清酒と日本酒の違い|酒税法の品目名と国税庁が指定した地理的表示

清酒と日本酒の違い|酒税法の定義と地理的表示、合成清酒との区別

清酒と日本酒はどう違うのか。この問いに一行で答えるなら、清酒は酒税法が定める品目の名前で、日本酒は国税庁長官が指定した地理的表示の名称です。同じ酒を指す二つの呼び名ではなく、根拠となる文書も、名乗るための条件も別々に置かれています。

この記事は、酒税法の条文と国税庁の告示・指定の別紙だけを材料に、二つの言葉の関係を組み立て直したものです。味わいや飲み方の入門は日本酒とはのほうにまとめてあります。

清酒と日本酒の違いは「品目名」と「地理的表示」の違い

ちょこに注がれた清酒と酒米
ちょこに注がれた清酒と酒米の参考画像

まず出発点を確かめます。酒税法第2条は、アルコール分1度以上の飲料を酒類と定め、そのうえで酒類を発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類の四種類に分類しています。この四種類の下に、清酒から雑酒まで17の品目が並びます。清酒は醸造酒類の筆頭です。

四醸造酒類次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。)をいう。イ清酒ロ果実酒ハその他の醸造酒

この17という数は地理的表示の告示の側も前提にしていて、表示基準第1項第2号は「酒類の品目」とは、酒税法第3条第7号から第23号までに掲げる酒類の区分をいう。と定義しています。第7号が清酒で第23号が雑酒ですから、清酒は品目の一番目にあたります。

ここに「日本酒」という言葉はありません。それどころか、酒税法の全文にも、施行令にも、施行規則にも、酒類行政のもう一本の柱である酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律にも、「日本酒」は一度も出てきません。清酒の製法品質表示基準と酒類の地理的表示に関する表示基準という二つの告示を足しても同じです。

表1 「日本酒」の語を全文検索した結果
資料 「日本酒」の出現
酒税法(昭和28年法律第6号) 0件
酒税法施行令(昭和37年政令第97号) 0件
酒税法施行規則(昭和37年大蔵省令第26号) 0件
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号) 0件
清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号) 0件
酒類の地理的表示に関する表示基準(平成27年国税庁告示第19号) 0件

では「日本酒」はどこに書かれているのか。国税庁長官が平成27年12月25日に指定した地理的表示の名称として、指定の別紙にだけ現れます。別紙1は関係をこう説明しています。

「清酒」のうち、米及び米こうじに国内産米を用い、日本国内で製造したものを「日本酒」と呼称している。

混乱しやすいのは、日常語としての「日本酒」がこの指定より何十年も前から広く使われてきたからです。別紙1自身が、明治時代以降の文献で多く用いられてきたと書いています。一般名称として定着していた言葉を、2015年になってから制度の側が名称として取り込んだ、という順番です。そのため、条件を満たさない清酒を日常会話で日本酒と呼ぶことと、容器や包装にその名称を付けることとが、同じ言葉のまま別の意味を持つようになりました。

制度が縛るのは後者だけです。表示基準第1項第9号は「使用」を三つの行為に限っていて、容器または包装に付ける行為、それを付けたものを譲渡・引渡し・展示・輸出入する行為、広告・価格表・取引書類に付けて展示または頒布する行為が対象です。会話で何と呼ぶかは制度の外側にあります。

酒税法第3条第7号が定める「清酒」の三つの形

清酒の原料になる稲と米
清酒の原料になる稲と米の参考画像

清酒の定義は酒税法第3条第7号にあります。柱書はアルコール分の上限から始まります。

七清酒次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。

そのうえで、イ・ロ・ハの三つの形が並びます。もっとも狭いのがイで、副原料を一切認めません。

イ米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの

純米酒はこの形にあたります。

表2 酒税法第3条第7号が挙げる清酒の三つの形
号 条文の書きぶり 要点
イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの 米・米こうじ・水だけ。純米酒はここに入る
ロ 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの 政令の物品は米(こうじ米を含む)の重量の50%を超えられない
ハ 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの できあがった清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

ロが認める「政令で定める物品」

ロの「政令で定める物品」は酒税法施行令第2条が受けています。

法第三条第七号ロに規定する清酒の原料として政令で定める物品は、アルコール

続けて焼酎、ぶどう糖その他財務省令で定める糖類、有機酸、アミノ酸塩、清酒が挙がります。ここに醸造アルコールが入るので、本醸造酒や普通酒もロの形として清酒に収まります。ただし条文には重さの縛りがあり、これらの物品の合計は米(こうじ米を含む)の重量の50%を超えられません。

ロ米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)

「こしたもの」という条件

三つの形すべてに共通するのが「こしたもの」という語です。もろみを固形分と液体に分ける工程を経ていることが条件で、これを経ていないものは清酒になりません。ハの形は、できあがった清酒に清酒かすを加えてもう一度こす作り方を指します。

ハ清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
棚に並ぶ日本酒の四合瓶
棚に並ぶ日本酒の四合瓶の参考画像

ここから先の話を手元の一本と照らし合わせながら読めるように、当店で扱っている日本酒を並べておきます。ラベルの品目欄と原材料名の欄を見比べると、この記事で扱う条文がそのまま印刷されていることがわかります。

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画像 銘柄・スコア 定価
市場相場
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低アル酒のパイオニア。ジュース感覚で飲める。

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富久錦 純米 Fu. 500ml28位低アル・純米 富久錦 純米 Fu. 500ml
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辛口白ワイン感覚の低アル純米。食中酒に。

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低アル5%の大定番。日本酒が苦手でも飲みやすい。

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ワイン酵母仕込みの洋食に合う日本酒。中庸の度数。

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日本酒の多くはメーカー希望小売価格を公表しないオープン価格のため、定価の欄は獺祭の2銘柄を除いて空欄で、市場相場の目安だけが入ります(2026年6月時点の実勢)。定価が入っていない行は価格の並べ替えで「価格不明」の側に入ります。また、当店の販売価格より楽天の実勢が安く出ていた9銘柄については、「最安」の表示が実態と食い違うため楽天の金額の掲載をやめました(欄そのものは楽天の検索リンクとして残ります)。十四代・而今・飛露喜・黒龍石田屋・新政の限定酒などは品薄で価格変動が大きく、実勢が大きく上振れする場合があります。アルコール度数・精米歩合はメーカー公表値およびラベル表記に基づきますが、製造年やロットにより前後します。最新の在庫・価格・スペックは各リンク先でご確認ください。

この表で唯一「日本酒」と名乗れないのが獺祭ブルーです。造っているのはニューヨーク州ハイドパークのDassai Americaで、清酒の作り方で醸された酒であることに変わりはありませんが、製造地が日本国内ではないため地理的表示の要件から外れます。この違いがどこから来るのかを、次の節で生産基準の条文から確かめます。

並べ替えの目安としてもう一点。日本酒はメーカー希望小売価格を公表しない銘柄が多く、定価の欄が埋まるのは表の中でも限られます。価格で絞り込むときは、定価の入っていない行が価格不明の側にまとまることを見込んでご覧ください。

地理的表示「日本酒」の生産基準が求める国内産米と国内製造

国内産米と稲田
国内産米と稲田の参考画像

地理的表示という仕組みそのものは、酒税法ではなく酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の6を根拠にしています。この条文は財務大臣に表示の基準を定める権限を与えるだけの一般的な規定で、条文中に「地理的表示」の語はありません。

酒類の製法、品質その他の政令で定める事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができる。

この委任を受けて出されたのが酒類の地理的表示に関する表示基準(平成27年10月30日国税庁告示第19号)です。指定の効果は第9項に書かれています。

地理的表示の名称は、当該地理的表示の産地以外を産地とする酒類及び当該地理的表示に係る生産基準を満たさない酒類について使用してはならないものとする。

生産基準の四項目

表示基準第2項は、指定にあたって定める生産基準を四項目としています。酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項、酒類の原料及び製法に関する事項、酒類の特性を維持するための管理に関する事項、酒類の品目に関する事項の四つです。「日本酒」の別紙1では、二番目の原料と製法がこう書かれています。

酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
ただし、米及び米こうじに国内産米のみを用いたものであること。
酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の製造方法により、日本国内において製造されたものであること。

読み替えると、清酒であることが前提で、そのうえで米と米こうじが国内産米のみであること、製造が日本国内で行われていることの二つが上乗せされている、という構造です。四番目の酒類の品目に関する事項には「清酒」とだけ書かれています。

生産基準の一番目、酒類の特性に関する事項には、社会的評価と品質の二本立てで説明が置かれています。品質のうち官能的な要素として書かれているのは、アルコール分22度未満であること、一般に無色から黄色で長期熟成のものは琥珀色を帯びること、同じ醸造酒であるビールやワインに比べて旨味成分であるアミノ酸やペプチドを多く含むこと、吟醸香・こうじの香り・カラメル様の香りなど香りに多様性があることの四点です。

微生物学的な要素としては、Aspergillus属のコウジカビを使って米こうじを作る手法が日本酒の製造に特有であること、アルコール発酵力の高い酵母が明治時代以降に選抜されてきたこと、そして米こうじの酵素による糖化とアルコール発酵を同時に進める作り方によって醸造酒としては珍しい高いアルコール度数に達すること、の三点が挙げられています。22度未満という上限が酒税法に置かれている背景も、この作り方の帰結として読めます。

国内産米であることの確かめ方

国内産米であることをどう確かめるのか。別紙1は米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(平成21年法律第26号)を挙げています。

取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達が米の生産者から「日本酒」の製造者まで義務付けられている

同法の施行令第1条は対象となる飲食料品を列挙していて、その中に清酒が入っています。

七米こうじ八清酒九単式蒸留しょうちゅう十みりん

米こうじが第7号、清酒が第8号、単式蒸留しょうちゅうが第9号、みりんが第10号です。同じ酒類でも合成清酒と連続式蒸留焼酎はこの列挙に入っていません。国内産米という条件を機械的に裏づけられる仕組みが清酒には用意されている、というのが生産基準の書きぶりの背景です。

産地の範囲が日本国全体でも成り立つ理由も、別紙1が自然的要因と人的要因の二つで説明しています。自然的要因としては、四季がはっきり分かれていて、秋に収穫した米を気温の低い冬に仕込み、春から夏にかけて貯蔵・熟成させるという季節の巡りに製法が結びついてきたこと、降水量が多く飲用に適した水が全国で得られることから、ほぼ全ての都道府県で生産されていることが挙げられています。

人的要因としては、稲作の北進にあわせて米の耐寒性や収量の品種改良が進んだこと、明治時代以降は各地で酒造好適米が育種され、昭和11年に山田錦が生まれたこと、農閑期の農民が職人化して杜氏制度が確立したこと、1904年に大蔵省へ醸造試験所が設けられて腐造を防ぐ科学的な研究が始まったことが順に書かれています。特定の一地域ではなく国全体の積み重ねに帰せられる、という組み立てになっています。

34件のGIで「日本酒」だけがGI併記の対象外

日本酒のラベル表示
日本酒のラベル表示の参考画像

国税庁長官が指定した地理的表示は、2026年8月時点で34件あります。酒類区分別の内訳は次のとおりです。

表3 国税庁長官が指定した地理的表示(酒類区分別・2026年8月時点)
酒類区分 件数
清酒 23件
蒸留酒 5件
ぶどう酒 5件
その他の酒類 1件
合計 34件

このうち「日本酒」の一行だけが他と形が違います。産地の範囲の欄が都道府県名でも市町村名でもなく、「日本国」と書かれているのは34件で日本酒だけです。指定日は平成27年12月25日、酒類区分は清酒です。

もう一つの違いが表示の義務です。表示基準第11項は、指定されたGIを容器や包装に付けるとき、その名称のどこか一箇所以上にGIであることを示す文字を併記するよう求めています。

使用した地理的表示の名称のいずれか一箇所以上に「地理的表示」、「Geographical Indication」又は「GI」の文字を併せて使用するものとする。

ところが「日本酒」の指定に付いた別紙2は一行だけで、次のように書かれています。

この地理的表示については、酒類の地理的表示に関する表示基準第11項の規定を適用しない。

34件のうち備考欄に別紙2が付いているのは21件ですが、その中身を全件確かめると、第11項の適用除外はこの1件だけでした。残る20件はいずれも第10項第3号にもとづく商標その他の表示の公示で、性質がまったく違います。

地理的表示を使用していない酒類には、「地理的表示」、「Geographical Indication」又は「GI」の文字を使用してはならないものとする。

なお第11項は告示と同時に動き出したわけではありません。附則が適用の開始を後ろにずらしています。

ただし、第11項の規定は、平成29年10月30日以降に使用する地理的表示から適用する。

そもそも地理的表示とは何かは、表示基準第1項第3号が定義しています。確立した品質・社会的評価・その他の特性が地理的な産地に主として帰せられる場合に、その酒類が世界貿易機関の加盟国の領域またはその領域内の地域・地方を産地とすることを特定する表示、というのが定義です。国税庁長官が指定するものと、日本以外のWTO加盟国で保護されるものの二種類があります。

指定は永久のものではありません。第4項は、使用されなくなった場合や、指定した日以後に登録商標との衝突や一般名称化に該当することとなった場合に、国税庁長官が指定を取り消すことができると定めています。第5項では生産基準・名称・産地の範囲・酒類区分の変更もできるとされていて、生産基準は一度決めたら動かないものではありません。

「日本酒」の名称が一般名称として使われすぎていることは、指定のときから織り込まれていたと考えられます。表示基準第3項第2号は日本国において、酒類の一般的な名称として使用されている表示を指定しないと定めているからです。その線引きのぎりぎりで指定された名称に、併記義務だけを外す扱いが用意された、と読むのが自然でしょう。

合成清酒とは品目が違い、原料の縛りも違う

店頭に並ぶ一升瓶
店頭に並ぶ一升瓶の参考画像

清酒と紛らわしい品目に合成清酒があります。よく「米を使わない清酒」と説明されますが、正確には清酒とは別の品目で、法律上の区分からして違います。

六混成酒類次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。)をいう。イ合成清酒ロみりんハ甘味果実酒ニリキュールホ粉末酒ヘ雑酒

清酒は第4号の醸造酒類、合成清酒は第6号の混成酒類です。同じ第3条の中で、みりんやリキュールと同じグループに置かれています。

合成清酒はアルコールや焼酎、清酒にぶどう糖その他の物品を加えて造り、香味や色沢を清酒に似せたものです。米を使うこと自体は禁じられていませんが、使える量に上限があり、アルコール分20度に換算した酒の重量の5%を超えられません。さらに施行令が数値の要件を課しています。

一アルコール分が十六度未満で、エキス分が五度以上であること。

清酒の上限が22度未満であるのに対し、合成清酒は16度未満。エキス分が5度以上という下限も清酒にはない条件です。

市場での存在感も大きく違います。令和5年度の課税数量を並べると次のようになります。

表4 令和5年度の課税数量(国税局分及び税関分の合計)
品目 課税数量 対平成25年度比 対前年度比
清酒 387,164kℓ 65.9% 95.1%
合成清酒 18,747kℓ 49.6% 95.2%

清酒は合成清酒のおよそ20.7倍です。平成25年度と比べると清酒が65.9%まで減っているのに対し、合成清酒は49.6%と半分以下になっています。合成清酒は前の節で触れた米トレーサビリティの列挙にも入っていないので、国内産米という条件で品質を語る枠組みからもそもそも外れています。

原料の側の縛りも対照的です。清酒でロの形が認める副原料は、アルコール・焼酎・ぶどう糖その他の糖類・有機酸・アミノ酸塩・清酒に限られていて、米以外の穀物は一切入っていません。一方の合成清酒は、施行令第3条第1項が米だけでなく麦やとうもろこし、またそれらのこうじを認め、さらにでん粉質物分解物、たんぱく質物やその分解物、色素、香料、粘ちょう剤まで並べています。清酒に似せるための材料が幅広く用意されている、という作りです。

ラベルの読み方と特定名称酒・普通酒の区別

特定名称酒の分類図
特定名称酒の分類図の参考画像

ラベルの読み方は清酒の製法品質表示基準(平成元年11月22日国税庁告示第8号)が決めています。こちらも根拠は酒類業組合法第86条の6で、地理的表示の表示基準と兄弟の関係にあります。

特定名称の三本柱

特定名称は吟醸酒・純米酒・本醸造酒の三つが柱です。それぞれの要件はこう書かれています。

精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの
白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの
精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なもの

三つの組み合わせから大吟醸酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒・特別純米酒・特別本醸造酒といった名称が派生します。数字を使う要件には端数の扱いまで決められています。

1%未満の端数を切り捨てた数値により判定するものとする。

切り捨てなので、精米歩合が60.9%でも切り捨てれば60%になり、吟醸酒の要件を満たします。上限を定めた基準に対しては、切り捨ては緩く働きます。

特定名称のない清酒

特定名称を表示しない清酒は、慣用的に普通酒と呼ばれます。実際の量では、こちらのほうが多数派です。

表5 令和5酒造年度の特定名称酒のタイプ別課税移出数量(国税局分)
タイプ 数量 構成比
吟醸酒 17,423kL 4.5%
純米酒 55,211kL 14.2%
純米吟醸酒 48,925kL 12.6%
本醸造酒 24,410kL 6.3%
特定名称酒 計 145,970kL 37.6%
総移出数量 387,913kL 100.0%

四つのタイプの中で伸びているのは純米吟醸酒です。平成25酒造年度の構成比5.6%が令和5酒造年度には12.6%になりました。同じ期間に本醸造酒は9.8%から6.3%へ下がっています。特定名称酒の合計は平成25酒造年度の29.4%から37.6%へ上がっているので、総量が減るなかで純米系に寄っていく動きが読み取れます。

特定名称酒は総移出数量の37.6%で、残る62.4%は特定名称を持たない清酒です。特定名称は品質の等級ではなく、原料と精米歩合の条件を満たしたときに名乗れる表示にすぎません。なお特定名称に該当しない清酒にそれらしい語を付けることは第6項が禁じています。

特定名称酒以外の清酒について特定名称に類似する用語

特定名称のほかにも、ラベルに書ける言葉には一つひとつ条件が付いています。任意記載事項として第5項に並ぶのが次の8つです。

表6 清酒の製法品質表示基準が定める任意記載事項
用語 表示できる条件(第5項)
原酒 製成後、加水調整をしない清酒(アルコール分1%未満の範囲内の加水調整を除く)
生酒 製成後、一切加熱処理をしない清酒
生貯蔵酒 製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒
生一本 単一の製造場のみで醸造した純米酒
樽酒 木製の樽で貯蔵し、木香の付いた清酒(瓶その他の容器に詰め替えたものを含む)
貯蔵年数 1年未満の端数を切り捨てた年数。混和したものは最も短い年数で表示
原料米の品種名 その品種の使用割合が50%を超える場合。使用割合を併記する
清酒の産地名 その清酒の全部がその産地で醸造されたものである場合

いずれも「表示できるものとする」という書き方なので、条件を満たしていても書かない自由はあります。逆に条件を満たさないのに書くことはできません。生一本が単一の製造場で醸造した純米酒に限られるように、日常語としての語感より条文の条件のほうが狭いものもあります。

必要記載事項のほうは第3項です。原材料名は水を除いて使用量の多い順に並べ、特定名称を表示する清酒は原材料名の近くに精米歩合を併記します。製成後に一切加熱処理をせずに出荷する清酒には、保存または飲用上の注意事項の表示が求められます。文字の大きさにも決まりがあり、8ポイントの活字以上、容量200ミリリットル以下の容器なら6ポイント以上とされています。

海外でつくられる清酒と「日本酒」表示

壁面に飾られた一升瓶
壁面に飾られた一升瓶の参考画像

海外で造られた清酒はどう扱われるのか。ここは二つの制度が別々に働きます。

一つ目は品目です。酒税法の清酒の定義に産地の条件はありません。米・米こうじ・水を原料に発酵させてこし、アルコール分22度未満であれば、どこで造られたものでも輸入されて日本国内で流通するときは清酒の品目に入ります。

二つ目が地理的表示です。生産基準が酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の製造方法により、日本国内において製造されたものであること。と定めている以上、海外の製造場で醸された清酒は「日本酒」を名乗れません。比較表に入れた獺祭ブルーがまさにこの位置にあります。

表示の側にも決まりがあります。製法品質表示基準は、保税地域から引き取る清酒に原産国名の表示を義務づけ、国内産と外国産を混ぜた場合の書き方まで指定しています。

国内において、国内産清酒と外国産清酒の両方を使用して製造した清酒については、外国産清酒の原産国名及び使用割合を表示する。

使用割合は10%の幅をもって表示してよいとされています。国内で瓶詰めしただけで日本産のように見せることができない仕組みです。産地名の表示条件も同じ向きに働きます。全部がその産地で醸造されたものでなければ産地名を書けないので、海外で醸した酒を国内の地名で売ることはできません。

整理すると、海外で造られた清酒には三段の扱いがあります。品目としては清酒に入り、地理的表示「日本酒」は名乗れず、輸入品であれば原産国名の表示が義務づけられる、という三段です。国内産米を使ったかどうかは二段目の条件の半分でしかなく、製造地が日本国内であることのほうが後から動かせない条件になります。

逆向きの縛りもあります。表示基準第10項第7号は、地理的表示の酒類区分と異なる酒類区分の酒類に地理的表示の名称と同一又は類似の表示を使用する場合を第9項の適用除外としています。「日本酒」の酒類区分は清酒なので、清酒以外の区分の酒に日本酒という語が使われても、この告示による保護の対象からは外れる、という切り分けです。

「日本酒」が海外で保護されている四つの枠組み

清酒の蔵の内部
清酒の蔵の内部の参考画像

「日本酒」は日本国内だけの制度ではありません。相互保護の合意や相手国の制度によって、四つの枠組みで保護されています。

表7 「日本酒」が海外で保護されている枠組み
相手国・地域 根拠 相手側で保護される日本のGI 日本国内で保護される相手側のGI
アメリカ合衆国 交換公文 山梨(ぶどう酒)/日本酒(清酒)/北海道(ぶどう酒)の3件 バーボン・ウイスキー/テネシー・ウイスキーの2件
欧州連合(EU) 日EU経済連携協定(平成31年2月1日発効) 23件(うち清酒13件。日本酒を含む) -
英国 日英包括的経済連携協定(令和3年1月1日発効) 23件(うち清酒13件。日本酒を含む) -
インド 物品の地理的表示(登録及び保護)法 登録番号994「NIHONSHU/JAPANESE SAKE」Class33・令和6年4月1日登録 -

この四つは仕組みがそれぞれ違います。相手国で保護されるタイプの地理的表示については、表示基準第6項が、第3項各号に該当しないことをWTO加盟国との交渉を通じて、または世界貿易機関における地理的表示の登録情報によって確認できると定めています。第7項では、指定するときも確認するときも関連資料をあらかじめ公示して広く意見を求めることとされ、第8項で官報への公告が義務づけられています。

米国とは交換公文の形で、日本側の山梨・日本酒・北海道の3件と、米国側のバーボン・ウイスキー、テネシー・ウイスキーの2件が互いに保護されています。EUと英国はいずれも経済連携協定にもとづく相互保護で、日本側の23件の中に日本酒が入っています。

インドだけは形が違います。相互保護の合意ではなく、物品の地理的表示(登録及び保護)法にもとづく現地の登録で、登録番号994「NIHONSHU/JAPANESE SAKE」が令和6年4月1日に区分Class33で登録されています。

名称の由来については、生産基準の別紙1自身が触れています。

「日本酒」の呼称は、江戸時代にオランダに「Japansch-Zaky(日本酒)」として輸出されていた記録がある

明治時代以降の文献で多く使われるようになり、近代化とともに定着したものと説明されています。法令には入らないまま日常語として広がった呼び名が、2015年になって地理的表示という形で制度に引き上げられた、というのがこの言葉のたどった道です。

国内の指定も止まっていません。表3の34件のうち、令和6年以降に指定されたものだけで東京島酒・南会津・伊丹・喜多方・青森・京都・鳥取・福岡の8件あり、このうち7件が清酒です。清酒のGIは白山が平成17年に指定された1件だけだった時期から、20年で23件まで増えました。「日本酒」という国全体のGIと、産地ごとのGIが二層で重なっている状態が、いまの清酒の地理的表示です。

飲まない日本酒の査定・買取はリンクサス酒販へ

日本酒の買取査定の様子
日本酒の買取査定の様子の参考画像

贈答でいただいたまま置いてある一本や、蔵出しの限定酒が手つかずで残っている場合、リンクサス酒販で査定を承っています。銘柄・容量・製造時期に加えて、ラベルの状態と保管環境を確認したうえで金額をお出しします。

査定額に効きやすいのは、ここまでで扱ってきた表示の項目そのものです。特定名称が入っているか、原料米の品種名と使用割合が書かれているか、製造時期がいつか、原酒や生一本といった任意記載事項が付いているか。いずれもラベルに印刷されている内容で、後から足すことができません。箱や化粧袋が残っていれば一緒にお持ちください。

品揃えは日本酒のコレクションと焼酎のコレクションでご覧いただけます。当日14:00までのご注文で当日発送に対応しています。

よくある質問

徳利からお猪口へ注ぐ
徳利からお猪口へ注ぐの参考画像
清酒と日本酒は何が違うのですか。

清酒は酒税法第3条第7号が定める品目の名前で、日本酒は国税庁長官が平成27年12月25日に指定した地理的表示の名称です。指定の別紙1は「清酒」のうち、米及び米こうじに国内産米を用い、日本国内で製造したものを「日本酒」と呼称している。と書いています。つまり日本酒は清酒の一部で、国内産米を使って日本国内で造ったものだけが名乗れます。

酒税法に「日本酒」という言葉は出てきますか。

出てきません。酒税法・酒税法施行令・酒税法施行規則・酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の4本と、清酒の製法品質表示基準・酒類の地理的表示に関する表示基準の2つの告示を全文検索しても「日本酒」は0件でした。この語が出てくるのは、国税庁長官が指定した地理的表示の名称と、その生産基準を示した別紙だけです。

ラベルに「日本酒」と書いてあるのにGIの文字がありません。表示違反ですか。

違反ではありません。表示基準第11項はGIを使うときにGIの文字を併記するよう求めていますが、「日本酒」の別紙2はこの地理的表示については、酒類の地理的表示に関する表示基準第11項の規定を適用しない。と定めています。34件の指定のうちこの適用除外を受けているのは「日本酒」だけです。

合成清酒は清酒の一種ですか。

別の品目です。清酒は第3条第4号の醸造酒類、合成清酒は第3条第6号の混成酒類に入ります。合成清酒はアルコールや焼酎に糖類などを加えて清酒に似た香味にしたもので、施行令は一アルコール分が十六度未満で、エキス分が五度以上であること。という要件を課しています。

外国でつくられた清酒は「日本酒」と名乗れますか。

名乗れません。生産基準は酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の製造方法により、日本国内において製造されたものであること。と定めており、製造地が日本国内であることが条件です。国内産米を使っていても海外で醸せば地理的表示「日本酒」の要件を満たしません。

普通酒とはどの清酒のことですか。

清酒の製法品質表示基準に定めのある特定名称を表示しない清酒のことです。令和5酒造年度の特定名称酒は145,970kLで総移出数量の37.6%でした。残りの62.4%が特定名称を持たない清酒にあたります。

純米酒と本醸造酒はどこで分かれますか。

醸造アルコールを使うかどうかです。純米酒は白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なものとされ、原料は白米・米こうじ・水だけです。本醸造酒は精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なものとされ、精米歩合70%以下という数字の条件も付きます。

清酒のアルコール分に上限はありますか。

あります。第3条第7号の柱書は次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。としており、22度が上限です。22度以上になったものは清酒の品目には入りません。

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