼酎が並ぶ。焼酎のコレクションから在庫のあるものを確認できる。

下のラインナップは在庫と価格が動くので、気になる銘柄があれば早めに見ておくとよい。同じ蔵の同じ銘柄でも、詰め口の年月で評価が変わることがある。

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ここでは焼酎の在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。

かのか・いいちこ・博多の華 三十本を品目と価格で見る

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同じ棚に並ぶ三銘柄は、公表の仕方がそれぞれ違う

三社が公式サイトで出している数字だけを並べた。代表的な容量を一本ずつ拾っている。価格の欄に「税別」「税込」「税抜」と三つの語が混ざっているが、これは表記を揃えなかったのではなく、三社がそれぞれ違う言い方で出しているからである。アサヒビールは参考小売価格を税別で、三和酒類は希望小売価格を税込で、福徳長酒類は参考小売価格を税抜で公表している。税別と税抜は同じ意味なので、かのかと博多の華はそのまま比べられる。

銘柄 会社 公表されている品目 原料・造りの記載 度数 容量 公表価格
麦焼酎 かのか 25度 パック アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類75%(糖蜜)/乙類25%(麦、麦麹) 25% 1,800ml 1,570円(税別)
麦焼酎 かのか 25度 パック アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類75%(糖蜜)/乙類25%(麦、麦麹) 25% 900ml 850円(税別)
麦焼酎 かのか 25度 ペット アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類75%(糖蜜)/乙類25%(麦、麦麹) 25% 220ml 240円(税別)
麦焼酎 かのか 25度 ペット アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類75%(糖蜜)/乙類25%(麦、麦麹) 25% 4,000ml 3,060円(税別)
麦焼酎 かのか 20度 パック アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類75%(糖蜜)/乙類25%(麦、麦麹) 20% 1,800ml 1,390円(税別)
麦焼酎 かのか 焙煎まろやか仕立て アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類85%(糖蜜)/乙類15%(麦、麦麹) 25% 1,800ml 1,570円(税別)
麦焼酎 琥珀かのか アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類77%(糖蜜、コーン)/乙類23%(麦、麦麹、米麹) 25% 1,800ml 1,590円(税別)
芋焼酎 かのか 濃醇まろやか仕立て アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類89%(糖蜜)/乙類11%(さつまいも、米麹) 25% 1,800ml 1,570円(税別)
芋焼酎 かのか 華やかすっきり仕立て アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類90%(糖蜜)/乙類10%(さつまいも、米麹) 25% 1,800ml 1,570円(税別)
米焼酎 かのか アサヒビール 焼酎甲類乙類混和 甲類69%(糖蜜)/乙類31%(米、米麹) 25% 1,800ml 1,620円(税別)
いいちこ25度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 大麦・大麦麹と水 25度 1,800ml 2,028円(税込)
いいちこパック25度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 大麦・大麦麹と水 25度 1,800ml 2,012円(税込)
いいちこ25度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 大麦・大麦麹と水 25度 900ml 1,077円(税込)
いいちこカップ25度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 大麦・大麦麹と水 25度 200ml 283円(税込)
いいちこ20度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 20度専用の造り 20度 1,800ml 1,784円(税込)
いいちこ12度 三和酒類 商品ページに品目欄なし 割らずに飲む12度カップ 12度 200ml 182円(税込)
いいちこ日田全麹 三和酒類 商品ページに品目欄なし 全量大麦麹仕込み 25度 1,800ml 2,048円(税込)
いいちこスペシャル 三和酒類 商品ページに品目欄なし 長期貯蔵の本格焼酎 30度 720ml 2,767円(税込)
いいちこフラスコボトル 三和酒類 商品ページに品目欄なし 大麦麹だけの全麹造り 30度 720ml 3,111円(税込)
iichiko彩天 三和酒類 商品ページに品目欄なし 本格麦焼酎 43度 700ml 3,080円(税込)
本格焼酎 博多の華 むぎ 25% 瓶 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 清冽な水と良質な大麦 25% 1,800ml 1,938円(税抜)
本格焼酎 博多の華 むぎ 25% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 清冽な水と良質な大麦 25% 1,800ml 1,952円(税抜)
本格焼酎 博多の華 芋 25% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 芋焼酎) 白芋と紫芋の焼酎をブレンド 25% 1,800ml 1,912円(税抜)
本格焼酎 博多の華 むぎ 25% ペット 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 清冽な水と良質な大麦 25% 4,000ml 4,010円(税抜)
本格焼酎 博多の華 むぎ 25% ペット 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 清冽な水と良質な大麦 25% 2,700ml 2,708円(税抜)
本格焼酎 博多の華 むぎ 20% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 全麹麦焼酎を隠し味にブレンド 20% 1,800ml 1,685円(税抜)
本格焼酎 博多の華 麦 12% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 仕込水と同じ水であらかじめ割り水 12% 1,800ml 1,075円(税抜)
本格焼酎 博多の華 三年貯蔵 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 麦焼酎) 三年以上熟成の麦焼酎原酒 25% 1,800ml 2,800円(税抜)
本格焼酎 博多の華 そば 25% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 そば焼酎) 記載なし 25% 1,800ml 1,687円(税抜)
本格焼酎 博多の華 こめ 25% パック 福徳長酒類 焼酎乙類(分類 米焼酎) 記載なし 25% 1,800ml 1,735円(税抜)

出典 アサヒビール 商品情報、三和酒類 商品案内、福徳長酒類 商品情報(いずれも二〇二六年八月時点の公表値)

三十本のうち、混和であることが表の上で分かるのは最初の十本だけである。残りの二十本は混和と書かれていないが、いいちこの十本は品目そのものが商品ページに出ていない。原料の欄も同じで、原材料を数字で出しているのはアサヒビールだけである。福徳長酒類も三和酒類も紹介文で大麦や水に触れるが、どちらも原材料欄ではなく、割合の数字も無い。同じ表に並べると、公表の濃さが会社ごとにはっきり違って見える。

三社のサイトは、同じことを三つの別の場所に書いている

三社のサイトは、同じことを三つの別の場所に書いている
品目と原材料は、会社ごとに別の場所に置かれる

「かのかといいちこの違いは何か」を公式サイトで確かめようとすると、三社で手順が変わる。同じ情報が、それぞれ違う場所に置かれているからである。

アサヒビールは、商品ページに品目行を置かず、原材料欄に混和割合を書く。品目「焼酎甲類乙類混和」という一行が出るのはニュースリリースの商品概要表である。つまり、いま棚にある商品の品目を公式サイトで確かめようとすると、発売時やリニューアル時のリリースまで遡ることになる。

三和酒類は、商品ページに品目欄も原材料欄も置かない。かわりに、よくあるご質問の中で一問一答の形で答えている。

「いいちこ」は、単式蒸留焼酎(しょうちゅう乙類)です。

出典 三和酒類 よくあるご質問「商品について」

福徳長酒類は、商品ページの規格欄に品目と分類を二行で並べる。品目が「焼酎乙類」、分類が「麦焼酎」である。ここでいう分類は法令上の区分ではなく、原料で括った社内の呼び方だが、二つを並べて置くことで、法令の側の名前と日常の側の名前が一目で対応する。

値段の呼び方も三通り

価格の出し方も揃っていない。三和酒類は全商品に「希望小売価格(税込)」を円で書き、注記を付けない。福徳長酒類は「参考小売価格(税抜)」とし、販売の目安として作成したもので小売価格の設定を拘束しないと末尾に添える。アサヒビールは商品ページでは「参考小売価格(税別)」を出しつつ、ニュースリリースでは「オープン価格」と書く。

ここまでは、会社ごとの書き方の違いである。ではラベルに何を書くかは、どこまでが決められているのか。次の章から制度の側を読む。混和した焼酎の名前は、実は一つではない。

混和の名前は三通りある|二つの資料が逆を向いている

混和の名前は三通りある|二つの資料が逆を向いている
原料の呼び名と、法令の品目名は別の体系にある

連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎を混ぜたものをラベルにどう書くかは、国税庁の法令解釈通達が定めている。第八十六条の五の関係、酒類の容器に対する品目の表示の取扱いの箇所である。

連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎の混和酒は「連続式・単式蒸留焼酎混和」、「焼酎甲類・乙類混和」又は「ホワイトリカー①②混和」と表示する。この場合、混和酒に対する混和した一方の品目の割合が純アルコール数量で5%未満となるものについては、混和量の多い方の品目だけの表示としても差し支えない。

出典 国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第8編第1章 第86条の5 関係 2(1)ニ

名前が三つ並んでいる。どれを使ってもよい。かのかが選んでいるのは二つ目の系統で、正確には「焼酎甲類乙類混和」と中黒を抜いた形である。ホワイトリカーに①②を付ける三つ目の書き方については、丸の記号が何を指すのかを甲類焼酎とは 条文と数字で読む定義と選び方で扱っている。

同じ通達を根拠に、順序が逆に書かれている

この定型を、国税庁は自分の解説資料にも載せている。ところが二つの資料で並びが逆になっている。令和五年一月の「酒類の表示方法チェックシート(焼酎に関する表示事項用)」はこう書く。

・連続式・単式蒸留焼酎(しょうちゅう)混和
・焼酎(しょうちゅう)甲類・乙類混和 又は ホワイトリカー①②混和

出典 国税庁 酒類の表示方法チェックシート(焼酎に関する表示事項用)令和5年1月

いっぽう令和元年七月の「焼酎の表示に関する説明事項」はこうである。

単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎を混和した焼酎は、「単式・連続式蒸留焼酎」、「焼酎乙類・甲類混和」又は「ホワイトリカー①②混和」と表示しなければなりません。

出典 国税庁 焼酎の表示に関する説明事項 令和元年7月

連続式が先か、単式が先か。甲類が先か、乙類が先か。二つの資料は正反対で、しかもどちらも根拠として同じ通達の2(1)ニを挙げている。①②の順序だけは両方とも同じである。

もう一つ、ただし書のほうも実務では効く。混ぜた一方が純アルコール数量で五パーセント未満なら、多いほうの品目だけを書けばよい。つまりラベルに「混和」と書かれていない単式蒸留焼酎にも、五パーセント未満の連続式蒸留焼酎が入っている可能性が残る。

割合を書かせているのは法令ではなく規約だった

割合を書かせているのは法令ではなく規約だった
紙パックの原材料欄に並ぶ二つの数字

ここで一つ、確かめておくことがある。前章の通達は「焼酎甲類乙類混和」と書けと言っているだけで、七十五パーセントと二十五パーセントという数字までは求めていない。では、かのかの原材料欄にある割合は、どの決まりから来ているのか。

割合の併記を正面から義務づけている文書は、法令ではなく業界の自主ルール、単式蒸留焼酎の表示に関する公正競争規約の施行規則にある。

連続式蒸留焼酎を混和した場合、「単式蒸留焼酎」及び「連続式蒸留焼酎」と表示し、それぞれの文字に続けて混和割合を併記(1パーセント未満の端数は四捨五入)した上で、その後に括弧書きで、混和したそれぞれの焼酎のもろみの製造に使用した原材料(水を除く。)を、原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する。

出典 単式蒸留焼酎の表示に関する公正競争規約施行規則 第2条(2)イ

かのかの原材料欄の「焼酎甲類(国内製造)七十五パーセント(糖蜜)、焼酎乙類二十五パーセント(麦、麦麹)」は、この書き方をなぞっている。名前のあとに割合、そのあとに括弧で原料。ただし規約は単式を先に書かせており、かのかは連続式のほうが先である。名前の種類も並びも違う。

ところが、この規約はかのかを対象にしていない

同じ施行規則の第一条が、規約の射程を定義している。

単式蒸留焼酎に連続式蒸留焼酎を混和したもの(連続式蒸留焼酎の純アルコール量が単式蒸留焼酎の純アルコール量を超えないものに限る。以下「単式・連続式蒸留混和焼酎」という。)

出典 単式蒸留焼酎の表示に関する公正競争規約施行規則 第1条(1)

括弧の中が効いている。連続式の純アルコール量が単式を超えないもの、つまり乙類のほうが多い混和だけが対象である。かのかは甲類が六十九から九十パーセントを占める。連続式のほうが多いのだから、この規約の外にいる。

それどころか、酒類には原材料名を書く義務そのものが無い。食品表示基準の第五条は義務表示の特例として、上欄に「酒類を販売する場合」、下欄に「原材料名 アレルゲン 原産国名」を並べ、これらの表示は要しないと定める。加工食品の原材料表示から、酒類は正面で外されている。この外され方は焼酎は甲類と乙類どっちが体にいいで条文ごと扱っている。

整理するとこうなる。原材料を書く義務は無く、割合を書かせる規約はかのかに届いていない。それでもアサヒビールは七品すべてに割合を書いている。義務の外にいる商品が、義務のある側の書式を借りている、という形である。

規約のある七業種と、表示規約の無い連続式焼酎

規約のある七業種と、表示規約の無い連続式焼酎
棚の一段ごとに、適用される表示ルールが違う

消費者庁が公表している、公正競争規約が設定されている業種の一覧を酒類にしぼると、表示に関する規約は七つある。ビール、輸入ビール、ウイスキー、輸入ウイスキー、泡盛、酒類小売業、そして単式蒸留焼酎である。

並びを見て気づくのは、連続式蒸留焼酎の規約が無いことである。泡盛の表示規約があり、単式蒸留焼酎にもある。しかし連続式蒸留焼酎、日常語でいう甲類には、表示の規約が置かれていない。かのかのような甲類主体の混和焼酎が規約の外に落ちるのは、その延長線上の話である。

十年で三割減った二つの焼酎

量のほうも見ておく。国税庁の酒のしおりが載せる課税数量の推移表(国税局分)から、二つの品目を抜き出す。

  • 連続式蒸留焼酎|平成二十五年度 380,075キロリットル → 令和五年度 271,375キロリットル(71.4パーセント)
  • 単式蒸留焼酎|平成二十五年度 511,319キロリットル → 令和五年度 360,200キロリットル(70.4パーセント)

出典 国税庁 酒のしおり(令和7年7月)付表1 酒類課税数量の推移表(国税局分)

十年でどちらも三割ほど減っている。減り方はほぼ同じで、単式のほうがわずかに大きい。数量では単式のほうが多く、令和五年度でおよそ八万九千キロリットルの差がある。それでも連続式は二十七万キロリットルあり、酒類全体のなかでは大きな品目である。税関分を足した表7では三十万一千キロリットルになる。

連続式に業界の表示規約が無いのは、量が少ないからではない。数量では単式のほうが多く、規約があるのもその単式の側である。

「本格焼酎」と書ける焼酎、書けない焼酎

「本格焼酎」と書ける焼酎、書けない焼酎
本格焼酎と書ける範囲は省令が切っている

博多の華は商品名の頭に「本格焼酎」と付く。いいちこも自社の紹介文で本格焼酎と呼ぶ。かのかは七品のどこにも本格焼酎と書かない。書かないのではなく、書けない。同じ通達の、すぐ次のホにその一文がある。

なお、単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎の混和酒には、「本格焼酎」の呼称を使用できないことに留意する。

出典 国税庁 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第8編第1章 第86条の5 関係 2(1)ホ

前の章で見た五パーセント未満の話と組み合わせると、この一文の重さが分かる。連続式を五パーセント未満だけ混ぜた焼酎は、品目としては「単式蒸留焼酎」と書いてよい。しかし「本格焼酎」とは書けない。つまり、ラベルに本格焼酎とあれば混和はしていないと読める。品目名のほうは、その手がかりにならない。ただしこの除外を定めているのは通達であって、法令の条文ではない。

省令が範囲を切り、通達が混和を外す

本格焼酎という言葉は、酒税法の条文には出てこない。出てくるのは酒類業組合法の施行規則で、品目の例外表示という表の下欄に置かれている。中欄が「酒税法第三条第十号イからホまでに掲げるもの」と範囲を切り、下欄に本格焼酎を置いている。

つまり範囲を切っているのは省令で、そのうえで通達が混和した焼酎をもう一段外している。名乗りの入口は二層になっていて、省令の側の一層目については焼酎とは何かを酒税法の品目から読むで表にしてある。

ちなみに麦焼酎という言い方も、酒税法の品目名ではない。原料で括った日常の呼び名で、法令が扱うのは穀類という一段上の言葉である。ラベルの上では、法令の名前と日常の名前が同じ面に同居している。

「まずい」の中身は二つ|甲類七十五パーセントという設計

「まずい」の中身は二つ|甲類七十五パーセントという設計
グラスに注いだときの香りの立ち方は原酒の比率で変わる

「かのか まずい」と「いいちこ まずい」は、同じことを言っていない。かのかに向くのは香りの薄さで、いいちこに向くのは麦の香ばしさそのものへの好き嫌いである。造りが逆を向いているので、不満の中身も逆になる。

かのかの麦25度は、乙類が二十五パーセントしかない。麦と麦麹から単式蒸留機で取った原酒は四分の一で、残りは糖蜜由来の甲類である。本格焼酎と同じ濃さの香りを期待して口に含めば、薄いと感じるのは設計どおりの結果になる。逆にいえば、薄さは失敗ではなく狙いである。

薄いと感じたら、乙類の多い品に替える

同じかのかでも、乙類の比率で印象は動く。麦の中では焙煎まろやか仕立てが乙類十五パーセントでいちばん薄く、琥珀かのかが二十三パーセント、定番の麦25度が二十五パーセントである。ブランド全体で最も乙類が多いのは米焼酎かのかの三十一パーセントで、麦にこだわらないなら、まずここから試す手がある。

アサヒビールは二〇一八年二月に告知した麦焼酎かのかのリニューアルで、麦全麹すっきり仕上げ原酒を新たに採用し、香り蒸溜仕上げ原酒、豊醇麦仕上げ原酒、焼酎甲類を含めたブレンド比率を見直したと説明している。使う原酒の種類を増やし、配合を組み替えたということである。

いいちこの側の「まずい」は、方向が逆である。大麦麹の香りが立つぶん、麦の香ばしさが苦手な人には強く出る。三和酒類は自社の一般的な麦焼酎の造りでは三分の一が大麦麹、三分の二は大麦で造られるとしたうえで、一次も二次も大麦麹だけを使う造りを全麹造りと呼ぶと説明している。麹の量を増やせば、香りは強くなる。

かのか・いいちこ・博多の華の飲み分け

かのか・いいちこ・博多の華の飲み分け
氷が融けるほど乙類由来の香りは薄くなる

三銘柄は、造りが違うぶん向いている飲み方も変わる。原材料欄と公式の説明を手がかりに並べる。

  • かのか麦25度|乙類二十五パーセント。割り材の味が前に出やすいので、炭酸割りなら濃いめに作る。お湯割りは湯を先に注いでから焼酎を加える。
  • 琥珀かのか|樽貯蔵原酒をブレンドした一本。氷で冷やすと樽の香りがまとまるので、ロックが合う。
  • いいちこ20度|二十度専用の造りと三和酒類は説明する。割らずにそのまま、あるいは軽い水割り向き。
  • いいちこ日田全麹|全量大麦麹仕込み。香りが強いので、ロックか少量の加水で。
  • 博多の華 むぎ25%|原酒は減圧蒸留、濾過は氷点クリア製法と福徳長酒類は説明する。軽やかな方向なので水割りが素直に合う。
  • 博多の華 三年貯蔵|三年以上熟成の原酒を使う。樫樽由来のまろやかさが売りなので、常温かロックで。

十二度の帯は割らずに飲む前提で作られている

いいちこ12度と博多の華 麦12%は、どちらも割らずに飲む想定である。博多の華の側は、焼酎の仕込水と同じ水であらかじめ割り水しているので馴染みが良いと説明する。いいちこの側は、割らずにそのまま飲める十二度カップとしてストレートを勧める。度数の低さは薄めた結果ではなく、最初からその濃さで仕上げてあるということである。

おつまみの合わせ方は、乙類の比率で考えると外しにくい。乙類の少ないかのかは味の濃い揚げ物や中華の邪魔をしにくいが、乙類の多い日田全麹や三年貯蔵は、塩や出汁の効いた薄味のほうが香りを消さない。二階堂の割り方のような他の麦焼酎の飲み方も、同じ考え方で応用できる。

飲まない焼酎の査定・買取はリンクサスへ

飲まない焼酎の査定・買取はリンクサスへ
未開栓のまま状態を見せてもらえると評価しやすい

贈答で受け取ったまま棚に残っている焼酎は、未開栓であれば評価が付くことがある。リンクサス酒販では、銘柄と容量と化粧箱の有無を確認したうえで査定している。かのかのような量販の混和焼酎は買取の対象になりにくいが、単式蒸留の長期貯蔵ものや限定品は状況が変わる。

写真を送るときは、正面のラベルだけでなく、品目と容量が印刷されている面も一緒に撮ってもらえると早い。品目が「焼酎乙類」なのか「焼酎甲類乙類混和」なのかで、そもそもの見立てが変わるからである。年数表記や詰め口の年月が入っていれば、それも写しておくとよい。

品揃えは焼酎のコレクションで見られる。当日十四時までのご注文で当日発送に対応している。高級焼酎の価格帯を先に見ておくと、手元の一本がどのあたりに位置するのか見当が付けやすい。

よくある質問

よくある質問
飲み方の疑問はラベルの表示から答えが出ることが多い
かのかといいちこの違いは何ですか。

造りが違います。かのかは焼酎甲類乙類混和で、アサヒビールの商品情報によれば麦25度は甲類が七十五パーセント、乙類が二十五パーセントです。いいちこは単式蒸留焼酎で、三和酒類はよくあるご質問で「「いいちこ」は、単式蒸留焼酎(しょうちゅう乙類)です。」と答えています。混ぜているかいないか、が最初の分かれ目です。

かのかに「本格焼酎」と書いていないのはなぜですか。

混和した焼酎には本格焼酎という呼称を使えないためです。国税庁の法令解釈通達は第86条の5関係で「単式蒸留焼酎と連続式蒸留焼酎の混和酒には、「本格焼酎」の呼称を使用できないことに留意する。」としています。かのかは甲類乙類混和なので、この一文に当たります。

混和焼酎の表示は「甲類乙類混和」と「乙類甲類混和」で何が違うのですか。

国税庁の通達は「連続式・単式蒸留焼酎混和」「焼酎甲類・乙類混和」「ホワイトリカー①②混和」の三つを定型として挙げていますが、並べる順序を混和割合と結び付ける規定は書かれていません。なお国税庁の解説資料は、令和5年1月のチェックシートが「焼酎甲類・乙類混和」、令和元年7月の説明事項が「焼酎乙類・甲類混和」と、同じ通達を根拠としながら逆の順で記載しています。

原材料欄の「七十五パーセント」という数字は法律で決まっているのですか。

法令の義務ではありません。食品表示基準第5条は「酒類を販売する場合」に「原材料名 アレルゲン 原産国名」の表示は要しないと定めています。割合の併記を求めているのは単式蒸留焼酎の表示に関する公正競争規約の施行規則ですが、その第1条は連続式蒸留焼酎の純アルコール量が単式を超えないものだけを対象にしており、甲類の多いかのかは対象外です。

ラベルに「混和」と書いていなければ、混ぜていないと考えてよいですか。

言い切れません。通達は、混和した一方の品目の割合が純アルコール数量で五パーセント未満の場合、混和量の多い方の品目だけの表示でよいとしています。ただしその場合でも本格焼酎とは表示できないので、「本格焼酎」の四文字があれば混和していないと読めます。

かのかにはどんな種類がありますか。

アサヒビールの商品情報に載っているのは七品です。麦焼酎かのか25度、同20度、麦焼酎かのか焙煎まろやか仕立て25度、麦焼酎琥珀かのか25度、芋焼酎かのか濃醇まろやか仕立て25度、芋焼酎かのか華やかすっきり仕立て25度、米焼酎かのか25度です。乙類の比率は十パーセントから三十一パーセントまで品ごとに違います。

かのかはいつから売られていますか。

アサヒビールは複数のニュースリリースで「1993年の発売以来」と書き、2013年3月のリリースでは「2013年10月13日をもって発売20周年」を迎えるとしています。なお2007年には品目が「単式蒸留しょうちゅう(焼酎乙類、本格焼酎)」の『本格麦焼酎かのか』が発売されたリリースがあります。混和ではなかったので本格焼酎と名乗れましたが、現在の公式ラインナップには入っていません。

いいちこの「下町のナポレオン」は商品名ですか。

三和酒類はサブネームと呼んでいます。よくあるご質問では、昭和54年に新開発した焼酎を発売する際にネーミングを一般公募し、「いいちこ」とともに採用したと説明しています。商品案内の一覧に「いいちこ下町のナポレオン」という商品名は無く、「下町の」が付く商品はいいちこ下町のハイボールだけです。

甲類焼酎と乙類焼酎では、どちらの生産量が多いのですか。

単式蒸留焼酎、つまり乙類のほうが多いです。国税庁の酒のしおり(令和7年7月)の付表1によると、令和5年度の課税数量(国税局分)は連続式蒸留焼酎が271,375キロリットル、単式蒸留焼酎が360,200キロリットルです。平成25年度はそれぞれ380,075キロリットルと511,319キロリットルで、十年で七割ほどに減っています。

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