雪国カクテルとは|受賞時の分量と、名前の由来を公式資料で確かめる

雪国カクテルとは|受賞時の分量と、名前の由来を公式資料で確かめる

雪国は、山形県酒田市のバー兼喫茶「ケルン」を営んでいた井山計一氏が、寿屋(現在のサントリー)の公募に出して優勝したカクテルです。ウォッカとホワイトキュラソーとライムを合わせ、グラスの縁を砂糖で飾り、底に緑のチェリーを沈めます。この記事は、分量と名前の由来をサントリーの公式エッセイの逐語で確かめたうえで、「一杯を公募で集める」という仕組みに今どんな制度が掛かるのかを、条文と運用基準で追いました。結論を先に書くと、縁に付いた砂糖は景品ではなく、賞のほうには条件しだいで二本の線が引かれます。

雪国とは|縁の砂糖と、底に沈めた緑のチェリー

雪国とは|縁の砂糖と、底に沈めた緑のチェリー
ショートグラスに仕上げた一杯

雪国は、日本で生まれてスタンダードになったカクテルの一つです。透明なウォッカに無色のホワイトキュラソーとライムを重ねるので、液体はほとんど色を持ちません。白いのは縁だけで、そこに雪が積もったように砂糖が付き、底に緑のチェリーが沈んでいます。

先に答え|三十・十五・七と、名前の出どころ

先に答えを三つ置きます。一つ目、サントリーが公式エッセイに載せている受賞時の分量は、ウォッカ三十ミリリットル、ホワイトキュラソー十五ミリリットル、ライムジュース七ミリリットルです。二つ目、同じエッセイが現在のおすすめとして載せている分量は三十・十五・十五で、ライムだけが倍以上に増えています。三つ目、名前の出どころについて、同じエッセイはカクテル名に、川端康成の小説『雪国』との結びつきはない。とはっきり書いています。

この記事が確かめた範囲と、確かめていない範囲

この記事が原典に当たったのは、サントリーのエッセイ一本と、不当景品類及び不当表示防止法とその告示三本、消費者庁の運用基準二本、公正取引委員会がインターネット上の懸賞について出した文書一本、そして所得税法とその施行令です。

確かめていないこともあります。ホワイトキュラソーと現行ベースの度数は、公式の数値を取れませんでした。このあとの計算では、この二本の度数を仮に置いています。また、一九五八年当時のこの公募に景品表示法は掛かっていません。同法の公布は一九六二年で、公募の四年後だからです。この記事が読むのは、いま同じ公募を行ったらどうなるかのほうです。

作り方と分量|受賞時の三十・十五・七

作り方と分量|受賞時の三十・十五・七
シェーカーと計量器具

まず分量です。サントリーのエッセイは、受賞時のレシピをこう書いています。

井山氏のコンクール受賞時のレシピは、「ヘルメスウオツカ(100プルーフ)」30ml、「ヘルメスホワイトキュラソー」15ml、「トリスライムジュース」7mlというものであった。

サントリー カクテルエッセイ「オンドリのしっぽ」第109回 雪国

三十・十五・七。合計五十二ミリリットルです。このうち「ヘルメスホワイトキュラソー」の商品情報ページは現在残っておらず、受賞時の一杯をそのまま再現することは簡単ではありません。

材料と手順

手順は短いものです。エッセイの現在のレシピ欄には、シェークして、砂糖でスノースタイルにしたカクテルグラスに注ぎ、ミントチェリーを沈める。と一行で書かれています。縁を柑橘で濡らして砂糖を付け、冷やして混ぜ、縁を崩さないように注いでチェリーを沈めます。

材料 受賞時のレシピ 現在の公式レシピ
ベースの蒸留酒 ヘルメスウオツカ 100プルーフ 30ml ジャパニーズクラフトウオツカ HAKU 30ml
オレンジ系リキュール ヘルメスホワイトキュラソー 15ml ホワイトキュラソー 15ml
ライム トリスライムジュース 7ml サントリーライム 15ml
縁の砂糖 レモンで濡らして上白糖(井山氏は今も) ライムで濡らしてグラニュー糖
飾り ミントチェリー ミントチェリー
合計(氷が解ける前) 52ml 60ml

右の列は、同じエッセイが60mlに収めるとすればと断って示す配合です。二対一対一の比が先にあり、合計を六十に置いた結果が三十・十五・十五だという順序で書かれています。

今サントリーが載せている分量は三十・十五・十五

変わったのはライムの量だけではありません。受賞時の「ヘルメスウオツカ」は括弧書きで100プルーフ(50度)と説明されており、エッセイは現在は「サントリーウオツカ」80プルーフを使われているらしいと続けます。百プルーフが五十度、八十プルーフが四十度なので、井山氏の手元では十度ぶん低くなったらしい、ということです。ただしこれは井山氏の店の話で、公式レシピが指定するHAKUの度数はエッセイに書かれていません。

縁の砂糖も変わりました。エッセイは井山氏がグラスの縁をレモンで濡らし、そこに上白糖をつけていらっしゃると書き、その理由をこれはコンクールに出品された1958年という時代を物語っている。グラニュー糖はまだメジャーではなかったのだ。と説明します。店で手に入る砂糖の種類が、分量表の外側で効いていたわけです。

合計から度数を出す

度数を出します。使った酒の量に度数を掛け、仕上がりの総量で割るだけです。ただし現行ベースとホワイトキュラソーの度数は公式の数値が取れなかったので、ここではどちらも四十パーセントと仮に置きます。

項目 受賞時(50度・52ml) 現在(ベース40度と仮定・60ml)
ベース由来の純アルコール 30 × 0.50 = 15.0ml 30 × 0.40 = 12.0ml
キュラソー由来(仮に40%) 15 × 0.40 = 6.0ml 15 × 0.40 = 6.0ml
純アルコールの合計 21.0ml 18.0ml
氷が解ける前の度数 21.0 ÷ 52 = 約40% 18.0 ÷ 60 = 約30%

受賞時のほうが、およそ十ポイント高い計算になります。ただしこれは氷が解ける前の値です。シェイクで加わる水の量は振り方と氷の状態で決まるので、仕上がりの度数を一つの数字で言い切ることはできません。この点はカクテル全般に共通していて、カクテルの度数一覧|弱い順30種と法令が引く六本の線で条文の側から整理しています。一杯の量そのものについては、ウイスキーのダブルとは 60mlの根拠を法令とメーカー公式で確かめるも参考になります。

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棚に並ぶ洋酒のボトル

雪国のベースになるウォッカと、合わせるオレンジ系リキュールを中心に、当店で扱っている商品を並べます。瓶に印字された度数は、この先で出てくる計算の入力そのものです。

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名前の由来|公式は川端康成との結びつきを否定している

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名前の出どころをたどる

雪国という三文字から川端康成の小説を思い浮かべる人は多く、解説記事でも小説から取られたと書かれることがあります。ところが、公募の主催者だったサントリー自身が、その結びつきを否定しています。

壁の落書きの一文

カクテル名に、川端康成の小説『雪国』との結びつきはない。常連客の誰かが店の壁に落書きした“人里離れた雪国の宿”の一文からイメージしたものらしい。言われてみれば、川端の『雪国』の舞台は越後湯沢である。

サントリー カクテルエッセイ「オンドリのしっぽ」第109回 雪国

否定と、名前の出どころは店の壁の落書きだという説明と、小説の舞台が越後湯沢であるという補足の三つが書かれています。井山氏の店は山形県酒田市で、小説の舞台は新潟県の湯沢。指している土地が違います。

ただし、落書きの話にはらしいという留保が付いていて、エッセイ自身が伝聞であることを示しています。断定されているのは前半、小説との結びつきの否定のほうです。

一九五八年と一九五九年は、別の出来事

年号もよく混ざります。エッセイはこう書いています。

開業から3年後、1958年にサントリー(当時寿屋)の第3回『ホーム・カクテル・コンクール』の作品募集があり、「雪国」を創作、出品。東北地区で3位に入賞し、翌1959年の全国大会、つまり決勝にすすむ。決勝ではグランプリを獲得するという快挙を成し遂げられた。

サントリー カクテルエッセイ「オンドリのしっぽ」第109回 雪国

一九五八年は募集と出品の年、一九五九年は決勝と優勝の年です。間に東北地区大会があり、そこでの成績は三位でした。「一九五九年に発表されたカクテル」という書き方は決勝の年だけを見たもので、創作された年としては一年ずれます。店のほうの年も同じエッセイにあり、井山氏は一九二六年に酒田市で生まれ、1955年12月10日、酒田市でバー・喫茶「ケルン」(Kern)を開業されたとあります。

年 出来事
1926年 井山計一氏が山形県酒田市で生まれる
1955年12月10日 酒田市でバー兼喫茶「ケルン」を開業
1958年 第3回ホーム・カクテル・コンクールに出品。東北地区3位
1959年 全国大会(決勝)でグランプリ

出所はいずれもサントリーの公式エッセイ。

チェリーの位置は、決勝までに変わっている

もう一つ、レシピの外側で変わったものがあります。チェリーの位置です。

東北地区の大会ではミントチェリーをグラスの縁に飾っていたのだが、東北のバーテンダー界の重鎮のアドバイスにより、全国大会ではグラスの中に沈めるスタイルにしたという。

サントリー カクテルエッセイ「オンドリのしっぽ」第109回 雪国

縁に飾ったままなら、雪の上に赤い実が乗っている絵です。沈めると、白い縁の下に緑が見える絵に変わります。雪の下で芽吹く草という読みが成り立つのは、この変更のあとの形で、材料も分量も変えずに、置く場所だけで意味が変わりました。なお、こうした工夫やレシピ自体は誰のものにもなりません。マイタイとは|作り方と名前は、どの法律が守るのかで扱ったとおり、レシピは著作物の例示に入っておらず、押さえられるのは名前のほうだけです。

雪国のベースに選びたいウォッカ30銘柄を比較

雪国のベースに選びたいウォッカ30銘柄を比較
ベースを選ぶための並べ比べ

雪国の土台を決めるのはウォッカです。受賞時のベースは五十度で、ここを替えるだけで前の章の計算が動きます。定番から国産クラフトまで三十銘柄を、度数・タイプ・原料・産地で横断比較できるようにしました。ウォッカという酒そのものの定義はウォッカとは 無味無臭という定義が消えた理由と原料・度数・ジンとの違いにまとめています。

雪国に合うウォッカ30銘柄 比較表
雪国は、ウォッカにホワイトキュラソーとライムを合わせ、縁を砂糖で飾った日本生まれのショートカクテルです。甘酸っぱい味わいが主役に見えますが、土台を決めるのはベースのウォッカです。ここでは、雑味の少ない定番のスミノフ・アブソルート・ストリチナヤ・ティトスから、ロックでも映えるなめらかなグレイグース・ベルヴェデール、香りを添える柑橘フレーバード、サントリーやニッカなどの国産クラフトまで、雪国のベースに使えるウォッカ30銘柄を度数・タイプ・原料・産地・カクテルとの相性・楽天/Amazonの購入先で横断比較できます。輸入ウォッカの多くはオープン価格のため定価は非掲載で、市場相場の目安と各モールの実勢価格を参考値として掲載しています(2026年6月時点)。リンクサス酒販の在庫品は各リンクから状態と価格を確認できます。
画像 銘柄・スコア 定価
市場相場
特徴 リンクサス酒販
本命
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クセのない世界標準。ウォッカカクテル全般の定番ベース。

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アブソルート ウォッカ 750ml2位定番 アブソルート ウォッカ 750ml
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なめらかでクリーン。香りを邪魔しない万能ベース。

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ポーランドの高級ライ麦ウォッカ。豊かなコク。

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本場ロシアの定番。バランスのよい辛口。

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ウクライナの人気ウォッカ。クリーンでなめらか。

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国産米100%の和ウォッカ。ほのかな甘みと余韻。

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カフェ式蒸留の国産クラフト。とうもろこしの甘み。

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ドクロ型ボトルの話題作。クリーンでなめらか。

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レイカ 700ml20位定番 レイカ 700ml
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アイスランドの湧水仕込み。澄んだピュアな味。

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ドイツの定番。軽快でコスパに優れる。

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アルミボトルの北欧ウォッカ。冷えやすく軽快。

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23位定番 スリーシックスティ 700ml
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ダイヤ型ボトルのドイツ産。軽快で手頃。

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24位定番 ストリチナヤ ヴァニラ 750ml
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甘いバニラ風味。デザート寄りの一杯に。

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コスパに優れた定番。たっぷり使える軽快さ。

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上質な洋梨フレーバー。華やかな一杯に。

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公称96%。ごく少量を割って使う上級者向け。

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市場相場1,000〜1,500円台(750ml・実勢・2026年6月時点)

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市場相場(リンクサス酒販 在庫価格を商品ページで確認)

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在庫切れリンクサス入荷通知 価格を見るAmazon ¥184,000 楽天 査定 買取
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輸入ウォッカの多くはオープン価格のため定価(list_price)は掲載せず市場相場の目安のみを記載しています(2026年6月時点の実勢)。楽天/Amazon価格は各モールの実勢で、同一銘柄・容量が見つからない場合は空欄になります。カクテル用の定番ウォッカはリンクサス酒販(プレミア・希少酒専門)では現在お取り扱いがないため購入先は楽天・Amazonをご案内し、リンクサス在庫がある希少ボトルは商品ページから確認できます。価格・在庫は変動します。最安値を保証する一覧ではありません。

グラスの縁の砂糖は、制度の上では景品ではない

グラスの縁の砂糖は、制度の上では景品ではない
グラスの縁を飾る砂糖の話

ここから先は、一杯そのものではなく、その一杯を取り巻く仕組みの話です。雪国は公募から生まれました。いま同じことをすれば、賞にも、店が客に渡すものにも、景品表示法という物差しが当たります。まずは、グラスの縁に付いた砂糖から。

法律の名前は不当景品類及び不当表示防止法です。第一条は目的を商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するためと置き、景品類そのものの定義は第二条第三項に書かれています。

この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。

不当景品類及び不当表示防止法 第二条第三項

読みどころは二つあります。一つは問わずが二回続くこと。方法が直接か間接かも、くじを使うかどうかも問題にしないと書いています。もう一つは、それだけ広く構えておきながら取引(中略)に付随しての一句で範囲を絞っていることです。広げる言葉が二つ、絞る言葉が二つ。もう一つの絞りは内閣総理大臣が指定するものです。その指定告示の側にも、さらにただし書があり、値引やアフターサービスのほか正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益を外しています。

運用基準が名指しした三つの例

では、バーが一杯に添えるものはどちら側か。消費者庁の運用基準が名指しで例を挙げています。

正常な商慣習に照らして取引の本来の内容をなすと認められる経済上の利益の提供は、「取引に附随」する提供に当たらない(例 宝くじの当せん金、パチンコの景品、喫茶店のコーヒーに添えられる砂糖・クリーム)。

景品類等の指定の告示の運用基準について 第四項(4)

三つ目が喫茶店のコーヒーに添えられる砂糖・クリームです。雪国の縁に付いている砂糖は、コーヒーに添える砂糖よりもさらに一杯の内側にあります。注文したものの一部であって、注文を誘うための添え物ではない。同じ理屈で、底に沈めたチェリーも景品類には当たりません。

宝くじの当せん金と、パチンコの景品と、コーヒーの砂糖。金額の桁は三つとも違いますが、外れる理由は同じで、それが取引の本来の内容をなすからだと書かれています。外すか外さないかを決めているのは、大きさではなく位置です。

「取引に附随して」に当たる四つの型

逆に、どういう場合に取引に附随するのか。同じ運用基準の第四項(2)が、取引を条件としない場合でも取引の相手方を主たる対象として行うときは附随に当たるとして、型を四つ並べています。要約すると、(ア)商品の容器包装に企画の内容を告知している場合、(イ)購入すると利益の提供を受けることが可能または容易になる場合、(ウ)小売業者やサービス業者が自分の店舗への入店者に提供する場合、(エ)資本関係やフランチャイズ契約などで自己と特定の関連がある店舗の入店者に提供する場合、の四つです。

雪国が生まれた公募のような企画に当てはめると、(エ)が効いてきます。酒類メーカーが自社の商品を使ったカクテルを募り、募集の告知や応募の受付を、自社と資本関係やフランチャイズ関係のある店の来店者に向けて置くなら、これに触れる可能性があります。触れれば附随が認められ、次の章で見る上限が掛かる。触れなければ上限はありません。同じコンクールでも、告知をどこに置くかで結論が変わります。

法律は「付随」、告示は「附随」と書く

細かい話ですが、条文を並べると字が違います。法律の第二条第三項は取引(中略)に付随してと書き、それを受けた告示は取引に附随してと書きます。付と附。同じ語を、法律と告示で違う字で書いている。

もう一つずれているのが、条番号です。懸賞の上限を定めた告示の書き出しは不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第三条の規定に基づきで始まりますが、現行法で景品類の制限を定めているのは第四条です。現行の第三条は、指定をするときに公聴会を開き消費者委員会の意見を聴くという手続の条になっています。告示の側は制定時の条番号のまま置かれているので、告示だけを読んで条文に当たると、別の条に着きます。

カクテルコンクールは、賞が景品類なら「懸賞」に当たる

カクテルコンクールは、賞が景品類なら「懸賞」に当たる
賞を決める方法を分ける

次は賞のほうです。「コンクール」という言葉は法令に出てきませんが、制度はこれを「懸賞」という枠でつかまえています。定義は告示の第一項にあります。

告示第一項が並べる二つの方法

この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。一 くじその他偶然性を利用して定める方法 二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限 第一項

二つの号は性質がまったく違います。第一号は偶然、第二号は優劣です。くじ引きと審査が、同じ「懸賞」という一語の下に並んでいる。カクテルコンクールは第二号のほうで、審査によって特定の行為の優劣で相手方を定めていることになります。ただし定義文の目的語はどちらも「景品類」なので、賞が景品類でなければ、この枠にも入りません。

運用基準の例示に「○○コンテスト」がある

第二号が何を指すかは運用基準が例示しています。四つのうち、二つ目と四つ目が近い。

(2) キャッチフレーズ、写真、商品の改良の工夫等を募集し、その優劣によって定める方法(中略)(4) ボーリング、魚釣り、○○コンテストその他の競技、演技又は遊技等の優劣によって定める方法(ただし、セールスコンテスト、陳列コンテスト等相手方事業者の取引高その他取引の状況に関する優劣によって定める方法は含まれない。)

「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準 第二項

○○コンテストという書き方で、名前を伏せた枠がそのまま置かれています。カクテルの創作を募って優劣を決める企画は、この枠に収まります。(2)の商品の改良の工夫等という言い方も近く、レシピの創作はどちらの例示にも寄せられます。

ただし書は逆方向を切っています。セールスコンテストや陳列コンテストのように、相手方が事業者で、その取引高の優劣で決める方法は含まれない。同じ「コンテスト」でも、審査される中身が売上なら外れます。雪国の公募で審査されたのは一杯の出来なので、外れる側ではありません。

先着順は、懸賞に当たらない

同じ運用基準は、懸賞に当たらない決め方をもう一つ挙げています。

来店又は申込みの先着順によって定めることは、「懸賞」に該当しない(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)。

「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準 第三項

先着順は偶然でも優劣でもないので、二つの号のどちらにも入りません。ただし括弧書きが逃がしていません。懸賞から外れても、全員に配る側の告示、いわゆる総付の規制が待っています。そちらの上限は取引の価額の十分の二で、その額が二百円未満のときは二百円まで、かつ商慣習上適当と認められる限度内です。懸賞に当たらないことは、規制が無いことを意味しません。

上限を決めているのは、賞の豪華さではない

上限を決めているのは、賞の豪華さではない
上限の置かれ方を読む

懸賞に当たると分かったところで、次は金額です。賞の上限を決めているのは法律の条文ではなく、告示です。法律の第四条は、内閣総理大臣が景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法を制限できると書くだけで、具体的な数字を一つも持っていません。

二十倍と十万円、そして百分の二

2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあっては、十万円)を超えてはならない。3 懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限 第二項・第三項

基準は懸賞に係る取引の価額で、賞の側の事情ではありません。千円の買い物に付ける懸賞なら二十倍で二万円、一万円なら二十万円ではなく十万円で頭打ちです。五千円を境に、倍率の線と定額の線が入れ替わります。第三項の百分の二はさらに別の物差しで、取引の予定総額に対する割合として賞の総量を縛ります。隣り合う二項が、違う分母を使っている。

取引の価額 二十倍の金額 実際に適用される最高額
1,000円 20,000円 20,000円
5,000円 100,000円 100,000円
10,000円 200,000円 100,000円
50,000円 1,000,000円 100,000円

五千円までは二十倍の列と適用される列が一致し、それを超えると右の列が動かなくなります。

共同懸賞の三十万円

例外が第四項に置かれています。

前二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合において、懸賞により景品類を提供するときは、景品類の最高額は三十万円を超えない額、景品類の総額は懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えない額とすることができる。ただし、他の事業者の参加を不当に制限する場合は、この限りでない。

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限 第四項

三十万円と百分の三。一社でやるより、相当多数の事業者が共同でやるほうが枠が広い設計です。三つの号はいずれも一定の地域や商店街の事業者が共同で行う場合で、第二号だけは中元や年末などの時期に年三回まで、かつ年間通算七十日という条件が付いています。なお第五項はカード合わせの方法そのものを禁じる規定で、金額の話ではありません。

買わせなければ、そもそも景品類ではない

そして、ここが一番効きます。これまでの上限はすべて、その賞が「景品類」であることを前提にしています。景品類の定義には取引(中略)に付随してという一句がありました。付随しなければ、そもそも景品類ではないので、告示の上限は掛かりません。

いわゆるオープン懸賞(顧客を誘引する手段として,広告において一般消費者に対しくじの方法等により特定の者を選び,これに経済上の利益の提供を申し出る企画であって,不当景品類及び不当表示防止法〔昭和三十七年法律第百三十四号。以下「景品表示法」という。〕に規定する景品類として同法に基づく規制の対象となるものを除くもの。)

インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて(平成13年4月26日 公正取引委員会)第一項

定義の書き方が独特です。オープン懸賞とは何かを積極的に定めず、景品類として同法に基づく規制の対象となるものを除くものという引き算で定めています。同じ文書はホームページ上の懸賞企画について取引に付随する経済上の利益の提供に該当せず,景品表示法に基づく規制の対象とはならないと述べ、ただし商品を購入しなければ応募できない場合などは別だと続けます。

応募に買い物が要らなければ、賞の額に上限はありません。要るようにした瞬間、二十倍と十万円と百分の二が現れます。

もう一つの出口は、賞の側にあります。指定の運用基準の第五項(1)が、経済的対価を支払って取得すると認められないものの例として表彰状、表彰盾、表彰バッジ、トロフィー等のように相手方の名誉を表するものを挙げ、経済上の利益から外しているためです。名誉を表するだけの賞なら、応募が取引に付随していても景品類にはなりません。

上限の有無を決めているのは、賞の豪華さではありません。応募と取引のつながりと、賞が経済上の利益かどうかのほうです。

賞金に掛かる、もう一本の線

賞金に掛かる、もう一本の線
賞金と税の関係を読む

賞にはもう一つ、まったく別の制度が掛かります。税です。

広告宣伝のための賞金から引かれる一割

所得税法第二百四条第一項は、支払う側に源泉徴収を課す報酬・料金・契約金・賞金を八つ並べています。その最後の号がこれです。

八 広告宣伝のための賞金又は馬主が受ける競馬の賞金で政令で定めるもの

所得税法 第二百四条第一項第八号

政令の側が中身を決めています。

法第二百四条第一項第八号に規定する広告宣伝のための賞金で政令で定めるものは、事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益(旅行その他役務の提供を内容とするもので、金品との選択をすることができないものとされているものを除く。)とし、(後略)

所得税法施行令 第三百二十条第七項

税率は所得税法第二百五条第二号が定めていて、政令で定める金額を控除した残額に百分の十を掛けます。ただし第二百四条第二項第二号により、給与を払っていない個人が支払う場合は、この義務は生じません。

五十万円が二か所に出てくる

控除する金額を決めているのは施行令第三百二十二条の表で、広告宣伝のための賞金については同一人に対し一回に支払われる金額から五十万円を控除する、とされています。五十万円までなら源泉徴収は生じません。

同じ五十万円が、別のところにもう一度出てきます。賞金を受け取った側の所得は、原則として一時所得です(業務として受けるものは除かれます)。

前項に規定する一時所得の特別控除額は、五十万円(同項に規定する残額が五十万円に満たない場合には、当該残額)とする。

所得税法 第三十四条第三項

数字は同じですが、働く場所が違います。施行令の五十万円は渡す側が天引きを始める分かれ目、第三十四条第三項の五十万円は受け取った側が所得を計算するときに引く額で、前者は支払時、後者は申告時に効きます。

制度 数字 効き方 根拠
懸賞の景品類の最高額 取引の価額の20倍・上限10万円 これを超えて出せない 懸賞告示 第二項
懸賞の景品類の総額 取引の予定総額の100分の2 企画全体の枠 懸賞告示 第三項
共同懸賞 30万円・100分の3 枠が広がる 懸賞告示 第四項
取引に付随しない企画 金額の定めなし 景品類に当たらない 法 第二条第三項
広告宣伝のための賞金の源泉徴収 50万円を控除した残額の100分の10 ここから天引きが始まる 法 第二百五条第二号・施行令 第三百二十二条
一時所得の特別控除 50万円 受け取った側の課税所得を減らす 法 第三十四条第三項

表にすると、二つの数字が逆を向いているのが見えます。景品表示法の上限はそこまでしか出せないという天井、所得税法の五十万円はそこを超えたら引き始めるという床です。天井のほうが低く、床のほうが高い。取引に付随する懸賞の枠内に収まっている限り、賞金に源泉徴収の税額が生じる高さまで届くことは、ふつうはありません。

役務だけの賞は、片方の制度から外れる

もう一つ、二つの制度でずれているものがあります。役務の扱いです。景品類を指定する告示は、景品類に当たるものを四つ並べていて、その三つ目が旅行その他の催物等への招待を含むきよう応、四つ目が便益、労務その他の役務です。物でなくても景品類になります。

ところが所得税法施行令の側は、旅行その他役務の提供を内容とするもので、金品との選択をすることができないものとされているものを除くとして、役務だけの賞を源泉徴収の対象から外しています。金品と選べるなら戻りますが、旅行しか選べない賞は、片方の制度では景品類で、もう片方では源泉徴収の対象外です。

度数とカロリー、そして兄弟カクテルとの違い

度数とカロリー、そして兄弟カクテルとの違い
度数と兄弟カクテルの比較

制度の話から、グラスの話に戻ります。家で作るときに迷いやすいのは、縁の砂糖の量と、似た構成のカクテルとの違いです。

縁の砂糖は、量が決まっていない

スノースタイルの砂糖は、レシピの分量表に出てきません。サントリーのエッセイも、受賞時はグラスの縁をレモンで濡らし、そこに上白糖をつけていらっしゃる、現在の配合ではライムでグラスの縁を濡らし、グラニュー糖で仕上げると書くだけで、何グラムとは書いていません。グラスの口径と濡らした幅で変わるからです。

だから、雪国一杯のカロリーを一つの数字で示すことはできません。酒の側は前の章の計算から出せますが、砂糖の側に確定した量がないためです。砂糖一グラムはおよそ四キロカロリーで、全部を口に入れるとも限りません。

上白糖はしっとりして縁に厚く付き、グラニュー糖は粒立って口に当たります。受賞時の砂糖が上白糖だったのは、好みの問題である前に、その時代に手に入るものの違いだったとエッセイは書いています。

カミカゼ・バラライカとの分かれ目

ウォッカとオレンジ系リキュールと柑橘という組み立ては、雪国だけのものではありません。

カクテル 柑橘 縁の砂糖 飾り
雪国 ライム 付ける ミントチェリーを沈める
カミカゼ ライム 付けない なし、またはライム
バラライカ レモン 付けない なし
ホワイトレディ(ジン) レモン 付けない なし

雪国とカミカゼは、材料の三本だけを見るとほとんど同じです。分けているのは縁の砂糖と底のチェリーで、ここが名前と見立てを担っています。カミカゼについてはカミカゼカクテルとは|作り方の黄金比・度数・神風の由来とウォッカ選びにまとめました。ベースをジンに替えるとホワイトレディに寄り、オレンジ系リキュールの選び方はコアントローとは 度数40%と飲み方・カクテルの公式値が参考になります。

なお、バーで使うメジャーカップは検定を受けた計量器とは限りません。この論点はクローバークラブとは|IBAの分量と、一杯にかかる日本の法律で扱っています。

飲まないウォッカ・洋酒の査定・買取はリンクサス酒販へ

飲まないウォッカ・洋酒の査定・買取はリンクサス酒販へ
査定に出す前に並べた酒瓶

雪国のために買ったウォッカやリキュールが、一度使ったきり棚に残っていることがあります。未開栓のまま置いてある洋酒は、リンクサス酒販で査定できます。

当店は品揃えを広げて、プレミアや希少なボトルも扱っています。当日14:00までのご注文で当日発送します。査定のご相談も、購入のご相談も、同じ窓口でお受けしています。

雪国についてよくある質問

雪国についてよくある質問
グラスの形の違いを描いた図

雪国について検索でよく尋ねられている点を、公式資料と条文の側から整理しました。

雪国の分量と作り方を教えてください。

サントリーの公式エッセイが載せている受賞時のレシピは、ヘルメスウオツカ100プルーフ30ml、ヘルメスホワイトキュラソー15ml、トリスライムジュース7mlです。同じエッセイが現在のおすすめとして示す配合は30ml・15ml・15mlで、合計60mlに収める形です。グラスの縁を柑橘で濡らして砂糖を付け、シェークして注ぎ、ミントチェリーを沈めます。

雪国の名前は川端康成の小説から取られたのですか。

主催者だったサントリーの公式エッセイは、カクテル名に、川端康成の小説『雪国』との結びつきはない。と明記しています。同じ文は、常連客が店の壁に落書きした一文からイメージしたものらしい、と伝聞の形で続け、小説の舞台が越後湯沢である点を補足しています。

雪国はいつ、誰が作ったカクテルですか。

山形県酒田市でバー兼喫茶「ケルン」を営んでいた井山計一氏の創作です。公式エッセイによれば、1958年に第3回ホーム・カクテル・コンクールへ出品して東北地区で3位に入賞し、翌1959年の全国大会でグランプリを獲得しています。出品の年と優勝の年は一年ずれています。

雪国の度数はどのくらいですか。

氷が解ける前の計算では、受賞時の配合が約40%、現在の公式配合が約30%です。現行ベースとホワイトキュラソーの度数は公式の数値が取れなかったため40%と仮に置いた計算で、シェークで加わる水の量にも決まりがないため、仕上がりの度数は一つの数字に定まりません。受賞時のベースは100プルーフ、つまり50度でした。

カクテルのコンクールは法律上どう扱われますか。

賞が景品類に当たる場合は「懸賞」として扱われます。懸賞による景品類の提供に関する事項の制限の第一項第二号が特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法を挙げており、消費者庁の運用基準はその例として○○コンテストその他の競技、演技又は遊技等の優劣によって定める方法を示しています。

コンクールの賞金に上限はありますか。

応募が取引に付随している場合は上限があります。景品類の最高額は取引の価額の20倍で、その額が10万円を超えるときは10万円まで、総額は取引の予定総額の100分の2までです。買い物をしなくても応募できる企画は、そもそも景品類に当たらないため、これらの上限は掛かりません。

賞金を受け取ったら税金はどうなりますか。

広告宣伝のための賞金は、支払う側に源泉徴収の義務があります(給与を払っていない個人が支払う場合を除く)。所得税法施行令第三百二十二条の表は、同一人に一回に支払われる金額から50万円を控除するとしており、控除後の残額に所得税法第二百五条第二号の100分の10が掛かります。受け取った側では原則として一時所得になり、第三十四条第三項の特別控除50万円を引いた残りの2分の1が課税対象です。具体的な申告については税務署または税理士にご確認ください。

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