マッカラン25年の定価と、偽物が国境で止まる仕組み
マッカラン25年の定価を調べると、396,000円という数字がよく出てきます。ところがサントリーのページを2026年8月27日に開いて確かめると、書かれているのは360,000円のひとつだけで、しかも税別です。396,000円は消費税を足した換算値で、サントリーはどのページにもその額を書いていません。
もうひとつ、この銘柄には調べても出てこないものがあります。サントリーは価格改定のリリースを毎年出していますが、そこに載る「ザ・マッカラン」は30年と12年とダブルカスク12年で、25年は三本のリリースのどれにも一度も出てきません。いま出ている額に、それを告げた文書が見当たらない銘柄です。
この記事は、まず公式が現に書いている数字だけを並べます。そのうえで、25年ほどの値段になると必ず付いてまわる偽物の問題を、国境で止める側の条文まで下りて読みます。関税法は「輸出してはならない貨物」と「輸入してはならない貨物」という二つの表を持っていて、同じ知的財産の並びなのに表の長さが違います。番号は続いているのに、拾われる範囲は続いていません。
マッカラン25年の定価|値段が載る面と、載らない面がある

日本でマッカランを輸入しているのはサントリーです。そのサントリーがウェブに持っているマッカランの面は三つあり、値段が載っているのは二つだけです。ブランドサイトの商品ページには、価格という語も金額も一度も出てきません。金額があるのは、原材料やカロリーを載せている製品データベースと、旧来の製品情報ページのほうです。
その二つに載る主な八品を、2026年8月27日に開いて書き写しました。
| 商品名(サントリーの表記) | 容量 | 度数 | 希望小売価格(税別) | 消費税10%を足した額 |
|---|---|---|---|---|
| ザ・マッカラン ダブルカスク12年 | 700ml | 40% | 9,900円 | 10,890円 |
| ザ・マッカラン12年 | 700ml | 40% | 13,500円 | 14,850円 |
| ザ・マッカラン ダブルカスク15年 | 700ml | 43% | 25,800円 | 28,380円 |
| ザ・マッカラン レアカスク | 700ml | 43% | 40,500円 | 44,550円 |
| ザ・マッカラン ダブルカスク18年 | 700ml | 43% | 47,100円 | 51,810円 |
| ザ・マッカラン18年 | 700ml | 43% | 62,000円 | 68,200円 |
| ザ・マッカラン25年 | 700ml | 43% | 360,000円 | 396,000円 |
| ザ・マッカラン30年 | 700ml | 43% | 796,000円 | 875,600円 |
右端の欄は当店が計算した数字です。サントリーはこの列にあたる額を、どのページにも書いていません。書かれているのは税別の額と、その下に付いた二行の注記だけです。
※価格は販売店様の自主的な価格設定を拘束するものではありません。
記載の価格は消費税別の価格です。
一行目は、この額が売り値を縛らないと自ら断っている文です。二行目は、税を含んでいないと断っている文です。つまりサントリーが公表しているのは「小売店に渡す目安の、税を抜いた額」であって、店頭に並ぶときの値札そのものではありません。よく見かける396,000円という数字は、この360,000円に消費税を足した結果で、公式の表記ではありません。
もうひとつ、製品データベースでの商品名は「ザ・マッカラン25年」で、シェリーオークが付きません。ブランドサイトのほうは「ザ・マッカラン シェリーオーク25年」です。同じ一本が、面によって二通りの名前で呼ばれています。
年数の違う各ボトルの値動きそのものは、それぞれ専用の記事があります。18年の推移と「定価割れ」についてはマッカラン18年の定価推移と定価割れ、30年の現行価格とブルーラベルについてはマッカラン30年の定価とブルーラベルの違い、12年の終売と樽の構成についてはマッカラン12年の終売と価格推移をご覧ください。
マッカランとスコッチウイスキーの関連商品

当店で在庫しているウイスキーを並べています。表示している金額は当店の販売価格で、前の章に並べたサントリーの希望小売価格とは別のものです。
「マッカラン25年の定価と、偽物が国境で止まる仕組み」に関連するおすすめ商品
ここではマッカランの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
マッカラン以外のシェリー樽系も見比べたい場合は、ウイスキーの一覧から絞り込めます。
当店の在庫で見るマッカラン30本|12年から30年まで

当店に在庫のあるマッカランから30本を、当店の取扱価格で並べました。現行の12年から、年号の入った旧ボトル、そして25年と30年までが同じ一覧に入っています。
この表の金額はすべて当店が付けた値で、サントリーの希望小売価格ではありません。表示が税込になっているのは、当店が消費者に売るときの値だからで、メーカーが公表している税別の額とは性質が違います。
この表に並ぶ金額は、すべて当店の取扱価格です。サントリーが公表している希望小売価格(25年は360,000円・税別)とは別の数字で、希望小売価格は小売店の値付けを拘束しません。表示している金額は税込です。度数の欄は、商品名や仕様に度数が明記されている行にだけ数字を入れています。空欄は度数が不明という意味ではありません。容量は特記のない行が700mlで、アニバーサリーモルト1975-2000だけが750mlです。Amazonの欄と楽天の欄には数値を持たせていないため、横棒や検索リンクが出ます。買取の欄も同様に個別のリンクを持たせていません。在庫と価格は2026年8月27日時点のもので、その後に動くことがあります。
度数の欄は、商品名や仕様に度数が明記されている行にだけ数字を入れています。空欄は度数が不明という意味ではありません。
同じ表に30年と12年は載り、25年は載らない

サントリーは価格改定のたびにニュースリリースを出しています。マッカランが関係しそうな直近三本を全文開いて、金額を数えました。
| 公表日 | 表題 | 実施日 | マッカランの記載 | 本文中の「円」の数 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年11月21日 | ウイスキー・リキュール・ワイン等 一部商品の価格改定について | 2024年4月1日出荷分から | 30年 351,360円→550,000円(57%)/12年 9,990円→12,500円(25%) | 20 |
| 2024年11月8日 | 輸入ワイン・輸入ウイスキー 一部商品の価格改定について | 2025年4月1日出荷分から | 「ザ・マッカラン ダブルカスク12年、ザ・マッカラン 12年など」と品名のみ | 0 |
| 2025年11月4日 | ウイスキー・焼酎・輸入ワイン 一部商品の価格改定について | 2026年4月1日出荷分から | 記載なし(ウイスキーは「響」「山崎」「白州」の三ブランドのみ) | 0 |
この三本に、マッカラン25年は一度も現れません。金額の表を持っているのは2023年11月のリリースだけで、そこに載るマッカランは30年と12年の二品です。同じリリースは対象を「ウイスキー:14ブランド63品目」と書いており、表のほうは「主な価格改定実施品目」という見出しが付いています。63品目のうち表に載ったのは八行で、25年はそこに入りませんでした。
そのあとの二本には、そもそも金額がありません。2024年11月のリリースはウイスキーを二品名、2025年11月のリリースは三ブランド挙げるだけです。
この三本と、いま製品データベースに出ている額を突き合わせると、埋まらない差が残ります。
| 品目 | 2023年11月のリリースが告げた改定後(税別) | 2026年8月現在の掲載額(税別) | 差を説明する文書 |
|---|---|---|---|
| ザ・マッカラン12年 | 12,500円 | 13,500円 | 見当たらない |
| ザ・マッカラン30年 | 550,000円 | 796,000円 | 見当たらない |
| ザ・マッカラン25年 | 記載なし | 360,000円 | 見当たらない |
12年は1,000円、30年は246,000円ぶん、告げられた額と現在の額がずれています。12年の改定があったこと自体は2024年11月のリリースが述べていますが、額は書かれていません。25年に至っては、改定前の額も改定後の額も、どのリリースにも出てこないのです。
ややこしいことに、360,000円という額そのものは同じ日の別のリリースに出てきます。2023年11月21日の国産プレミアムウイスキーの改定で、響30年・山崎25年・白州25年の三本がそろって160,000円から360,000円(税別)に上がりました。マッカラン25年の現行額と一円も違いません。同じ数字が、片方では改定を告げられた額として、もう片方では告げられないまま出ている額として並んでいます。
告知のないまま額が動く現象そのものは、この銘柄に限りません。輸入元が違う例として、余市10年の定価と、告知のない値上げで同じことを条件を変えて追っています。サントリーの2026年4月改定で何が上がったかはサントリーウイスキーの2026年値上げ一覧にまとめてあります。
25年は毎年入れ替わる|同じ公式の中で名前と樽が食い違う

マッカランの英語公式で25年を開くと、ページの上に「Year of release」という行があり、2018から2026までの九つの年が並びます。25年は毎年入れ替わる年次リリース制で、2026年8月現在の現行は2026 Releaseです。日本で「マッカラン25年」と呼んでいるものは、正確には毎年出し直されている商品の、そのときの版ということになります。
同じ樽の説明が、公式の三つの面で割れる
樽の説明が、公式のなかで三通りに割れています。
| どの面か | 樽と熟成の書き方 |
|---|---|
| サントリー製品データベース | スパニッシュオーク樽で最低25年間熟成させた原酒のみを使用 |
| サントリー ブランドサイト | ヘレス産の厳選されたシェリー樽で熟成した、リッチで複雑な味わい |
| The Macallan 英語公式 | predominantly sherry seasoned European oak casks |
英語の predominantly は「主に」です。日本語の製品データベースは「のみ」と書いており、ここが正面から食い違います。三つを並べたときに情報量がいちばん多いのはブランドサイトで、シェリー樽をシーズニングした場所(ヘレス)まで書いています。逆に、樽の材をスパニッシュオークと限っているのは製品データベースだけです。どれか一つを読んでも全体は分かりません。
同じ製品データベースには、もうひとつ気になる重なりがあります。18年の紹介文も「最低18年間熟成させた原酒のみを使用。まさにラグジュアリーなザ・マッカラン」で、締めの一句まで25年と同じです。12年と30年の締めは別の文になっています。
ファインオークとアニバーサリーとデキャンタの現在地
25年という名前で流通しているボトルには、シェリーオーク以外の系統もあります。ただし公式サイトでの扱いが同じではありません。
- Fine Oak 25 Years Old|英語公式にページはありますが、見出しの直下に「Archive」と表示されます。一覧ページの題も「Past Releases」で、過去の商品として置かれています。公式の説明では、ファインオークは2018年4月からトリプルカスク マチュアードに引き継がれました。
- アニバーサリーモルト25年|蒸溜年と瓶詰め年が入った旧ボトルの呼び名です。英語公式のアーカイブ索引には20のシリーズが並びますが、この名前はそこにありません。当店にも1968-1994、1975-2000などの実物が入荷します。
- クリスタルデキャンタ|年数表記ではありませんが、25年と同じ価格帯で並ぶことがあります。英語公式に「Crystal Decanter」という名前のシリーズはなく、デキャンタ入りとして索引にあるのは1824 Decanters Series、中身はReflexion・Oscuro・No.6の三品です。当店で扱っているデキャンタもNo.6です。
つまり、公式が現行品として案内している25年はシェリーオークだけで、ファインオークは過去商品、残る二つは公式の名簿にない呼び名です。この違いは値段の付き方にも出ます。旧ボトルのラベル世代の見分け方はマッカラン旧ボトルの新旧ラベルの見分け方に、レアカスクなど年数表記のない系統はマッカラン レアカスクとブラックの違いにまとめています。
止めてよい物の表は、出る側と入る側で長さが違う

36万円という額が付く銘柄には、必ず偽物が付いてまわります。国内で見分ける話は後の章にまわして、ここではそもそも偽物が日本に入れない仕組みのほうを条文で見ます。根拠は関税法です。
関税法には、止めてよい物を並べた表が二つあります。第六十九条の二が「輸出してはならない貨物」、第六十九条の十一が「輸入してはならない貨物」です。知的財産にあたる号を、両方とも省略せずに書き出します。
第六十九条の二 次に掲げる貨物は、輸出してはならない。
三 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権又は育成者権を侵害する物品
第六十九条の十一 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
九 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、回路配置利用権又は育成者権を侵害する物品(意匠権又は商標権のみを侵害する物品にあつては、次号に掲げる貨物に該当するものを除く。)
順番も語も揃っているので、つい同じものだと読んでしまいます。数えてみます。
| 権利の名前 | 輸出の表(第六十九条の二第一項第三号) | 輸入の表(第六十九条の十一第一項第九号) |
|---|---|---|
| 特許権 | あり | あり |
| 実用新案権 | あり | あり |
| 意匠権 | あり | あり |
| 商標権 | あり | あり |
| 著作権 | あり | あり |
| 著作隣接権 | あり | あり |
| 回路配置利用権 | なし | あり |
| 育成者権 | あり | あり |
| 合計 | 七つ | 八つ |
七対八で、差はひとつです。回路配置利用権を侵害する物品は、日本に入ってくるときには止められ、日本から出ていくときには止められません。半導体の回路配置を保護する権利で、ウイスキーとは縁遠く見えますが、この一語の有無が二つの表の長さを分けています。
いっぽう、不正競争防止法を引く号は割れていません。輸出の第四号と輸入の第十号は、どちらも同法の同じ号(第二条第一項第一号から第三号まで、第十号、第十七号又は第十八号)を引き、適用除外として同じ号(同法第十九条第一項第一号から第六号まで、第八号又は第十号)を除きます。引く号も、除く号も同じです。つまり立法者は、二つの表をわざわざ書き分けたのではなく、知的財産の号だけを書き分けたことになります。
実際に動いている量も、二つの表で桁が違います。財務省が2026年3月6日に公表した「令和7年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」によれば、輸入差止は31,760件・763,504点、輸出差止は9件・1,729点でした。輸入は一日平均で87件、輸出は一年で9件です。
番号は続いているのに、拾われる範囲は続いていない

表の長さの違いは入口の話でした。止めたあとに何が起きるかは、同じ条の次の項が決めています。ここでもう一度、範囲が割れます。
2 税関長は、前項第一号から第六号まで又は第九号から第十号までに掲げる貨物で輸入されようとするものを没収して廃棄し、又は当該貨物を輸入しようとする者にその積戻しを命ずることができる。
第一項は枝番を入れて十三の号が並んでいます。第二項が拾うのは第一号から第六号まで又は第九号から第十号までで、枝番はその範囲に入ります。範囲から外れるのは第七号と第八号だけです。この二つは第三項に置かれていて、そちらは通知だけです。
| 号 | 中身 | 没収して廃棄・積戻し命令 |
|---|---|---|
| 一〜六(枝番を含む) | 麻薬、指定薬物、銃砲、爆発物、火薬類、特定物質、病原体等、偽造の貨幣・紙幣・有価証券など | できる |
| 七 | 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品 | できない(通知) |
| 八 | 児童ポルノ | できない(通知) |
| 九・九の二・十 | 知的財産を侵害する物品 | できる |
偽物のマッカランは第九号か、後で見る第九号の二にあたるので、税関は没収して廃棄することも、送り返せと命じることもできます。同じ条の二つ上にある第七号の物には、それができません。出る側の第六十九条の二第二項も同じ形で、第二号を落としています。落ちるのは両側とも児童ポルノで、入る側は第七号も落ちます。一部だけが効果の外に出る形は、両側に共通です。
専門委員に諮れる範囲も、第九号の中でまた割れる
侵害かどうかの判断が難しいとき、税関長は外部の専門委員に意見を求められます。その条を読むと、範囲がもう一段狭くなっています。
第六十九条の十九 税関長は、第六十九条の十一第一項第九号(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物(育成者権を侵害する貨物を除く。)又は同項第九号の二に掲げる貨物に該当するか否かについての認定手続において、(中略)当該専門委員に対し、当該認定のための参考となるべき意見を求めることができる。ただし、技術的範囲等については、この限りでない。
第九号には八つの権利が並んでいました。そのうち育成者権だけが外されます。同じ「第九号」という一つの番号が、入口では八つを拾い、専門委員の場面では七つしか拾いません。出る側の第六十九条の九にも同じ括弧書きがあり、七つが六つになります。両側で同じ一語が落ちるので、入口で開いた差はそのまま残ります。税関の説明によれば、専門委員は学者・弁護士・弁理士から通常三名が選ばれ、税関は明らかな事実誤認などの事情がない限り多数意見を尊重するとされています。
手続そのものが、輸入にしかない
止めた貨物が本当に侵害品かを決める手続を、関税法は「認定手続」と呼びます。税関に提出できる証拠と意見の期限は、原則として通知の日の翌日から起算して十執務日、腐るおそれのある生鮮貨物は三日です。
この認定手続には、権利者と輸入者の双方から証拠を出させる通常の形と、争う旨の申出がないときに省略して進める簡素化手続があります。税関は簡素化手続について「輸入のみに設けられた手続で輸出は対象外です」と明記しています。令和7年の実績では、認定手続を開始した32,666件のうち25,764件(78.9%)が簡素化手続で、争う旨の申出があったのは580件(1.8%)でした。残りは、実質的な言い分の突き合わせなしに処理されています。
名前だけがあって、数字が無い|「持込み行為」と令和四年十月一日

輸入の表には、輸出の表にまったく対応するものがない号があります。第九号の二です。
九の二 意匠権又は商標権を侵害する物品(外国から日本国内にある者(意匠権を侵害する物品にあつては当該物品を業として輸入する者を除くものとし、商標権を侵害する物品にあつては業としてその物品を生産し、証明し、又は譲渡する者を除く。)に宛てて発送した貨物のうち、持込み行為(意匠法第二条第二項第一号(定義等)又は商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二条第七項(定義等)に規定する外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為をいう。)に係るものに限る。)
括弧が三重に入っていて読みにくい号ですが、要は海外の業者が、日本にいる個人に宛てて送った偽物を止める号です。除かれているのは「業として」の側なので、事業者でない人が受け取る貨物を正面から捕まえます。
名前を付けたのは、権利を作った法律ではない
この号が使う「持込み行為」という語の定義先は、意匠法と商標法です。その二つを開くと、行為は書かれていますが、この名前は出てきません。
商標法第二条第七項 この法律において、輸入する行為には、外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為が含まれるものとする。
意匠法のほうは独立の項ですらなく、「実施」の定義の中の括弧書きです。「意匠に係る物品の製造、使用、譲渡、貸渡し、輸出若しくは輸入(外国にある者が外国から日本国内に他人をして持ち込ませる行為を含む。以下同じ。)」という形で挟まっています。
語を機械で数えると、はっきりします。e-Gov法令検索が収録する法令の全文で「持込み行為」は一文・一法令、その一本が関税法です。行為を記述した「持ち込ませる行為」のほうは三文・三法令(関税法・意匠法・商標法)あります。権利を作った二つの法律は、その行為に名前を付けていません。名前を付けたのは、国境で止める側です。
いつから効いているかは、三段目の政令にしかない
この号がいつから動いているのかを条文で探すと、日付に行き当たりません。関税定率法等の一部を改正する法律(令和四年法律第五号)の附則は、こう書いています。
第一条 この法律は、令和四年四月一日から施行する。ただし、第二条の規定は、特許法等の一部を改正する法律(令和三年法律第四十二号)附則第一条第四号に掲げる規定の施行の日から施行する。
そこで指された特許法等改正法の附則第一条第四号を開くと、そちらにも日付はなく「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日」とあります。日付が現れるのは、その先の令和四年政令第二百五十号です。この政令は題名と本則一文だけの短いもので、「特許法等の一部を改正する法律附則第一条第四号に掲げる規定の施行期日は令和四年十月一日とし」と定めています。
関税法から数えて三段目でようやく日付に届きます。しかもe-Gov法令検索でこの政令は引けません。法令データベースだけを見ていると、この日付には到達できない構造になっています。
条文にはある名前が、統計には無い
では第九号の二が実際にどれだけ使われているのか。財務省の差止状況の資料を、令和四年分から令和七年分まで機械で読みました。「持込」という字は一度も出てきません。権利別の内訳は商標権・著作権・意匠権・特許権・不正競争防止法違反物品で組まれていて、第九号と第九号の二を分けた欄がありません。個人宛の小包を止めた結果は、商標権と意匠権の行に合算されています。
| 知的財産の別 | 令和7年の輸入差止件数 | 構成比 | 点数 |
|---|---|---|---|
| 商標権 | 29,685件 | 92.1% | 469,878点 |
| 著作権 | 1,746件 | 5.4% | 213,569点 |
| 意匠権 | 530件 | 1.6% | 46,112点 |
| 特許権 | 253件 | 0.8% | 33,905点 |
| 不正競争防止法違反物品 | 1件 | 0.0% | 40点 |
| 実用新案権・著作隣接権・回路配置利用権・育成者権 | 0件 | — | 0点 |
件数は一事案で複数の権利にまたがると権利ごとに数えるため、各行の合計は31,760件より455件多くなります。構成比はその合計に対する割合です。入る側の表にだけ回路配置利用権があると先に書きました。その権利での差止は一件も出ていません。表を長くしている一語が、数字の側では空欄になっています。逆に、この統計の表題である「知的財産侵害物品」という語のほうは、e-Gov法令検索が収録する法令の全文に一件もありません。条文にある語は統計に現れず、統計の題は条文にありません。
輸送形態も偏っています。輸入差止31,760件のうち27,459件(86.5%)が郵便物で、点数では郵便物が238,442点(31.2%)にとどまります。小口の荷物が件数を、まとまった貨物が点数を作っている形です。
本物を海外から取り寄せるとき|真正商品の並行輸入という三つの要件

ここまでは偽物の話でした。では、海外の正規店で買った本物のマッカランを取り寄せる場合はどうか。商標が付いている以上、輸入は形のうえでは商標権の侵害にあたります。それでも止まらない場合があることを、最高裁が要件の形で示しています。フレッドペリーの商標をめぐる事件で、最高裁第一小法廷が平成15年2月27日に出した判決です(平成14年(受)第1100号・民集第57巻2号125頁)。
そのような商品の輸入であっても,(1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,(3) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものと解するのが相当である。
三つの要件は、順に「誰が貼ったか」「本国と日本の権利者がつながっているか」「品質を握れる立場か」を見ています。本国と日本で商標を持つ側がつながっている銘柄であれば、正規に流通した本物についてこの三つは通常みたされます。
ただし判決は、輸入する側の義務も同時に書いています。使用許諾を受けた者が商標を付した商品を輸入する場合には、「少なくとも,使用許諾契約上,被許諾者が製造国において当該商品を製造し当該商標を付することができる権原を有することを確認した上で当該商品を輸入すべきである」としました。本物かどうかを確かめる手間を、輸入する側が負っているという書き方です。
この判断が税関の現場でどう扱われるかも、公表された運用の文書に出ています。認定手続で専門委員に意見を求める対象として「侵害成立阻却事由(並行輸入、権利消尽、先使用、権利無効、試験研究、権利の濫用等)」が挙げられています。並行輸入だという主張は、税関が自分で決めずに外部へ回す類型として名指しされているわけです。
なお「並行輸入」も「真正商品」も、e-Gov法令検索が収録する法令の全文には一件もありません。どちらも条文の語ではなく、判決と実務が育てた語です。それでも税関はこの語で運用の基準を書いています。
個人で買っても止まる|没収と罰則で、線の引き方が違う

第九号の二ができる前と後で、税関の説明文が入れ替わっています。同じURLのページを、改正前の記録と現在とで読み比べます。改正前の版には「個人」という語が一度も出てきませんでした。現在の版には、次の一文が足されています。
また、個人で使用する場合であっても、海外の事業者から郵送等で送付される模倣品(意匠権又は商標権を侵害するもの)は、令和4年10月1日から、輸入してはならない貨物として税関による取締りの対象となっています。
税関は別の注意喚起のページで、罰則との関係も書き分けています。
今般の商標法、意匠法及び関税法の改正を受けて、取締りが強化されることになっても、輸入者に事業性がなければ罰則の対象とはなりません。ただし、海外の事業者から郵送等で送付される模倣品(商標権又は意匠権を侵害するもの)は、輸入できません。なお、輸入者に事業性がある場合には、従来どおり、罰則の対象となります。
物は取られるが、事業としてでなければ人は罰せられない。ここでも線が二本に分かれています。事業性がある場合の罰則は十年以下の刑か一千万円以下の罰金、またはその併科です。同じページは返金についても「税関では対応いたしかねます」と書いており、購入した通販サイトへ問い合わせるよう案内しています。
実務の判断がどこを見ているかは、税関の内部基準にあたる通達の書き換えに出ています。「知的財産の侵害とはならない物品」を並べた箇所で、改正前は意匠権と一部の商標権も「業として輸入されるものでないもの」の側にありました。いまは意匠権と商標権だけが別の号に移され、「業として輸入されるものでなく、かつ、外国にある者が業として外国から日本国内に他人をして持ち込ませたものでないもの」という二つ目の条件が足されています。同じ通達の判断要素にも「仕出人の職業又は事業内容」が加わりました。見る目が、受け取る人から送る人へ広がっています。
瓶そのものの見分け方は、当店の別の記事にまとめてあります。キャップ・ラベル・化粧箱・液面の四か所をどう見るかは山崎の偽物の見分け方|キャップとラベル、高額な輸入酒で偽物が出回る経路については茅台酒の偽物の見分け方が近い話を扱っています。国境の手前で酒がどう扱われるかは免税店の酒はなぜ安いのか|保税蔵置場のしくみもあわせてご覧ください。
マッカラン25年の査定・買取はリンクサス酒販へ

飲まないまま置いてあるマッカランは、当店でお値段をお付けできます。25年は現行のシェリーオークだけでなく、ファインオークや、蒸溜年の入った旧ボトルも査定の対象です。木箱・化粧箱・保証書がそろっているほど、評価は安定します。
査定の材料としてこちらが見ているのは、公式が公表している税別の額と、当店の在庫と、直近の取引の三つです。先に見たとおり、税込の希望小売価格はどこにも公表されていないので、比較の基準には使えません。年号入りのボトルは、同じ「25年」でも瓶詰めの年によって値が変わります。
買取の流れや必要なものはウイスキー買取おすすめ|高く売るならとお酒買取の方法と注意点にまとめています。オークションでの相場が気になる場合はマッカラン1946の相場とオークション落札もご覧ください。
マッカラン25年についてよくある質問

マッカラン25年の定価はいくらですか。
サントリーが公表しているのは360,000円(税別)です。容量700ml、アルコール度数43%で、製品データベースと旧来の製品情報ページの二か所に同じ額が載っています。消費税10%を足すと396,000円になりますが、この税込の額はサントリーのどのページにも書かれていません。当店が計算した数字です。
「希望小売価格」で買えるお店を探せば、その値段で買えますか。
その保証はありません。サントリー自身が金額のすぐ下に「※価格は販売店様の自主的な価格設定を拘束するものではありません。」と書いています。小売店がいくらで売るかは各店の判断で、公表された額はあくまで目安です。
25年の値上げはいつ告知されましたか。
サントリーの価格改定リリース三本(2023年11月21日・2024年11月8日・2025年11月4日)を全文確認しましたが、25年の金額はどれにも載っていません。金額の表があるのは2023年11月のものだけで、そこに出るマッカランは30年と12年です。したがって、いつどの額から360,000円になったかは、公表資料からは特定できません。
マッカラン25年の熟成年数は、本当に25年ですか。
サントリーの製品データベースは「最低25年間熟成させた原酒」と書いています。英語公式は樽について「predominantly sherry seasoned European oak casks」=主にシェリー樽、と書いており、日本語側の「原酒のみ」と食い違います。熟成が四半世紀に及ぶ点は両方で一致しています。
「アニバーサリーモルト25年」は公式のシリーズですか。
蒸溜年と瓶詰め年が入った旧ボトルの呼び名です。英語公式のアーカイブ索引には20のシリーズが並びますが、この名前はそこにありません。当店にも実物が入荷しますが、メーカーが現在案内している商品名ではありません。
海外の通販で買ったマッカランが税関で止まることはありますか。
あります。偽物であれば関税法第六十九条の十一第一項第九号にあたり、輸入できません。個人宛の場合は2022年10月1日から、海外の事業者が日本国内の個人に宛てて送った意匠権・商標権がらみの模倣品が同項第九号の二で止まります。個人使用のつもりでも、この号にあたれば没収の対象です。
個人で買った偽物が止められた場合、罰せられますか。
税関は「輸入者に事業性がなければ罰則の対象とはなりません」と明記しています。ただし物のほうは没収されます。事業として輸入していれば、従来どおり罰則の対象です。物と人で線の引き方が違う、という二段構えです。返金については税関では対応しないとされており、購入した通販サイトへ問い合わせることになります。
正規品を海外から個人輸入するのは問題ありませんか。
本物であれば、真正商品の並行輸入として侵害にあたらない場合があります。最高裁は平成15年2月27日の判決で三つの要件を示しました。商標が外国の権利者側によって適法に付されていること、外国と日本の権利者が同一かこれと同視できる関係にあること、日本の権利者が品質管理を行い得る立場にあることの三つです。実務では、この主張が出ると税関が専門委員に意見を求めることがあります。
マッカラン25年は買取してもらえますか。
はい、当店で査定できます。現行のシェリーオーク25年のほか、ファインオーク25年や蒸溜年の入った旧ボトルも対象です。木箱・化粧箱・保証書がそろっているほど評価は安定します。写真をお送りいただければ、おおよその線をその場でお伝えできます。





































