生酒とは 「製成後、一切加熱処理をしない清酒」という国の定義から読み解く

生酒とは|火入れをしない日本酒の意味と生貯蔵酒・生詰め酒との違い

生酒とは 「製成後、一切加熱処理をしない清酒」という国の定義から読み解く

生酒とは何か 国税庁の表示基準にある一文を読む

火入れの工程の違いを示した日本酒の図
加熱処理の有無で呼び名が変わる

日本酒を選んでいると、ラベルに「生」の一文字が入った瓶に出会う。この「生」がどこまで公式の言葉なのかを確かめると、売り場での迷いがかなり減る。結論から書くと、生酒という呼び名は国税庁が定めた表示の基準に一文だけ載っている。その一文が短いことこそが、この言葉の性格をよく表している。

根拠は「清酒の製法品質表示基準」(平成元年11月22日国税庁告示第8号)だ。任意記載事項をまとめた5の(5)に、次の一文がある。

生酒の用語は、製成後、一切加熱処理をしない清酒である場合に表示できるものとする。

清酒の製法品質表示基準 5の(5)

書かれているのは、加熱処理をしたかどうか、その一点だけだ。何度で何分加熱するのかは書かれていない。実際、告示の全文を検索しても「温度」は0件で、「加熱処理」の語は全体で4回しか出てこない。造り手が使う「火入れ」という言い方すら、告示にも解釈通達にも1件も現れない。国が線を引いているのは工程の有無であって、方法ではない、ということになる。

起点は「製成後」であって「搾った直後」ではない

見落とされやすいのが、条文の起点が製成後だという点だ。搾った瞬間ではなく、清酒として出来上がったあとを数えている。したがって生酒とは「一度も熱を加えていない酒」ではなく、「清酒になってから一度も加熱処理を受けていない酒」を指す。同じ告示の5の(4)にある原酒も製成後を起点にしていて、書き方がそろっている。

そもそもの根拠法は酒税法ではない

この基準は酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号)の第86条の6第1項に基づいて財務大臣が定めたものだ。同項は酒類の製法、品質その他の政令で定める事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができると書いている。実際、酒税法の本則と附則を通しで検索しても、生酒・生貯蔵・加熱処理・原酒はいずれも0件だ。酒税法が定めているのは清酒そのものの範囲で、第3条第7号は次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものと書く。度数が22度以上になれば、米と米こうじから造られていても清酒ではなくなる。

清酒そのものの定義や、日本酒という呼び方との関係は清酒と日本酒の違いで詳しく扱っている。

棚に並んだ日本酒の四合瓶
蔵ごとの銘柄が並ぶ売り場の一例

ここから先を読み進める前に、リンクサス酒販の日本酒の在庫を並べておく。各カードから商品ページへ進むと、原材料や精米歩合、アルコール分、容量、価格、在庫の状況を確認できる。この記事で扱う生酒はラベルの表示から判別するものなので、気になる銘柄はカード経由で表示欄まで確かめてほしい。

掲載しているのは日本酒のコレクションからの抜粋で、生酒に限定した一覧ではない。加熱処理をした定番酒と、生の状態で流通する酒を同じ蔵で飲み比べると、この記事で説明している違いが最も分かりやすく体験できる。

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ここでは日本酒の在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。

生酒と火入れ酒を見比べる日本酒30銘柄の比較表

種類の異なる日本酒の瓶の集合
銘柄を横に並べて見比べる

次に、日本酒30銘柄を横並びにした比較表を置く。表に出るのは画像、銘柄とスコア、定価と市場相場、特徴、リンクサス酒販の在庫、Amazon、楽天、買取の8つの欄だ。アルコール分や産地、味わいのタイプは欄として出ないので、各行の特徴欄と商品ページで補ってほしい。

表の上には「おすすめ順」「価格順」「希少度順」の3つの並べ替えと、価格帯の絞り込みがある。絞り込みは「すべて」「〜30,000円」「30,001〜50,000円」「50,001〜100,000円」「100,001円〜」「価格不明」の6区分だ。掲載30行のうち金額が入っているのは17行で、内訳は3万円までが13行、3万円台から5万円までが4行になる。残る13行は金額を持たないため「価格不明」に入る。5万円を超える2つの区分は該当が0行なので、押しても行は出てこない。

生酒と火入れ酒を見比べる日本酒30銘柄の比較表
生酒は国税庁の「清酒の製法品質表示基準」5の(5)で「製成後、一切加熱処理をしない清酒」と定義された表示だ。この表は生酒だけを集めたものではなく、加熱処理をした定番酒と並べて見比べるための日本酒30銘柄の一覧である。表に出る欄は、画像、銘柄・スコア、定価と市場相場、特徴、リンクサス酒販の在庫、Amazon、楽天、買取の8つ。アルコール分や産地、味わいのタイプは欄として描画されないので、各行の特徴欄と商品ページで確認してほしい。表の上のボタンで「おすすめ順」「価格順」「希少度順」に並べ替えられる。
価格は 2026/09/01 更新
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日本酒の多くはメーカー希望小売価格を公表していないため、定価の欄は公式が価格を公開している銘柄にだけ数値が入り、それ以外は市場相場の目安を記載している。価格帯の絞り込みは「すべて」「〜30,000円」「30,001〜50,000円」「50,001〜100,000円」「100,001円〜」「価格不明」の6区分で、掲載30行のうち金額を持つのは17行(3万円までが13行、3万円台から5万円までが4行)、残る13行は「価格不明」に入る。5万円を超える2区分は該当が0行のため、押しても行は表示されない。「最安」バッジは当店に在庫がある行へ一律に付くもので、他店との価格比較を示すものではない。在庫の状況は各商品ページの表示が最新で、この表の在庫欄は参考値として扱ってほしい。なお越後武士(さむらい)はアルコール分46%で、酒税法第3条第7号が定める清酒の上限(二十二度未満)を超えるため法令上はリキュールに区分される。日本酒の度数の上限を確かめる材料として並べている。生酒や無濾過生原酒の表記がある銘柄は、酒類総合研究所の保管ガイドが示す4℃以下での保管が前提になる。

生酒と生貯蔵酒と生詰め酒の違い

日本酒の分類を整理した図
呼び名の分かれ目を図で確認する

生酒とまぎらわしいのが、名前のよく似た生貯蔵酒と生詰め酒だ。この三つは加熱処理を「いつ」「何回」するかで整理できるが、実は国の表示基準に定義があるのは三つのうち二つだけである。

表1 加熱処理の回数と、表示基準における裏づけ
呼び名 貯蔵前の加熱処理 出荷時の加熱処理 表示基準での扱い 補足
一般の清酒 あり あり 国税庁の概要が「通常、貯蔵する前と出荷する前の2回」と説明 特定名称ごとの規定はあるが、火入れ自体の規定は無い
生貯蔵酒 なし あり 告示5の(6)に定義あり 「製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒」
生詰め酒 あり なし 告示にも通達にも語が0件 酒類総合研究所の用語集には「生詰(酒)」の項目がある
生酒 なし なし 告示5の(5)に定義あり 「製成後、一切加熱処理をしない清酒」

生貯蔵酒の条文も、生酒とまったく同じ形で書かれている。

生貯蔵酒の用語は、製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒である場合に表示できるものとする。

清酒の製法品質表示基準 5の(6)

告示が定義しているのは生酒と生貯蔵酒の二つで、生詰め酒という語は告示にも解釈通達にも1件も出てこない。だからといって使ってはいけない言葉ではない。酒類総合研究所が公開している「清酒の専門用語の標準的英語表現リスト」には生詰(酒)の項目があり、英語表現としてsake pasteurized prior to tank storage but not at bottlingが当てられている。法令用語ではないが、公的機関の用語集には載っている、という二層構造になっている。

国税庁が「誤認されるおそれ」と二度書いている

生貯蔵酒については、国税庁自身が解釈通達で名指しの注意を書いている。

「生貯蔵酒」は、「生酒」と誤認されるおそれのある表示とならないよう特に留意するものとする。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 第86条の6 表示基準5の(6)「生貯蔵酒」について

同じ通達は、複合表示の項でも重ねて注意している。令和4年7月の改正で「生原酒」、「生貯蔵原酒」などの複合表示が認められたが、その条文の後半は例えば、生貯蔵酒等において、生酒と誤認されるおそれのある表示とならないよう留意すると続く。なお告示の本文には複合表示も生原酒も0件で、この扱いは通達側に置かれている。改正は令和5年1月1日に施行された。

生詰め酒の代表格である秋の酒についてはひやおろしとはで扱っている。酒類総合研究所は英語表現リストで、ひやおろしをHiyaoroshi is sake made in winter, matured during summer, and bottled in autumn.と説明し、注記として必要な場合は、貯蔵前のみに火入れすることを加えるを添えている。

火入れをいつ何回するのか 国税庁の製造工程図で読む

酒蔵のタンクが並ぶ製造場
貯蔵タンクが並ぶ製造場の様子

「日本酒は普通2回火入れする」という説明は広く行き渡っている。ただし公的な資料を並べると、2回目をどの工程と呼ぶかが機関によって、さらには同じ機関の別の文書によってそろっていない。

表2 「2回」の説明が資料によって異なる
資料 2回目のタイミングの書き方 逐語
国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要 貯蔵する前と出荷する前 生酒、生貯蔵酒以外の清酒は、通常、製成後、貯蔵する前と出荷する前の2回加熱処理をしています。
酒類総合研究所「日本酒ラベルの用語事典」 貯蔵前と瓶詰め時(出荷前) 一般に①貯蔵前、②瓶詰め時(出荷前)の2回行う。
酒類総合研究所 Japanese Sake Essentials 瓶詰めの前と後 Sake is usually pasteurized twice before being marketed (before and after bottling).

国税庁は貯蔵する前と出荷する前と書き、酒類総合研究所の日本語の用語事典は貯蔵前と瓶詰め時(出荷前)と書く。ところが同じ研究所が英語で公開している Japanese Sake Essentials は before and after bottling、つまり瓶詰めの前と後としている。瓶に詰めてから加熱する瓶燗という方法が実在するので、どれも現場の一面を指してはいるのだが、「国の統一見解として2回目は◯◯である」と言い切れる資料は見当たらない。

国税庁の製造工程図には出口が4つある

もう少し具体的なのが、国税庁が毎年公表している「酒のしおり」に載る清酒の製造工程図だ。令和7年3月版の図は、上槽で清酒になったあとの流れを4本に分け、一番下に市販の生酒、市販の生貯蔵酒、市販の一般の清酒、市販の各種原酒という4つの出口を並べている。

この図で目を引くのは箱の置かれ方だ。(火 入)と書かれた箱は図中に1つしかなく、市販の一般の清酒の列にだけ置かれている。貯 蔵の箱は2つで、市販の生貯蔵酒の列と市販の一般の清酒の列にある。つまり市販の生酒の列には、貯蔵の箱も火入の箱も置かれていない。最後の詰め方は、生酒だけが(びん詰)で、生貯蔵酒と一般の清酒は(火入びん詰)、各種原酒は(火入びん詰、びん詰)となっている。

何のために加熱するのか

加熱処理の目的について、酒類総合研究所の「日本酒ラベルの用語事典」は次のように書いている。

清酒をしぼった後、残存する酵素や微生物の働きを止めるために加熱処理することを火入(ひいれ)といい、一般に①貯蔵前、②瓶詰め時(出荷前)の2回行う。

酒類総合研究所 日本酒ラベルの用語事典

止める対象として微生物だけでなく酵素が先に挙がっているのが重要だ。生酒の味が動きやすいのは、雑菌が入るからというより、酒のなかに残った酵素がはたらき続けるからだと考えたほうが実態に近い。同研究所は別の資料で、清酒の代表的な劣化臭である老香の主成分をジメチルトリスルフィド(DMTS)というたくあん漬け様の香り成分だと特定し、老ねにくい清酒を造る条件として生酒の低温管理早めの火入れを挙げている。

生酒だけに課される表示義務と賞味期限が書かれない理由

日本酒の裏ラベルの表示欄
裏ラベルに並ぶ表示事項の一例

生酒を語るうえで最も面白いのは、表示のルールが二重になっているところだ。酒類は一般の食品表示のルールから外されている一方で、加熱処理をしない清酒にだけ、清酒の告示が別の義務を課している。

表3 保存と期限をめぐる二重構造
項目 根拠と区分 扱い
保存の方法 10区分(第7号が酒類) 省略できる
消費期限又は賞味期限 9区分(第7号が酒類) 省略できる
保存又は飲用上の注意事項 清酒の製法品質表示基準3の(2) 製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒には表示する(義務)

食品表示基準の第3条第3項は、表示を省略できる区分を表にまとめている。この表の「保存の方法」の欄は10区分、「消費期限又は賞味期限」の欄は9区分あり、どちらも第7号が酒類だ。日本酒の瓶に賞味期限が書かれていないのは、蔵が省いているのではなく、基準がそもそも省略を認めているからである。

ところが清酒の告示は、必要記載事項を定めた3の(2)で次のように書く。

保存又は飲用上の注意事項 製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒には、保存又は飲用上の注意事項を表示する。

清酒の製法品質表示基準 3の(2)

製成後一切加熱処理をしないという文言は、生酒を定義する5の(5)とほぼ同じだ。つまり同じ状態の酒について、名乗るかどうかは任意(5の(5))なのに、注意事項を書くことは義務(3の(2))になっている。生酒と表示しない選択はできても、保存の注意を書かない選択はできない、という非対称がここにある。

「要冷蔵」は告示ではなく通達の例示

では注意事項として何と書けばよいのか。告示は具体例を挙げていない。告示の全文に「要冷蔵」は0件だ。文言が出てくるのは解釈通達のほうである。

「保存又は飲用上の注意事項」の表示とは、「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管してください。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示をいう。

酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達 表示基準3の(2)「保存又は飲用上の注意事項」について

が付いているとおり、この三つは例示であって、どれかを書かなければならないという決まりではない。あわせて読みたいのが名宛人で、消費者及び流通業者と書かれている。買う人だけでなく、途中で運び保管する事業者にも向けた表示だという位置づけになる。

告示5に並ぶ10項目のなかの生酒

生酒と生貯蔵酒は、告示の5「任意記載事項の表示」に置かれた10項目のうちの2つにすぎない。同じ並びに原酒も生一本も樽酒も入っている。全体像を見ておくと、生酒の位置づけがつかみやすい。

表4 清酒の製法品質表示基準 5「任意記載事項の表示」の10項目
用語 表示できる条件
(1) 原料米の品種名 使用割合が50%を超える場合。使用割合を併せて表示する
(2) 清酒の産地名 その清酒の全部がその産地で醸造(加水調整を含む)されたものである場合
(3) 貯蔵年数 1年未満の端数を切り捨てた年数。混和したものは最も短い年数で表示する
(4) 原酒 製成後、加水調整(アルコール分1%未満の範囲内を除く)をしない清酒
(5) 生酒 製成後、一切加熱処理をしない清酒
(6) 生貯蔵酒 製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒
(7) 生一本 単一の製造場のみで醸造した純米酒
(8) 樽酒 木製の樽で貯蔵し、木香の付いた清酒
(9) 「極上」「優良」「高級」等 同一の種別又は銘柄が複数ある場合で、香味及び色沢が特に良好であることを客観的に説明できる清酒
(10) 製造時期 販売する目的をもって容器に充填し密封した時期。令和5年1月1日に必要記載事項から移された

紛らわしいのが(7)の生一本だ。「生」の字が入っているが加熱処理とは無関係で、単一の製造場のみで醸造した純米酒であることを示す用語である。通達はさらに、2以上の製造場を持つ製造者がそれぞれの製造場で醸造した純米酒を混和したものには生一本の表示はできない、と念を押している。純米酒そのものの要件は純米酒とはにまとめている。

(10)の製造時期は、令和4年7月の改正で必要記載事項から任意記載事項へ移された項目だ。同じ改正では、受賞の記述に関する任意記載事項の規定が廃止され、品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語が表示禁止事項に加えられている。

生酒の保存方法 酒類総合研究所が示す4℃以下という線

よく冷やした日本酒とグラス
冷やして供された一杯の様子

では実際に何度で置けばよいのか。告示にも通達にも温度は書かれていないので、目安は別のところから取るしかない。最も引用しやすいのが、独立行政法人酒類総合研究所が流通業者向けに出している保管ガイドだ。

表5 酒類総合研究所が示す保管温度の目安
温度帯 対象 説明
4℃以下(冷蔵庫) 生酒、発泡性清酒、吟醸酒 特に繊細であり、ワインよりも低温で保管する必要がある
5〜15℃(涼しい場所) 純米酒、長期貯蔵酒、本醸造酒、普通酒など 製造者が推奨する温度が不明な場合はワインセラー程度が目安
−5℃ 日本酒専用の冷蔵保管庫 アルコール分が高いため−5℃でも凍らない。冷凍庫(−18℃以下)は凍結し容器が破損するおそれがある

注目したいのは、生酒が発泡性清酒や吟醸酒と同じ枠に入れられ、特に繊細であり、ワインよりも低温(4℃以下)で保管する必要がありますとされている点だ。一般に言われる「5度前後」より一段低い線が引かれている。同じガイドはなお、日本酒の保管は縦置きが基本です。とも書いている。

温度・光・酸素の3要素

同ガイドは日本酒にダメージを与える要素を温度、光、酸素の3つに整理している。光については、波長400nm以下の紫外線領域の透過率が高いと瓶の中の酒にダメージを与えるとし、茶色や緑の瓶は光を通しにくいと説明する。紫外線が生む劣化臭は日光臭と呼ばれ、ガイドは玉ねぎのような不快な異臭を発生させ、アミノ酸を分解して苦味を増加させると書いている。紫外線は日光だけでなく蛍光灯の光にも含まれるため、店頭の照明も無関係ではない。

酸素については、日本酒はワインと比べれば酸素に強いとしたうえで、開栓後はしっかりと栓を閉め、遅くても1か月以内には消費しましょう。と勧めている。これは日本酒全般についての目安であって、生酒に限った日数ではない点に注意したい。生酒の開栓後の日数を数字で示した公的資料は、今回の調査では見つかっていない。

冷凍庫に入れてはいけない理由

低ければ低いほどよい、という話でもない。ガイドは冷やしすぎの側にも注意を向けている。

日本では、−5℃で保存できる日本酒専用冷蔵保管庫もあります。日本酒のアルコール分はワインやビールなどと比べて高いことから、−5℃であっても凍ることはありません。しかしながら、冷凍庫(−18℃以下)で保管すると、凍結し容器が破損してしまう可能性が高いのでご留意ください。

酒類総合研究所 あなたのお店の日本酒が「おいしい!」といわれるために

専用の保管庫が想定する−5℃と、家庭用冷凍庫の−18℃以下では意味がまったく違う。冷凍庫での保管が避けられるのは、品質というより容器が割れるおそれのためだ。

無濾過生原酒の三つの言葉を分解する

酒器に注がれる日本酒と酒米
原料の米と注がれる酒

生酒を探していると「無濾過生原酒」という表示によく出会う。これは3つの言葉が重なったもので、一つずつ分解すると、そのうち表示基準に定義があるのは2つだけだと分かる。

生は加熱処理をしないこと、原酒は加水調整をしないことを指し、どちらも告示の5に定義がある。原酒の条文は製成後、加水調整(アルコール分1%未満の範囲内の加水調整を除く。)をしない清酒で、仕込みごとの微調整までは禁じていない点が細かい。これに対して無濾過は、告示にも解釈通達にも0件だ。酒類総合研究所の英語表現リストにも滓引きや滓下げ、炭素濾過の項目はあるが、無濾過という見出しは無い。

原酒の度数はどのくらいか

原酒の度数について、酒類総合研究所の英語表現リストは割水の説明のなかで数字を挙げている。

Undiluted sake contains up to 20% of alcohol and is usually diluted to 14-16% alcohol before bottling.

酒類総合研究所 清酒の専門用語の標準的英語表現リスト Ver.7 割水の欄

加水前の酒は最大で20%程度、瓶詰め前に通常14〜16%へ薄められる、という説明だ。原酒はこの割水をしないので、その分だけ度数が高くなる。ただしこれは一般的な水準の話で、個々の銘柄の度数はラベルのアルコール分表示で確認するのが確実だ。日本酒の度数の幅は日本酒のアルコール度数で比較している。

用語事典のほうは、原酒をしぼってから水を加えていない酒。加水していないのでアルコール分が高く味が濃いものが多い。と説明している。なお生と原酒を重ねた「生原酒」という表記が公に認められたのは令和5年1月1日からで、それ以前は複合表示の扱いが通達に明記されていなかった。

生酒の味わいと飲み方

グラスに注がれる日本酒
グラスに注ぐと香りが立ちやすい

加熱処理をしないと味がどう変わるのか。酒類総合研究所の保管ガイドは、生酒を加熱処理※を行わず造られます。香味のフレッシュ感を楽しむことができます。と一行で説明している。用語事典のほうはもう少し踏み込んで、火入をしない酒は加熱に伴う成分変化がなく、フレッシュな香味が特長で、冷やして飲むのに適しているタイプだと書く。

言い換えると、生酒の個性は「何かを足した」結果ではなく「加熱による変化を経ていない」結果だということになる。この整理は飲み方にもそのまま効いてくる。ガイドが生酒を吟醸酒と同じ4℃以下の枠に入れているのは、どちらも繊細な香りを持ち味にしているからだ。

冷やして飲む理由は香りの側にある

冷やすのは味を締めるためというより、香りを保つためだと考えると筋が通る。ガイドは温度の項の見出しに香りを変化させると置き、日本酒の香りは非常に繊細で、失われやすく、変化しやすいと説明している。吟醸香と呼ばれるフルーティな香りは高温にさらされることで減少・劣化してしまう、とも書いている。

燗について言えば、生酒が燗に向かないという規定はどこにもない。実際、蔵によっては生のまま温めることを想定した製品も出している。ただし一般論として、香りを持ち味にする酒を温めれば持ち味の出方は変わる。温度帯ごとの呼び名や燗の付け方は熱燗の作り方で扱っている。

劣化の匂いはどんなものか

生酒が持ち味を失うと、どんな匂いになるのか。酒類総合研究所は英語表現リストで老香をsimilar smell to rotten cabbage, gas, or takuan, a Japanese pickled vegetables, and different from matured aromaと説明し、意図して熟成させた酒の香りとは別のものだと明記している。同リストには生老香という項目もあり、加熱処理をしていない酒に固有の劣化臭として立てられている。「古い匂い」を一括りにせず、熟成香と劣化臭を分けて言う姿勢がここに表れている。

生酒の選び方とラベルの読み方

切子グラスと日本酒の瓶の並び
器と瓶を合わせて選ぶ楽しみ

売り場で生酒を選ぶときの手順を、表示のルールから逆算して組み立てておく。

見る順番を決めておく

まず裏ラベルの表示欄を見る。生酒と書かれていれば、告示の5の(5)に沿った表示なので、製成後に一度も加熱処理をしていない酒だと判断してよい。次に保存又は飲用上の注意事項の記載を探す。要冷蔵や冷蔵庫に保管してくださいといった文言があれば、3の(2)の義務に沿った表示だ。生貯蔵酒と書かれている場合は出荷の際に一度加熱されている。ここを取り違えないことが最大の分かれ目になる。

特定名称と併記されているときは、その特定名称の要件も同時に満たしている。純米大吟醸 生酒とあれば、米と米こうじだけを原料に精米歩合50%以下の白米を使い、こうじ米の使用割合が15%以上で、なおかつ加熱処理をしていない酒だということになる。精米歩合の読み方は精米歩合とはで整理している。

買ったあとの扱いまで含めて選ぶ

生酒は買った時点で終わりではなく、持ち帰りと保管まで含めて選ぶ酒だ。4℃以下という線を家庭で守るなら、冷蔵庫の奥や野菜室ではなく、温度が安定していて扉の開閉の影響を受けにくい場所を確保しておきたい。瓶は縦置きで、光が当たらないようにする。箱や紙で包むのは、紫外線を避けるという意味で理にかなっている。

酒母の造りから選びたい向きには生酛とはもあわせて読んでほしい。生酛の「生」は加熱処理ではなく酒母の造り方を指す言葉で、生酒の「生」とは別の系統にある。同じ一文字でも指しているものが違うのは、生一本の場合と同じだ。

飲まない日本酒の査定・買取はリンクサスへ

日本酒の査定を受け付ける様子
査定の受付風景の一例

贈答で受け取ったまま飲む機会がない日本酒や、保管が難しくなった生酒がある場合は、リンクサス酒販で査定を承っている。生酒は状態が価格に直結するため、蔵出しからの時間と保管温度を伺ったうえで評価する。

日本酒のほか、ウイスキーやブランデー、焼酎、洋酒も対象になる。査定の流れや対象銘柄は日本酒の買取ページウイスキーの買取ページ焼酎の買取ページ洋酒の買取ページから確認できる。当店の品揃えはリンクサス酒販のオンラインストアにまとめている。当日14:00までのご注文で当日発送に対応している。

よくある質問

カウンターに並ぶ日本酒の瓶
カウンターに並ぶ一升瓶
生酒の定義はどこに書かれていますか。

国税庁の「清酒の製法品質表示基準」(平成元年11月22日国税庁告示第8号)の5の(5)です。条文は「生酒の用語は、製成後、一切加熱処理をしない清酒である場合に表示できるものとする。」の一文だけで、温度も時間も書かれていません。根拠法は酒税法ではなく、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の第86条の6第1項です。酒税法の本文を「生酒」で検索しても1件も出てきません。

生酒と生貯蔵酒はどう違いますか。

加熱処理をする回数と、それをいつ行うかが違います。告示は生酒を「製成後、一切加熱処理をしない清酒」、生貯蔵酒を「製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、製造場から移出する際に加熱処理した清酒」と書き分けています。生貯蔵酒は出荷の際に一度加熱されている点が生酒と決定的に違います。国税庁は解釈通達で「生貯蔵酒」は「生酒」と誤認されるおそれのある表示とならないよう特に留意するものとする、とわざわざ注意しています。

生詰め酒は生酒の仲間ですか。

貯蔵の前に一度加熱処理をしているので、一度も加熱しない生酒とは別のものです。注意したいのは、生詰め酒という言葉が国税庁の告示にも解釈通達にも1件も出てこないことです。定義があるのは生酒と生貯蔵酒の二つだけで、生詰めは業界で使われてきた呼び方にあたります。ただし酒類総合研究所の「清酒の専門用語の標準的英語表現リスト」には生詰(酒)の項目があり、貯蔵前だけ加熱する酒だと説明されています。

生酒に賞味期限が書かれていないのはなぜですか。

食品表示基準の第3条第3項が、消費期限又は賞味期限を省略できる区分の第7号に酒類を挙げているからです。同じ表では保存の方法も第7号が酒類で、こちらも省略できます。そのかわり清酒の製法品質表示基準の3の(2)が、製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒には保存又は飲用上の注意事項を表示すると定めています。一般の食品ルールからは外れているのに、火入れをしない清酒にだけ別の表示義務がかかる形です。

「要冷蔵」という表示は法律で決まっているのですか。

「要冷蔵」という語そのものは告示には1件もありません。出てくるのは解釈通達で、保存又は飲用上の注意事項の表示とは「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管してください。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示をいう、と例示されています。つまり文言は例示であって、この三つのどれかを書かなければならないという決まりではありません。

生酒は何度で保管すればよいですか。

酒類総合研究所が流通業者向けに出している保管ガイドは、生酒、発泡性清酒、吟醸酒について「ワインよりも低温(4℃以下)で保管する必要があります」と書いています。それ以外の日本酒は5〜15℃が目安です。同じガイドは日本酒の保管は縦置きが基本だとも述べています。ガイド自身が一般的な取扱いを示したもので全てに当てはまるわけではないと断っているので、製造者が推奨する温度があればそちらが優先です。

生酒は冷凍庫に入れてもよいですか。

避けたほうが無難です。酒類総合研究所の保管ガイドは、日本では−5℃で保存できる日本酒専用冷蔵保管庫もあり、アルコール分が高いので−5℃でも凍ることはないとしたうえで、冷凍庫(−18℃以下)で保管すると凍結し容器が破損してしまう可能性が高い、と注意しています。低温そのものが悪いのではなく、家庭用冷凍庫の温度帯が低すぎるという話です。

無濾過生原酒の「無濾過」にも定義はありますか。

生と原酒には告示の定義がありますが、無濾過にはありません。告示5の(5)が生酒、5の(4)が原酒を定めている一方で、無濾過という語は告示にも解釈通達にも0件です。酒類総合研究所の英語表現リストにも滓引きや炭素濾過はあっても無濾過の項目はありません。三つの言葉のうち二つだけが表示基準に裏づけを持ち、残りの一つは造り手の説明表示だと理解しておくと迷いません。

原酒のアルコール分はどのくらいですか。

酒類総合研究所の英語表現リストは割水の説明として、加水前の酒は最大で20%程度のアルコール分を含み、瓶詰め前に通常14〜16%へ薄められると書いています。原酒はこの割水をしないので、その分だけ度数が高くなります。ただし個々の銘柄の度数は仕込みごとに違うため、実際の数字はラベルのアルコール分表示で確認してください。

生酒はどれくらいで飲みきればよいですか。

公的な資料に生酒の日数は書かれていません。酒類総合研究所の用語事典は、生酒はビールと同じようになるべく新しいものが良いとしたうえで、加熱処理をした製品ではよほど保管条件が悪くない限り2〜3ヶ月で品質が劣化するようなことはありません、と火入れ酒の側の目安だけを示しています。同研究所の保管ガイドにある「遅くても1か月以内には消費しましょう」は日本酒全般の開栓後の話で、生酒に限った数字ではありません。

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