カシスソーダの度数は5.10%|銘柄と割合で変わる理由

カシスソーダとは|作り方と黄金比、度数とカシスリキュールの選び方を解説

カシスソーダの度数は5.10%|銘柄と割合で変わる理由

カシスリキュールを炭酸水で割ったカシスソーダは、材料が二つしかない。それでも「度数は何度か」には一つの数字で答えられない。メーカーが公表している五・一〇パーセントを分量から検算し、その数字が銘柄と割合でどこまで動くかを表にする。あわせて、割り材の「ソーダ」に規格があるのかを、日本・米国・英国の条文で確かめる。

カシスソーダとは|カシスリキュールを炭酸水で割った一杯

カシスソーダとは|カシスリキュールを炭酸水で割った一杯
グラスの中身は二つだけの、単純な組み立て。

カシスソーダは、カシスリキュールを炭酸水で割った一杯である。材料は二つで、グラスの中で組み立てるだけである。作り方に迷う余地はほとんどない。それなのに「度数は何度か」という問いには、一つの数字で答えられない。

「カシスソーダ 度数」という調べ方が多いのは、飲む前に見当をつけたいからだろう。ビールと同じくらいなのか、それともチューハイより強いのか。ところが、この一杯には度数を決める規格が無い。

答えられない理由は、割り材の側ではなくリキュールの側にある。同じ分量で作っても、使う一本を替えるだけで完成した一杯の度数は一・五倍近く動く。この記事は、まずメーカーが公表している完成度数を分量から検算し、そのうえで「なぜ数字が一つに決まらないのか」を、リキュールと割り材の両方について制度の側から確かめる。

この記事が確かめる範囲

取得して読んだのは、酒税法(昭和二十八年法律第六号)、食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)の全文、米国連邦規則集第二十一編一六五・一一〇、英国の二〇〇七年天然ミネラルウォーター等規則(S.I. 2007/2785)、酒税法施行令(昭和三十七年政令第九十七号)、それにアサヒビールとサントリーの製品ページである。カシスリキュールそのものの糖分や産地の要件はカシスとはどんな味かで扱っているので、ここでは繰り返さない。

「カシスサイダー」と呼ばれることもある

検索では「カシスサイダー」「カシスソーダー」といった表記も使われている。どれも同じ一杯を指す通称で、公的な定義があるわけではない。後述するとおり、日本の食品表示基準には「ソーダ」という語が一度も出てこない。「炭酸飲料」のほうは、e-Gov法令検索で現行法令を横断して引いても、その語を含む法令が食品表示基準の一件しか出てこない。名前が揺れるのは、揺れを止める規定がないからでもある。

度数は公式で五・一〇パーセント|材料の分量だけで再現できる

度数は公式で五・一〇パーセント|材料の分量だけで再現できる
公表値は、書かれた分量から再現できる。

アサヒビールのカクテルガイドが書いている数字

メーカーが分量つきで完成度数を公表している例がある。アサヒビールの「カクテルガイド」に載るカシスソーダは、ベースをリキュール、味のタイプをフルーティー、色調をレッド、グラスをタンブラー、技法をビルドとしたうえで、アルコール度数を五・一〇パーセントと書いている。材料は次のとおりである。

表1 アサヒビール「カクテルガイド」カシスソーダの材料と分量
材料名 分量(純アルコール量)
ボルス クレーム・ド・カシス 45ml(6.1g)
ウィルキンソン タンサン 105ml
レモンスライス

作り方は氷を入れたタンブラーに材料を注ぎ、ステアする。レモンスライスを飾る。の一文だけである。アサヒビール カクテルガイド「カシスソーダ」

四十五ミリリットルと百五ミリリットルから五・一〇パーセントを出し直す

この表には、度数を検算するのに必要な数字がそろっている。純アルコール量の計算式は、サントリーが製品ページに書いているものが使える。純アルコール量(g) = 飲酒量(ml) × アルコール度数(度)/100 × 0.8である。サントリー 商品情報「ルジェ クレーム ド カシス 700ml瓶」

この式を逆に解くと、四十五ミリリットルで六・一グラムになるリキュールの度数が出る。六・一を四十五と〇・〇〇八の積で割ると一六・九となり、四捨五入して十七度である。

十七度として完成度数を出し直す。エタノールの容量は四十五ミリリットルの十七パーセントで七・六五ミリリットル。全体の量は四十五と百五を足して百五十ミリリットル。七・六五を百五十で割ると〇・〇五一〇、つまり五・一〇パーセントになる。公表値と小数第二位まで一致する。

氷の融け水は数に入っていない

一致したということは、この五・一〇パーセントが「材料として注いだ量だけ」で計算されているという意味でもある。作り方には氷を入れると書いてあるが、その氷が融けて増える水は分母に入っていない。実際にグラスで飲むときは、氷が融けたぶん数字はこれより下がる。公表された完成度数は、飲む瞬間の濃さではなく、レシピの設計値だと考えるのが正確である。

純アルコール量のほうも確かめておく。四十五ミリリットル、十七度、係数〇・八で計算すると六・一二グラムで、公式が書く六・一グラムと合う。ただし十七度は六・一グラムから逆算した値なので、これは新しい裏づけではなく、逆算に取りこぼしが無いことの確認である。

同じ分量でも、銘柄を替えると一・四七倍になる

同じ分量でも、銘柄を替えると一・四七倍になる
数字を動かしているのは、割り材ではなくリキュールの側。

ルジェは二十度、ビターカシスは二十五度

日本でよく流通しているカシスリキュールに、サントリーが扱うルジェがある。商品情報ページによれば、ルジェ クレーム ド カシス 700ml瓶はアルコール度数二十度、原材料はカシス、スピリッツ、糖類、希望小売価格は一九七〇円である。純アルコール量は百ミリリットルあたり十六グラム、三十ミリリットルあたり四・八グラムと書かれている。

同じルジェのブランドサイトを見ると、ラインナップの度数は品目ごとに決まっていて、十五から二十五まで幅がある。カシスは二十パーセント、ビターカシスは二十五パーセント、ピーチとストロベリーとカルテットとアプリコットとフランボワーズは十五パーセント、ピンクグレープフルーツは十六パーセント、ペアは二十一パーセント、グリーンアップルは二十二パーセント、バナナは二十五パーセントである。サントリー ルジェ 製品ラインナップ

つまり「カシスのリキュール」と一口に言っても、同じブランドの中に二十度と二十五度が並んでいる。先ほど検算したアサヒの一杯は、純アルコール量から逆算すると十七度になるリキュールで作られていた。

度数と割合の早見表

そこで、リキュールの度数と割合を動かしたときに完成度数がどこまで開くかを並べる。合計は百五十ミリリットルにそろえ、氷の融け水は数えない。

表2 リキュールの度数と分量から計算したカシスソーダの完成度数(合計150ml・氷の融け水は含まない)
リキュール:炭酸水 17度のとき 20度のとき 25度のとき
30ml:120ml 3.40% 4.00% 5.00%
45ml:105ml(アサヒ公式の分量) 5.10% 6.00% 7.50%
60ml:90ml 6.80% 8.00% 10.00%

アサヒが書いている四十五対百五の分量に限っても、十七度で五・一〇パーセント、二十五度で七・五〇パーセントになる。比にすると一・四七倍である。割合まで動かせば、同じ「カシスソーダ」という名前のまま三・四〇パーセントから一〇・〇〇パーセントまで開く。

幅の広さは、ビールの度数帯をまたぐ大きさである。三・四〇パーセントならビールより軽く、一〇・〇〇パーセントなら日本酒を水で割った程度になる。同じ名前で注文しているのに、店や家で出てくるものが別の飲みものになりうる。

「カシスソーダは何度ですか」に一つの数字で答えられないのは、作り方が難しいからではない。数字を決めているのが、名前ではなく手元の一本と注ぐ量だからである。

関連商品ラインナップ
在庫と価格は各商品ページで確認できる。

リンクサス酒販で取り扱っている関連商品を並べている。表示は在庫の状況で入れ替わるので、気になる一本があれば各ページで状態と価格を確かめてほしい。当日十四時までの注文で当日発送に対応している。

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銘柄ごとに度数が違うことを、並べて確かめる。

先の表2は、リキュールの度数が三つ違うだけで完成度数がどれだけ動くかを示したものだった。実際の品揃えでも度数は銘柄ごとに散らばっている。カシスを軸に、ベリー系から柑橘系まで三十本を並べたのが次の表である。価格順・希少度順に並べ替えられるので、手元の一本を決めるときに使ってほしい。

カシスソーダのベースに使いたいカシス・フルーツリキュール30銘柄 比較表
カシスソーダの主役になるクレーム・ド・カシスを軸に、フランスのベリーリキュールやピーチ、ライチ、メロン、コーヒー、クリーム、オレンジリキュールまで、カシスと一緒に楽しみたいフルーツ系リキュール30本を度数・タイプ・特徴で横断的に並べました。価格は楽天・Amazonの実勢を参考値として掲載し、最安値を案内する一覧ではありません。リンクサス酒販の在庫品は各リンクから状態と価格を確認できます(2026年6月時点)。
価格は 2026/08/21 更新
画像 銘柄・スコア 定価
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ルジェ クレーム ド カシス 700ml(日本流通品 20度)1 ルジェ クレーム ド カシス 700ml(日本流通品 20度)
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2 ジョセフ・カルトロン クレーム・ド・カシス・ド・ブルゴーニュ 700ml
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3 ガブリエル・ボーディエ クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン 700ml
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ディジョンの老舗が手がける王道カシス。公式サイトに16%と20%の製品が並ぶ。

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4 ブリオテ(Briottet)クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン 700ml 20%
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果汁含有量が高い濃厚タイプ。公式表記は20%でNoir de Bourgogne種を使う。

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マリー・ブリザール クレーム・ド・カシス 700ml5 マリー・ブリザール クレーム・ド・カシス 700ml
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老舗ブランドのカシス。やわらかな甘さで割り材を選ばない。

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ボルス クレーム・ド・カシス 700ml 17%6 ボルス クレーム・ド・カシス 700ml 17%
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アサヒビールが扱う定番。公式に17%と参考小売価格が示されている。

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デカイパー クレーム・ド・カシス 700ml7 デカイパー クレーム・ド・カシス 700ml
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バーの定番。公式は個別の度数を公表しておらず帯域表記のみになる。

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8 レニエ クレーム・ド・カシス 700ml 16%
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アサヒビールが扱うディジョン産カシス。公式表記は16%で表中では低めになる。

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価格は各モールの実勢(2026年6月時点)で、リキュールはいずれもオープン価格のためメーカー定価は掲載していません。楽天/Amazon価格は同一品が見つからない場合は空欄になります。在庫・価格は変動するため、最新情報は各リンク先でご確認ください。最安値を保証する一覧ではありません。

作り方|氷を入れたタンブラーに注いでステアする

作り方|氷を入れたタンブラーに注いでステアする
手順は短い。難しいのは分量の決め方のほう。

手順

公式が書いている手順はごく短い。氷を入れたタンブラーに材料を注ぎ、ステアし、レモンスライスを飾る。注ぐ順序までは書かれていないが、色の層を残したいならリキュールを先に沈めるとよい。混ぜてから注ぐのではなくグラスの中で組み立てるので、技法としてはビルドに分類される。

分量は先の表2から選べばよい。甘さを抑えて軽くしたいなら三十ミリリットル対百二十ミリリットル、色と香りをはっきり出したいなら六十ミリリットル対九十ミリリットルになる。アサヒの四十五ミリリットル対百五ミリリットルは、その中間に置かれた設計である。

炭酸を逃がさない注ぎ方

気をつける点は一つだけで、炭酸を飛ばさないことに尽きる。カシスリキュールは糖分が多くて重いのでグラスの底に沈む。上から勢いよく炭酸水を当てると泡が一気に抜けるため、氷に当てず内壁を伝わせて静かに注ぐ。ステアも、下から一回すくい上げる程度で十分に混ざる。

レモンを添えるのは飾りだけの意味ではない。カシスの甘さは酸で輪郭が出るので、絞らずに浮かべるだけでも香りの立ち方が変わる。オレンジジュースで割るカシスオレンジや、烏龍茶で割るカシスウーロンと比べると、炭酸割りは甘さがいちばん軽く着地する。

「ソーダウォーター」は米国の連邦規則に実在する語である

「ソーダウォーター」は米国の連邦規則に実在する語である
割り材の名前を、条文が名指しで並べている国がある。

八つの名前が「ボトルドウォーター」から外れる

ここから割り材の側を見る。カシスソーダの「ソーダ」に規格はあるのか、という問いである。

米国には、その語を条文が名指ししている場所がある。連邦規則集第二十一編一六五・一一〇は「bottled water」の定義を置いた規定で、その(a)(1)は四つの文からできている。フッ素の添加についての一文を除いて、原文の順に並べる。

Bottled water is water that is intended for human consumption and that is sealed in bottles or other containers with no added ingredients except that it may optionally contain safe and suitable antimicrobial agents.

Bottled water may be used as an ingredient in beverages (e.g., diluted juices, flavored bottled waters).

It does not include those food ingredients that are declared in ingredient labeling as “water,” “carbonated water,” “disinfected water,” “filtered water,” “seltzer water,” “soda water,” “sparkling water,” and “tonic water.”

21 CFR § 165.110(a)(1)

原材料表示に「soda water」と書かれるものは、この規定の「bottled water」ではない。同じ列に「carbonated water」「seltzer water」「sparkling water」「tonic water」が並んでいる。八つの語が一つずつ書き出されており、そのうち五つは割り材の名である。

同じ sparkling が二か所に出て、意味が入れ替わる

面白いのは、同じ節の少し下に「sparkling」がもう一度出てくることである。名称を定める(a)(2)の(v)はこう書いている。

The name of water that, after treatment and possible replacement of carbon dioxide, contains the same amount of carbon dioxide from the source that it had at emergence from the source may be “sparkling bottled water.”

21 CFR § 165.110(a)(2)(v)

処理を経て、必要なら二酸化炭素を戻したうえで、湧出時に含んでいた由来の二酸化炭素が同じ量になっているものは「sparkling bottled water」と名乗れる。一方、原材料表示で「sparkling water」と書かれるものは(a)(1)によって bottled water から外れる。同じ sparkling という語が、bottled を伴う食品の名称としては認められ、伴わない原材料名としては除外の側に置かれている。

この二か所を並べると、この規定が二つの別々の物差しを持っていることが見える。除外の側は表示された語だけを見て、名乗りの側は二酸化炭素の由来を見る。外から吹き込んだ水がどう名乗るべきかは、この条は決めていない。決めているのは、どういうものが bottled water を名乗れるか、という一方向だけである。なお同じ八つの語は、品質基準を定める(b)にもそのまま再掲されており、そちらでも除外の側にある。

もう一つ見落とされやすいのは、(a)(1)が並べているのが「原材料表示に書かれる語」だという点である。ボトルの表の名前ではなく、原材料名の欄に何と書かれているかで判定している。割り材を仕入れる側から見れば、同じ棚に並ぶ透明な炭酸のボトルが、原材料名の一語によって別の区分に振り分けられることになる。

なお同じ規定の(a)(2)(iii)は地質的・物理的に保護された地下水源に由来し、溶存固形物二百五十ppm以上であるものだけが「mineral water」と名乗れるものとし、No minerals may be added to this water.と定めている。名乗りの条件が数値と源泉と禁止の三つで書かれているのは、割り材の世界ではむしろ珍しい。

英国は、天然ミネラルウォーターの名前を炭酸の出どころで分ける

英国は、天然ミネラルウォーターの名前を炭酸の出どころで分ける
同じ泡でも、由来が違えば呼び名が変わる。

三つの呼称のどれかでなければ、そのミネラルウォーターは売れない

米国が「どこから来た二酸化炭素か」で線を引いていることは、英国の規則を見ると輪郭がはっきりする。二〇〇七年天然ミネラルウォーター・スプリングウォーター及び容器入り飲料水(イングランド)規則の第八条は、発泡性の天然ミネラルウォーターについて、次の三つ以外の販売名称を付して瓶詰めさせてはならないと定めている。

表3 英国の規則が発泡性の天然ミネラルウォーターに認めている販売名称
販売名称 条文が定める内容
naturally carbonated natural mineral water 湧水由来の二酸化炭素の含有量が、デカンテーション(あれば)と瓶詰めのあとも湧出時と同じもの(それらの操作で失われた分と同量を同じ水盤・鉱床から戻すことと、通常の技術的許容差を考慮する)
natural mineral water fortified with gas from the spring 同じ水盤・鉱床由来の二酸化炭素の含有量が、デカンテーション(あれば)と瓶詰めのあとで湧出時より多いもの
carbonated natural mineral water その水の出どころとは別の由来の二酸化炭素を加えたもの

三つ目の条文はこう書かれている。“carbonated natural mineral water” to describe water to which has been added carbon dioxide of an origin other than the water table or deposit from which the water comesThe Natural Mineral Water, Spring Water and Bottled Drinking Water (England) Regulations 2007, reg. 8(1)(h)(i)(cc)

発泡性でない天然ミネラルウォーターは、単に「natural mineral water」である。泡があるかないかで一段、泡がどこから来たかでもう一段、名前が分かれている。

この規則は二段構えになっている。第八条が縛るのは瓶詰めと表示と広告で、販売のほうは第九条が受ける。同条第三項はNo person shall sell any bottled natural mineral water— … (c) which is marked or labelled in contravention of regulation 8.と定めており、第八条に反する表示のものは売れない。三つの呼称のどれかでなければ売れない、という結論は、この二つの条を重ねて初めて出る。ただし縛られているのは天然ミネラルウォーターであって、一般の炭酸水ではない。同規則 reg. 9(3)(c)

抜いたときも書かせる

第八条にはもう一つ、逆方向の操作についての定めがある。同条第二項(c)は、物理的な方法だけで遊離二酸化炭素の全部または一部を取り除いたときに、fully de–carbonatedまたはpartially de–carbonatedと記すことを求めている。加えたときだけでなく、抜いたときも書かせるという構えである。同規則 reg. 8(2)(c)

ここまでの二か国に共通するのは、水そのものの名乗りを決めるときに、線を引いているのが「泡の有無」ではなく「その泡の由来」だという点である。飲み手には区別がつかない差を、条文の側が区別している。ただしどちらの規定も、割り材として売られる炭酸水そのものの名乗りには届いていない。

日本には「炭酸飲料」の定義が、いま置かれていない

日本には「炭酸飲料」の定義が、いま置かれていない
基準の中で、その語が現れるのは一か所だけ。

引き継がれなかった告示

では日本はどうか。食品の表示を一本にまとめている食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)の全文を、本則・附則・別表まで通して数えた。e-Gov法令検索から取得した全文は十五万六七二三字ある。

その中で「炭酸飲料」という語が現れるのは、ただ一か所である。附則第二条は次に掲げる府令及び告示は、廃止する。として五十八件を並べており、その四十六番目にこう書かれている。

四十六炭酸飲料品質表示基準を定めた件(平成十二年農林水産省告示第千六百八十二号)

食品表示基準 附則第二条第四十六号

つまり食品表示基準は、炭酸飲料の品質表示基準を定めていた告示を廃止した。そして廃止しただけで、「炭酸飲料」という区分そのものを本則にも別表にも引き継がなかった。同じ全文を数えると、「ソーダ」は零回、「炭酸水」も零回、「ミネラルウォーター」も零回である。用語の定義を集めた別表第三には、果実飲料・果実ジュース・濃縮果汁・還元果汁といった項目が並ぶが、炭酸飲料の項は無い。

果実飲料のほうには、炭酸についての定めがある

「炭酸」という語がまったく出てこないわけではない。表示の方法を定めた別表第四の果実飲料の項に五回ある。うち四回は圧入したものの名称に括弧を足させる規定で、残る一回は括弧が二つ以上になったときの書き方である。果実ジュースについてはこう書かれている。

二酸化炭素を圧入したものにあっては名称の最後に括弧を付して「炭酸ガス入り」と表示する。

食品表示基準 別表第四(第三条関係)果実飲料の項

果実の搾汁に二酸化炭素を入れると、名称の最後に括弧書きが増える。ここは米国や英国と同じ発想である。ところが、その二酸化炭素だけを水に入れたもの、つまり割り材そのものについては、名称を決める規定が置かれていない。

カシスオレンジの割り材であるオレンジジュースには「炭酸ガス入り」という表示の定めがあり、カシスソーダの割り材である炭酸水には名乗りの定めが無い。同じカシスから始まる二杯の割り材が、表示の制度の上では別の場所に立っている。

三つの制度を一枚に並べる。物差しは「炭酸の入った水の名乗りを条文が決めているか」である。

表4 炭酸の入った水の名乗りについて、三つの制度が置いている規定と置いていない規定
制度 条文が扱っている範囲 線の引き方
米国 21 CFR § 165.110 bottled water の名乗りだけ 原材料表示の八つの語を bottled water から外す。soda water を名乗る条件そのものは定めていない
英国 S.I. 2007/2785 第八条・第九条 天然ミネラルウォーターだけ 発泡性のものの販売名称を三つに限り、脱炭酸したときも表示させる。一般の炭酸水には及ばない
日本 食品表示基準 果実飲料だけ 果実飲料についてだけ「炭酸ガス入り」の定めがある。「炭酸飲料」の区分は、その品質表示基準を定めていた告示の廃止とともに引き継がれなかった

並べてみると、日本だけが特別なのではないことがわかる。三つとも、割り材そのものの名乗りは正面から決めていない。米国は除外の側で名指しし、英国は天然ミネラルウォーターに限って三つに分け、日本は語ごと引き継がなかった。違うのは、名前に触れる入口があるかどうかである。日本にも清涼飲料水の成分規格や製造基準は存在するが、それは中身の安全を決める規定であって、名乗りを決める規定ではない。

炭酸水を注いでも、酒の品目は動かない

炭酸水を注いでも、酒の品目は動かない
グラスの中身の呼び名は、注ぐ前と同じまま。

品目は混和前のまま

最後に、割り材の話を酒の側に戻す。カシスリキュールに炭酸水を注いだとき、その液体は酒税法の上で何になるのか。答えは第四十三条第二項に書かれている。

前項の場合において、酒類に炭酸ガス(炭酸水を含む。以下この項において同じ。)の混和をした酒類の品目は、この法律で別に定める場合を除き、当該混和前の酒類の品目とする。ただし、酒類に炭酸ガスを混和した酒類が発泡酒に該当する場合は、この限りでない。

酒税法第四十三条第二項

かっこ書きで炭酸水が炭酸ガスに含められている。だからカシスソーダの品目は、注ぐ前と同じリキュールのままである。度数が五・一〇パーセントになろうと一〇・〇〇パーセントになろうと、この項の本文は度数を見ていない。

度数が顔を出すのは、末尾のただし書の側である。発泡酒の定義を置く第三条第十八号が外しているのは第七号から前号までに掲げる酒類、つまり第七号から第十七号までで、第二十一号のリキュールはそこに入っていない。しかも同号は発泡性を有するもの(アルコール分が二十度未満のものに限る。)と書いており、ここには度数の線がある。ただし書は原理としてリキュールにも届く。それでもカシス系のリキュールが発泡酒にならないのは、麦芽も麦もホップも苦味料も使っておらず、同号ハの政令で定めるものにも当たらないからである。委任先の酒税法施行令第七条の二は、苦味価の値が五以上であることと色度の値が四以上であることのいずれにも該当するものだけを拾う。カシスは色は濃くても、苦味価の側で落ちる。

そして、家や店で作る一杯には、この条の第一項から第九項までが及ばない。第四十三条第十項は、消費の直前に酒類と他の物品を混和する場合で政令が定めるときには前各項を適用しないと定めており、その政令にあたる酒税法施行令第五十条第十三項が、酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときを挙げている。カクテル一般の枠組みはカクテルとはで整理している。

例外は、エキス分二度未満まで薄めたとき

ここからは、缶や瓶に詰めて売る側の話になる。品目が動く例外は、法律の側では酒税法第四十三条第八項に一つだけである。政令のほうには、合成清酒・みりん・その他の醸造酒・粉末酒について同じ形の規定が四つ置かれている。

第一項、第二項本文及び第五項の規定にかかわらず、リキュールと水又は炭酸水との混和をしてエキス分二度未満の酒類としたときは、新たにスピリッツを製造したものとみなす。

酒税法第四十三条第八項

ここで出てくるエキス分は、同法第三条第二号が温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。と定義する数値である。リキュール自体の定義もこの数値で書かれていて、第三条第二十一号は酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のものとしている。

つまり酒税法がリキュールの品目について置いている線は、度数ではなく糖などの不揮発性成分の量である。サントリーの商品情報がルジェの原材料をカシス、スピリッツ、糖類としているとおり、糖を主原料の一つとする酒なのでエキス分は下限の二度をかなり上回るのが通常で、この記事が並べた二・五倍から五倍までの希釈で二度を切ることは考えにくい。第八項が効くのは、混和後のエキス分が二度を下回るときだけである。もともとエキス分が二度に近い酒を割った場合か、エキス分の高い酒を桁違いに薄めた場合に限られる。

度数の話に戻る。酒税法が度数を見る場所は二つある。一つは税率で、第二十三条第四項第三号は甘味果実酒とリキュールについて十二万円(アルコール分が十三度以上のものにあつては、十二万円にアルコール分が十二度を超える一度ごとに一万円を加えた金額)と定める。もう一つは種類の区分で、第三条第三号ハはイ及びロに掲げる酒類以外の酒類で発泡性を有するもの(アルコール分が十一度未満のものに限る。)を「その他の発泡性酒類」と呼び、同条第六号が混成酒類からその他の発泡性酒類を除く。としている。

だから炭酸を入れて十一度未満になったカシスのリキュールは、品目はリキュールのままで、種類のほうが混成酒類から発泡性酒類へ移り、税率も第二十三条第二項の一キロリットル十万円に移る。缶の表示が「リキュール(発泡性)」となっているのはこのためである。

つまり品目は動かないのに、種類は動く。しかも種類を動かしているのは、割ったあとの度数である。それでも「カシスソーダの度数」を決めた規定は無い。制度は、出来上がった数字を測って区分に振り分けるだけで、いくつにせよとは言わない。決めているのは、手元の一本の表示と、注ぐ量だけである。

飲まないリキュール・洋酒の査定・買取はリンクサスへ

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未開栓のうちに状態を見せてもらえると評価しやすい。

カクテル用に買ったリキュールは、一度使ったきり棚の奥に残りやすい。カシスのように糖分の多いものは開栓後の変化が早いので、飲みきる見通しが立たないなら早めに手放したほうが結果はよくなる。

リンクサス酒販では、フルーツリキュールやハーブ系リキュール、未開栓の洋酒の査定に対応している。液面の位置、キャップやコルクの状態、ラベルの傷み、箱などの付属品の有無が評価に影響する。ウイスキー・ブランデー・日本酒・焼酎も同じ窓口で相談できる。

保管の目安は単純で、直射日光と高温多湿を避け、立てて置くことである。横に寝かせると糖分の多い液がキャップの内側に触れ続けるため、においが移ることがある。リキュールとはもあわせて参考にしてほしい。

よくある質問

よくある質問
度数と割り材について、よく届く質問をまとめた。
カシスソーダの度数は何度ですか。

アサヒビールのカクテルガイドは、ボルス クレーム・ド・カシス四十五ミリリットルとウィルキンソン タンサン百五ミリリットルで作る一杯を五・一〇パーセントと公表しています。ただしこれはその分量とその銘柄での数字です。同じ分量でも二十度のリキュールなら六・〇〇パーセント、二十五度なら七・五〇パーセントになります。氷が融けたぶんは、いずれの数字にも含まれていません。

カシスソーダとカシスサイダーは違うものですか。

同じ一杯を指す通称で、中身に決まった違いはありません。日本の食品表示基準には「ソーダ」という語も「炭酸水」という語も出てこず、「炭酸飲料」という語も廃止された告示の題名として一度現れるだけです。呼び分けを決める規定が無いので、名前は書き手ごとに揺れます。

カシスソーダの黄金比はありますか。

公的な基準はありません。分量を公表している例としてはアサヒビールの四十五ミリリットル対百五ミリリットルがあり、比にすると約一対二・三です。甘さを抑えるなら三十ミリリットル対百二十ミリリットル、味を濃くするなら六十ミリリットル対九十ミリリットルという選び方になります。

炭酸水で割ると、お酒の種類は変わりますか。

原則として変わりません。酒税法第四十三条第二項が、炭酸ガス(炭酸水を含む)を混和した酒類の品目は、この法律で別に定める場合を除き混和前の品目とすると定めているためです。例外は同条第八項で、リキュールを水または炭酸水で薄めてエキス分二度未満にしたときはスピリッツを製造したものとみなされます。カシスリキュールは糖類を主原料の一つとするためエキス分が高く、家庭で割る程度の希釈でこの線を下回ることは考えにくいところです。なお第二項にはただし書があり、混和後のものが発泡酒に当たる場合は品目が動きます。そもそも同条第十項と酒税法施行令第五十条第十三項により、店や家で消費の直前に割る場合には第一項から第九項までが適用されません。

カシスソーダのカロリーはどのくらいですか。

炭酸水はほぼ零キロカロリーなので、熱量はリキュールの側で決まります。サントリーはルジェ クレーム ド カシスの純アルコール量を百ミリリットルあたり十六グラムと公表していますが、熱量は糖分の量にも左右されるため、実際の数値は各製品の栄養成分表示で確かめてください。割り材を無糖の炭酸水にすると、オレンジジュースや牛乳で割る場合より軽く着地します。

市販の炭酸水なら、どれを使っても同じですか。

度数への影響はありません。炭酸水にエタノールは入っていないので、完成度数を決めるのはリキュールの度数と割合だけです。味の面では、加糖の炭酸飲料を使うと甘さが重なるため、無糖のものを選ぶとカシスの輪郭が出ます。なお米国の連邦規則は原材料表示の「soda water」や「carbonated water」を bottled water の定義から外しており、割り材の名前がそのまま水の名前になるわけではありません。

飲まないリキュールや洋酒は買取してもらえますか。

未開栓であれば、リンクサス酒販の買取窓口で状態を確認したうえで評価しています。銘柄や容量、箱の有無で評価は変わります。リキュールは開栓後の風味変化が早いため、直射日光と高温多湿を避けて立てて保管し、状態の良いうちに査定へ出すのがおすすめです。ウイスキー・日本酒・焼酎も同じ窓口で相談できます。

この記事が参照した原典

  • 酒税法(昭和二十八年法律第六号)第三条第二号・第三号・第六号・第十八号・第二十一号、第二十三条第二項・第四項、第四十三条第二項・第八項・第十項(e-Gov法令検索)
  • 酒税法施行令(昭和三十七年政令第九十七号)第七条の二、第五十条第十三項(e-Gov法令検索)
  • 食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)本則・別表第三・別表第四・附則第二条(e-Gov法令検索。全文十五万六七二三字を対象に語数を計測)
  • 米国連邦規則集第二十一編一六五・一一〇(bottled water)二〇二五年版(govinfo)
  • The Natural Mineral Water, Spring Water and Bottled Drinking Water (England) Regulations 2007(S.I. 2007/2785)第八条・第九条(legislation.gov.uk)
  • アサヒビール カクテルガイド「カシスソーダ」(材料・分量・完成度数)
  • サントリー 商品情報「ルジェ クレーム ド カシス 700ml瓶」およびルジェ 製品ラインナップ(度数・純アルコール量・原材料・希望小売価格)

製品の度数と価格は二〇二六年八月時点で各公式サイトに掲載されていた内容です。

最終更新:(リンクサス酒販 鑑定士チーム監修)

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