スコーピオンとは|裏ラベルの品目欄が二本で違う理由と作り方

スコーピオンとは|作り方・度数とラム+ブランデーの黄金比、由来を解説

スコーピオンは、ラムとブランデーという二本の蒸留酒を土台に、オレンジとレモンの果汁、そしてアーモンドの香りをつけたオルジェーを重ねる一杯だ。作るときは二本とも「同じくらいの立場の酒」として扱う。ところが、そのボトルを裏返して品目の欄を見ると、片方にはスピリッツ、もう片方にはブランデーと書かれている。同じ一杯の中で並んでいるのに、ラベルの同じ欄で名前の与えられ方が違う。

この欄は、誰が、何を根拠に、どんな字で書いているのか。答えは酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第八十六条の五と、そこからつながる政令・省令のほうにある。本記事は、スコーピオンの材料表から出発して、その一本の欄がどう組み立てられているかを条文で追う。作り方と分量は先に置いた。

スコーピオンとは|土台の二本は、裏ラベルの同じ欄で別の名前になる

スコーピオンとは|土台の二本は、裏ラベルの同じ欄で別の名前になる
並べた蒸留酒のボトル

スコーピオンはティキ系のカクテルに数えられる。ラムを主役にブランデーを少量重ね、柑橘の酸味とオルジェーの香りでまとめる。大きな器を複数人で囲む「スコーピオンボウル」の形でも知られている。

先に答え|片方は「スピリッツ」、片方は「ブランデー」

結論を先に三つ置く。

  1. ボトルの品目欄に書く語は、酒税法第三条が名前を与えた十七の品目のどれかである。ラムはその十七に無いので、多くの場合「スピリッツ」になる。
  2. 品目を書く義務そのものは酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第八十六条の五が課している。書き方は同法施行令第八条の三と同法施行規則が決めている。
  3. 品目名の代わりに使ってよい呼称の表は用意されているが、上欄に並ぶのは十の品目だけで、スピリッツはそこに入っていない。ブランデーは入っている。

この記事が扱う範囲と、扱わない範囲

扱うのは、容器と包装に印刷される品目の表示に関する日本の条文と、同じ役割を果たす米国連邦規則の該当節である。味の評価や銘柄の優劣は扱わない。分量は流通しているレシピの目安で、公的な規格ではない。

ラムそのものの種類や造り方はラム酒とは?種類・度数・飲み方とおすすめの選び方に、品目としてのスピリッツの決まり方はスピリッツとは 酒税法が決める品目の話にまとめてある。本記事はその先、ラベルの欄そのものを見る。

作り方と配合|五つの材料と量の目安

作り方と配合|五つの材料と量の目安
柑橘を重ねた琥珀色のカクテル

スコーピオンの材料は五つ。ラム、ブランデー、オレンジ果汁、レモン果汁、オルジェーである。ラムが主役で、ブランデーはその半分ほど。果汁が全体の量を作り、オルジェーが香りの方向を決める。

一人分の分量表

一人分の分量の目安(広く流通しているレシピをもとにした目安であり、公的な規格ではない)
材料 量の目安 役割 裏ラベルの品目欄でよく見る語
ラム 60ml 土台。量がいちばん多い スピリッツ
ブランデー 30ml 厚みを足す ブランデー
オレンジ果汁 60ml 甘みと嵩 (酒類ではない)
レモン果汁 45ml 酸味で締める (酒類ではない)
オルジェー 15ml アーモンドの香り (酒類ではない)

クラッシュアイスとともに手早く混ぜ、大ぶりのグラスに注ぐ。オルジェーは甘みではなく香りのために入れるので、量を増やす前に果汁の鮮度を見直したい。手元にないときは市販のアーモンドシロップで方向を近づけられる。

ボウルで囲むときに変わるのは量だけではない

ボウルで作るときは、量の目安の列がそのまま増える。一人分で見れば土台は90mlだが、四人分なら360mlになる。器が大きいほど一杯の輪郭が消えるので、水を挟みながら飲む形にしておきたい。

リンクサス酒販 鑑定チーム(買取部門で洋酒の査定を担当)

カクテルの分量を尋ねられたとき、私は「どのボトルで作るか」を先に聞きます。同じ60mlでも、銘柄によってアルコール分の開きが大きいからです。アルコール分は品目と同じく表示が義務づけられている項目なので、そこを見てから量を決めるほうが確かです。

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バックバーに並ぶ洋酒の棚

ここから下は、当店で扱っている商品の一覧だ。在庫は入れ替わるので、表示されている内容をそのまま確認してほしい。

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気になるボトルは、裏側の品目とアルコール分もあわせて見ておきたい。

品目の欄を義務づけているのは、酒税法ではない

品目の欄を義務づけているのは、酒税法ではない
ボトルの裏側に貼られた表示のラベル

酒税法は、酒類の品目を第三条で定義している。第七号の清酒から第二十三号の雑酒まで、十七の品目が並ぶ。ウイスキーは第十五号、ブランデーは第十六号にあり、それぞれ固有の名前と定義を与えられている。

だが、酒税法のどこを読んでも「その名前を容器に書け」とは書いていない。書けと言っているのは別の法律だ。

第八十六条の五が名宛人にしている二者

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第八十六条の五は、見出しを「酒類の品目等の表示義務」としたうえでこう定める。

酒類製造業者又は酒類販売業者は、政令で定めるところにより、酒類の品目その他の政令で定める事項を、容易に識別することができる方法で、その製造場から移出し、若しくは保税地域…から引き取る酒類…又はその販売場から搬出する酒類の容器又は包装の見やすい所に表示しなければならない。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号)第八十六条の五

名宛人は酒類製造業者と酒類販売業者の二者。対象は容器と包装で、場所は「見やすい所」と書かれている。二つ目の省略記号に入るのはかっこ書きで、酒税法第二十八条第一項(未納税移出)、第二十八条の三第一項(未納税引取)、第二十九条第一項(輸出免税)の適用を受けるものを外している。かっこ書きが付いているのは移出と引取りの部分で、販売場からの搬出には掛からない。

ここに書かれた「品目」が何を指すかは、同じ法律の第二条第一項が引き取っている。

この法律において「酒類」とは、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類をいい、その品目については、同法の規定によるものとする。

同法第二条第一項

この項にはただし書が続き、原料用アルコールを連続式蒸留焼酎または単式蒸留焼酎とみなすと定めている。ただしその適用からは第八十六条の五を除くと明記されており、品目の表示については原料用アルコールは原料用アルコールのままだ。同じ形の除外は政令にもあり、同法施行令第一条のただし書はこの政令(第八条の三を除く。)と書いている。後で見る例外呼称の表は令第八条の三第四項の委任先なので、原料用アルコールの行を生かしているのは政令側の除外のほうだ。

つまり、品目の欄に書ける語は酒税法第三条が用意した十七の名前に限られる。ラムという語はその十七に無い。サトウキビ由来の蒸留酒でエキス分が二度未満であれば、品目の欄には第二十号のスピリッツが入る。糖分が加えられてエキス分が二度以上になっていれば、第二十一号のリキュールに動く。

政令の各号が並べる五つの表示事項

「政令で定めるところにより」の受け皿は、同法施行令第八条の三である。第一項は製造業者を名宛人にして、氏名または名称と製造場の所在地に加え、五つの号を並べる。

施行令第八条の三第一項の各号が並べる表示事項(かっこ書きは省略)
号 事項 スコーピオンのラム・ブランデーでの見え方
第一号 内容量 700ml、750ml など
第二号 当該酒類の品目 スピリッツ/ブランデー
第三号 当該酒類のアルコール分 40%、43% など
第四号 雑酒にあつては、税率の適用区分を表す事項 該当しない
第五号 その他の発泡性酒類にあつては、発泡性を有する旨を表す事項 該当しない

五つの号のうち、品目は第一号と第三号に挟まれた第二号だ。ただし令も規則も、表示事項をどう配置するか、どの順で並べるかまでは定めていない。裏ラベルで三つが縦に並ぶことが多いのは慣行であって、条文が求めた配置ではない。

スピリッツもブランデーも、税率の区分では同じ棚にいる

ここで一つ、名前の話とは別の線を確認しておきたい。酒税法第三条第五号は「蒸留酒類」という括りを置き、その中に連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎・ウイスキー・ブランデー・原料用アルコール・スピリッツの六つを並べている(いずれもその他の発泡性酒類を除く)。ブランデーとスピリッツは、この括りでは同じ棚にいる。第二十三条第一項は税率をこの種類ごとに定めているので、税額の計算でも二本は同じ行を使う。

つまりスコーピオンの土台二本は、税率の区分では隣り合っていて、品目という名前の欄でだけ分かれる。分かれる理由は原料にある。第十六号はブランデーを果実由来のものと定義しており、サトウキビ由来のラムはそこに入りようがない。税率の扱いは同じでも、品目の名前は原料の違いで割れる。

どう書くかまで省令が決めている|日本文字・表示証・届出

どう書くかまで省令が決めている|日本文字・表示証・届出
貼るか直接刷るかで示された品目

義務があることと、どう書けばよいかは別の話だ。施行令第八条の三第一項は、表示の方法についてかっこ書きでこう限定している。品目については財務省令で定めるところにより財務大臣に届け出た方法による、と。

氏名や所在地を含むほかの事項は「容易に識別することができる方法」で足りるのに、五つの号のうち品目だけは届け出た方法で書くことが求められている。

ただしこのかっこ書きは二重になっていて、内側で財務大臣が定める見本用のものを除くと抜き道を作っている。その見本用が何かは、同法施行規則の第十一条の二が決めている。

令第八条の三第一項に規定する財務大臣が定める見本用の酒類は、当該酒類(粉末酒を除く。)の内容量が百ミリリットル未満で、かつ、当該容器の見やすい箇所に見本用である旨を容易に識別することができる方法で表示しているものとする。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(昭和二十八年大蔵省令第十一号)第十一条の二

百ミリリットル未満で、見本用である旨が容器に表示されていること。二つとも満たすものだけが、届け出た方法という縛りから外れる。輸入洋酒に付くミニチュアボトルがここに当たることがある。

貼るか、直接刷るか

その財務省令が、同法施行規則の第十一条の三である。第三項が方法を具体的に書き下している。

酒類の品目を印刷した表示証を容器に見やすく貼り付け、又は酒類の品目を直接容器に見やすく印刷することとし

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(昭和二十八年大蔵省令第十一号)第十一条の三第三項

見本用のものを除けば、容器の品目表示について認められているのは二通りだ。品目を刷った表示証を貼るか、容器に直接刷るか。条文が挙げているのは容器への貼付と直接印刷の二つなので、首にかけるタグや外箱にだけ書く形はここに入らない。後で見る令第六項の承認を受けた場合は、また別の扱いになる。

さらに同じ項が二つの条件を並べる。第一号は文字について、こうだ。

酒類の品目を表示するために用いる文字が日本文字であり、かつ、内容量(粉末酒にあつては、当該粉末酒の重量)に応じ明瞭に判読できる大きさ及び書体であること

同項第一号

「日本文字」と書かれている。漢字もかなも日本文字なので字種は絞られていないが、ラテン文字はここに入らない。だから輸入されたラムのラベルに RUM とだけ大書きされていても、品目の欄は日本文字で別に用意しなければならない。第二号は色を扱い、酒類の品目を表示するために用いる文字の色が表示証又は容器の全体の色と比較して鮮明でその文字が明瞭に判読できることと求めている。

品目の書き方は、あらかじめ届け出る

届出そのものについては、同条第一項がこう定める。届出は酒類製造業者…、酒類販売業者又はこれらの者が直接若しくは間接に構成する団体が行う。個社だけでなく、業界団体がまとめて届け出る道が開かれている。

第二項は、届け出ようとする者は別紙様式第十一の二による届出書を、財務大臣に提出しなければならないとする。様式まで指定された紙が一枚あり、そこを通ってはじめて品目の書き方が決まる。

リンクサス酒販 鑑定チーム(買取部門で洋酒の査定を担当)

査定で古いボトルを預かると、品目の表示が表示証の貼付か直接印刷かで年代の見当がつくことがあります。貼付の表示証は経年で端が浮いたり黄ばんだりするので、保管状態を読む手がかりにもなります。剥がれかけていても、無理に貼り直さずそのままお持ちください。

スコーピオンに使うラム・スピリッツ30銘柄を比較

スコーピオンに使うラム・スピリッツ30銘柄を比較
銘柄ごとの中身を一覧で確かめる

ここから下は、スコーピオンの土台に選べるラム・スピリッツを中心に並べた一覧だ。名称、価格の目安、取扱いの状況を横並びで見られるようにしてある。

表の読み方

表は上部のボタンで並べ替えと絞り込みができる。アルコール分と品目は表に載せていないので、気になるボトルは商品ページか実物の裏側で確認してほしい。同じ60mlでも度数が違えば仕上がりが変わる。

スコーピオン向けラム & じっくり飲むプレミアムラム 比較表(30銘柄)
スコーピオンのトロピカルなコクを支えるゴールド・ダーク・長期熟成ラムを中心に、軽快に仕上げたいときのホワイト、香りで遊ぶアグリコールまで30銘柄を横断比較。タイプ(ホワイト/ゴールド/ダーク/スパイスト/アグリコール/長期熟成)・度数・産地・スコーピオンとの相性・楽天/Amazonの購入先を一覧できます。スコーピオンはブランデーとオルジェ(アーモンドシロップ)が加わるぶん、ベースのラムにゴールドやダークのコクを選ぶと南国らしい厚みが出ます。
画像 銘柄・スコア 定価
市場相場
特徴 リンクサス酒販
本命
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💎 プロのおすすめ

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19位定番 バルバンクール 5スター 8年 700ml
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トロワリビエール 1986 マルティニーク 700ml21位希少 トロワリビエール 1986 マルティニーク 700ml
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クレマン 10年 旧ラベル オールドボトル 700ml22位希少 クレマン 10年 旧ラベル オールドボトル 700ml
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イエラム サンタマリア ヴォヤージュ#1 750ml24位希少 イエラム サンタマリア ヴォヤージュ#1 750ml
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ラムネイション ブリティッシュガイアナ 7年 700ml25位限定 ラムネイション ブリティッシュガイアナ 7年 700ml
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ベントレーラム B13RUM 500ml27位希少 ベントレーラム B13RUM 500ml
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30位定番 クレマン プルミエール・カンヌ(白)700ml
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アグリコール白の青々しい香り。香り重視のカクテルに。

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輸入ラムの多くはメーカー希望小売価格を公表しない「オープン価格」のため、定価(list_price)は掲載せず市場相場の目安のみを記載しています(2026年6月時点の実勢)。楽天/Amazon価格は各モールの実勢で、同一銘柄・容量が見つからない場合は検索リンクのみ掲載しています。

表に載っていない銘柄でも、サトウキビ由来の蒸留酒なら同じ場所に使える。

品目名の代わりに書ける呼称は、十の品目にだけ用意されている

品目名の代わりに書ける呼称は、十の品目にだけ用意されている
呼称の異なる酒が同じ棚に並ぶ

ここまでは「品目名を書く」という話だった。では、品目名ではない語を品目の欄に書ける道はあるのか。ある。ただし、開いている扉の数は限られている。

入口は政令第四項の「一般に慣熟した呼称」

入口は施行令第八条の三の第四項だ。

前三項の規定による酒類の品目の表示は、当該品目の名称以外に一般に慣熟した呼称があるものとして財務省令で定める酒類については、当該酒類の品目の名称に代えて財務省令で定める呼称によることができるものとする。

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令(昭和二十八年政令第二十八号)第八条の三第四項

鍵になる語は一般に慣熟した呼称だ。ただし何が慣熟したかを決めるのは市場ではなく財務省令のほうである。

上欄に並ぶ十品目と、そこに無いもの

その財務省令が、施行規則の第十一条の五「品目の例外表示」である。三段組の表になっていて、上欄に品目、中欄にその品目のうちどれが対象か、下欄に使ってよい呼称が置かれている。上欄に並ぶ品目を数えると十だ。

施行規則第十一条の五の表(上欄の品目・中欄の対象・下欄の呼称。中欄はかっこ書きと法令番号を省略し、泡盛の行は要約した)
上欄の品目 中欄(対象) 下欄の呼称
清酒 国税庁長官が地理的表示として指定した日本酒の表示を使用することができるもの 日本酒
連続式蒸留焼酎 当該品目に属する酒類の全てのもの ホワイトリカー又は焼酎甲類
単式蒸留焼酎 当該品目に属する酒類の全てのもの/酒税法第三条第十号イからホまでに掲げるもの/黒こうじ菌の米こうじと水で発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機で蒸留したもの(水以外の物品を加えたものを除く) ホワイトリカー又は焼酎乙類/本格焼酎/泡盛
みりん 当該品目に属する酒類の全てのもの 本みりん
甘味果実酒 強壮剤、栄養剤その他の薬剤又はこれらの浸出液を原料の一部としたもの 薬剤甘味果実酒又は薬用甘味果実酒
ウイスキー アルコール分が十三度未満のもの 水割りウイスキー
ブランデー アルコール分が十三度未満のもの 水割りブランデー
原料用アルコール 黒こうじ菌の米こうじと水で発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機で蒸留したもの(水以外の物品を加えたものを除く) 泡盛
リキュール 強壮剤、栄養剤その他の薬剤又はこれらの浸出液を原料の一部としたもの/酒税法施行令第五条第二項第二号に掲げるもの 薬味酒又は薬用酒/白酒
その他の醸造酒 米、米こうじ及び水を原料として発酵させたもので、こさないもの 濁酒

中欄があるので、上欄に載っているだけでは足りない。清酒がどれでも「日本酒」と書けるわけではなく、地理的表示の指定を使える清酒に限られる。表は三つの段が揃ってはじめて一行になる。

十の上欄を最後まで見ても、スピリッツは出てこない。果実酒、ビール、発泡酒、粉末酒、雑酒、合成清酒も無い。慣熟した呼称の扉が開いているのは十品目で、スコーピオンのラムが落ちる品目はその外にある。

だから、日本で流通するラムのボトルの品目欄に「ラム」と印刷する道は、この枠組みの中には用意されていない。ラベルの表側に RUM と大きく書くこと自体は妨げられていないが、それは品目の欄ではない。

ブランデー側には「水割りブランデー」という行がある

一方でブランデーは上欄に入っている。中欄はアルコール分が十三度未満のもので、その場合に下欄の「水割りブランデー」を品目名の代わりに書ける。ウイスキーにも同じ形の行があり、十三度未満なら「水割りウイスキー」になる。

スコーピオンに使う一般的なブランデーは40度前後なので、この行に当たることはまずない。それでも、片方には行があり、片方には行が無い。表の構造を見ると、二本の差は「名前があるかどうか」だけでなく「代わりの名前が用意されているかどうか」にも及んでいることがわかる。

輸入したボトルは、引き取った販売業者が書く

輸入したボトルは、引き取った販売業者が書く
輸入された蒸留酒のボトル

スコーピオンに使うラムの多くは輸入品だ。国内に製造場は無い。では、その品目の欄は誰が書いているのか。

第二項が動かしているのは、書く人と場所

施行令第八条の三の第二項が、名宛人を入れ替えている。

酒類を保税地域から引き取る酒類販売業者又は酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者は、その引き取り、又は搬出する酒類の容器の見やすい箇所に、当該酒類の引取り又は搬出の時までに、その住所及び氏名又は名称、その引取先又は詰替の場所の所在地並びに前項各号に掲げる事項を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。

同令第八条の三第二項

第一項は製造業者と製造場からの移出を扱い、第二項は販売業者と保税地域からの引取りを扱う。輸入されたラムについては、引き取った酒類販売業者が品目を表示する。裏ラベルに輸入者の名称と住所が並んでいるのは、この項が住所と氏名まで求めているからだ。所在地のほうは輸入者ではなく引取先のものを指す。

期限も書かれている。当該酒類の引取り又は搬出の時までにである。店頭に出す前ではなく、保税地域から引き取る時点で表示が済んでいなければならない。

詰め替えて出すときも同じ列に並ぶ

第二項はもう一つ、詰め替えを同じ列に置いている。大きな容器から小分けして販売場から出す場合も、詰め替えた側が品目を表示する。量り売りの小瓶に品目の欄が付いてくるのは、この規定があるためだ。

なお第一項のかっこ書きが求めていた「届け出た方法」は、第二項でも同じかっこ書きが次項において同じとして引き継がれている。輸入者であっても、品目の書き方は届け出た方法による。

リンクサス酒販 鑑定チーム(買取部門で洋酒の査定を担当)

輸入洋酒の査定では、裏ラベルの輸入者表示をよく見ます。同じ銘柄でも輸入元が変われば表示のレイアウトが変わるので、並行して入ってきた年代を推し量る材料になります。ラベルが二枚重ねに貼られていることもありますが、剥がさずそのままお持ちいただくのが確実です。

箱にも同じ欄が要る|ただし箱の使われ方で絞られる

箱にも同じ欄が要る|ただし箱の使われ方で絞られる
化粧箱とボトルの組み合わせ

ギフト用の箱に入ったブランデーを思い浮かべてほしい。箱の外からはボトルの裏ラベルが読めない。この場合、品目の欄はどこに要るのか。

第三項が準用と読み替えでつないでいるもの

第八十六条の五は本文で容器又は包装の見やすい所と書いていた。容器だけでなく包装も対象に入っている。施行令第八条の三の第三項は、第一項と第二項を包装について準用し、そのうえで読み替えを並べる。

読み替えは五つ置かれている。第一項を準用する側に三つ、第二項を準用する側に二つだ。軸で束ねると時期・表示方法・事項の並びの三種になる。

時期は両側にあり、包装を酒と別個に出すなら包装のほうの時点で表示が要る。移出側は当該包装を当該酒類と別個に移出する場合には、当該包装の移出の時、引取り・搬出側も同じ形で書かれている。表示方法は第一項側だけで、かっこ書き(届け出た方法)を単に方法で表示と読み替える。包装については、品目の書き方の届出までは求められていない。

事項の並びも読み替えられ、内容量は当該包装に係る酒類の内容量になる。箱そのものの容積ではなく、中の酒の量を書く。第二項側は並びに前項第二号から第五号までとされている。第二号は品目だ。箱にも品目の欄が残ることは、この読み替えの中に書かれている。

省令が絞っているのは箱の使われ方

ただし、すべての箱が対象になるわけではない。第三項が対象にしている包装は透明なもの以外のもので通常当該酒類とともに消費者に引き渡されるもののうち、財務大臣が定めるものに限られている。透明で中のラベルが読めるなら、外側に重ねる必要はないという整理だ。

その「財務大臣が定めるもの」を絞っているのが施行規則第十一条の四である。

令第八条の三第三項に規定する財務大臣が定める酒類の包装は、通常当該酒類の品目と同一の品目の酒類の包装に専用されるものとする。

同施行規則第十一条の四

令が置いた要件は透明でないことなど性状の側だが、省令が足した絞りは使われ方だ。同じ品目の酒の包装に専用される箱であることが条件になっている。汎用の箱や、複数の品目にまたがって使い回される包装は、この定めから外れる。

第五項と第六項が置いている別の道

同令第八条の三は、第五項で所在地を記号で表示する道を置いている。ただし製造業者がその記号を使えるのはその住所を併せて表示する場合に限るとされ、手続は施行規則第十一条の六の様式第十一の三による届出だ。

第六項はさらに広い。事由は相続(包括遺贈を含む。)、合併その他の事由と開かれており、相続と合併に限られない。ただしこれらの規定による表示をし難い場合であることと財務大臣の承認の二つが関門になる。効果は一つではなく、表示すべき事項の一部を省略し、又はこれらの規定による表示と異なる表示をすることができるとされる。省略と、異なる表示の二つだ。条文は省略できる事項から品目を外していないので、品目の欄が承認によって動く余地は残されている。手続は施行規則第十一条の七の様式第十一の四による承認申請である。

米国はラベルの designation を条文で名指しする

米国はラベルの designation を条文で名指しする
テイスティンググラスに注いだ蒸留酒

同じ問いを米国の条文に投げると、答えの形が変わる。連邦規則集の第27編第5部は蒸留酒のラベルと広告を扱う部で、蒸留酒の class と type を条文で列挙し、ラベルにどう designation を置くかまで書き下している。この部が扱うのは蒸留酒に限られる。

ラムの節が置く二つの数字

ラムには独立した節がある。§ 5.147 で、その (a) が class を定義する。

“Rum” is distilled spirits that is distilled from the fermented juice of sugar cane, sugar cane syrup, sugar cane molasses, or other sugar cane by-products at less than 95 percent alcohol by volume (190° proof) having the taste, aroma, and characteristics generally attributed to rum, and bottled at not less than 40 percent alcohol by volume (80° proof)

27 CFR § 5.147(a)

数字は二つ。蒸留のときは95%未満、瓶詰めのときは40%以上である。同じ項は、ラベルの書き方についてもこう続ける。All rum may be designated as “rum” on the label, even if it also meets the standards for a specific type of rum. 特定のタイプに当てはまる場合でも上位の class 名で「rum」と書いてよい、という許可の形だ。次に見る § 5.145(b) がブランデーに type 名での表示を義務づけているのと、向きが違う。

この節が (b) に挙げるタイプは一つだけで、(2) は Reserved のまま空いている。挙がっているのはカシャッサだ。Rum that is a distinctive product of Brazil, manufactured in Brazil in compliance with the laws of Brazil regulating the manufacture of Cachaça for consumption in that country. 産地を条文に埋め込んだ書き方になっている。

「brandy」と一語で書けるのは葡萄のものだけ

ブランデーは § 5.145 にある。その (a) が置いた数字はラムと同じで、distilled at less than 95 percent alcohol by volume (190° proof)、bottled at not less than 40 percent alcohol by volume (80° proof) だ。違うのは原料の定義のほうである。

違いが出るのは、その先のラベル表示の項である。

The term “brandy” without further qualification (such as “peach” or “marc”) may only be used as a designation on labels of grape brandy as defined in paragraph (c)(1) of this section.

27 CFR § 5.145(b)

限定語を付けずに「brandy」とだけ書けるのは、葡萄のブランデーに限られる。桃なら「peach brandy」と書くことになる。同じ項は、どのタイプにも当てはまらないブランデーについてmust be designated on the label as “brandy” followed immediately by a truthful and adequate statement of compositionと定める。この場合は組成の説明が直後に付くので、限定語なしの「brandy」には当たらない。二つの文は衝突しない。

日本と米国で、ラベルに書く名前がどう決まるか
論点 日本(品目の欄) 米国(label designation)
ラムの扱い 固有の名前は無い。第二十号のスピリッツ(エキス分が二度以上なら第二十一号のリキュール) § 5.147 が class として rum を置く
ブランデーの扱い 第十六号として固有の名前がある § 5.145 が class として brandy を置く
品目名に代えて書ける呼称(日本のみの制度) ラム側は用意なし/ブランデー側は十三度未満で「水割りブランデー」 該当する制度が無い
ラベルに書く語の粒度(米国のみの制度) 品目の一段のみ。種類(蒸留酒類)はラベルに書かない ラムは type に当たっても class 名で書ける/限定語なしの brandy は葡萄に限られる
書く人 製造業者、保税地域から引き取る販売業者、詰め替えて搬出する販売業者 (本記事の範囲外)

五行のうち二行は片側にしか制度が無い。二つの法域は同じ問いに違う道具で答えているので、対称な裏表としては読めない。それでも米国の列では二本とも固有の名前を持ち、日本の列ではラムだけが固有の名前を持たない。スコーピオンという一杯そのものは変わらないのに、ボトルの一行の読み方が法域で入れ替わる。

飲まないラム・ブランデー・洋酒の査定・買取はリンクサスへ

飲まないラム・ブランデー・洋酒の査定・買取はリンクサスへ
飲まない洋酒の査定を承っています

リンクサス酒販では、飲まないまま残っているラム、ブランデー、その他の洋酒の買取を承っている。ヴィンテージのラムや終売したボトラーズ品、長期熟成のブランデーも対象だ。

査定では、液面の位置、キャップやコルクの状態、ラベルの傷み、箱など付属品の有無を見る。裏ラベルの品目とアルコール分の表示が読める状態であれば、確認が早く進む。表示証が浮いていても剥がさず、そのままお持ちいただきたい。

保管は直射日光と高温多湿を避けるのが基本になる。詳しい流れはリンクサス酒販のご案内を参照してほしい。同じくラムを土台にするカクテルはピニャコラーダやダイキリにもある。

リンクサス酒販 鑑定チーム(買取部門で洋酒の査定を担当)

「ラムなのに品目がスピリッツと書いてあるが、中身は本物か」というご相談を年に何度か受けます。これは表示の枠組みの話で、真贋とは関係がありません。ご不安があれば、ボトルの状態と一緒に表示の写真も送っていただければ、その場でお答えします。

よくある質問

よくある質問
スコーピオンについてよく寄せられる質問
スコーピオンとはどんなカクテルですか?

ラムとブランデーを土台に、オレンジ果汁、レモン果汁、オルジェー(アーモンドの香りをつけたシロップ)を重ねる一杯です。ティキ系のカクテルに数えられ、大きな器を複数人で囲むスコーピオンボウルの形でも知られています。本記事が確認した範囲では公式と呼べる配合表が見当たらないため、分量は目安として示しています。

スコーピオンの分量はどのくらいですか?

広く流通しているレシピでは、ラム60ml、ブランデー30ml、オレンジ果汁60ml、レモン果汁45ml、オルジェー15mlが目安です。クラッシュアイスとともに手早く混ぜます。これは公的な規格ではなく目安なので、使うボトルの度数に合わせて調整してください。

ラムのボトルなのに、裏の品目欄が「スピリッツ」なのはなぜですか?

品目の欄に書ける語は、酒税法第三条が名前を与えた十七の品目に限られています。ラムはその十七に含まれていないため、サトウキビ由来の蒸留酒でエキス分が二度未満であれば、第二十号のスピリッツが入ります。糖分が加えられてエキス分が二度以上になっている場合は、第二十一号のリキュールになります。表側に RUM と書かれているのは商品名や種類を示す表示で、品目の欄とは別の場所です。

品目を表示する義務は、どの法律に書いてありますか?

酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第八十六条の五です。名宛人は酒類製造業者と酒類販売業者で、容器または包装の見やすい所に表示することを求めています。具体的な表示事項は同法施行令第八条の三第一項が各号に五つ並べ、そのうち第二号が品目です。

品目名の代わりに別の呼び方を書くことはできますか?

同法施行令第八条の三第四項が、一般に慣熟した呼称による表示を認めています。ただし対象は同法施行規則第十一条の五の表に載っている品目に限られ、上欄に並ぶのは清酒・連続式蒸留焼酎・単式蒸留焼酎・みりん・甘味果実酒・ウイスキー・ブランデー・原料用アルコール・リキュール・その他の醸造酒の十品目です。スピリッツはこの十に入っていません。

「水割りブランデー」という表示があるのはなぜですか?

同施行規則第十一条の五の表で、ブランデーのうちアルコール分が十三度未満のものについて、品目名に代えて使える呼称として定められているためです。ウイスキーにも同じ形の行があり、十三度未満なら「水割りウイスキー」となります。スコーピオンに使う40度前後のブランデーは、この行には当たりません。

輸入されたラムの品目は、誰が表示しているのですか?

同法施行令第八条の三第二項により、保税地域から引き取る酒類販売業者が表示します。表示の期限は引取りまたは搬出の時までで、あわせて住所と氏名または名称、引取先の所在地も表示することになっています。裏ラベルに輸入者の情報が並んでいるのはこのためです。

飲まないラムやブランデーは買取に出せますか?

承っています。未開栓のスピリッツ・洋酒が対象で、ヴィンテージのラムや終売したボトラーズ品、長期熟成のブランデーも扱っています。液面の位置、キャップやコルクの状態、ラベルの傷み、付属品の有無が評価に影響します。表示証が浮いていても剥がさずにお持ちください。

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