グリューワインとホットワインの違いはEU規則の販売名称にある

グリューワインとホットワインの違い|甘くない作り方と市販おすすめ赤白8選

グリューワインとホットワインの違いはEU規則の販売名称にある

グリューワインとホットワインの違いを調べると、「グリューワインはドイツ語」「ホットワインは和製英語」という説明にたどり着きます。それ自体は間違いではありませんが、話はもう一段先にあります。片方は条文が要件を書いている名前で、もう片方はどこにも定義がない。この記事では、欧州連合の規則と日本の酒税法の条文だけを手がかりに、二つの言葉の違いと、家庭で作るときに何が起きるのかを整理します。

ふたつの言葉は出どころがまるで違う

冬のヨーロッパのクリスマスマーケット
グリューワインが売られる冬の広場

グリューワインとホットワインは、しばしば「同じもの」「訳しただけ」と説明されます。けれども二つの語は、そもそも生まれた場所が違います。片方は欧州連合の規則が条文で定義した販売上の名称で、もう片方は日本語のなかで自然に育った総称です。だから違いを比べるときは、味や作り方ではなく、どちらが何によって決められているかから見たほうが早く片が付きます。

Glühwein は条文に書かれた名前

Glühwein は、欧州連合の規則(EU)第251/2014号の附属書IIに載っている販売名称のひとつです。附属書IIは芳香ワイン製品の名前を列挙した表で、そこに載った名前を使うには、同じ欄に書かれた要件を満たしていなければなりません。第5条第1項の第1文はこう書いています。

The sales denominations set out in Annex II shall be used for any aromatised wine product placed on the market in the Union, provided that it complies with the requirements for the corresponding sales denomination laid down in that Annex.

つまり Glühwein は、商品につけてよいかどうかが条文で決まる名前です。そして第1条第3項によれば、この規則はThis Regulation shall apply to all aromatised wine products placed on the market in the Union whether produced in the Member States or in third countries, as well as to those produced in the Union for export.と定めており、域内で売られるものは第三国産でも対象に入ります。名前の管理はEU域内での話ですが、ドイツやオーストリアから輸入される瓶は、この規則を通過してきた製品だということになります。

ホットワインは日本語のなかで育った総称

いっぽうホットワインは、温めて飲むワインをまとめて指す日本語です。後述するように、酒税法にも同法施行令にも同法施行規則にも、この語は一度も出てきません。定義がないので、赤でも白でも、スパイスが入っていてもいなくても、砂糖を足しても足さなくても、温めて飲めばホットワインと呼べます。範囲が広いぶん、「ホットワインを買ってきて」と頼んだときに何が出てくるかは決まりません。

EU規則が Glühwein に課す三つの要件と一つの禁止

赤ワインとオレンジとシナモン
香りづけの主役はシナモンとクローブ

附属書IIのB欄第8項が Glühwein の欄です。冒頭に aromatised wine-based drink(ワインベース飲料)と種別が置かれ、続いて三つの条件が並びます。統合版の逐語は次のとおりです。

表1 規則(EU)No 251/2014 附属書II B欄第8項が Glühwein に課す条件
条件 条文の文言 読み方
原料 which is obtained exclusively from red or white wine or both, 赤ワインか白ワイン、またはその両方だけから造る
香り which is flavoured mainly with cinnamon and/or cloves, and 主にシナモンかクローブ、またはその両方で香りをつける
度数 which has an actual alcoholic strength by volume of not less than 7 % vol.. 実際のアルコール分が7%以上

三つ目の度数は下限だけを決めた規定です。上限は種別のほうにあり、ワインベース飲料は第3条第3項(g)でwhich has an actual alcoholic strength by volume of not less than 4,5 % vol. and less than 14,5 % vol.と定められています。したがって Glühwein の度数は7%以上14.5%未満の帯に収まります。

水を足してはいけない

条件のあとに、禁止が一つ置かれています。

Without prejudice to the quantities of water resulting from the application of Annex I, point 2, the addition of water is forbidden.

附属書Iの第2項は甘味づけに使える糖類を列挙した規定で、そこには sugar solution や invert sugar syrup のように水を含んだ形の糖類が並んでいます。つまり、糖類に由来してやむをえず入る水は別として、薄めるための注水は認められていない、という書き方です。家庭のレシピでよく見る「水で割って飲みやすくする」は、Glühwein と名乗る製品ではできません。

白から造ったら白と書く

もう一つ、白ワインから造った場合の表示義務があります。

Where it has been prepared from white wine, the sales denomination ‘Glühwein’ must be supplemented by words indicating white wine, such as the word ‘white’.

赤が既定で、白は断り書きが要る、という構えです。白いGlühweinを名乗るには、白ワインから造ったと分かる語を販売名称に足さなければなりません。義務がかかるのは白から造ったときだけで、赤やロゼの表記までを求める規定ではありません。販売名称に白と分かる語が添えられていたら、それは商品の個性を謳っているのではなく、この一文に従っているのだと読めます。

アルコールを足して度数を上げることはできない

三つ目の条件は下限だけを示すので、足りなければブランデーを足せばよさそうに見えます。けれども種別の定義がそれを塞いでいます。第3条第3項(c)は、ワインベース飲料をto which no alcohol has been added, except where Annex II provides otherwise;と定めています。附属書IIが別に定めている場合を除いて、アルコールの添加は認められません。

そこでB欄の14項を通しで見ると、アルコール類を加えることが書かれているのは2つだけでした。第2項の Aromatised fortified wine-based drink と、第5項の Zurra です。後者はobtained by adding brandy or wine spirit as defined in Regulation (EC) No 110/2008と、ブランデーやワインスピリッツを加えて造ると明記しています。Glühwein の欄にはその種の記述がありません。したがって Glühwein の度数は、原料のワインが持ってきた分だけで7%以上でなければなりません。

セラーに横たえられたワインの瓶
当店が扱うワインの保管棚

ここまで見てきたとおり、Glühwein は完成品につけられる名前です。いっぽう出発点になるワインそのものは、日本の酒税法では第3条第13号の果実酒に当たります。果実または果実と水を発酵させたもの、という定義に素直に収まる区分です。

ここから並ぶのは当店のワインの一覧です。銘柄は蒐集の対象になるような高価格帯が中心で、温めて飲むために選ぶ瓶ではありません。ただ、次の節から始まる話――スパイスを漬けた瞬間に品目が動くという話――の出発点は、どれもここに並ぶ果実酒です。取り扱いは386点で、価格は4,400円から2,585,000円まで開いていますが、品目という物差しで見るかぎり、どれも同じ欄に入っています。

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価格は 2026/08/07 更新
画像 銘柄・スコア 定価
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特徴 リンクサス酒販
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香りの土台となる基本スパイス。好みの配合で自作したい人に。

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この表が描画するのは 画像/銘柄・スコア/定価市場相場/特徴/リンクサス酒販 本命/Amazon/楽天/買取 の8列で、度数の列も産地の列もない。定価と市場相場の欄は、メーカー希望小売価格が公表されていない季節商品が多いためほとんどの行で空欄になる。楽天の欄に出る金額は、リンクしたページに出品者が表示している価格をそのまま取ったもので、1本あたりの価格とは限らない(複数本のセットで出品されている行がある)。購入前にリンク先で内容量と本数を必ず確かめてほしい。価格による絞り込みは すべて/〜30,000円/30,001〜50,000円/50,001〜100,000円/100,001円〜/価格不明 の6区分で、値が入っていない行は「価格不明」に集まる。掲載は2026年8月時点の情報。

この表に出る欄は「画像」、「銘柄・スコア」、「定価市場相場」、「特徴」、「リンクサス酒販本命」、「Amazon」、「楽天」、「買取」の8つです。度数や産地の欄はありません。価格による絞り込みは「すべて」、「〜30,000円」、「30,001〜50,000円」、「50,001〜100,000円」、「100,001円〜」、「価格不明」の6区分で、季節限定品が多く値がついていない行が大半のため、実際には「価格不明」に集まります。

2021年の改正で変わったのは一行だけだった

赤ワインとスパイスの図
改正で動いたのは原料の一行

規則(EU)No 251/2014 は2021年12月2日の規則(EU)2021/2117によって改正されました。以下で参照している統合版は 02014R0251 — EN — 08.12.2023 — 002.001 で、2023年12月8日現在の内容です。改正で動いた箇所には ▼M1 の印が付くので、どこが変わったかを機械的に数えられます。販売名称を並べた附属書IIで印が付いているのは、差し替えが2か所と挿入が1か所の、合わせて3か所だけです。

Glühwein で動いたのは、三つの条件のうち最初の一行だけです。

表2 Glühwein の第1インデントの新旧
条文の文言
原初版(2014年3月20日 官報 L 84/14) which is obtained exclusively from red or white wine,
統合版(2023年12月8日現在) which is obtained exclusively from red or white wine or both,

末尾に or both が加わりました。改正前の文言は「赤ワインまたは白ワインからのみ」と読め、赤と白を混ぜたものが要件を満たすかどうかがはっきりしませんでした。いまは混ぜてよいと条文が明示しています。

隣の欄は変わっていない

興味深いのは、すぐ下の第9項です。Viiniglögi/Vinglögg/Karštas vynas という北欧・バルト三国の名称で、香りの条件も度数の条件も Glühwein とまったく同じ文言なのに、原料の行だけが改正されていません。

表3 Glühwein と Viiniglögi の条文の異同(統合版)
条件 Glühwein(第8項) Viiniglögi 等(第9項)
原料 赤・白・その両方 赤または白(両方の明示なし)
香り シナモンとクローブが主体 シナモンとクローブが主体
度数 7%以上 7%以上
水の添加 禁止の規定あり 禁止の規定なし
白から造ったとき 白と分かる語を添える 白と分かる語を添える

統合版の本文でwhich is obtained exclusively from red or white wine,という文字列を検索すると1件しか出てきません。原初版では2件ありました。差の1件が Glühwein の側で書き換わったぶんです。

本体側では栄養成分表示が義務になった

同じ改正は附属書だけでは終わっていません。統合版には第6a条が挿入され、その第1項がThe labelling of aromatised wine products marketed in the Union shall contain the following mandatory particulars:として、栄養成分表示と原材料一覧の二つを挙げています。適用が始まったのは2023年12月8日です。

販売名称は二十四あり、そのうち十二は翻訳できない

ベルリンの議事堂とドイツ国旗
名称はドイツ語のまま表示される

附属書IIは三つの欄に分かれています。A欄が芳香ワイン、B欄がワインベース飲料、C欄がワイン製品カクテルです。

表4 附属書IIの構成(統合版)
カテゴリー 度数の帯(第3条) ぶどう由来製品の割合 販売名称の数
A aromatised wine(芳香ワイン) 14.5%以上22%未満(総アルコール分17.5%以上) 75%以上 6個
B aromatised wine-based drink(ワインベース飲料) 4.5%以上14.5%未満 50%以上 14個
C aromatised wine-product cocktail(ワイン製品カクテル) 1.2%超10%未満 50%以上 4個

合計で24個。Glühwein はB欄の8番目です。この24個のうち、条文中でイタリック体になっているものが12個あります。ちょうど半分です。イタリック体には効果があって、第8条第1項がこう定めています。

The sales denominations set out in italics in Annex II shall not be translated on the label or in the presentation of aromatised wine products.

Glühwein はイタリック体の側にいます。だからEU域内では、ラベルの上でこの語を各国語に置き換えることができません。英語圏で売られていても Glühwein のままです。「ホットワイン」をグリューワインの訳語としてラベルに刷ることがEU域内でできないのは、日本語に対応する語がないからではなく、訳すこと自体がこの一文で封じられているからです。縛られるのはこの規則の対象になる製品、つまり域内に置かれるものと域内で製造して輸出するもののラベルと表示で、日本語で何と呼ぶかまでこの規則が決めるわけではありません。

表5 イタリック体の販売名称12個
販売名称
A Väkevä viiniglögi/Starkvinsglögg
B Sangría/Sangria
B Clarea
B Zurra
B Bitter soda
B Kalte Ente
B Glühwein
B Viiniglögi/Vinglögg/Karštas vynas
B Maiwein
B Maitrank
B Pelin
B Aromatizovaný dezert

いっぽう Aromatised wine や Vermouth はイタリック体ではないので、各国語に訳して表示できます。2021年に加わった Wino ziołowe もイタリック体ではありません。

「風」「タイプ」も使えない

名称そのものだけでなく、それをにおわせる書き方も封じられています。第5条第3項です。

An alcoholic beverage not fulfilling the requirements laid down in this Regulation shall not be described, presented or labelled by associating words or phrases such as ‘like’, ‘type’, ‘style’, ‘made’, ‘flavour’ or any other term similar to any of the sales denominations.

like、type、style、made、flavour といった語を添えて、要件を満たさない酒類を販売名称に似せて売ることが禁じられています。度数が7%に届かない飲料や、ぶどう由来製品の割合が足りない飲料に「グリューワイン風」と付けて売る、という逃げ道はEU域内では通りません。日本ではこの規則が直接に効くわけではありませんが、輸入品のラベルにその手の表現が見当たらないのは、こうした背景があるからです。

日本の酒税法に「グリューワイン」という語はない

オレンジとスパイスを煮る鍋
日本の条文は品目でしか呼ばない

ここから日本側です。酒税法、酒税法施行令、酒税法施行規則の三つを本則も附則も含めて通しで検索すると、「グリューワイン」も「ホットワイン」も一度も現れません。

表6 三つの法令における語の出現回数(本則と附則の全文)
酒税法 酒税法施行令 酒税法施行規則
グリューワイン 0 0 0
ホットワイン 0 0 0
シナモン 0 0 1
香辛料 0 0 1

ただし、シナモンと香辛料は施行規則に1件ずつあります。見落とすと不在の証明を広げすぎるので、どこにあるかを確かめておきます。出どころは施行規則第4条第2項第1号、ビールの原料として認められる香味料を並べた規定です。

こしよう、シナモン、クローブ、さんしようその他の香辛料又はその原料

ビールの話であって、ワインの話ではありません。果実酒や甘味果実酒の定義にシナモンやクローブという語が出てくることはありません。

シナモンを漬けた時点で、果実酒ではなくなる

オレンジの皮を入れたグリューワイン
植物を漬けると区分が動く

語がなくても、行為は条文で捕まえられています。ワインにシナモンやクローブを漬ける行為は、酒税法第3条の品目の定義に真正面から当たります。

果実酒に漬けてよい植物はオークだけ

第3条第13号は果実酒の定義です。イからホまで五つの類型があり、最後のホはイからニまでに掲げる酒類に政令で定める植物を浸してその成分を浸出させたものと書かれています。この「政令で定める植物」を受けているのが施行令第7条第4項です。

法第三条第十三号ホに規定する政令で定める植物は、オーク(チップ状又は小片状のものに限る。)とする。

オークだけ、しかもチップ状か小片状に限られます。シナモンもクローブもスターアニスも入りません。したがって、スパイスを漬けたワインは第13号ホには乗れません。

受け止めるのは第14号ニ

では何になるか。第3条第14号は甘味果実酒の定義で、そのニに果実酒又はイからハまでに掲げる酒類に植物を浸してその成分を浸出させたもの若しくは薬剤を加えたもの(後略)という類型があります。ここには植物の種類を政令に委ねる文言がありません。果実酒に植物を浸して成分を浸出させたものは、そのまま甘味果実酒です。

表7 ワインに何かを加えたときに品目がどう動くか
加えるもの 根拠 行き先
オークのチップや小片を漬ける 第3条第13号ホ+施行令第7条第4項 果実酒のまま
シナモンやクローブを漬ける 第3条第14号ニ 甘味果実酒へ
砂糖を加えて全体の10%を超える 第3条第13号ニ+施行令第7条第1項第3号 甘味果実酒へ
香味料や水を加える(糖類は10%以下) 第3条第13号ニ 果実酒のまま

糖類の経路も押さえておきます。第13号ニはブランデー等・糖類・香味料・水を加えたものを果実酒に含めますが、施行令第7条第1項第3号が、加えた糖類の重量が全体の10%を超えるものを果実酒から外しています。砂糖を大量に入れれば、スパイスを使わなくても甘味果実酒に移ります。

品目が動くと、酒税が一キロリットルあたり二万円動く

ワインセラーに並ぶ瓶
品目が変われば税率も変わる

果実酒は第3条第4号の醸造酒類に、甘味果実酒は第6号の混成酒類に属します。税率は第23条が定めており、酒税の税率は、酒類の種類に応じ、一キロリットルにつき、次に定める金額とする。という書き出しで種類ごとの金額が並びます。

醸造酒類は第1項第2号で100,000円。混成酒類は第1項第4号で200,000円ですが、甘味果実酒には第4項第3号の別建てがあります。

甘味果実酒及びリキュール十二万円(アルコール分が十三度以上のものにあつては、十二万円にアルコール分が十二度を超える一度ごとに一万円を加えた金額)

表8 1キロリットルあたりの酒税額と750ミリリットル1本あたりの換算
品目 種類 根拠条文 1キロリットルあたり 750ml1本あたり
果実酒 醸造酒類 第23条第1項第2号 100,000円 75円
甘味果実酒(13度未満) 混成酒類 第23条第4項第3号 120,000円 90円
甘味果実酒(13度) 混成酒類 第23条第4項第3号 130,000円 98円
甘味果実酒(14度) 混成酒類 第23条第4項第3号 140,000円 105円

13度未満なら、果実酒との差は1キロリットルあたり20,000円、750ミリリットル1本に直すと15円です。13度以上になると、12度を超える1度ごとに10,000円ずつ加算されるので、差はさらに開きます。段が始まるのは13度ちょうどからで、12度を超えて13度に届かない酒はまだ120,000円のままです。

果実酒の税率は据え置かれた期間があった

果実酒の税率は最近まで別の数字でした。平成29年改正法の附則第36条は、第1項で令和2年10月1日から令和5年9月30日までという期間を区切って醸造酒類を12万円と置き、第3項がそのうち清酒を11万円、果実酒を90,000円へ下げていたためです。この期間はすでに終わっているので、いまの果実酒は本則の100,000円で、清酒と同じ額に揃っています。同条の見出しは発泡性酒類及び醸造酒類に係る税率の特例で、甘味果実酒はそもそも対象に入っていません。

自宅で作るのは「酒類の製造」にあたるのか

赤いマグカップを持つ人
自宅で温める場面をどう扱うか

ここが実際にいちばん問い合わせの多いところです。出発点は第43条第1項で、酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。と定めています。ワインにシナモンと砂糖を入れれば、水以外の物品を混和して酒類ができるので、原則としてこれに当たります。

この第1項には、ただし書として第1号から第6号まで六つの除外が付いています。六つのうち四つは、清酒の製造免許を受けた者による清酒へのアルコール添加や、所轄税務署長の承認を受けた保存のための混和というように、免許や承認を前提にした場面です。残る二つは主体を限っていませんが、第3号が連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎、第4号がウイスキーとブランデーという決まった組み合わせに限られるので、ワインにスパイスを入れる話はどこにも拾われません。家庭に関わるのは、項ごと適用しないと書かれた二つ、第10項と第11項のほうです。

前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

前各項の規定は、政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合(前項の規定に該当する場合を除く。)については、適用しない。

どちらも「政令で定めるところにより」と受けているので、施行令第50条を見ます。第13項が第10項を、第14項が第11項を受けています。この二つは要件がまったく違います。

表9 第43条第10項と第11項の要件の違い
論点 消費の直前の混和 消費者の自家混和
政令の受け皿 施行令第50条第13項 施行令第50条第14項
場面 消費の直前に混和するとき 消費者が自ら消費するために混和するとき
混和前の酒類の度数 定めがない アルコール分20度以上
課税済みであること 定めがない 必要
混ぜる相手に酒類を含めるか 含む 除く
混ぜられる物品の制限 定めがない 糖類・梅ほか。施行規則第13条第3項の3類型は不可
混和後の発酵 定めがない アルコール分1度以上の発酵がないこと
できあがったものの販売 第12項の対象外 第12項により販売禁止

第13項の逐語は酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするときとする。です。度数の条件も課税済みの条件も書かれていません。対して第14項は三つの号を積み上げます。第1号が当該混和前の酒類は、アルコール分が二十度以上のものから始まり、第2号が酒類と混和をする物品は、糖類、梅その他財務省令で定めるものであること。として混ぜられる物品を絞り、第3号が混和後新たにアルコール分が一度以上の発酵がないものであること。と続きます。第2号の「財務省令で定めるもの」を受けているのが施行規則第13条第3項で、穀類とそのこうじ、ぶどう、アミノ酸や色素や香料といった三つの類型を混ぜてはいけないものとして挙げています。

ワインは通常12度前後ですから、20度以上という条件を満たしません。つまり、瓶に漬け込んで数日置くような作り方は第11項の側では受け止められません。受け止められるのは第10項のほう、その場で温めてすぐ飲む作り方です。

国税庁のQ&Aも同じ整理をしています。「消費者が自宅で梅酒を作ることに問題はありますか。」の回答は消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。と書き、「旅館等で自家製の梅酒を食前酒として提供することに問題はありますか。」の回答の末尾では消費者自ら又は酒場、料理店等が消費者の求めに応じて消費の直前に混和する場合や消費者が自ら消費するために混和する場合にも例外が及ぶと補っています。20度以上という数字が付いているのは前者、つまり作り置きの側の話だということが、この二つを並べると分かります。

度数は日本が十五度、EUが二十度で測る

白ワインとレモンの図
同じ数字でも測る温度が違う

最後に、数字そのものの定義を確かめておきます。ラベルの「アルコール分◯%」は、どちらの制度でも体積の割合ですが、基準になる温度が違います。

酒税法第3条第1号は、アルコール分を温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいうと定義しています。EU側は附属書Iの第7項で、‘Actual alcoholic strength by volume’ means the number of volumes of pure alcohol contained at a temperature of 20 °C in 100 volumes of the product at that temperature.としています。

表10 アルコール分の定義の比較
制度 根拠 基準温度 測る量
日本 酒税法第3条第1号 15度 原容量100分中のエチルアルコールの容量
EU 規則(EU)No 251/2014 附属書I第7項 20度 製品100容量中の純アルコールの容量

5度の差があるので、厳密には同じ数字が同じ状態を指しません。どちらの定義も基準の温度をひとつに固定しており、「表示は温めた状態の度数ではない」という点は共通です。15度でも20度でも、鍋の中の温度ではありません。

成分表で見るワインの姿

参考までに、日本食品標準成分表に載っているぶどう酒と梅酒の数字を並べます。可食部100グラムあたりの値です。

表11 食品成分データベースの収載値(可食部100gあたり)
食品番号 食品名 エネルギー(kcal) アルコール(g) 炭水化物(g)
16010 ぶどう酒/白 75 9.1 2.0
16011 ぶどう酒/赤 68 9.3 1.5
16012 ぶどう酒/ロゼ 71 8.5 4.0
16022 梅酒 155 10.2 20.7

成分表もぶどう酒を醸造酒類、梅酒を混成酒類の側に置いています。酒税法の種類の呼び方がそのまま使われている、ということです。炭水化物が白ワインの2.0グラムに対して梅酒は20.7グラムと10倍以上あり、糖類を加えた酒が別の区分に置かれる理由が数字の側からも見えます。

よくある質問

ワインのコルク
残った疑問をまとめて片づける
グリューワインとホットワインは同じものですか。

指しているものは重なりますが、決まり方が違います。Glühwein は規則(EU)No 251/2014の附属書IIに載った販売名称で、赤か白かその両方から造ること、シナモンやクローブを主体に香りづけすること、アルコール分7%以上であることの三つを満たさないと名乗れません。ホットワインは日本語の総称で、酒税法にも施行令にも施行規則にも語自体がありません。

白ワインで作ったものも Glühwein と呼べますか。

呼べます。ただしEU域内で売る場合は、販売名称に白ワインと分かる語を添えることが附属書IIで求められています。2021年の改正では、赤と白の両方から造ってよいことも条文に書き加えられました。

ホットワインを作るときに水で薄めてもいいですか。

家庭で自分が飲むぶんには自由ですが、Glühwein として売られている製品には注水の禁止規定があります。附属書Iの第2項に定める糖類に由来する水は別として、薄めるための水は認められていません。

自宅でワインにシナモンを入れて温めるのは酒税法違反になりませんか。

その場で温めてすぐ飲むのであれば、酒税法第43条第10項と施行令第50条第13項が製造の規定を適用しないと定めています。度数や課税済みであることの条件は、この項には付いていません。問題になるのは瓶に漬けて置いておく作り方で、そちらは第11項の話になり、施行令第50条第14項第1号がアルコール分20度以上の酒類であることを求めます。ワインは通常この条件を満たしません。

作ったものを友人に振る舞ってもいいですか。

国税庁のQ&Aは、消費者が自ら飲むために作ったものを無償で振る舞ったり贈ったりすることは問題ないとし、有償で販売した場合は罰則の対象になると明記しています。ただしこの答えが前提にしているのは、アルコール分20度以上で課税済みの酒類に漬けたもの、つまり酒税法第43条第11項の例外に乗った場面です。ワインにスパイスを漬けて置いたものはこの例外に乗れないので、同じ話にはなりません。

市販のグリューワインの裏ラベルが「甘味果実酒」なのはなぜですか。

酒税法第3条第14号ニが、果実酒に植物を浸して成分を浸出させたものを甘味果実酒としているためです。果実酒のまま漬けられる植物は施行令第7条第4項でオークのチップか小片に限られており、シナモンやクローブは入りません。

品目が変わると値段も変わりますか。

酒税の額は変わります。果実酒は醸造酒類として1キロリットルあたり100,000円、甘味果実酒は13度未満で120,000円です。750ミリリットル1本に直すと75円と90円で、差は15円になります。13度以上になると、12度を超える1度ごとに10,000円ずつ加算されます。

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