ブランデーとは|酒税法とEU規則で読む定義と表示
ブランデーの説明は、たいてい「果実を蒸留して樽で寝かせた酒」という一文から始まる。だが日本の法律が「ブランデー」と呼んでいるものの範囲は、その一文とは重ならない。品目を定める第3条第16号には、樽という言葉も、熟成という言葉も、製品の最低度数も出てこないからだ。
この記事は、銘柄の紹介ではなく「名前を決めている規定」を読む。日本の酒税法第3条第16号、国税庁の解釈通達、そしてEUの規則2019/787。三つを並べると、同じ「ブランデー」という語が、国境をまたいだ瞬間に別の輪郭を持つことが見えてくる。銘柄ごとの相場や等級の値付けはXO・等級の相場をまとめた記事に、産地の話はコニャックの記事とカルヴァドスの記事に譲る。
「ブランデー」と呼べるものを日本の法律はどう決めているか

酒税法は第3条で酒類の用語を定義している。第7号の清酒から第23号の雑酒までが「品目」で、ブランデーはそのうちの第16号だ。第15号がウイスキー、第17号が原料用アルコールなので、穀物の蒸留酒と果実の蒸留酒が隣り合って並んでいることになる。
第16号の柱書はこう書く。次に掲げる酒類(イに掲げるものについては、第九号ロからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)をいう。
第16号の中身は、造り方を定めるイと、それに何かを加えたものを受け止めるロの二つだけで、除外がかかるのはイのほうだけだ。
そのイの全文が、この記事のいちばん短い出発点になる。果実若しくは果実及び水を原料として発酵させたアルコール含有物又は果実酒(果実酒かすを含む。)を蒸留したもの(当該アルコール含有物又は果実酒の蒸留の際の留出時のアルコール分が九十五度未満のものに限る。)
出典:酒税法 第3条第16号
読んでほしいのは、書かれていないことのほうだ。原料は「果実」で足り、ぶどうに限られていない。蒸留の際の留出時のアルコール分が九十五度未満、という上限が一つあるだけで、下限は無い。そして樽も、木も、期間も、この号には一文字も現れない。
加えるほうの号(ロ)は、こう書かれている。イに掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの(イに掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の百分の十以上のものに限る。)
アルコールやスピリッツを足してよく、足した後の酒類のアルコール分の総量に対してイの酒類が百分の十以上を占めていれば、それはまだブランデーだ。
| 観点 | 第16号の書きぶり |
|---|---|
| 原料 | 果実、又は果実及び水。果実酒(果実酒かすを含む。)でもよい。ぶどうに限る文言は無い |
| 蒸留 | 留出時のアルコール分が九十五度未満であること(上限のみ) |
| 熟成 | 規定なし。樽・木・期間のいずれも第16号に現れない |
| 製品の度数 | 下限・上限とも規定なし |
| 添加 | ロでアルコール・スピリッツ・香味料・色素・水を許容(加えた後の酒類のアルコール分の総量に対しイの酒類が百分の十以上であること) |
| 除外 | イについてのみ、第9号ロからニまで(しらかばの炭でこしたもの、含糖質物を原料とし留出時のアルコール分が九十五度未満のもの、蒸留の際にほかの物品の成分を浸出させたもの)に当たるものを除く |
原料と造り方|条文が受け止める果実の範囲

では条文の言う「果実」はどこまでを指すのか。国税庁の解釈通達は、ブランデーの定義について果実の取扱いを焼酎の定義の定めに準用させている。その焼酎側の定めがこう書く。法第3条第9号イに規定する「果実」には、果実の搾りかすを含むものであり、また、果実を乾燥させたものを粉末状にしたものは、乾燥させた果実として取り扱う。
搾りかすが果実に含まれる、という一句は小さく見えて射程が広い。ワインを搾ったあとの果皮と種を発酵させて蒸留したもの、すなわちイタリアでグラッパと呼ばれ、フランスでマールと呼ばれてきた酒が、日本の条文の上ではブランデーの側に入ってくるからだ。
果実酒かすを水に浸したものまで含まれる
通達はさらに一歩進める。法第3条第16号イに規定する「果実酒かす」には、果実酒かすを水に浸して、そのアルコール分を浸出させたものを含むことに取り扱う。
搾りかすそのものだけでなく、それを水に浸してアルコール分を取り出したものまで原料として認めている。製造の実務では、かすに残ったアルコールを回収する工程がこれに当たる。原料の話をもう少し細かく見たい場合は原料を掘り下げた記事も参照してほしい。
色を足せる範囲は通達が絞っている
条文のロは「色素」と書くだけだが、通達はその中身を限定する。法第3条第16号ロに規定する色素は、当分の間カラメルに限る。
当分の間カラメルに限る、という言い回しは、後で見るEUの規定とほとんど同じ結論に行き着いている。色を整えるためのカラメルだけが通り、それ以外の着色は想定されていない。
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ここから下は、条文の話をいったん置いて、実際に手に取れるものを並べる。次の比較表が銘柄の見取り図であるのに対して、このすぐ下の枠は在庫そのものだ。
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ここではブランデーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
ブランデー代表銘柄30種を比較

比較表には、コニャックを中心に、アルマニャック、りんごの蒸留酒、国産ブランデー、フルーツブランデー、そしてグラッパやピスコまで三十本が並んでいる。ここでは表そのものを先に置き、記事の終盤で、この三十本を今回の二つの物差しにかけ直す。
表の並べ替えは三つのボタン、絞り込みは六つのボタンで動く。ただし後で数えるとおり、絞り込みが読む価格の情報が入っている行は限られている。
| 画像 | 銘柄・スコア | 定価 市場相場 |
特徴 | リンクサス酒販 本命 |
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マーテル ナポレオン スペシャルリザーブ 700ml 40% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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バロン オタール VSOP 700ml 40% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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ポールジロー トラディション グランドシャンパーニュ 700ml ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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グランドシャンパーニュの家族経営生産者による単一畑コニャック。 |
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17位
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ハーディ ノース ド ディアマン 750ml 40% ★★★★★5/ コニャック専門家スコア |
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リムーザン樽60年熟成のグランドシャンパーニュ原酒。ダイヤモンド婚の名を冠す。 |
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| 18位 | アルマニャック(バ・アルマニャック等)700ml 40-48% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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コニャックと並ぶフランスのブランデー。単式蒸留の力強く素朴な個性。 |
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19位
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ニッカ シングルアップルブランデー 弘前 12年 500ml 40% ★★★★★5/ コニャック専門家スコア |
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日本一のりんご産地・青森で蒸留した国産アップルブランデー。 |
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| 20位 | カルヴァドス(りんごのブランデー)700ml 40% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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フランス・ノルマンディーのりんごから造る琥珀色のブランデー。 |
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21位
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ニッカ 樽出しブランデー原酒 500ml 55.7% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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加水しない樽出し55.7%の国産原酒。熟成の真髄が凝縮。 |
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創業者の蒸留哲学を受け継ぐ純国産ブランデーの最高峰XO。 |
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23位
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| 24位 | キルシュ(さくらんぼのブランデー)40%前後 ★★★☆☆3/ コニャック専門家スコア |
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さくらんぼから造る無色のフルーツブランデー。製菓でもおなじみ。 |
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| 25位 | フランボワーズ(木イチゴのブランデー)40%前後 ★★★☆☆3/ コニャック専門家スコア |
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木イチゴの華やかな香りを蒸留した無色のオー・ド・ヴィー。 |
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| 26位 | グラッパ(ブドウの搾りかすの蒸留酒)38-50% ★★★★☆4/ コニャック専門家スコア |
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ワインの搾りかすから造るイタリアの蒸留酒。広義のブランデーの仲間。 |
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| 27位 | ピスコ(ブドウのブランデー)40%前後 ★★★☆☆3/ コニャック専門家スコア |
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ペルー・チリのブドウから造る蒸留酒。ピスコサワーで有名。 |
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ブランデーにマスカットワインとハーブを配したギリシャの銘酒。 |
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この表の定価市場相場の欄は三十行とも空欄です。定価の登録がないためで、価格が不明という意味ではありません。リンクサスの列は、価格つきのリンクが十四行、在庫切れの表示が八行、コレクションへの案内が八行です。Amazonの列は三十行とも商品名での検索リンク、楽天の列も三十行ともリンクですが、うち二十四行は商品名検索へのフォールバックです。絞り込みが読む価格の値は二十四行で空のため、金額の帯で絞ると残る行はごく少なくなります。表の上部に出る日付は、ページを表示した日付が入る仕様で、価格を取得した時点ではありません。在庫と価格は変動するので、最新の情報は各リンク先で確認してください。
九十五度の線と「留出時」という言葉

第16号イが唯一置いている数値が「留出時のアルコール分が九十五度未満」だ。この線をまたぐと品目が変わる。通達は焼酎から除かれる酒類の一覧の中で、こう整理している。
果実若しくは果実及び水を原料として発酵させたものを蒸留したもの又は果実酒(果実酒かすを含む。)を蒸留したもので、留出時のアルコール分が、95度未満のものはブランデー、95度以上のものはスピリッツ
九十五度未満ならブランデー、九十五度以上ならスピリッツ。果実を原料にしていても、蒸留を強く効かせて香りを削り落としてしまえば、名前はブランデーではなくなる。同じ構造はウイスキーの側にもあって、第15号イも発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が九十五度未満のものに限る。)
と、まったく同じ九十五度の線を引いている。
「留出時」は、蒸留機から出てくる瞬間のことではない
ところがこの「留出時のアルコール分」という言葉は、字面どおりに読むと外れる。通達はブランデーについてもこの取扱いを準用させたうえで、焼酎側でこう定義している。
法第3条第9号ハに規定する「留出時のアルコール分」とは、蒸留機から留出しつつあるときのアルコール分をいうものではなく、酒類が製成されたときのその容器に容在する酒類のアルコール分をいうことに取り扱う。
蒸留機から留出しつつあるときの度数ではなく、酒類が製成されたときにその容器に入っている度数を指す、と明言している。条文の言葉と実際に測る対象がずれているわけで、ここを取り違えると、蒸留の途中でハートを取る度数の話と、品目を分ける法律上の数値とを混同することになる。同じ通達の系統は焼酎の側でも効いていて、木製の容器や貯蔵期間の扱いは焼酎の記事で扱った。
EUの規則が課す六つの条件と、登録簿での置き場所

ここまでが日本側だ。EUの規則2019/787は、同じ「ブランデー」を附属書Iの区分5「Brandy or Weinbrand」として定義している。区分5は(a)から(f)までの六つの項からなり、日本の条文が書かなかったことを、ほとんど全部書く。うち(a)はさらに四つの要件に分かれるが、ここでは原料と熟成の二つを見る(残りは揮発性成分と メタノールの上限で、いずれも分析値の話だ)。
まず原料。it is produced from wine spirit to which wine distillate may be added, provided that that wine distillate has been distilled at less than 94,8 % vol. and does not exceed a maximum of 50 % of the alcoholic content of the finished product
出発点はワインスピリッツで、足してよいワイン蒸留物にも94.8%未満という上限と、完成品のアルコール分の五割までという枠がかかる。
そのワインスピリッツ自体も、区分4でit is produced exclusively by the distillation at less than 86 % vol. of wine, wine fortified for distillation or wine distillate
と定義され、The minimum alcoholic strength by volume of wine spirit shall be 37,5 %.
と下限が置かれている。
樽と期間が条文に書かれている
日本の条文に一文字も無かった熟成が、区分5では要件になる。少なくともone year in oak receptacles with a capacity of at least 1 000 litres each
か、six months in oak casks with a capacity of less than 1 000 litres each
のいずれかを満たさなければならない。オークであること、容量が千リットルを境に期間が変わることまで書き込まれている。
残る条件も具体的だ。The minimum alcoholic strength by volume of brandy or Weinbrand shall be 36 %.
No addition of alcohol, diluted or not, shall take place.
Brandy or Weinbrand shall not be flavoured. This shall not preclude traditional production methods.
Brandy or Weinbrand may only contain added caramel as a means of adjusting the colour.
そして甘味については、the final product may not contain more than 35 grams of sweetening products per litre, expressed as invert sugar
という上限がある。
出典:規則(EU) 2019/787 附属書I 区分4・区分5
| 観点 | 酒税法 第3条第16号 | 規則(EU) 2019/787 附属書I 区分5 |
|---|---|---|
| 原料 | 果実(ぶどうに限らない)、果実酒、果実酒かす | ワインスピリッツ。加えられるワイン蒸留物は94.8%未満かつ完成品のアルコール分の50%まで |
| 蒸留の度数 | 留出時に九十五度未満(上限のみ) | 区分4のワインスピリッツが86%未満 |
| 熟成 | 規定なし | オークで1年(1,000L以上)または6か月(1,000L未満) |
| 製品の最低度数 | 規定なし | 36% |
| アルコールの添加 | ロで許容(イの酒類が全体の百分の十以上) | 禁止 |
| 香味付け | ロで香味料を許容 | 禁止(伝統的な製法を妨げない) |
| 着色 | 通達で当分の間カラメルに限る | カラメルのみ |
| 加糖 | ロが加えてよい物品を限定列挙しており、糖類は入っていない(加えれば第16号から外れる) | 転化糖換算で1リットルあたり35グラムまで |
コニャックとアルマニャックは、EUの登録簿では区分5にいない
ここで一つ、日本の売り場の常識とねじれる事実がある。EUは保護された名称を区分ごとに並べた登録簿を持っていて、その2019年5月時点の姿を見ると、コニャックもアルマニャックも、置かれているのは区分5「Brandy/Weinbrand」ではなく、その一つ手前の区分4「Wine spirit」だ。
区分5に登録されている地理的表示は六件しかない。ブランデー・デ・ヘレス(スペイン)、ブランデー・デル・ペネデス(スペイン)、ブランデー・イタリアーノ(イタリア)、ドイチャー・ワインブラント(ドイツ)、ヴァッハウアー・ワインブラント(オーストリア)、プフェルツァー・ワインブラント(ドイツ)。フランスの名前は一つも無い。
出典:規則(EC) 110/2008 附属書III(2019年5月24日時点の登録簿)
この登録簿を定めていた規則(EC)110/2008は2019/787の第46条で廃止され、保護は2019/787へ引き継がれている。区分の割り振り自体はそのまま残った。日本語で「ブランデーの代表格はコニャック」と言うとき、その「ブランデー」は品目の総称としてのブランデーであって、EUの区分5のことではない。呼称ごとの相場や等級の実勢はXO・等級の相場をまとめた記事にまとめてある。
VS・VSOP・XOという表示は誰が決めているのか

VS、VSOP、XO、ナポレオン。ブランデーの棚でいちばん目に入る文字列だが、これを決めているのは日本の法令ではない。酒税法にも通達にも、熟成年数の表示についての定めは無い。では業界の自主ルールはどうか。
景品表示法にもとづく公正競争規約の一覧を見ると、答えははっきりする。消費者庁の説明では、公正競争規約は、令和5年3月22日現在、103規約が設定されており、このうち、表示関係は66規約
(食品関係36規約、酒類関係7規約、その他23規約)、景品関係は37規約と整理されている。
| 区分 | 酒類の7規約 |
|---|---|
| 表示関係 | ビール/輸入ビール/ウイスキー/輸入ウイスキー/泡盛/酒類小売業/単式蒸留焼酎 |
| 景品関係 | 合成清酒及び連続式蒸留しょうちゅうの製造業/清酒製造業/果実酒製造業/ビール製造業/洋酒製造業/酒類輸入販売業/単式蒸留しようちゆう製造業 |
出典:消費者庁 公正競争規約が設定されている業種/全国公正取引協議会連合会 一覧
表示関係の七つにブランデーは無い。洋酒製造業の名前は景品関係の側にあるが、こちらは景品類の提供を扱う規約で、ラベルの書き方を決めるものではない。つまり日本には、ブランデーの熟成年数表示を縛る規約が存在しない。
ウイスキーの側には、その規約がある
対照的なのがウイスキーだ。日本洋酒酒造組合の規約は、対象をこう限定する。この規約で「ウイスキー」とは、酒税法(昭和28年法律第6号)第2条に規定する酒類のうち、同法第3条第15号に規定する酒類(輸入ウイスキーを除く。)をいう。
酒税法第3条第15号を名指ししているので、第16号のブランデーは初めから射程の外にある。
その規約の第4条第1項が、年数表示の中身を決めている。事業者は、熟成年数の異なるものをブレンドしたウイスキーに、熟成年数を表示する場合においては、ブレンドしたもののうち最も熟成年数の若いものの熟成年数をもって、当該ウイスキーの熟成年数として表示するものとする。
混ぜたなら、いちばん若いものに合わせて書く。これはウイスキーの年数表示の骨格そのもので、規約はさらに第6条第2号で熟成年数について誤認されるおそれがある表示
を禁じ、施行規則が具体例として一部のものの熟成年数をもって、全体の熟成年数であるかのように誤認されるおそれがある表示。
と一般消費者に、熟成年数であるかのように誤認されるような数字の表示。ただし、商品名、発売年号、自社格付け等であることが、一般消費者に通常認知し得るものについては、「誤認されるような数字の表示」に該当しない。
を挙げている。
注記も付いていて、上記規定は、熟成年数の表示を妨げるものではない。
とある。禁じているのは誤認であって、年数を書くこと自体ではない。
自社格付けという抜け道は、ウイスキーの側でも明示されている
いま引いた施行規則のただし書きに「自社格付け等」という言葉が出てくる。運用上の取扱いはさらに踏み込み、「extra」、「deluxe」、「excellent」、「super」、「reserve」、「excellence」、「select」については、製品の格付け用語として定着し、国内慣行となっているものであるので、各社とも使用できる。
としている。
ただし、このただし書きが受け止めているのは施行規則ロの「誤認されるような数字の表示」であって、数字を含まないVSOPやXOはそこには当たらない。運用上の取扱いが名指しで各社に許している七語にも、VSOP・XO・ナポレオンは入っていない。つまりウイスキーの側でさえ、これらの文字列は規約が正面から扱っていない表記であり、ブランデーの側にはその規約自体が無い。日本の制度が数値を保証している表示ではない、という結論はどちらから見ても変わらない。
もっとも、規約が無いことと何の規制も及ばないことは別だ。景品表示法の優良誤認表示の禁止は酒類の別なくかかるので、実態と懸け離れた年数表記が許されているわけではない。無いのは、年数の数え方をあらかじめ揃えておく業界の物差しのほうだ。
出典:日本洋酒酒造組合 ウイスキーの表示に関する公正競争規約・施行規則・運用上の取扱い
EUは同じ内容を、蒸留酒全体の法令として課す
同じ論点をEUは規則の本文で扱う。第13条第6項がA maturation period or age may only be specified in the description, presentation or labelling of a spirit drink where it refers to the youngest alcoholic component of the spirit drink
と定め、さらに熟成の全工程が加盟国の税務当局の監督、またはそれと同等の保証を与える監督のもとで行われたことを条件にしている。
日本の「いちばん若いものに合わせる」がウイスキーだけを対象にした業界の自主ルールであるのに対し、EUの同じ考え方は蒸留酒全体にかかる法令で、公的な監督まで求める。コニャックやアルマニャックの年数表記がEU側の枠組みで運用されている以上、日本の棚に並ぶVSOPやXOの実質は、輸出国側の規律に支えられている。
ウイスキーとの混和と、ブランデーに似せたスピリッツ

酒税法は、酒類に水以外の物品を混ぜて別の酒類になった場合を「新たに酒類を製造したもの」とみなす。第43条第1項の原則だ。第一項ただし書が並べる例外は六つで、そのうちの一つがブランデーに関わる。ウイスキーとブランデーとの混和をしたとき。
ウイスキーとブランデーを混ぜても新たな製造にはならない、と法律が名指ししている。みなし製造の除外そのものに条件は付かないが、酒類製造者には別の条から承認義務がかかる。第50条第1項第5号が施行令に委ね、施行令第56条第2項第3号が施行規則に送り、その施行規則がウイスキーとブランデーとの混和をしようとする場合
を挙げている。みなし製造の仕組みそのものはみなし製造を扱った記事で詳しく扱った。
「ブランデーに似せたスピリッツ」という規定がある
もう一つ、条文を読んでいて意外に思うのがこの一項だ。香味、色沢その他の性状がウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツを当該酒類の製造場から移出しようとするとき(酒類製造者が、当該スピリッツについて専らウイスキー又はブランデーに用いるものと同様の表示、広告その他これらに類する行為をしている場合に限るものとし、法第五十条第一項第四号又は前号に該当する場合を除く。)。
香味も色も性状もウイスキーやブランデーに似ていて、しかも作り手がそれをブランデーと同じように表示・広告しているスピリッツ。これを製造場から出すときは承認が要る、と政令が名指ししている。品目としてはスピリッツでも、売り方がブランデーに寄っていれば行政の網にかかる、という発想だ。
百分の十という線
第16号ロの百分の十について、通達はブランデー原酒という語を導入して計算の仕方を示している。法第3条第16号ロに規定するブランデーに、アルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えた場合において、当該ブランデー及び加えたスピリッツに含まれる同号イに規定するブランデー(以下「ブランデー原酒」という。)のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10以上のものは、同号ロに規定するブランデーに該当する。
加えたスピリッツの中に含まれるブランデー原酒も分子に数えてよい、というのが実務上の要点になる。逆に言えば、この線を割った時点で品目はブランデーではなくなる。
| 場面 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| ウイスキーとブランデーの混和 | 法第43条第1項第4号(みなし製造の除外)/法第50条第1項第5号・令第56条第2項第3号・規則第16条第2号(承認) | 混ぜても新たな製造にはならないが、酒類製造者は税務署長の承認を要する |
| 製造場からのブランデーに似た性状のスピリッツの移出 | 令第56条第3項第3号 | ブランデーと同様の表示・広告をしている場合に承認を要する |
| 製造場以外での加水 | 法第43条第5項/令第50条第7項第1号 | 三十七度以上であれば新たな製造にならない |
三十七度という実務上の線

第16号には製品の最低度数が無い、と最初に書いた。それでも日本で売られているブランデーは、ほとんどが三十七度以上に収まっている。定義の側に下限が無いかわりに、混和の側の規定が流通の途中で薄めることを封じている。
第43条第5項はこう書く。第一項の規定にかかわらず、酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は、新たに酒類を製造したものとみなす。
その「政令で定める場合」の筆頭が、これだ。蒸留酒類と水との混和をしてアルコール分が二十度以上(ウイスキー、ブランデー又はスピリッツと水との混和をした場合にあつては、アルコール分が三十七度以上)の酒類としたとき。
蒸留酒類は一般に二十度以上でよいのに、ウイスキー・ブランデー・スピリッツだけは三十七度以上、と一段高い線が引かれている。効き方は正確に押さえておきたい。この規定が掛かるのは製造場の外での加水で、製造場の中で造り手が度数を決めることを縛るものではない。縛られるのは出荷したあとの側で、詰め替えや小分けをする事業者は、三十七度を割る加水をすると条文の上で新しい酒類を造ったことになる。定義に下限が無くても、出荷時の度数が事実上の下限として固定される、という構図だ。
家庭で水割りにするのはこの話ではない
飲む側は最初から外れている。第43条第10項が前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。
と定めていて、飲む直前に水やソーダで割る場面はここで抜ける。続く第11項も前各項の規定は、政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合(前項の規定に該当する場合を除く。)については、適用しない。
として、消費者が自分で飲むために混ぜる場合を外している。こちらは政令が条件を付けた自家製梅酒などの側だ。バーでの一杯も家庭の水割りも、三十七度の話とは別の側にいる。
三十本の表を二つの物差しで読む

最後に、この記事の二つの物差しを、上の比較表そのものに当ててみる。判定に使えるのは、画面に出ている文字だけだ。表の裏側には分類のデータも登録されているが、live には描画されないので読者には見えない。銘柄名と特徴欄の文言だけで、どこまで振り分けられるかを見る。
| 振り分け | 本数 | 内訳と、そう読める理由 |
|---|---|---|
| 日本の第16号に当たり、EUの区分5からは原料で外れると読めるもの | 5本 | ニッカ シングルアップルブランデー 弘前 12年/カルヴァドス/キルシュ/フランボワーズ(りんご・さくらんぼ・木イチゴと銘柄名か特徴欄に書かれている)、グラッパ(ブドウの搾りかすと書かれている) |
| 日本では品目の判断が分かれ、EUの区分5からは香味付けで外れると読めるもの | 1本 | メタクサ(銘柄名がブランデー系リキュール、特徴欄がマスカットワインとハーブを配したと書いている) |
| 画面の文字からは、ぶどうのワイン由来かどうかまで確定できないもの | 24本 | 登録簿では区分4に置かれる銘柄を多く含むが、特徴欄にコニャックの語が出るのは10本、アルマニャックは0本で、銘柄名に出るのも1本だけ |
原料の面ではっきり区分5から外れるとわかるのは五本だ。りんごもさくらんぼも木イチゴも、EUではそれぞれ別の区分に行く。ぶどうの搾りかすから造るグラッパは区分6のグレープマークスピリッツで、区分5とは別立てだ。ところが日本の第16号は、この五本を全部ブランデーの側で受け止める。うち四本は条文が「果実」としか書いていないから入り、グラッパだけは、搾りかすを果実に含めるという通達があって初めて入る。理由が二通りある点は分けて読んでほしい。
メタクサは銘柄名そのものが「ブランデー系リキュール」と書いていて、香味付けを認めないEUの区分5とは相容れない。日本側では百分の十の線と、リキュールに求められるエキス分の要件のどちらに当たるかで品目が決まる。
表そのものの読み方についても、実測を書いておく
live で並ぶのは八列で、画像、銘柄・スコア、定価市場相場、特徴、リンクサス酒販本命、Amazon、楽天、買取が出る。度数の列は無い。ただし三十行のうち二十九行は銘柄名の中に度数が入っているので、横に読めば数字自体は目に入る。
定価市場相場の欄は三十行とも空欄で、定価の登録そのものが無い。並べ替えのボタンは三つ、絞り込みのボタンは六つだが、そのうち一つは「すべて」、もう一つは「価格不明」なので、金額の帯は四つしかない。しかも絞り込みが読む価格の値は二十四行で空のままなので、帯を選ぶと残る行はごく少ない。リンクサスの列に出ている金額とは別のデータだ。
リンクサスの列は、価格つきのリンクが十四行、在庫切れの表示が八行、コレクションへの案内が八行で三十行になる。Amazonの列は三十行とも商品名での検索リンクで、楽天の列は三十行ともリンクだが、うち二十四行は商品名検索へのフォールバックだ。買取の列は三十行とも同じ査定ページを指している。表は価格の最安値を案内する一覧ではなく、銘柄の見取り図として使ってほしい。ブランデーの在庫も参考になる。
飲まないブランデー・洋酒の査定・買取はリンクサスへ
飲まないまま置いてあるブランデーや洋酒は、状態次第で評価が変わる。箱や付属品の有無、液面の位置、ラベルの傷み、そして品目の欄。この記事で見てきたとおり、ラベルの文字と法律上の品目は必ずしも一致しないので、査定では現物と書類の両方を見る。
リンクサス酒販では鑑定士が一本ずつ確認して査定額を出している。当日14:00までのご注文で当日発送に対応する品揃えも用意している。































