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世界中で人気を集めているジャパニーズウイスキーは、今や世界の主要なウイスキーとして知られていますが、その背景には長い歴史があります。
その中心人物が、「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝です。
ニッカウヰスキーの創業者であり、日本で初めて本格的なウイスキーづくりを目指した竹鶴氏は、スコットランドで学んだ技術を日本に持ち帰り、その情熱がジャパニーズウイスキーの土台となりました。
この記事では、竹鶴政孝の人物像やニッカ創業の経緯、余市が選ばれた理由、そして「マッサン」の実際の物語を、ウイスキーの歴史を説明しながらご紹介します。
名品が生まれた背景を知ることで、ウイスキーの味わいがより深く感じられるでしょう。

竹鶴政孝とは？日本ウイスキーの父と呼ばれる理由

竹鶴政孝氏の生い立ちと歴史

今日6月20日は、竹鶴政孝の誕生日。
今から121年前の今日、この世に生をうけたんじゃ。
今宵は政孝の底知れぬウイスキーへの情熱を想いながら乾杯といくぞい。#マッサン #リタ pic.twitter.com/rsHcBdguk9

— ニッカウヰスキー【公式】 (@nikka_jp) June 20, 2015

竹鶴政孝氏は広島県賀茂郡出身の実業家です。ニッカウヰスキーの創業者であり、ウイスキー作りに情熱を注いだ人物として知られています。
実はサントリーウイスキーやマルスウイスキーとの関係性も深く日本のウイスキーの発展に大きく貢献した人物であることから、「日本のウイスキーの父」とも呼ばれています。
そんな竹鶴政孝氏は1894年、広島県にある作り酒屋の三男として生まれます。やがて大阪高等工業学校の醸造科に進学したのち、卒業後は摂津酒造に入社します。
その後洋酒づくりを志してスコットランド・グラスゴー大学へ留学し、学びと同時にウイスキー工場で働くこととなります。ここで日本人では初めて、ウイスキーづくりを本場で学ぶこととなります。
彼の学んだ技術は「竹鶴ノート」にまとめられ、のちのジャパニーズウイスキーにとっての大きな財産になります。

サントリーからニッカウヰスキー設立へ

やがて帰国後は日本のウイスキー作りに携わるため、当時の寿屋（現在のサントリー）に入社します。そこでは山崎蒸溜所の初代工場長として、日本初の本格スコッチウイスキー製造に携わります。
そこから1934年には独立し、のちのニッカウヰスキーとなる大日本果汁を設立します。現在の余市蒸溜所となる施設を北海道余市郡にて建設し、本格的なウイスキー作りに尽力していきます。
ただし当時の日本はウイスキー作りの文化がほとんどなく、ウイスキー作りの道のりも簡単なものではありませんでした。しかし竹鶴政孝氏はあくまでも“本場のウイスキー作り”にこだわり、本物を追い求めて懸命にウイスキー作りに取り組みます。
ここまで政孝氏の情熱を焚き付けたのは、「日本人に本場のウイスキーを飲んでもらいたい」という強い想いです。戦後の日本には質の悪い三流ウイスキーが多く流通していたため、その流れを変えようとウイスキー作りに取り組んだと言われています。

やがて洋酒ブームとともに、竹鶴氏の手掛けるウイスキーは日本で大きな人気を集めることとなります。1969年にはニッカウイスキー第二蒸溜所となる宮城峡蒸溜所を宮城県に設立し、さらに多彩なウイスキー作りに取り組んでいきます。
現代のジャパニーズウイスキーブームも、当時の竹鶴政孝氏の取り組みと日本のウイスキー文化の成長がなければ絶対にあり得なかったことでしょう。今でもその志やパイオニア精神は、多くの人に受け継がれています。
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竹鶴政孝氏の主な功績

• 本場の製法をそのまま日本へ持ち込んだ初の技術者
  スコットランドで学んだ製法を詳細にノートへ記録し、日本にそのまま移植。これが日本のウイスキー技術の出発点となりました。
• 山崎蒸溜所の基盤を築き、日本初の本格ウイスキー生産を成功させた
  寿屋（現サントリー）がウイスキー事業に参入する際、政孝の知識なくして山崎蒸溜所の立ち上げはあり得ませんでした。
• ニッカウヰスキーを創業し、独立したウイスキー文化を確立
  北海道・余市を選んだ判断は、後に「世界が認めるジャパニーズウイスキー」へつながります。
• ジャパニーズウイスキーを世界水準へ引き上げた
  政孝の理念は今も余市・宮城峡などの蒸留所に受け継がれ、世界的な賞を多数受賞するブランドへ成長しました。

ニッカウヰスキー創業と余市を選んだ理由

1934年、竹鶴政孝氏は北海道余市に「大日本果汁株式会社（現ニッカウヰスキー）」を立ち上げました。彼はスコットランドで学んだウイスキー作りを日本で実現するため、理想的な土地を探し求め、ついに余市にたどり着いたのです。
余市は冷涼な気候と良質な水に恵まれ、ウイスキー製造に不可欠な条件を満たしていました。それが、竹鶴の決断を後押しした理由です。
ここでは、竹鶴が独立に至った経緯、余市を選んだ理由、そして蒸溜所が世界で認められるまでの道のりを解説します。

独立を決意した背景

竹鶴政孝氏はもともと、寿屋（現サントリー）で日本初の本格ウイスキーづくりに挑み、山崎蒸溜所の立ち上げを担当しました。しかし、事業方針や味づくりの方向性など、企業としての判断と自分の理想の間に次第に溝が生まれていきます。
スコットランドで学んだ本場の製法にこだわり、自分が納得できるウイスキーを造りたいという強い思いから、政孝氏は独立を決意。
1934年、支援者の協力を得て、北海道で新たなスタートを切りました。

なぜ余市だったのか？

竹鶴政孝が余市を選んだのは、単なる勘ではありません。スコットランドでの経験を基に、ウイスキー製造に欠かせない条件を慎重に検討した結果です。

• 冷涼で安定したスコットランドに近い気候
  • 年間を通して冷涼で湿度が高く、熟成環境が良好
  • 寒暖差が緩やかで、長期熟成に向いた“ゆっくりとした熟成”が可能
• 仕込みに理想的な良質な水源
  • 余市川の清らかな水は、発酵に適した水質
  • 雑味が少なく、ウイスキーづくりに向いているとされる
• ピート（泥炭）を活用できる土地
  • 北海道はピート資源が豊富
  • スモーキーさを生む個性的なウイスキーづくりに適していた
• 海風がもたらす自然環境
  • 海沿いの立地により、潮風が樽熟成に独特のニュアンスを与えるといわれる

これらの条件がそろった余市は、竹鶴政孝が思い描く本場のウイスキーづくりを再現できる理想の場所でした。

初期の苦労とニッカの誕生

一方、余市での創業期は決して平坦な道のりではありませんでした。なぜならウイスキーは製品化までに長い時間が必要で、すぐに利益が出ないことが大きな問題となったからです。
そこで政孝氏は会社名を「大日本果汁」とし、まずは地元のリンゴを使ったジュースやワインを主力商品として売上を確保しました。ウイスキーが完成するまでの間、これらのリンゴ製品が会社を支えたのです。
さらに、本場スコットランドで見た製法を再現するには、蒸留器や熟成庫といった設備への大規模な投資が必要でした。余市では石炭を使った直火蒸留を続けたため、その維持管理にも多くの手間とコストがかかります。創業者として、政孝には絶えず資金繰りと品質の両立が求められました。

また、当時の余市にとって蒸溜所は見慣れない存在でした。政孝は地域との交流を大切にし、真摯に蒸溜技術を伝えることで職人たちを育成したのです。
そこから少しずつ地元の人々の信頼を得ながら、蒸溜所としての土台を築いていきました。地道な努力で、徐々に地元の人からの信頼を得て、蒸溜所としての基盤を築いていったのです。
こうした苦労を乗り越え、1936年についにウイスキーの製造が始まりました。ここからニッカウヰスキー（大日本果汁）の歴史が本格的にスタートし、日本のウイスキー文化が大きく発展していくことになります。

余市の蒸溜文化が世界に評価されるまでの歩み

余市蒸溜所が世界的地位を確立するのは、創業から何十年も後のことです。しかしその歩みは、日本ウイスキーの歴史そのものを形作るものでした。

① 1980年代〜1990年代：国内で徐々に評価が高まる

余市の力強い味わいは、ウイスキーファンの間で注目されるようになります。
ピートの効いた重厚なスタイルが、高品質なシングルモルトとして支持されていきました。

② 2001年：世界が認めた「余市10年」

世界的権威のコンペティションで「シングルカスク余市10年」が最優秀賞（Best of the Best）を受賞。
この受賞は、ジャパニーズウイスキーが世界水準に達したことを象徴する歴史的な出来事です。

③ 2010年代以降：世界的ウイスキーブームの中心へ

ジャパニーズウイスキーが海外で高く評価されることで、余市や竹鶴の原酒は不足し、長期熟成モデルは次々に終売となりました。
それでもブランドの価値は揺らぐことなく、むしろ評価は年々上昇しています。

④ 世界中のファンが訪れる“聖地”へ

現在の余市蒸溜所は、伝統的な石造りの熟成庫や石炭直火蒸留など、創業当時の手法を守る希少な蒸溜所。
“スコットランドの伝統 × 日本の職人技”が融合した唯一無二の場所として、世界中のウイスキーファンが訪れる人気スポットとなっています。
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NHK朝ドラ「マッサン」のモデルとなった竹鶴政孝

マッサンは竹鶴政孝とリタの物語

竹鶴政孝氏は1979年にその生涯を終えていますが、今でも広く名前が語り継がれています。ジャパニーズウイスキーが世界的にブームとなっていることから、世界にもその名が広まっています。
2014年にはNHK連続テレビ小説「マッサン」のモデルにもなり、大きな話題を集めました。マッサンは竹鶴政孝氏の愛称であり、連ドラ「マッサン」は竹鶴氏とその妻リタの物語をモチーフに描いたものになっています。
竹鶴政孝氏とリタの出会いは留学先のスコットランドです。グラスゴー大学に通っていた竹鶴氏が、リタの弟であるラムゼイに柔道を教えるためリタの家を訪問したことが出会いのきっかけでした。
異国の地でドラマチックな恋に落ちた二人は、周囲の反対を押し切って1920年に結婚します。当時としてはかなり珍しい国際結婚で、のちにリタを連れて日本に帰国することとなります。
異国の地で夫を支えることになったリタは、文化の違いに苦労しながらも政孝氏をサポートしていきます。竹鶴氏はリタから英会話も学んでいたそうです。
そんな政孝・リタ夫妻の姿は銅像にもなり、広島県竹原市に飾られています。

竹鶴政孝の子孫は？家系図や竹鶴威・竹鶴孝太郎との関係

竹鶴政孝氏とリタの間には子供は授かっていません。しかし2人の養子を迎え入れています。
一人は養女である竹鶴房子氏で、のちにリマと改名しています。ただし戦争や迫害などをきっかけに、親子関係には亀裂が生じていたとされています。
もう一人は養子の竹鶴威氏で、政孝氏の姉である延代の四男として産まれています。威氏は20歳の時に養子となり、のちにニッカウヰスキーに入社しています。
2代目のマスターブレンダーとなった威氏は父の意思を受け継ぎ、ウイスキー造りに情熱を注ぎます。樽出しウイスキーである「フロム・ザ・バレル」の生みの親であり、ウイスキーは現在でも大きな人気を集めています。

さらに威氏の息子、政孝氏からみると孫に当たる人物には竹鶴孝太郎がいます。竹鶴孝太郎はニッカウヰスキーにて約20年間勤務したのち、ブランドコンサルティング会社を創設しています。

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竹鶴政孝氏の情熱や日本のウイスキーの魅力と成長を知るためには、やはりウイスキーを知ることが第一歩です。ここからはニッカウヰスキーのおすすめウイスキーと、特徴について触れていきます。

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竹鶴政孝が残した言葉と哲学！ニッカウヰスキーの今後は？

日本のウイスキー文化を切り拓いた竹鶴政孝は、技術者としての功績だけでなく、ものづくりへの揺るぎない哲学を後世に残しました。
その言葉と精神は今もニッカウヰスキーの礎となり、世界に誇るジャパニーズウイスキーの原点になっています。

ウイスキーづくりに対する信念

竹鶴政孝の思想を象徴するのは、「本物をつくる」という一言です。
ウイスキーに“近道”はなく、自然の力と時間の積み重ねこそが味わいを形づくるという考えから、効率化よりも丁寧な熟成を大切にしました。
スコットランドで学んだ本場の製法を日本で忠実に再現するために余市を選び、ピート、直火蒸留、熟成環境まで一切の妥協を許さなかった姿勢は、ニッカの個性として今も受け継がれています。
政孝にとってウイスキーは“造り手の魂が宿るもの”。その精神は現在の蒸溜所にも息づいています。

仕事の姿勢・人生観

政孝氏の生き方は、挑戦と誠実さの積み重ねでした。彼は、流行に左右されず、「自分が信じる酒を造る」という信念を生涯持ち続け、技術、設備、原料に徹底的にこだわりました。
経営上のリスクがある局面でも、品質こそが未来を切り開くと信じ、理想を追求するひたむきな姿勢は、多くの職人に感銘を与えたと言えるでしょう。
また、妻のリタ夫人の存在も政孝氏の人生において非常に大きいものでした。異国の地で彼を支え続け、余市に根を下ろす原動力になったのです。
真摯に生きる政孝氏と、献身的に寄り添ったリタ夫人。この夫婦の物語は、日本のウイスキーの歴史において欠かせない一部分です。

後世のウイスキー産業に与えた精神的遺産

竹鶴政孝氏の精神は、今のウイスキー業界に大きな影響を与えています。余市や宮城峡のウイスキーが世界で認められるようになったのも、彼の技術と信念があったからです。
また、彼の職人としてのこだわりや、品質を重視する姿勢は、今の日本の酒造り全体にも受け継がれています。
「本物をつくる」という竹鶴氏の考え方は、今も日本のウイスキーを支える大切な価値観です。

ニッカウヰスキーは今後どうなる？

創業90周年を迎えたニッカウヰスキーは、政孝の精神を継承しながら新たなステージに向かおうとしています。ブランドコンセプトを「生きるを愉しむウイスキー」と掲げ、生産体制の強化や商品開発を本格化。
余市・宮城峡の貯蔵庫拡張や栃木工場の新設など、原酒不足を見据えた大規模投資も進行中です。
新商品の展開も活発で、90周年記念の「ザ・ニッカ ナインディケイズ」や、新ブランド「ニッカ フロンティア」が話題に。さらに宮城峡10年の復活など、ラインナップ強化への期待も高まっています。
世界的なウイスキーブームの中、ニッカは“プレミアムウイスキー市場で世界トップ10入り”という大きな目標も掲げています。
伝統と革新を併せ持ちつつ、次の100年へ向けた挑戦が始まっています。

まとめ

竹鶴政孝は、「本物のウイスキーをつくる」という強い思いを生涯持ち続けました。そして、日本のウイスキーを世界レベルに引き上げた人物です。
NHKのドラマ『マッサン』のモデルになった夫婦の物語や、余市で確立した蒸留の技術は、今も語り継がれています。
そして彼の精神を受け継ぐニッカウヰスキーは、余市と宮城峡という2つの蒸溜所を中心に、世界中で高い評価を受けています。
現在、ニッカのウイスキーはブランドとしても、ますます進化しています。 竹鶴ピュアモルトや、シングルモルト余市、宮城峡、フロム・ザ・バレル、そして最新のニッカ フロンティアなど、さまざまな商品が多くのファンをひきつけています。
ウイスキーには、それぞれの物語があります。それを知ると、ウイスキーがもっと美味しく感じられるはずです。気になるものがあれば、ぜひ一度お試しください。
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