ウォッカとは 無味無臭という定義が消えた理由と原料・度数・ジンとの違い

ウォッカとは 無味無臭という定義が消えた理由と原料・度数・ジンとの違い

店の棚に並ぶ透明なボトルを裏返すと、品目の欄には「スピリッツ」とだけ書いてある。この一語がどこから来ているのかを条文までたどると、教科書のように語られてきた説明がそのままでは通らないことが分かる。日本とEUとアメリカで、この酒に何を求めているかが揃っていないからだ。

この記事では、三つの制度の条文と、公表値を出している国内メーカーの製品ページだけを材料にして、定義・原料・度数・価格の順に確かめていく。推定した数字は「計算すると」と書いて実測値と区別する。

「無味無臭」は世界共通の定義ではない

ウォッカのボトルとショットグラス
ウォッカのボトルとショットグラス

ウォッカを説明する文章はたいてい「無味無臭の蒸留酒」から始まる。ところが日本・EU・アメリカの三つの制度を並べると、この一句を条文に書いている国はいまどこにもない。アメリカは2020年に削除し、EUはもともと書いておらず、日本にはそもそも「ウォッカ」という法定の品目が存在しない。

ウォッカをめぐる三つの制度の違い
論点 日本(酒税法・国税庁通達) EU(規則2019/787) アメリカ(27 CFR 第5部)
法令に「ウォッカ」という名称があるか 無い。酒税法の本則・附則を全文検索して0件 有る。Annex I 15 が Vodka を定義 有る。27 CFR 5.142(b) が neutral spirits の type として規定
「無味無臭」の要件 条文に無い 書かれていない。むしろ特別な官能特性を与えてよいとする 2020年4月2日公示の T.D. TTB-158 で削除された
最低アルコール分 スピリッツ自体に下限は無い(酒類一般の下限は1度) 37.5% 40%(neutral spirits の瓶詰め下限)
炭による濾過の位置づけ しらかばの炭でこすことが、連続式蒸留焼酎から外れる条件 活性炭処理をしてもよい(任意) 活性炭を一定量以上使えば charcoal filtered と表示できる(任意)
着色 条文に定めなし 禁止(フレーバードウォッカは可) 他の香味料・調合材料を加えると flavored vodka などに分類が変わる
産地を冠した名称の保護 制度なし 地理的表示として保護される。普通名称としての vodka は全加盟国で使える vodka 自体に産地の限定はない
フレーバードウォッカの最低度数 定めなし(エキス分2度以上はリキュールへ移る) 37.5%(附属書I 31番) 30%(27 CFR 5.151 の flavored spirits)

アメリカは2020年に「無味無臭」を条文から外した

アメリカの旧規定 27 CFR 5.22(a)(1) は、ウォッカを「際立った特徴・香り・味・色を持たないもの」と定めていた。これを削除したのが、2020年4月2日に連邦官報で公示された T.D. TTB-158 である。TTB自身の言葉はこうだ。TTB agrees that the requirement that vodka be without distinctive character, aroma, taste, or color no longer reflects consumer expectations and should be eliminated.

改正案に寄せられた意見は12件で、そのうち10件が削除に賛成し、2件が理由を付さずに現状維持を求めた。では削除後に何がウォッカを他のニュートラルスピリッツから区別するのか。同じ文書がそれも書いている。Vodka will continue to be distinguished by its specific production standards: Vodka may not be labeled as aged, and unlike other neutral spirits, it may contain limited amounts of sugar and citric acid.

現行の 27 CFR 5.142 を読むと、たしかに「無味無臭」の語は消えている。残っているのは製法の条件だけだ。Neutral spirits which may be treated with up to two grams per liter of sugar and up to one gram per liter of citric acid.そして木の樽で熟成・貯蔵することは原則として認められない。活性炭による処理については、Vodka treated and filtered with not less than one ounce of activated carbon or activated charcoal per 100 wine gallons of spirits may be labeled as “charcoal filtered.”と定められている。ラベル表示についてはVodka must be designated on the label as “neutral spirits,” “alcohol,” or “vodka”.とされ、vodka のほかに neutral spirits や alcohol でもよい。

EU規則は無味無臭とは書いていない

EUの 規則 (EU) 2019/787 附属書I の15番がウォッカの項目である。蒸留についての規定はdistilled so that the organoleptic characteristics of the raw materials used and by-products formed in fermentation are selectively reducedで、日本語にすれば「原料由来の官能特性と発酵で生じた副生成物が選択的に減じられるように蒸留する」となる。減らすのであって、消すとは書いていない。

さらに条文はこう続く。including treatment with activated charcoal, to give it special organoleptic characteristics。活性炭処理を含む追加の処理をしてよく、その目的は「特別な官能特性を与えるため」だと明記されている。無味無臭にするための工程としてではなく、個性を与えるための工程として書かれているところが、日本で流通している説明と正反対になっている。

いっぽうで制限もある。Vodka shall not be coloured.=着色は禁止で、甘味づけはthe final product may not contain more than 8 grams of sweetening products per litre, expressed as invert sugar=転化糖換算で1リットルあたり8グラムまでに抑えられている。名称についてはThe legal name may be ‘vodka’ in any Member State.とされ、どの加盟国でも法定名称として「vodka」を使える。

日本の酒税法には「ウォッカ」という品目が無い

日本の酒税法を本則・附則の全文にわたって機械検索すると、「ウォッカ」「ウオッカ」「ウオツカ」はいずれも0件である。「ジン」も0件、「ラム」も品目としては現れない。第3条が定める17の品目のうち、この酒が入るのは第20号のスピリッツで、条文はこう書いている。

スピリッツ 第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のものをいう。

つまり日本では、ウォッカは「エキス分が二度未満で、ほかのどの品目にも当てはまらない酒」という引き算の定義だけを与えられている。原料も製法も度数も、この号は何も指定していない。それでも国税庁の法令解釈通達は「いわゆるウオッカ」という言い方でこの酒に触れており、その位置づけは次のH2で見る第3条第9号のほうに書かれている。

ウォッカの原料と製法、条文が名指しするのは「しらかばの炭」

蒸留と濾過を経た透明なウォッカ
蒸留と濾過を経た透明なウォッカ

原料と製法の話に入ると、日本の条文だけが妙に具体的になる。EUもアメリカも炭による処理は「してもよい」という任意の扱いだが、日本の酒税法は特定の樹種の炭を名指しし、それを使うかどうかで品目そのものが変わる仕組みになっている。

原料はじゃがいもや穀物、それ以外でもよい

EU規則の原料規定はpotatoes or cereals or both、つまり「じゃがいも、または穀物、またはその両方」と書き、そのあとに「その他の農産物」を並列で認めている。ただし条件が付く。じゃがいもと穀物だけで造られていない場合は、法定名称と同じ視野に入る位置に「produced from …」と原料名を表示しなければならない。ブドウやホエイを使った銘柄の裏ラベルに原料の記載が目立つのは、この表示義務があるためである。

日本の酒税法は、スピリッツの原料について何も定めていない。サントリーのジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」が国産米だけで造られていても、それが品目の判定に影響することはない。

連続式蒸留で高純度に近づける

連続式蒸留機は、供給されるアルコール含有物を蒸留しながらフーゼル油やアルデヒドなどの不純物を取り除ける蒸留機のことで、酒税法第3条第9号がその定義を置いている。この機械で蒸留すると原則として連続式蒸留焼酎になるのだが、条文はそこに「アルコール分が三十六度未満のものをいう」という度数の上限を付けている。36度以上で瓶詰めされる銘柄は、この一点だけで連続式蒸留焼酎から外れる。

しらかばの炭という条件と、竹炭で仕上げる銘柄

第3条第9号は、連続式蒸留機で蒸留してもなお焼酎から除かれるものをイからニまで四つ挙げている。そのロがこれである。

しらかばの炭その他政令で定めるものでこしたもの
「政令で定めるもの」の中身は酒税法施行令第4条第1項にあり、
法第三条第九号ロに規定する政令で定めるものは、しらかばの炭にその他の物品を混ぜたものとする。
と書かれている。しらかばの炭そのものか、しらかばの炭に何かを混ぜたもの。この二つしか認められていない。

ここで通達がひとつ注記を足している。「しらかばの炭」とはしらかばを原料として製造した炭をいい、そのものの形状及び活性化の有無は問わないものをいう、というのである。活性化してあってもしていなくてもよい。つまり法令が求めているのは「活性炭であること」ではなく「しらかばであること」で、一般に流布している「白樺の活性炭で濾過するから焼酎ではない」という説明は力点の置き所がずれている。

国内メーカーが公表している濾過素材と、酒税法上の位置づけ
銘柄 アルコール分 公式が書いている濾過素材 第3条第9号ロに当たるか 出典
ウヰルキンソン・ウオッカ 40° 40% 白樺炭 当たる アサヒビール
ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」 40% 竹炭 当たらない サントリー
ニッカ カフェウオッカ 40% 白樺炭 当たる ニッカウヰスキー

アサヒビールはウヰルキンソン・ウオッカについて白樺炭でじっくりと丁寧にろ過することで、軽やかな味わいとなめらかな飲み心地を両立させましたと書いている。これは第3条第9号ロの条件をそのままなぞった説明になっている。ニッカウヰスキーのブランドサイトもカフェウオッカについてカフェ蒸溜液が持つ穀物の豊かな香味を残すために、あえて強度を抑えた白樺炭ろ過で仕上げましたと書いており、こちらも同じ号に当たる。なお同じページは「従来のウオッカのイメージを塗り替えるユニークな個性」という言い方もしていて、メーカー自身が無味無臭であることを売りにしていない。

ところがサントリーのHAKUは厳選した国産米を100%使用。異なる3種の蒸溜器で原料酒をつくりわけ、当社が開発した竹炭濾過技術で仕上げました。と書いており、使っているのは竹炭である。しらかばの炭ではないので、この銘柄は第9号ロには当たらない。それでも品目は「スピリッツ」だ。理由は前のH3で見た度数のほうにある。HAKUのアルコール分は40%で、連続式蒸留焼酎の要件である36度未満を満たさない。白樺炭を使わなくても、40度で瓶詰めした時点で焼酎からは外れている。

プレーンとフレーバード、そしてジンとの分かれ目

ウォッカ・ジン・ラム・テキーラのボトル
ウォッカ・ジン・ラム・テキーラのボトル

「ウォッカとジンの違いは何か」という問いに、日本の条文はきわめて簡潔に答えている。同じ第3条第9号の、ロかニか。それだけである。

ウォッカとジンは第9号のロとニで分かれる

国税庁通達は、第9号のイからニに当たるものが焼酎から除かれたあとどの品目になるかを列挙している。

第3条第9号で連続式蒸留焼酎から除かれる四つと、その後の品目
条文が定める条件 除かれたあとの品目
発芽させた穀類又は果実を原料の全部又は一部としたもの 留出時95度未満はウイスキーまたはブランデー、95度以上はスピリッツ
しらかばの炭その他政令で定めるものでこしたもの スピリッツ(いわゆるウオッカ等)
含糖質物を原料の全部又は一部としたもので、留出時のアルコール分が95度未満のもの スピリッツ(いわゆるラム等)
アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの スピリッツ(いわゆるジン等)

通達の逐語では、法第3条第9号ロに該当するものは、スピリッツ(いわゆるウオッカ等)法第3条第9号ハに該当するものは、スピリッツ(いわゆるラム等)法第3条第9号ニに該当するものは、スピリッツ(いわゆるジン等)と並んでいる。ウォッカとラムとジンが、同じ条文から順番に除かれて同じスピリッツに落ちる三兄弟として書かれているわけだ。

ジンに当たるニの条文はこうである。

アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの
蒸留の最中に立ちのぼるアルコールへ、他の物品の成分を移す。ジュニパーベリーの香りをのせる工程が、条文では「浸出させたもの」という一語で表現されている。対するウォッカのロは、蒸留したあとに炭でこす。香りを足すのがジンで、こして減らすのがウォッカ。日本の条文はその一点だけで両者を分けている。

同じ考え方は発泡酒の定義の通達にも顔を出す。麦芽や麦を原料の一部とした蒸留物について、通達は焼酎、ウイスキー又はブランデーに該当する酒類以外のもの(例えばいわゆるウオッカ又はジン等)と書いており、ここでもウオッカとジンが並記されている。

製品側でこの対照がきれいに見える例がある。アサヒビールは同じカフェスチルのシリーズとしてニッカ カフェウオッカニッカ カフェジンの両方を出していて、公表アルコール分は前者が40%、後者が47%である。ジンの飲み比べに関心があればスピリッツの分類を扱った記事も合わせて読んでほしい。

フレーバードウォッカはEUでは別項目

フレーバードウォッカは、EU規則では附属書I の31番という別の項目になっている。最低度数は15番と同じ37.5%だが、着色が認められ、甘味づけの上限も1リットルあたり100グラム未満まで緩められる。15番が着色を禁じ甘味を8グラムまでに抑えているのと比べると、同じ「ウォッカ」の名を冠していても製造の自由度がまるで違う。

EUの31番の条文はFlavoured vodka is vodka which has been given a predominant flavour other than that of the raw materials used to produce the vodka.と定義したうえで、The minimum alcoholic strength by volume of flavoured vodka shall be 37,5 %.Flavoured vodka may be sweetened, blended, flavoured, matured or coloured.と続く。着色が明文で認められている。

アメリカでは行き先が別の条にある。5.142の表は、香味料や調合材料を加えるとflavored vodka などに分類が変わるとしか書いていないが、その受け皿が27 CFR 5.151 Flavored spiritsである。

“Flavored spirits” are distilled spirits that are spirits conforming to one of the standards of identity set forth in §§ 5.142 through 5.148 to which have been added nonbeverage natural flavors, wine, or nonalcoholic natural flavoring materials, with or without the addition of sugar, and bottled at not less than 30 percent alcohol by volume (60° proof).
瓶詰めの下限は30%で、EUの37.5%より7.5ポイント低い。表示は「単一のベーススピリッツ+主要なフレーバー」の形にすることが求められ、ベースは香味を加える前に当該スピリッツの規格を満たしていなければならない。

日本の酒税法にはフレーバードウォッカという概念自体がなく、エキス分が2度以上になればリキュール(第3条第21号)へ移るという線引きがあるにすぎない。つまりフレーバードの最低度数は、EUが37.5%、アメリカが30%、日本が定めなしと三者三様になっている。

ウォッカの度数と法定下限を三つの制度で比べる

度数表示のあるウォッカのラベル
度数表示のあるウォッカのラベル

ウォッカの度数は40%前後という説明が一般的だが、その40という数字がどこから来ているのかは制度によって違う。下限を決めているのはEUとアメリカで、日本は決めていない。

三つの制度の最低度数

最低アルコール分をどこが決めているか
制度 根拠 ウォッカに適用される下限
EU 規則2019/787 附属書I 15(b) 37.5%
アメリカ 27 CFR 5.142(a) のニュートラルスピリッツ 瓶詰め時40%
日本 酒税法第3条第20号 定めなし(酒類一般の下限である1度のみ)

EUの条文はThe minimum alcoholic strength by volume of vodka shall be 37,5 %.と一行で済ませている。アメリカはウォッカ単体ではなく親クラスのニュートラルスピリッツ側に条件を置いていて、distilled from any suitable material at or above 95 percent alcohol by volume (190° proof), and, if bottled, bottled at not less than 40 percent alcohol by volume (80° proof)、つまり蒸留時95%以上・瓶詰め時40%以上と定めている。

日本の第3条第20号にはアルコール分の記載がない。スピリッツという品目は度数で線を引いていないので、理屈のうえでは低い度数のものもこの品目に入りうる。酒類として扱われる下限は酒税法第2条第1項の「アルコール分一度以上の飲料」だけである。

公表値を確認できた国内銘柄を並べると次のようになる。いずれもメーカーの製品情報ページに書かれている値で、推定は含まない。

公表アルコール分と純アルコール量が確認できた銘柄
銘柄 アルコール分 30ml当たりの純アルコール量(公表) 計算値 出典
ウヰルキンソン・ウオッカ 40° 40% 9.6g 9.6g 公式
ニッカ カフェウオッカ 40% 9.6g 9.6g 公式
ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」 40% 9.6g 9.6g 公式
ニッカ カフェジン 47% 11.3g 11.3g 公式

純アルコール量から度数を逆算する

この表の計算値は、メーカー自身が併記している式に数字を入れただけである。式はこう書かれている。

純アルコール量(g) = 容量(ml) × アルコール分(%)/100 × 0.8
0.8はアルコールの比重で、これを使えば度数と容量から純アルコール量が出る。4銘柄すべてで公表値と計算値が小数第1位まで一致した。

逆向きにも使える。サントリーのHAKUは30ml当たり9.6gに加えて100ml当たり32gという値も出しているので、32を0.8で割って100mlで割り戻すと、計算すると40%になる。公表されているアルコール度数40%と一致する。度数を書かずに純アルコール量だけを出しているページに当たったときは、この逆算で度数を確かめられる。

この記事の比較表に並べた30銘柄について、各輸入元の表示から度数を集計した。度数の実測値域は37.5%から96%まで開いている。内訳を数えると次のとおりで、40%台に大きく偏っていることが分かる。なお比較表そのものには度数の列が無いので、この集計は本文側にだけ置いている。

比較表30銘柄の度数帯の分布
度数帯 銘柄数
37.5%未満 0銘柄
37.5%以上40%未満 3銘柄
40%以上50%未満 25銘柄
50%以上90%未満 1銘柄
90%以上 1銘柄

下限側の3銘柄はいずれも37.5%で、これはEUが定める最低度数とちょうど同じ値である。そして最も多い帯である40%以上50%未満の25銘柄は、アメリカの瓶詰め下限40%を満たす側にまとまっている。銘柄の度数がこの二つの数字の周りに集まるのは、同じ製品を複数の市場へ出すときに両方の下限を同時に満たす必要があるためだと考えると説明がつく。ただしこの解釈は条文に書かれているものではないので、そう読める、というところまでにとどめておく。

ウォッカの主な産地とウォッカベルト

バーに並ぶウォッカのボトル
バーに並ぶウォッカのボトル

ロシアからポーランド、バルト三国、北欧へと連なる帯はウォッカベルトと呼ばれる。ただしこれは業界と読み物の用語で、EU規則にも日本の条文にも出てこない。ではウォッカに産地の縛りが一切ないのかというと、そうではない。ここには二層の仕組みがある。

一層目は普通名称としての vodka である。規則2019/787の附属書I 15(g)はThe legal name may be ‘vodka’ in any Member State.と書いていて、どの加盟国で造ってもこの名前を使える。ここはスコッチウイスキーやコニャックと違う。

二層目が地理的表示である。産地を冠した名称のほうは保護されていて、EUの公式登録簿 eAmbrosia を「vodka」を含む名称で引くと8件が返る。

EUの公式登録簿に載っているウォッカの地理的表示(英語名に vodka を含むもの)
保護されている名称 状態 保護の開始
Svensk Vodka / Swedish Vodka スウェーデン 登録済 1994-08-29
Suomalainen Vodka / Finsk Vodka / Vodka of Finland フィンランド 登録済 1994-08-29
Polska Wódka / Polish Vodka ポーランド 登録済 2003-09-23
Wódka ziołowa z Niziny Północnopodlaskiej(バイソングラス香味のハーブウォッカ) ポーランド 登録済 2003-09-23
Originali lietuviška degtinė / Original Lithuanian vodka リトアニア 登録済 2003-09-23
Estonian vodka エストニア 登録済 2008-02-13
Norsk Vodka / Norwegian Vodka ノルウェー 登録済/EU域外 2016-11-25
Russian Vodka / Русская водкa ロシア 申請中/EU域外 2010-11-26

8件のうち登録済みは7件で、ロシアの Russian Vodka は状態が applied=申請中のままである。ノルウェーの Norsk Vodka はEU域外からの登録になっている。そして4件目にあるポーランドの Wódka ziołowa z Niziny Północnopodlaskiej は、英語名が「バイソングラスの抽出物で香りづけした北ポドラシェ低地のハーブウォッカ」という意味で、まさにバイソングラスを漬け込むタイプの銘柄を名指しした地理的表示である。

これらが規則2019/787の本文に出てこないのは、旧規則(EC) No 110/2008の附属書IIIに登録されていたものが第37条で自動的に引き継がれたためである。条文はこう書いている。

Geographical indications of spirit drinks registered in Annex III to Regulation (EC) No 110/2008 and thus protected under that Regulation shall automatically be protected as geographical indications under this Regulation.
したがって条文本体を検索して見つからないことは、保護されていないことの証明にならない。登録の有無はeAmbrosiaの側で確かめる必要がある。

地理的表示を持っている国を並べると、スウェーデン・フィンランド・ポーランド・リトアニア・エストニア。ウォッカベルトと呼ばれてきた地域とほぼ重なる。ウォッカベルトという語に法令上の裏づけは無いが、産地の名前を守る動きはその地域から出ている、という言い方なら成り立つ。

比較表30銘柄の産地の内訳
産地表記 銘柄数
ロシア 7銘柄
ポーランド 5銘柄
アメリカ 2銘柄
オランダ 2銘柄
カナダ 2銘柄
スウェーデン 2銘柄
フランス 2銘柄
ロシア/ラトビア 2銘柄
各国生産(英国系) 2銘柄
日本 2銘柄
デンマーク 1銘柄
フィンランド 1銘柄

ロシアが7銘柄で最多、次いでポーランドが5銘柄。ただしフランス・オランダ・カナダ・アメリカ・日本と、ベルトの外の産地が合わせて10銘柄を占めている。「各国生産(英国系)」の2銘柄も加えれば、ベルトの外は12銘柄になる。この分布は、普通名称としての vodka に産地の縛りがないことの現れである。なおこの集計は編集部が各輸入元の産地表示から数えたもので、比較表の側には産地の列が無い。銘柄によっては生産国と本社所在国が違うため、購入時はボトルの原産国表示を確認してほしい。

なお日本で流通しているズブロッカ バイソングラスは、EUの分類では附属書I の15番ではなく31番のフレーバードウォッカに当たる。31番の最低度数も37.5%なので、日本での表示度数がこの値になっているのは、どちらの項目から見ても説明がつく。

酒販店のスピリッツ棚
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リンクサス酒販で取り扱っている関連商品を並べた。ウォッカのほか、同じスピリッツに分類される銘柄も含まれる。在庫と価格は下のカードから確認してほしい。

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銘柄違いのウォッカを並べた棚
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ウォッカ主要銘柄30種の比較
定番からプレミアムまで、ウォッカ30銘柄を並べた。この表に描画されるのは画像・銘柄名・市場相場・特徴と各販路へのリンクで、度数・原料・産地は列として出ない。度数と産地の集計は本文の表のほうに置いている。リンクサス酒販ではロシアの高級コレクターズウォッカ「ラドガ インペリアル」シリーズを取り扱っている。価格帯は2026年6月時点で流通していた参考値で、最安値を案内する一覧ではない。
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14standard ロシアンスタンダード インペリア
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約5,000〜7,000円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

シベリア産小麦をバイカル湖の水で。十重の銀濾過でなめらか。

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15standard ニッカ カフェウオッカ
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約3,000〜4,200円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

カフェ式連続蒸留機由来の、原料の甘みが残る個性派ジャパニーズ。

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16standard ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」(サントリー)
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約2,000〜3,000円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

国産米を白樺活性炭で濾過した、やわらかな口当たりのジャパニーズ。

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17standard ケテル ワン
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約3,000〜4,200円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

300年以上続く家族経営。銅製ポットスチル仕上げのなめらかさ。

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18standard ティトス ハンドメイド
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約3,000〜4,000円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

トウモロコシ原料のアメリカン。ほのかな甘みとなめらかさが人気。

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19standard ダンツカ
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,800〜2,600円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

アルミ缶ボトルで急冷に強い、北欧らしいシャープな飲み口。

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20standard エフェン
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約3,500〜4,800円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

小麦原料を低温で仕上げた、モダンなプレミアムカクテルベース。

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21standard スミノフ レッド
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,000〜1,500円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

世界で最も飲まれる定番。クセがなくどんな割り材とも合う基準銘柄。

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22standard スミノフ ブルー
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,600〜2,300円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

度数50度の高強度版。カクテルに芯を持たせたいときに。

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23standard アブソルート ウォッカ
★★★★☆4/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,500〜2,300円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

スウェーデン産冬小麦の連続蒸留。世界中で愛される定番プレミアム。

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24standard ストリチナヤ
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,500〜2,300円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

ロシアを代表する定番。穀物の厚みを感じるクラシックな味わい。

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25standard フィンランディア
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,500〜2,200円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

氷河水と六条大麦で仕上げた、北欧らしい澄んだ味わい。

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26standard ズブロッカ バイソングラス
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,600〜2,600円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

バイソングラスを漬け込んだ、桜餅のような甘い香りの個性派。

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27standard ヴィボロヴァ
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,300〜1,900円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

ポーランド産ライ麦100%。コスパに優れた正統派ウォッカ。

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28standard ソビエスキー
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,300〜1,900円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

ポーランド王の名を冠した、コスパの高いなめらかウォッカ。

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29standard スカイ ウォッカ
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約1,500〜2,100円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

青いボトルが目印のアメリカン。四回蒸留・三回濾過のクリーンな味。

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30limited スピリタス
★★★☆☆3/ リンクサス専属ソムリエスコア
楽天・Amazon実勢 約2,500〜3,800円(2026年6月時点)
💎 プロのおすすめ

度数96度。市販ウォッカ世界最高強度。必ず希釈して使う。

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この表の価格欄には金額データを持たせていないため、価格順の並べ替えと価格帯の絞り込みは働かない。各行に表示される金額は当店の販売価格で、絞り込みが読む値とは別のものである。度数・原料・産地はこの表の列には無く、本文の集計表で扱っている。メーカー公式ページで度数を直接確認できたのは本文の表に挙げた4銘柄にとどまり、残りは各輸入元の表示に依拠している。価格帯は2026年6月時点の参考値で、容量違い・フレーバー違い・輸入時期によって変動する。最安値を保証する一覧ではない。高度数の銘柄はそのまま飲むことを想定していないので、必ず希釈して扱ってほしい。

歴史と発祥をめぐる論争、そして三つの表記

モノクロで撮影したウォッカのボトル
モノクロで撮影したウォッカのボトル

発祥がロシアかポーランドかという論争は、どちらの国も自国起源を主張していて決着していない。この記事では条文から確かめられることだけを書くという方針を採っているので、起源については断定しない。かわりに、日本語での書き方が三通りに割れているという、確かめられるほうの話をしておきたい。

日本語表記の三系統
表記 この表記を使っている主体 確認できる場所
ウオッカ 国税庁(法令解釈通達)、アサヒビール 通達ウヰルキンソン・ウオッカ
ウオツカ サントリー ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」
ウォッカ 検索時に最も多く使われる表記 本記事のタイトルと本文

国税庁の第3条に関する法令解釈通達は「ウオッカ」(大きいオ、小さいッ)を使う。アサヒビールも製品名を「ウヰルキンソン・ウオッカ」「ニッカ カフェウオッカ」としており、通達と同じ表記である。いっぽうサントリーは製品情報サイトのカテゴリー名を「スピリッツ / ウオツカ」とし、製品名も「ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」」と、ツを大きく書いている。

つまり「ウオッカ」と「ウオツカ」はどちらも実在するメーカー表記であって、どちらかが誤記というわけではない。一方で酒税法の条文には、この三つのどれも出てこない。法令が使っていない語をメーカーと読者が別々の書き方で使っている、というのが日本語での現状である。

ウォッカの飲み方と割り材で変わる度数

ライムを添えたウォッカのソーダ割り
ライムを添えたウォッカのソーダ割り

ストレート、ロック、ソーダ割り。どれを選ぶかで口に入る液体の度数は大きく変わるが、体に入るアルコールの総量は注いだ量で決まっていて、割っても減らない。ここを取り違えると「薄いから大丈夫」という判断につながるので、数字で確かめておきたい。

割り材で完成度数はここまで下がる

40%のウォッカを使ったときの完成度数を計算した。純アルコール量はメーカーが併記している式で求めている。

40%のウォッカを割ったときの完成度数と純アルコール量(すべて計算値)
飲み方 ウォッカ 割り材 完成量 完成度数 純アルコール量
ストレート(そのまま) 30ml なし 30ml 40% 9.6g
ロック(溶けた水を約15mlと仮定) 30ml 15ml 45ml 26.7% 9.6g
1対2で炭酸割り 30ml 60ml 90ml 13.3% 9.6g
1対3で炭酸割り 30ml 90ml 120ml 10% 9.6g
1対4で炭酸割り 30ml 120ml 150ml 8% 9.6g
45mlを90mlのジュースで割る 45ml 90ml 135ml 13.3% 14.4g
45mlを105mlのジュースで割る 45ml 105ml 150ml 12% 14.4g

上から5行はいずれもウォッカ30mlで、完成度数は40%から8.0%まで下がるのに、純アルコール量は9.6gのまま動かない。割るという操作が変えているのは濃度だけで、量ではない。厚生労働省が示す「節度ある適度な飲酒」の目安は1日平均で純アルコール20g程度なので、この行でいえば2杯でおよそその水準に届く計算になる。

割り材そのものの選び方はウォッカトニックを扱った記事ウォッカベースのカクテルを集めた記事のほうが詳しい。

家で割るのは製造にあたらない

家でウォッカを炭酸水で割る行為が酒類の製造にあたるのではないか、と気にする人がいる。酒税法第43条は酒類と他の物品の混和を新たな製造とみなす規定を置いているが、同条第10項がこう定めている。

前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。
飲む直前に割る場合は適用されない。あわせて第11項が、消費者が自ら消費するために混和する場合を政令の定めるところにより除いている。その場で作って飲むぶんには問題にならない。

逆向きの規定もあって、第43条第8項は

第一項、第二項本文及び第五項の規定にかかわらず、リキュールと水又は炭酸水との混和をしてエキス分二度未満の酒類としたときは、新たにスピリッツを製造したものとみなす
としている。リキュールを水や炭酸水で割ってエキス分が2度未満になると、それはスピリッツを製造したものとみなされる。品目の境目がエキス分2度に置かれていることが、この条文からも読み取れる。

ウォッカを使う定番カクテルと度数の計算

銅マグで供するモスコミュール
銅マグで供するモスコミュール

ウォッカをベースにするカクテルは、柑橘・トマト・ジンジャー・コーヒーと守備範囲が広い。ここでは代表的な組み合わせと、その完成度数を計算で出しておく。レシピは店やバーテンダーによって分量が違うので、下の表は「この分量で作ったらこうなる」という計算例として読んでほしい。

ウォッカ45mlを基準にしたときの完成度数(計算値)
組み合わせ ウォッカ 副材料 完成量 完成度数 純アルコール量
オレンジジュースで割る 45ml(40%) 105ml 150ml 12% 14.4g
ジンジャーエールとライムで割る 45ml(40%) 105ml 150ml 12% 14.4g
グレープフルーツジュースで割る 45ml(40%) 60ml 105ml 17.1% 14.4g
トマトジュースで割る 45ml(40%) 105ml 150ml 12% 14.4g

この表でも純アルコール量は4行すべて14.4gで揃う。完成度数が12%から17.1%まで違って見えても、使ったウォッカが同じ45mlなら体に入る量は変わらない。度数の高いカクテルが強いのではなく、ベースを多く使うカクテルが強い、というのが正確な言い方になる。

個別のレシピと由来はウォッカのカクテル記事にまとめている。

選び方と価格、酒税額から見た「安い理由」

テイスティンググラスに注いだ無色のスピリッツ
テイスティンググラスに注いだ無色のスピリッツ

「ウォッカは安い」と言われることが多い。実際に1000円台で買える銘柄はいくつもある。ただしその理由を酒税に求めるのは正しくない。酒税額は度数で決まっていて、ウォッカだからといって優遇されてはいないからだ。むしろ低い度数の帯では、焼酎より高くなる。

酒税額は度数で決まる

酒税法第23条第1項第3号は、蒸留酒類の税率をこう定めている。

蒸留酒類二十万円(アルコール分が二十一度以上のものにあつては、二十万円にアルコール分が二十度を超える一度ごとに一万円を加えた金額)
20度までが1キロリットルあたり20万円で、21度以上は1度ごとに1万円ずつ加算される。ウォッカも焼酎もウイスキーも、ここではまとめて「蒸留酒類」である。

ただし13度未満の帯には別の特例がある。租税特別措置法第87条の2が、蒸留酒類(原料用アルコールと発泡性を有するものを除く)でアルコール分13度未満のものについて

一アルコール分が十一度未満のもの十万円二アルコール分が十一度以上十三度未満のもの十万円にアルコール分が十度を超える一度ごとに一万円を加えた金額
と定めている。スピリッツには度数の下限が無いので、この帯に入る商品があれば酒税法第23条ではなくこちらが適用される。

そして同条第3項にもうひとつ例外がある。

蒸留酒類のうちウイスキー、ブランデー及びスピリッツであつてアルコール分が三十七度未満のものに係る酒税の税率は、第一項の規定にかかわらず、一キロリットルにつき三十七万円とする。
ウイスキー・ブランデー・スピリッツの三つだけが名指しされていて、37度未満のときは一律37万円になる。焼酎はこの三つに入っていないので、第1項の計算がそのまま効く。つまり37万円は、ウォッカにとって下限として働く。
度数別に計算した1キロリットルあたりの酒税額(第23条第1項・第3項から計算)
アルコール分 スピリッツ(ウォッカ・ジンなど) 焼酎 倍率
20度 370,000円 200,000円 1.9倍
25度 370,000円 250,000円 1.5倍
30度 370,000円 300,000円 1.2倍
35度 370,000円 350,000円 1.1倍
37度 370,000円 370,000円 1倍
40度 400,000円 400,000円 1倍
45度 450,000円 450,000円 1倍
50度 500,000円 500,000円 1倍
96度 960,000円 960,000円 1倍

20度で比べると1.85倍、25度で1.48倍。37度に達したところで両者は同額になり、それより上はずっと同じである。低い度数ほどスピリッツのほうが不利になる仕組みで、「ウォッカは酒税が安いから安い」という説明は成り立たない。同じ度数帯で比べたいなら連続式蒸留焼酎を扱った記事も参照してほしい。

安い銘柄ほど価格に占める酒税の割合が高い

では価格の差はどこから来るのか。希望小売価格または参考小売価格を公表している銘柄について、1本あたりの酒税額を計算し、税別価格に占める割合を出した。

公表価格と、計算した1本あたりの酒税額
銘柄 アルコール分 容量 公表価格(税別) 酒税額(計算値) 価格に占める割合 出典
ウヰルキンソン・ウオッカ 40° 40% 720ml 870円 288円 33.1% 公式
ウヰルキンソン・ウオッカ 40°(1800ml) 40% 1800ml 1,980円 720円 36.4% 公式
ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU」 40% 700ml 3,000円 280円 9.3% 公式

同じ40%でも、720mlで870円の銘柄では酒税が価格の33.1%を占め、700mlで3,000円の銘柄では9.3%にとどまる。酒税額そのものはどちらも度数と容量だけで決まっていて、安い銘柄が優遇されているわけではない。価格の差を生んでいるのは原料・蒸留回数・容器・輸送といった酒税の外側の要素であり、安い銘柄ほど、税という固定的な費用が価格の中で大きく見えているにすぎない。

最初の一本を選ぶなら、まずは40%の定番銘柄から入るのが分かりやすい。比較表で最も銘柄数が多い帯であり、カクテルのレシピが想定している度数もここだからである。当店の在庫はスピリッツのコレクションから確認できる。

よくある質問

四大スピリッツの並び
四大スピリッツの並び
ウォッカは無味無臭のお酒だと考えてよいですか?

いまの法令はそう定めていません。アメリカは2020年4月2日公示の T.D. TTB-158 で「際立った特徴・香り・味・色を持たない」という要件を削除しました。EU規則2019/787は原料由来の官能特性を選択的に減じるとしか書いておらず、活性炭処理は特別な官能特性を与えるためのものだと明記しています。日本の酒税法には「ウォッカ」という品目自体がありません。

日本の酒税法でウォッカはどの品目になりますか?

第3条第20号のスピリッツです。条文は「第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のもの」とだけ定めており、原料も製法も度数も指定していません。酒税法の本則と附則を全文検索しても「ウォッカ」「ウオッカ」「ウオツカ」はいずれも0件です。

ウォッカとジンの違いは何ですか?

日本の条文では第3条第9号のロかニかで分かれます。ロが「しらかばの炭その他政令で定めるものでこしたもの」で、通達はこれをスピリッツ(いわゆるウオッカ等)としています。ニは「アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの」で、通達はスピリッツ(いわゆるジン等)としています。こして減らすのがウォッカ、蒸留中に香りを移すのがジンです。

白樺の炭で濾過しないとウォッカとは呼べないのですか?

呼べます。しらかばの炭は「連続式蒸留焼酎から外れるための条件」のひとつであって、ウォッカの定義ではありません。サントリーのHAKUは公式に竹炭濾過と書いていますが、アルコール分が40%で連続式蒸留焼酎の36度未満という要件を満たさないため、そもそも焼酎には当たりません。なお通達は「しらかばの炭」を、形状および活性化の有無を問わないものと定義しています。

ウォッカの度数に下限はありますか?

EUは37.5%、アメリカはニュートラルスピリッツの瓶詰め下限として40%を定めています。日本の酒税法第3条第20号には度数の定めがなく、酒類として扱われる下限である1度以外に制限はありません。そのため三つの制度で下限が揃っていません。

ウォッカが安いのは酒税が安いからですか?

違います。酒税法第23条第1項第3号は蒸留酒類をまとめて扱い、20度まで20万円、21度以上は1度ごとに1万円を加算します。さらに第3項でウイスキー・ブランデー・スピリッツは37度未満でも37万円という下限が置かれるため、25度で比べると焼酎の1.48倍になります。安さの理由は酒税の外側にあります。なお13度未満の帯は租税特別措置法第87条の2の特例が適用されます。

40%のウォッカを炭酸で割ると体に入るアルコールは減りますか?

減りません。30mlを120mlの炭酸で割ると完成度数は計算すると8.0%まで下がりますが、純アルコール量は9.6gのままです。変わるのは濃度だけで、量は注いだウォッカの分だけ決まります。

「ウオッカ」と「ウオツカ」はどちらが正しい表記ですか?

どちらも実在する表記です。国税庁の法令解釈通達とアサヒビールは「ウオッカ」、サントリーは製品情報サイトで「ウオツカ」を使っています。ただし酒税法の条文にはどちらも出てきません。

フレーバードウォッカは同じ品目ですか?

EUでは附属書I の31番という別項目で、最低度数は37.5%と同じですが着色が認められ、甘味の上限も1リットルあたり100グラム未満まで緩められています。アメリカは27 CFR 5.151 の flavored spirits が受け皿で、瓶詰めの下限は30%です。日本ではエキス分が2度以上になるとリキュール(第3条第21号)へ移り、品目表示が変わります。

ウォッカに産地の縛りはありますか?

二層あります。普通名称としての vodka はEU規則附属書I 15(g)によりどの加盟国でも使えます。いっぽう産地を冠した名称は地理的表示として保護されていて、EUの公式登録簿 eAmbrosia を「vodka」を含む名称で引くと8件が返ります。バイソングラスの抽出物で香りづけしたポーランドのハーブウォッカもそのひとつです。

最終更新:(リンクサス酒販 鑑定士チーム監修)

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