紹興酒とは|品目はその他の醸造酒で酒税と関税を条文から確認

紹興酒とは|原料・度数・種類と老酒や日本酒との違い、飲み方・選び方

紹興酒の瓶を裏返すと、銘柄名とは別に、小さな文字で「品目」と「アルコール分」と「内容量」が並んでいます。この三つは、書かなければならないと法令が決めているものです。品目の欄に入る語は、中国側の分類である加飯酒でも花彫酒でもありません。

調べてみると、日本の酒税法の全文には「紹興」という語が一度も出てきません。本則と附則を合わせた約105,000字を走査しても、「紹興」「黄酒」「老酒」「元紅」「加飯」「善醸」「香雪」「中国」はすべて0件でした。それでも一本ごとに品目が決まり、税率が決まり、ラベルに書く項目まで決まります。

この記事は、その一本が日本に着いてから棚に並ぶまでに通る三本の線を現物で追います。酒税法が品目と税額を決める線、関税率表が番号と関税率を決める線、酒類業組合法がラベルの記載事項を決める線です。味の話は最初の二章と比較表と最後の一章にあります。

紹興酒とは何か 原料と造り方から見た黄酒の一種

紹興酒とは何か 原料と造り方から見た黄酒の一種
紹興酒の瓶と杯の一例

紹興酒は黄酒のうち紹興市で造られたものを指す

紹興酒は、中国の醸造酒である黄酒のうち、浙江省紹興市で造られたものです。黄酒は穀物を麹で糖化させながら発酵させる酒で、蒸留せずに飲みます。高粱などを蒸留してつくる白酒とは系統がまるで違います。中国酒全体の見取り図は中国のお酒の種類、白酒の代表格は貴州茅台酒の見分け方で扱っています。

日本で「紹興酒」として売られている瓶の度数は、この記事の比較表に並べた30本でいえば15%から17%が中心で、20%のものが1本あります。この帯は日本酒とほぼ重なりますが、法令の上で紹興酒と清酒が同じ箱に入ることはありません。日本酒の度数もあわせてどうぞ。

もち米と麦の麹と鑑湖の水という三つの原料

紹興酒の原料は、もち米と、麦でつくった麹と、水の三つが基本です。日本酒が米に米の麹を使うのに対して紹興酒は麦の麹を使い、この一点が後で品目を決めるときに効いてきます。仕込み水には紹興市の鑑湖の水が使われるのが伝統です。

仕込んだもろみは甕に詰められ、そのまま年単位で置かれます。同じ紹興酒でも、仕込みに何を使うかで出来上がりの度数はかなり変わります。仕込みに蒸留酒を使う香雪酒のように、二十度に届く造りもあります。この「銘柄によって数字が動く」という性質は、日本の法令から見ると無視できない意味を持ちます。

元紅と加飯と善醸と香雪という中国側の分け方

元紅と加飯と善醸と香雪という中国側の分け方
甕で寝かせた黄酒のイメージ

中国側の四分類は日本の法令には一度も出てこない

中国側では、仕込みの水と原料の配合によって四つに分ける言い方が定着しています。仕込み水を通常どおり使う元紅酒、水の一部を減らして米を増やす加飯酒、水の代わりに出来上がった酒を使う善醸酒、水の代わりに米の粕から取った蒸留酒を使う香雪酒の四つです。日本で流通する瓶の多くは加飯酒で、花彫酒という別名で売られることもあります。この記事の比較表30本でも、加飯酒が27本、元紅酒と善醸酒と香雪酒が1本ずつです。

ところが、この四つの語は日本の法令のどこにも現れません。酒税法の本則と附則でも、解釈通達の第2条関係と第3条関係と表示義務の各節でも、「元紅」「加飯」「善醸」「香雪」はすべて0件です。税関の関税率表解説の第22類にも「紹興」「黄酒」「老酒」は出てきません。中国側の四分類は、日本の制度のなかでは効力を持たない銘柄側の言葉です。

陳年という言い方と日本の年数表示は別の話

紹興酒の瓶には「陳年八年」「十年陳」のような熟成年数の表記がよく載ります。これも銘柄側の表示で、酒税法の全文に「陳年」は0件、「熟成」も0件でした。年数の表記を禁じる規定も、裏づけを求める規定も、酒税法の側には見当たりません。

年数と価格の関係は市場が決めています。次の比較表にまとめました。

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酒販店の棚に並ぶ瓶の一例

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紹興酒の主要30銘柄を熟成年数と分類で比較

紹興酒の主要30銘柄を熟成年数と分類で比較
熟成年数の違う瓶を並べた様子

古越龍山、塔牌、会稽山など紹興市の主要メーカーを中心に、30銘柄を横断で並べました。表は8列で、左から画像、銘柄・スコア、定価と市場相場、特徴、リンクサス酒販の本命、Amazon、楽天、買取の順です。ただし定価の側は空欄で、実際に値が入るのは市場相場のほうです。

紹興酒 主要30銘柄 比較|分類・熟成年数と価格の違いが分かる
古越龍山・塔牌・会稽山など紹興市の主要メーカーを中心に、加飯酒・元紅酒・善醸酒・香雪酒の分類と陳年(熟成年数)で30銘柄を横断比較。度数・産地・熟成年数・実勢価格をまとめ、入門の加飯酒から至尊30年クラスまで価格と味わいの違いが一目で分かるようにしています(2026年6月時点)。
画像 銘柄・スコア 定価
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表のどの欄を先に見ると失敗しないか

先に見ていただきたいのは、銘柄名の列と市場相場の列です。同じメーカーが同じ名前で年数違いを出すことが多く、名前だけでは高いか安いか判断できません。相場は帯なので、下端と上端の開き方が値動きの目安になります。

タイプの手がかりは銘柄名の列にあります。善醸酒と香雪酒と元紅酒は銘柄名にその語が入っており、残りの27本は加飯酒です。善醸酒と香雪酒は甘い側なので、前の章の四分類はここで効いてきます。

紹興酒が日本の酒税法で清酒にならない理由

紹興酒が日本の酒税法で清酒にならない理由
仕込み蔵の内部の一例

ここから制度の話です。出発点は、酒類とは何かという定義です。

この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(薄めてアルコール分一度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう。

酒税法第2条第1項

押さえておきたいのは、酒類かどうかを決めているのが酒類は、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の四種類に分類する。酒税法第2条第2項という四つの箱ではなく、「アルコール分一度以上の飲料」であるかどうかだという点です。度数と飲みものであること。この二つを満たせば酒類で、そのうえで種類に割り振られます。

清酒の原料は米と米こうじと水に限られている

では紹興酒は清酒になれるでしょうか。酒税法第3条第7号は清酒を七清酒次に掲げる酒類でアルコール分が二十二度未満のものをいう。酒税法第3条第7号と定めたうえで、そのイに当たるものを米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの酒税法第3条第7号イと書いています。

原料として挙がっているのは米と米こうじと水だけです。通達もロの場合について法第3条第7号ロに規定する清酒の原料は、米、米こうじ及び水のほか、清酒かす又は令第2条《清酒の原料》に掲げる物品のうち1種類以上のものとする。国税庁 解釈通達 第3条関係 清酒の定義1と述べ、起点は同じです。

紹興酒が使うのは麦の麹です。酒税法の全文で「麦こうじ」は0件、「米こうじ」は7件でした。麦の麹で仕込んだ酒は、どれだけ米を使っていても第7号イの条件を満たせません。語の関係は清酒と日本酒の違いにまとめてあります。

名前ではなく原料と数値で決まる

注意したいのは、紹興酒が清酒でないのは中国の酒だからではないという点です。第7号イに国籍の条件はなく、外れているのは麹の原料が米ではないという一点です。

紹興酒の品目とアルコール分二十度という線

紹興酒の品目とアルコール分二十度という線
度数の表示を確かめる場面の一例

その他の醸造酒に当たるための三つの条件

清酒でないなら、どの品目に入るのか。受け皿が第3条第19号のその他の醸造酒です。

十九その他の醸造酒穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(第七号から前号までに掲げる酒類その他政令で定めるものを除く。)でアルコール分が二十度未満のもの(エキス分が二度以上のものに限る。)をいう。

酒税法第3条第19号

この一文は三つの条件を重ねています。穀類などを原料として発酵させた酒類であること。第7号から第18号までに掲げる酒類とその他政令で定めるものに当たらないこと。そしてアルコール分が二十度未満でエキス分が二度以上であること。紹興酒はもち米を発酵させた酒で、清酒にもビールにも果実酒にも当たりません。度数も、比較表30本のうち29本は二十度に届いていません。エキス分は表に出ていませんが、糖分が残る造りなので二度を割ることはまず考えられません。

その他の醸造酒がどの種類に入るかは第3条第4号が定めていて、四醸造酒類次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。)をいう。イ清酒ロ果実酒ハその他の醸造酒酒税法第3条第4号と書かれています。紹興酒は、清酒と同じ醸造酒類の箱のなかに、清酒とは別の品目として入ります。

二十度に届いた瞬間に品目の判定がやり直しになる

ここが本題です。第19号の度数の上限は二十度未満で、未満ですから、ちょうど二十度になった時点で第19号からは外れます。比較表30本のうち1本だけある香雪酒がまさにその位置にあり、度数は20%です。仕込みに蒸留酒を使う造りなので、加飯酒より高い数字になります。

外れた先はどこか。第20号のスピリッツは二十スピリッツ第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のものをいう。酒税法第3条第20号なのでエキス分の点で当たらず、粉末状ではないので第22号の粉末酒にも当たりません。残るのは第21号のリキュールと第23号の雑酒です。

第21号は次のように書かれています。

二十一リキュール酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のもの(第七号から第十九号までに掲げる酒類、前条第一項に規定する溶解してアルコール分一度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く。)をいう。

酒税法第3条第21号

括弧書きが除いているのは第7号から第19号までなので、二十度に達して第19号を外れた酒は、この除外にはもう当たりません。残る条件は原料の側にあります。もち米と麦麹と水だけで仕込んだ加飯酒はここに当たりませんが、仕込みに蒸留酒を使う香雪酒や、仕込みに酒を使う善醸酒は、原料に酒類を用いています。同じ二十度でも、どちらの造りかで行き先が分かれうる、ということです。なおここでいうリキュールは酒税法の品目で、関税率表の第22.08項のリキュールとは別の話です。

原料に酒類を用いていない場合の受け皿が第23号で、二十三雑酒第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類をいう。酒税法第3条第23号とだけ書かれています。

そして雑酒がどの種類に入るかは第3条第6号が定めていて、六混成酒類次に掲げる酒類(その他の発泡性酒類を除く。)をいう。イ合成清酒ロみりんハ甘味果実酒ニリキュールホ粉末酒ヘ雑酒酒税法第3条第6号と、雑酒は混成酒類の側に置かれています。リキュールも同じ第6号のなかにあります。どちらに行っても醸造酒類ではなくなるので、後で見るとおり税率が変わります。

いったん決まった品目が動きうることは、通達も想定しています。国税庁の解釈通達は品目の判定について製成後の酒類について、当該品目としての要件(アルコール分、エキス分等)を満たさなくなったときは、そのときに新たな酒類を製成したものとして改めて品目の判定を行う。国税庁 解釈通達 第3条関係 16 品目の判定(2)と述べています。一度その他の醸造酒として判定された酒でも、要件を満たさなくなればその時点で判定をやり直す、という建て付けです。括弧のなかがアルコール分とエキス分の両方を挙げているとおり、やり直しの引き金は上の線に限りません。エキス分が二度を割っても同じことになります。

エキス分二度という下の線もある

第19号にはエキス分が二度以上という下の線もあります。第3条第2号が二エキス分温度十五度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。酒税法第3条第2号と定義する数字で、紹興酒は糖分が残る造りなので、この線が問題になることはまずありません。

ちなみにアルコール分のほうも第3条第1号に定義があり、一アルコール分温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。酒税法第3条第1号と書かれています。関税率表の側は別の温度を使っています。第22類の注2は第20類からこの類までにおいてアルコール分は、温度20度におけるアルコールの容量分による。関税率表 第22類 注2としていて、酒税法の十五度に対して二十度です。同じ一本について、二つの制度が別の温度で測った数字を使っています。

紹興酒一本にかかる酒税はいくらか

紹興酒一本にかかる酒税はいくらか
瓶詰めされた醸造酒の一例

税率は酒税法第23条にあり、第1項が酒税の税率は、酒類の種類に応じ、一キロリットルにつき、次に定める金額とする。酒税法第23条第1項として四つの種類ごとに金額を並べています。紹興酒が入る醸造酒類は10万円、雑酒が入る混成酒類は20万円です。ただし第23条は第1項だけではなく、第2項から第4項までが品目ごとに別の額を定めています。次の表は第1項の本則の額だけを並べたものです。

表1 酒類の種類と酒税の税率(酒税法第23条第1項の本則・1キロリットルあたり)
種類 税率 紹興酒との関係
発泡性酒類 155,000円 該当しない
醸造酒類 100,000円 その他の醸造酒として該当する
蒸留酒類 200,000円(アルコール分21度以上は加算あり) 該当しない
混成酒類 200,000円(アルコール分21度以上は加算あり) 雑酒に落ちたときに該当する

六百ミリリットルに換算するといくらか

1キロリットルは1,000リットルですから、醸造酒類の10万円は1リットルあたり100円です。比較表で最も多い600ミリリットルの瓶なら1本60円、ワインと同じ750ミリリットルなら75円です。

これが雑酒に落ちると、混成酒類の20万円が効いて1本120円になります。度数が0.1度違うだけで税額が倍になる、という線が二十度のところに引かれていることになります。なお混成酒類は二十一度以上になると二十度を超える一度ごとに1万円が加わるので、次の表の120円は二十度以上二十一度未満の場合の額です。

表2 600ミリリットル1本あたりの酒税額
品目 種類 1キロリットルあたり 600ml換算
その他の醸造酒(20度未満) 醸造酒類 100,000円 60円
雑酒(20度以上21度未満) 混成酒類 200,000円 120円
リキュール(20度) 混成酒類 200,000円 120円

納める人と数え方については、輸入品の場合は第6条第2項が働きます。第6条第2項が酒類を保税地域から引き取る者(以下「酒類引取者」という。)は、その引き取る酒類につき、酒税を納める義務がある。酒税法第6条第2項と定め、第22条が酒税の課税標準は、酒類の製造場から移出し、又は保税地域から引き取る酒類の数量とする。酒税法第22条第1項としています。数えるのは飲んだ量ではなく引き取った量です。この点を掘り下げた記事としてシャンパンファイトと酒税があります。

税関で紹興酒が通る番号と関税率

税関で紹興酒が通る番号と関税率
輸入酒が並ぶ売り場の一例

紹興酒は第2206.00号のいちばん奥の枝に入る

輸入品には関税もかかります。紹興酒が入るのは関税率表の第2206.00号で、項の名前はその他の発酵酒(例えば、りんご酒、梨酒、ミード及び清酒)並びに発酵酒とアルコールを含有しない飲料との混合物及び発酵酒の混合物(他の項に該当するものを除く。)税関 関税率表 第22.06項です。税関の関税率表解説は、この項についてこの項には、22.03項から22.05項までに含まれない全ての発酵酒を含む。税関 関税率表解説 第22.06項と述べています。

解説が挙げる十の例のなかに紹興酒という名前はなく、第22類の解説を通しで検索しても「紹興」「黄酒」「老酒」は0件です。名前で入るのではなく、ほかの項に当てはまらないから落ちてくる、という入り方をします。

第2206.00号のなかはさらに枝分かれしていて、まずアルコール分1%未満かどうかで分かれ、次に清酒及び濁酒かどうか、次に第20.09項または第22.02項の物品との混合物かどうか、次に麦芽を原料の一部とした発泡性のものかどうか、最後に旧酒税法第23条第2項第3号イに規定するものかどうか、と絞られていきます。清酒及び濁酒という枝の名前は、日本が国内で細分するときに酒税法と同じ語を使ったものです。紹興酒は先に見たとおり酒税法の清酒ではなく、こして造るので濁酒でもないので、この枝には入りません。残りの枝にも当たらないので、いちばん奥の「その他のもの」に落ちます。

RCEPの欄は三つの版で二段下がっている

その枝に並ぶ税率が表3です。実行関税率表の2026年7月9日版から取りました。暫定の欄はこの枝では空です。

表3 第2206.00号のいちばん奥の枝に並ぶ主な税率(1リットルあたり)
欄 税率
基本 43.10円
WTO協定 42.40円
特恵 30.80円
特別特恵 無税
RCEP(中国) 30.29円
CPTPP 7.71円
欧州連合 無税
英国 無税

同じ第2206.00号でも、別の枝である清酒及び濁酒は基本70.40円、RCEPの中国欄は44.00円と、紹興酒の枝より高い額が並びます。枝が変われば額が変わる、ということです。

RCEPの中国欄は年を追って下がっています。2024年以降の三つの版を突き合わせると次のようになりました。

表4 RCEP(中国)欄の推移(第2206.00号のいちばん奥の枝・1リットルあたり)
実行関税率表の版 RCEP(中国)
2024年4月1日版 34.32円
2025年4月1日版 32.30円
2026年7月9日版 30.29円

2024年4月1日版から2025年4月1日版で2.02円、2025年4月1日版から2026年7月9日版で2.01円と、ほぼ同じ幅で二段下がっています。差の0.01円は端数処理によるものと見られます。ただしここで見ているのは三つの版だけで、この先どこまで下がるかは、協定の譲許表を見ないと分かりません。

条件を満たせばどちらの経路でもRCEPに行き着く

欄がたくさんあると、どれが効くのか分からなくなります。税関は適用の順番を公表していて、税率は原則として、特恵税率、協定税率、暫定税率、基本税率の順に優先して適用されます。税関 関税率の種類とし、そのうえで協定税率は、それが暫定税率又は基本税率よりも低い場合に適用されます。同上と条件を付け、特恵税率は対象となる国の原産品であるなどの条件を満たす場合に限られ同上とも書いています。EPA税率については経済連携協定等を締結している国からの産品を対象とし、それぞれの協定に基づいて適用される税率です。それぞれの協定の原産地規則等の条件を満たすことにより適用されます。同上とあり、原産地規則を満たすことが前提になります。

この順番を中国原産の紹興酒に当てはめます。基本43.10円と協定42.40円では協定のほうが低く、その協定とRCEPの30.29円を比べるとRCEPのほうが低いので、税関の示す流れではRCEP税率に行き着きます。仮に特恵の欄から入っても結論は変わりません。税関はEPA税率が適用される品目について、EPA税率≦一般特恵税率の場合、一般特恵税率の適用対象外となります。税関 関税率の種類としていて、この枝の特恵は30.80円、RCEPは30.29円ですから、RCEPのほうが低い以上、一般特恵は適用対象外です。RCEPの原産地規則等の条件を満たす限り、どちらの経路でも同じ額に着きます。満たさなければ協定の42.40円に戻ります。表3のうち特別特恵とCPTPPと欧州連合と英国の欄は、原産地が中国であれば端から働きません。

1リットルあたりの差は12.11円です。600ミリリットルの瓶なら協定税率で25.44円、RCEP税率で18.17円、差は7.27円にしかなりません。酒税の60円と足しても、1本あたりの酒税と関税の合計はおよそ78.17円です。これとは別に消費税がかかるので、数千円の瓶ならそちらのほうが桁が一つ大きくなります。酒税と関税で説明がつくのは78.17円ぶんまで、というのがこの節の結論です。

料理用の紹興酒が関税率表の第22類から外れる条件

料理用の紹興酒が関税率表の第22類から外れる条件
調味料の棚に並ぶ瓶の一例

中華食材の棚には、酒売り場ではなく調味料の棚に置かれた紹興酒があります。ただし、棚が違うから別のものになるのではありません。関税率表の上では、一定の条件を満たしたものだけが第22類から別の類へ移ります。酒税法の側の線は別に引かれています。

関税率表は料理用を第22類から明文で外している

関税率表の側は明文で外しています。第22類の注1は、この類に含まれないものの一つとして次を挙げています。これは解説ではなく類注なので、分類の場面でそのまま効きます。

料理用に調製したこの類の物品(第22.09項のものを除く。)で飲料に適しない処理をしたもの(主として第21.03項に属する。)

関税率表 第22類 注1(a)

この注1(a)が何を指すのかは、税関の分類例規が定めています。分類例規は、この文言をアルコール飲料に調味料、香辛料その他これらに類する物品(以下「調味料等」という。)を加えたもので、飲用に供することが困難なもののうち、料理用に用いられることがラベル等の記載から明らかに認められるものをいう。税関 分類例規 第22類 注1(A)の解釈と説明したうえで、なお、ラベル等に料理用である旨の記載がされているものであっても、調味料等を加えてないもの、及び調味料等を加えたものであっても、みりん等の原料に使用するものは第22類のアルコール飲料に分類する。同上と続けています。

酒税法の側は飲料という一語で線を引いている

酒税法の側には、これほど分かりやすい除外規定はありません。線を引いているのは第2条第1項の「飲料」という一語だけです。国税庁の解釈通達は、その範囲を次のように示しています。

「アルコール分1度以上の飲料」には、アルコール分1度以上のものでそのまま飲用に供し得るもののほか、水その他の物品を混和してそのアルコール分を薄めて飲料とすることができるもの(飲用に供し得る程度まで水その他の物品を混和したときのアルコール分が1度未満となるものを除く。)又は水その他の物品と併せて飲用に供することができるものを含むものとする。

国税庁 解釈通達 第2条第1項関係1

読んでのとおり、この通達が広げているのは飲料の範囲のほうです。そのまま飲めるものだけでなく、薄めて飲めるものまで飲料に含める、と書いてあります。飲料から外す方向のただし書もありますが、ただし、アルコール事業法(平成12年法律第36号。以下同じ。)第2条《定義》第4項に規定する特定アルコールを精製し又はアルコール分を90度未満に薄めたもので、明らかに飲料以外の用途に供されると認められるもの(当該物品を飲用に供することとしたものを除く。)については飲料に該当しないことに取り扱う。同上とあるとおり、対象はアルコール事業法の特定アルコールに限られていて、調味料を加えた紹興酒には及びません。

もう一つ効いてくるのが免許です。酒税法第9条第1項は酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。酒税法第9条第1項と定めており、酒類に当たらないのであれば、この免許の話からも外れます。

紹興酒のラベルに品目とアルコール分が載る理由

紹興酒のラベルに品目とアルコール分が載る理由
瓶の裏ラベルの一例

表示義務は酒類業組合法とその政令から来る

ラベルに品目を書く義務は、酒税法ではなく酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律から来ています。同法第86条の5は酒類製造業者又は酒類販売業者は、政令で定めるところにより、酒類の品目その他の政令で定める事項を、容易に識別することができる方法で酒類業組合法第86条の5表示しなければならないとしていて、中身は政令に委ねられています。

その政令が施行令第8条の3で、第1項は表示すべき事項を号で並べています。

一内容量(粉末酒にあつては、当該粉末酒の重量)二当該酒類の品目三当該酒類(粉末酒を除く。)のアルコール分四雑酒にあつては、税率の適用区分を表す事項五その他の発泡性酒類(酒税法第三条第三号ハに規定するその他の発泡性酒類をいう。)にあつては、発泡性を有する旨を表す事項

酒類業組合法施行令第8条の3第1項各号

内容量、品目、アルコール分の三つが並び、第4号として雑酒には税率の適用区分を表す事項が加わります。つまり紹興酒が二十度に届いて雑酒に移ると、税額が上がるだけでなくラベルに書く項目が一つ増えます。この第4号は雑酒だけを名指ししているので、リキュールに移った場合には増えません。度数の線は税額を動かし、雑酒に移ったときにはラベルも同時に動かします。

輸入した紹興酒は引き取った販売業者が書く

輸入品の場合、書く人は製造者ではありません。同じ施行令の第2項が定めています。

酒類を保税地域から引き取る酒類販売業者又は酒類を詰め替えて販売場から搬出する酒類販売業者は、その引き取り、又は搬出する酒類の容器の見やすい箇所に、当該酒類の引取り又は搬出の時までに、その住所及び氏名又は名称、その引取先又は詰替の場所の所在地並びに前項各号に掲げる事項を、容易に識別することができる方法で表示しなければならない。

酒類業組合法施行令第8条の3第2項

引き取る酒類販売業者が、住所と氏名または名称と引取先の所在地、それに第1項各号の事項を書きます。輸入紹興酒の裏ラベルに輸入者の名前と住所が刷ってあるのは、この規定によります。

細かい書き方は解釈通達が定めていて、数字については内容量、アルコール分、エキス分及び税率適用区分の数字は、原則としてアラビア数字とする。国税庁 解釈通達 表示義務1(4)ロとされています。

紹興酒の飲み方と選び方

紹興酒の飲み方と選び方
紹興酒を注ぐ場面の一例

温める飲み方と冷やす飲み方

紹興酒は温めても冷やしても飲めます。温めると甘みと香りが立ち、冷やすと酸の輪郭が出ます。温めるなら人肌から四十度台までが目安で、沸騰させると香りも飛びます。

氷砂糖を落とす飲み方は日本でよく知られていますが、善醸酒や香雪酒のようにもともと甘い側の瓶に砂糖を足すと、輪郭がぼやけることがあります。香りの立ち方を確かめてから決めるほうが失敗しません。

一本目の選び方

一本目に選ぶなら、加飯酒の三年から五年ものが無難です。価格の帯が広くなく、味の輪郭もつかみやすいからです。十年を超える瓶は甘みと苦みがどちらも濃くなるので好みが分かれます。

開栓後は空気に触れるほど風味が変わり、蒸留酒のような置き方はできません。お酒の期限表示の考え方はお酒の賞味期限に、お酒の分類全般はお酒の種類にまとめてあります。日本酒の在庫は日本酒コレクションからご覧いただけます。

よくある質問

よくある質問
質問に答える場面の一例
紹興酒は日本の酒税法でどの品目になりますか。

アルコール分が二十度未満でエキス分が二度以上の瓶であれば、酒税法第3条第19号のその他の醸造酒に当たります。穀類を発酵させた酒類で、第7号から第18号までのどれにも当たらないためです。その他の醸造酒は第3条第4号により醸造酒類に入ります。

紹興酒が清酒に分類されないのはなぜですか。

酒税法第3条第7号イが清酒の原料を米と米こうじと水に限っているためです。紹興酒は麦でつくった麹を使うので当てはまりません。産地が中国だからではありません。酒税法の全文で「麦こうじ」は0件、「米こうじ」は7件でした。

紹興酒600ミリリットル1本にかかる酒税はいくらですか。

醸造酒類の税率は1キロリットルあたり100,000円なので、600ミリリットルなら60円です。750ミリリットルの瓶なら75円になります。

アルコール分が二十度を超えた紹興酒はどうなりますか。

第3条第19号は二十度未満に限っているので、二十度に達すると外れます。エキス分が二度以上あるためスピリッツにも粉末酒にも当たりません。仕込みに酒類を使っていなければ第23号の雑酒になり、使っていれば第21号のリキュールの要件を見ることになります。どちらでも第3条第6号により混成酒類になり、税率は二十度なら1キロリットルあたり200,000円で並びます。

紹興酒の関税はいくらですか。

関税率表の第2206.00号のいちばん奥の枝に、基本43.1円、WTO協定42.4円、RCEPの中国欄30.29円が1リットルあたりで並んでいます。どの欄が効くかは原産地規則を満たすかどうかなどで決まります。

料理用の紹興酒と飲用の紹興酒は同じものですか。

関税率表の上では別のものになりえます。第22類の注1(a)が、料理用に調製して飲料に適しない処理をしたものをこの類から外し、主として第21.03項に属するとしています。ただし分類例規により、ラベルに料理用と書いてあるだけでは足りず、調味料等を加えてあることまで要ります。

紹興酒の熟成年数の表示に法令上の裏づけはありますか。

酒税法の側にはありません。全文で「陳年」と「熟成」はいずれも0件でした。年数の表記は銘柄側の表示です。

輸入された紹興酒のラベルは誰が書いているのですか。

保税地域から引き取る酒類販売業者です。酒類業組合法施行令第8条の3第2項が、引き取る側に住所と氏名または名称、引取先の所在地、内容量、品目、アルコール分の表示を義務づけています。

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