福島でしか買えない地酒は?飛露喜・寫樂・山桜など21本と会津中通り浜通りの境目【2026年版】
福島でしか買えない地酒と呼ばれるものは、大きく二つに分かれます。特約店だけに卸される銘柄と、蔵の規模が小さくて県外まで回らない銘柄です。飛露喜と寫樂は前者、廣戸川や楽器正宗は後者に近い立ち位置にあります。この記事はまず、その二つの違いを流通の側から整理し、日本酒九本・地ビール一本・ウイスキー十一本の計二十一本を価格と特徴で並べます。
そのうえで、この主題ではあまり書かれない話をします。福島の酒を語るとき、ほとんどの記事が「会津・中通り・浜通り」という三分割から入ります。ところが国の現行法令を横断して検索すると、「中通り」は一件も出てきません。「浜通り」は二本の命令に四文だけ。「会津」は四十六本の法令に五十五文ありますが、うち四本は廃止か失効で、残りも大半は会津若松市や南会津郡といった市町村の名前です。「中通り」が一件も無い以上、三つが揃う条文はありえません。
かわりに国は、同じ福島県に制度ごとに別々の線を引いています。衆議院の選挙区が四つ、環境省の福島環境局に置かれた支所が四つ、税務署が十。数が四で並んでも、区域の切り方は重なりません。しかも支所のほうは、名前と中身がずれています。「浜通り南支所」が受け持つのは、会津若松市・喜多方市・南会津郡・耶麻郡・河沼郡・大沼郡、会津地方の全域に、いわき市と双葉郡の一部を足した範囲です。条文はいずれも二〇二六年八月二十三日に e-Gov 法令検索で取得した現行のものです。
「福島でしか買えない」には二つの意味がある

同じ「福島でしか買えない」でも、理由はまったく違います。片方は蔵が卸し先を絞っているから、もう片方は造る量が少なくて県外まで届かないからです。前者は東京の特約店にも並びますが、後者は本当に現地でしか見かけません。ここを混ぜて読むと、探し方を間違えます。
特約店流通|卸し先を蔵が指名している
飛露喜の廣木酒造本店、寫樂の宮泉銘醸は、どちらも取引先を蔵が選んでいます。量販店の棚に定価で積まれることはまずなく、扱う店は蔵と直接つながった酒販店に限られます。したがって「福島でしか」というより「決まった店でしか」が実態に近く、県外の特約店に行けば買える可能性はあります。ただし入荷は不定期で、店頭に出た当日に消えることが珍しくありません。
地元消費型|造る量が県内で終わる
廣戸川の松崎酒造は岩瀬郡天栄村、楽器正宗の大木代吉本店は西白河郡矢吹町にあります。どちらも公式サイトに所在地が明記された中小の蔵で、出荷の中心は県内です。近年は県外の地酒専門店にも回るようになりましたが、数はまとまりません。こちらは特約店という制度の問題ではなく、単純に造る量の問題です。
猪苗代地ビールのように、施設の性格上ほぼ現地販売になるものもあります。醸造所は耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字村東八五で、公式サイトは一九九七年から猪苗代の大地で地ビールを造っていると記しています。定番はピルスナー、ヴァイツェン、ゴールデンエンジェル、ブラウンヴァイツェン、ラオホの五種です。
関連商品ラインナップ

下の一覧は、当店の日本酒のコレクション全体から自動で選ばれて並びます。福島の銘柄だけを抜き出したものではないため、別の産地の酒が入ることもあります。掲載しているのは在庫の一部で、品揃えの全体はコレクションのページからご覧いただけます。福島の蔵に絞った並びは、このあとの章に別に用意しています。
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ここでは日本酒の在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
福島の地酒とウイスキー二十一本を価格と特徴で比べる

日本酒九本と地ビール一本、ウイスキー十一本の計二十一本を、当店の取扱の有無と合わせて一覧にしました。表の「参考定価」は当社が確認した参考値で、蔵の公表価格そのものではない行があります。改定されることもあるため、購入の前には最新の表示をご確認ください。「取扱なし」の行は当店で取り扱いのない銘柄で、Amazon と楽天の欄は検索結果へのリンクです。
| 品名 | 画像 | 参考定価 | リンクサス酒販 | Amazon | 楽天 | 買取 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 飛露喜 純米吟醸 最新詰 1800ml | ![]() |
3,300円 | ¥11,000 | 検索 | 検索 | 査定 | 廣木酒造本店(河沼郡会津坂下町)の代表銘柄。ふくらみのある旨口。 |
| 飛露喜 特別純米 1800ml | ![]() |
2,750円 | ¥11,000 | 検索 | 検索 | 査定 | 無濾過生原酒で名を上げた蔵の日常酒。食事との相性が広い。 |
| 飛露喜 大吟醸 1800ml | ![]() |
5,500円 | ¥14,300 | 検索 | 検索 | 査定 | 蔵の最高峰。華やかな香りと締まった後口。 |
| 飛露喜 純米吟醸 愛山 1800ml | ![]() |
— | ¥16,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 愛山を使った限定的な仕込み。甘みの出方が定番と違う。 |
| 寫樂 純米酒 1800ml | ![]() |
3,300円 | 取扱なし | 検索 | 検索 | 査定 | 宮泉銘醸(会津若松市)。バナナを思わせる吟醸香。 |
| 會津宮泉 純米吟醸 山田穂 720ml | ![]() |
2,420円 | 取扱なし | 検索 | 検索 | 査定 | 同じ蔵のもう一つの銘柄。骨格のある吟醸。 |
| 廣戸川 特別純米 1800ml | ![]() |
2,970円 | 取扱なし | 検索 | 検索 | 査定 | 松崎酒造(岩瀬郡天栄村)。燗で伸びる食中酒。 |
| 楽器正宗 本醸造 1800ml | ![]() |
2,420円 | 取扱なし | 検索 | 検索 | 査定 | 大木代吉本店(西白河郡矢吹町)。すっきりした本醸造。 |
| 大七 純米生酛 1800ml | ![]() |
2,780円 | 取扱なし | 検索 | 検索 | 査定 | 大七酒造(二本松市)。生酛造りに徹する濃醇型。 |
| 猪苗代地ビール ピルスナー 330ml | ![]() |
— | 取扱なし | 検索 | 検索 | — | 耶麻郡猪苗代町。ドイツ式設備で仕込む定番。 |
| YAMAZAKURA 安積 2024 エディション 700ml | ![]() |
9,900円 | ¥9,900 | 検索 | 検索 | 査定 | 安積蒸溜所のシングルモルト。年次でボトリングが変わる。 |
| YAMAZAKURA 安積 2023 エディション 700ml | ![]() |
— | ¥16,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 前年のエディション。流通量が少なく相場は上。 |
| 山桜 ピュアモルト 700ml | ![]() |
6,380円 | ¥5,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 笹の川酒造の入門ピュアモルト。 |
| YAMAZAKURA 山桜 黒ラベル 700ml | ![]() |
— | ¥9,900 | 検索 | 検索 | 査定 | 黒ラベルのブレンデッド。樽の甘みが立つ。 |
| YAMAZAKURA 山桜 55 モルト&グレーン 700ml | ![]() |
— | ¥4,400 | 検索 | 検索 | 査定 | モルトとグレーンを合わせた一本。当店の価格はシリーズで最も低い。 |
| 963 アクシス 700ml | ![]() |
3,300円 | ¥5,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 郡山市の郵便番号に由来するブレンデッド。 |
| AXIS 963 アクシス 700ml | ![]() |
— | ¥5,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 同シリーズの別ボトリング。 |
| 山桜 コニャックカスクフィニッシュ 700ml | ![]() |
— | ¥26,400 | 検索 | 検索 | 査定 | コニャック樽で後熟したカスクフィニッシュ。 |
| 山桜 メルローワインカスクフィニッシュ 700ml | ![]() |
— | ¥26,400 | 検索 | 検索 | 査定 | 赤ワイン樽で後熟した一本。 |
| 山桜 安積桜カスクフィニッシュ 700ml | ![]() |
— | ¥27,500 | 検索 | 検索 | 査定 | 桜樽を使った季節性の高い仕上げ。 |
| 山桜 安積シェリー 700ml | ![]() |
— | ¥44,000 | 検索 | 検索 | 査定 | シェリー樽熟成。シリーズ最上位の価格帯。 |
リンクサス酒販で買える飛露喜と山桜

当店が福島の蔵から扱っているのは、廣木酒造本店の飛露喜四種と、笹の川酒造の山桜・安積・963のシリーズです。下に並べたのはその代表的な八本で、いずれも商品ページから在庫と価格をご確認いただけます。在庫のあるものは、当日十四時までのご注文で当日発送します。
飛露喜の四本はどう違うか
参考定価で見ると特別純米は日常の一本、純米吟醸は蔵の看板、大吟醸は贈答の帯という並びになります。ただし当店の価格では、特別純米と純米吟醸が同じ一一、〇〇〇円になっています。愛山は米の違いで甘みの出方が変わるため、定番二本を飲んだあとに試すのが分かりやすい順番になります。四本とも一、八〇〇ミリリットルで、七二〇ミリリットルの扱いは入荷しだいです。
山桜系は当店価格で十倍の開きがある
同じ笹の川酒造の名前でも、当店の販売価格はモルト&グレーンの四、四〇〇円からシェリー樽の四四、〇〇〇円まで開きます。入口は上のグリッドにあるピュアモルト、価格を抑えて試すなら比較表の行にある五五。香りの違いを確かめたい段階でカスクフィニッシュの三本、という組み立てが実際の売れ方に近いところです。
会津・中通り・浜通り|三分割は法令のどこにも揃っていない

福島の酒の記事は、ほぼ例外なく「会津・中通り・浜通りで気候が違う」から始まります。当店の別の記事もそう書いています。地理としては正しく、実際に造りにも効いています。ただ、この三分割が国の制度の側にも同じ形であるかというと、そうではありません。e-Gov 法令検索の全法令横断検索で三語をそれぞれ叩くと、結果は見事にばらばらでした。
「中通り」は現行法令に一件も無い
まず「中通り」です。二〇二六年八月二十三日に横断検索へかけたところ、応答は該当なしでした。この検索は該当が零件のとき本文を返さずエラーコードを返す作りになっているため、零という数字が画面に出るのではなく、そもそも結果の頁が出ません。現行の法律・政令・省令・規則を通じて、この三文字はどこにも書かれていない、ということです。
「浜通り」は二本の命令に四文だけ
次に「浜通り」です。こちらは該当がありました。ただし法令の数は二本、文の数は四つだけ。内訳は人事院規則九―五五(特地勤務手当等)に一文、地方環境局組織規則に三文です。法律は一本もなく、どちらも命令の側にあります。地方環境局組織規則の三文は次の章でまとめて開きます。
人事院規則のほうは、別表第二の一「一年を通じて特地勤務手当に準ずる手当が支給される準特地官署」の表に、こう並んでいます。
福島県 双葉郡双葉町大字中野字高田一の一 福島復興局福島復興浜通りセンター
人事院規則九―五五(特地勤務手当等)別表第二の一
地方名としての「浜通り」ではなく、役所の名前の一部として現れています。もう一本の地方環境局組織規則は、あとの章でくわしく開きます。
「会津」は四十六本・五十五文あるが、地方名ではない
三語のうち、いちばん多いのが「会津」でした。横断検索は五十五文、四十六本の法令を返します。内訳は法律が四本、政令が二十本、省令が二十一本、人事院規則が一本で、このうち四本は廃止または失効しています。数だけ見れば福島の三地方でいちばんよく法令に出てくる言葉ですが、中身を追うと様子が変わります。
法律の四本は、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律、国家公務員の寒冷地手当に関する法律、公職選挙法、国土開発幹線自動車道建設法です。いずれも「会津地方」という区分を作っているのではなく、会津若松市・南会津郡・会津坂下町といった市町村や郡の名前を並べている表の中に、たまたま「会津」の二文字が入っているだけです。残りの政令と省令のうち中身まで確かめたのは、激甚災害の指定、高速道路の経過地、税務署の管轄区域、検察審査会の名称の四種類ですが、いずれも市町村や郡の名前として拾われた行でした。
「浜通り南支所」が会津を受け持つ|地方環境局組織規則第六十三条

「浜通り」を含む二本のうち、区域まで書いているのが地方環境局組織規則です。第六十三条は三項からなり、第一項がこう書きます。
福島環境局に、支所を置く。
地方環境局組織規則(平成十七年環境省令第十九号)第六十三条第一項
続く第二項が「支所の名称、位置及び管轄区域は、次の表のとおりとする」と述べ、四つの支所を表に並べます。名前は、県北支所・浜通り北支所・浜通り中支所・浜通り南支所です。四つのうち三つが「浜通り」を名乗っています。
「浜通り」を名乗る三つのうち、名前どおりなのは一つ
表の管轄区域の欄を読むと、名前から想像する範囲とはかなり違います。まず母数の外にある県北支所は、福島市・二本松市・伊達市・本宮市・伊達郡・安達郡に、相馬郡のうち飯舘村を足したもの。県北という呼び方からは飯舘村が少しはみ出しますが、おおむね名前どおりです。「浜通り」を名乗る三つのうち、浜通り北支所も相馬市・南相馬市と、双葉郡のうち浪江町、相馬郡のうち新地町で、名前どおりです。
問題は「浜通り」を名乗る残りの二つです。浜通り中支所の管轄は、郡山市・白河市・須賀川市・田村市・岩瀬郡・西白河郡・東白川郡・石川郡・田村郡と、双葉郡のうち富岡町、双葉町及び葛尾村。酒の世界でいえば中通りの中部から南部に、双葉郡の三町村を足した形です。そして浜通り南支所は、こうです。
浜通り南支所 双葉郡広野町 会津若松市、いわき市、喜多方市、南会津郡、耶麻郡、河沼郡、大沼郡、双葉郡のうち広野町、楢葉町、川内村及び大熊町
地方環境局組織規則 第六十三条第二項の表
会津若松市・喜多方市・南会津郡・耶麻郡・河沼郡・大沼郡。これで会津地方の市町村はすべて含まれます。つまり、「浜通り南支所」という名前の役所が、会津全域を受け持っているのです。「浜通り」を名乗る三つのうち、名前と中身が合っているのは浜通り北支所だけということになります。
位置は広野町、管轄は会津若松市
表の真ん中の欄は「位置」です。浜通り南支所の位置は双葉郡広野町。地図の上では、事務所は太平洋側にあり、管轄の西の端は会津若松市より向こうの只見や檜枝岐まで届きます。県の東端に置かれた役所が、県の西端まで担当する形です。浜通り中支所も同じで、位置は双葉郡富岡町、管轄の中心は郡山市です。
規則は、この区域をなぜこう切ったのかを書いていません。第六十三条第三項が「支所は、第六十五条の規定に基づき、第四十九条、第五十条、第五十一条及び第五十六条第一号から第三号までに規定する事務を分掌する」と述べるだけで、理由の説明はどこにもありません。分かるのは、名前が事務所の置かれた場所を示し、管轄区域はそれと別に決められている、という並びだけです。
附則が期限を切っている
もう一つ、この四支所には他の役所と違うところがあります。附則に、こう書かれています。
第六十三条第二項の県北支所、浜通り北支所、浜通り中支所及び浜通り南支所は、令和十一年三月三十一日まで置かれるものとする。
地方環境局組織規則 附則第二十四条(県北支所、浜通り北支所、浜通り中支所及び浜通り南支所の設置期間の特例)
期限が切られています。そもそもこの規則が支所を置くのは福島環境局だけで、その四つ全部に期限が付いています。同じ附則には復興再生利用企画課が令和十一年三月三十一日まで、復興再生利用事業推進課が令和十年三月三十一日まで、といった課の設置期間の特例がいくつも並び、その最後に置かれているのがこの四支所です。福島県を四つに割るこの線も、恒久のものではありません。
福島県の税務署は十|酒の免許はこの区割りの上にある

酒に近いところで福島県を割っている制度が、もう一つあります。税務署です。酒類の製造免許も販売業免許も、製造場や販売場の所在地を受け持つ税務署長が扱います。造り手にとっては、選挙区よりも支所よりも先に効いてくる線です。
別表第九に十の署が並ぶ
根拠は財務省組織規則です。第五百四十四条は「税務署の名称、位置及び管轄区域は、別表第九のとおりとする」と述べ、その別表第九が全国の署を国税局ごとに並べます。表の列は、所轄国税局・都道府県・税務署名・位置・管轄区域の五つです。
福島県の項に載るのは十署でした。福島、会津若松、郡山、いわき、白河、須賀川、喜多方、相馬、二本松、田島。数えると十です。所轄国税局は仙台国税局で、同じ局の下に青森・岩手・宮城・秋田・山形の各県が並びます。福島県は関東に接する県ですが、税務の系統は関東信越国税局ではなく仙台国税局のほうに属しています。
耶麻郡が二つの署に割れている
十署のうち、会津には会津若松・喜多方・田島の三つがあります。この三つの境目に、表ならではの書き方が出てきます。
会津若松 会津若松市 会津若松市 耶麻郡のうち磐梯町、猪苗代町 河沼郡 大沼郡
財務省組織規則(平成十三年財務省令第一号)別表第九(第五百四十四条関係)
喜多方 喜多方市 喜多方市 耶麻郡(会津若松税務署管内の地域を除く。)
財務省組織規則 別表第九(第五百四十四条関係)
上の二つの引用は、原典では税務署名・位置・管轄区域が別々の欄に入っており、ここでは欄の区切りを全角の空白で示しています。管轄区域の欄の中も、市や郡ごとに全角の空白で区切られています。読むと、耶麻郡が二つに割られていることが分かります。磐梯町と猪苗代町は会津若松税務署、それ以外の耶麻郡は喜多方税務署です。しかも二つの行の書き方が対になっていて、片方は町の名を挙げ、もう片方は「除く」で受けます。同じ郡を二度書かずに済ませる書き方です。猪苗代地ビールの醸造所は猪苗代町にあるので、この一行によって会津若松税務署の側に入ります。
もう一つ、田島税務署は名前と位置がずれています。位置の欄は「南会津郡南会津町」で、管轄は南会津郡。田島という町は二〇〇六年の合併で南会津町になっており、いまは署の名前にだけ残っています。
税務署の仕事に酒が名指しで入っている
この区割りが酒と結びついているのは、偶然ではありません。同じ規則の第五百四十五条が、税務署の所掌事務を七つの号に分けて列挙しています。そのうち酒に関わるのは第三号と第四号の二つで、第三号がこう書きます。
酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関すること(酒税の保全並びに酒類業の発達、改善及び調整に関する制度の企画及び立案を除く。)。
財務省組織規則 第五百四十五条第三号
続く第四号は「酒類に係る資源の有効な利用の確保に関すること」です。制度の企画と立案は本庁に残し、現場の保全と調整は署が持つ、という分け方になっています。福島の蔵がどの署に属するかは、この十の区割りで決まります。
七つの造り手の住所を三つの制度に通してみる

ここまでに開いたのは、福島環境局の支所が四つと、税務署が十。三つめの衆議院の小選挙区は、公職選挙法の別表第一に福島県の第一区から第四区まで並んでいて、この章ではじめて開きます。三つ合わせて、この記事で名前を挙げた七つの造り手を通してみます。所在地は各社の公式サイトの会社概要から採りました。ただし廣木酒造本店は公式サイトが見当たらないため会津坂下町の公式ページに、猪苗代地ビールは公式サイトが郡名を省いているため国土交通省東北地方整備局の頁に拠っています。
同じ選挙区でも、署は分かれる
宮泉銘醸は会津若松市東栄町、大木代吉本店は西白河郡矢吹町本町です。地図では会津盆地と白河のあたりで、酒の世界の言い方なら会津と中通りに分かれます。ところが公職選挙法別表第一の福島県の項では、どちらも第三区です。第三区には会津若松市・白河市・喜多方市・南会津郡・耶麻郡・河沼郡・大沼郡に加えて、西白河郡と東白川郡が入っているからです。
いっぽう税務署は、宮泉銘醸が会津若松、大木代吉本店が白河で別。福島環境局の支所も、前者が浜通り南、後者が浜通り中で別です。選挙で同じ一票を投じる二つの蔵が、税と環境では別の窓口を持つことになります。
同じ支所でも、選挙区は分かれる
逆の組み合わせもあります。松崎酒造は岩瀬郡天栄村、大木代吉本店は西白河郡矢吹町、笹の川酒造は郡山市笹川。この三つはいずれも浜通り中支所の管内です。ところが選挙区は、松崎酒造と笹の川酒造が第二区、大木代吉本店が第三区で割れます。税務署も須賀川・白河・郡山と三つに分かれます。
酒の三分割を足した四つの区分を見比べると、四つが完全に重なる組み合わせは一つもありません。惜しいところまで来る組はあります。酒の三分割で会津に入るのは廣木酒造本店・宮泉銘醸・猪苗代地ビールの三つで、この三つは税務署も会津若松で揃い、支所も浜通り南で揃います。ところが選挙区では、そこに大木代吉本店が加わって四つになります。しかも三つが揃った支所の名前は「浜通り」です。区分が近いところまで来ても、最後の一歩でずれます。
| 造り手 | 所在地 | 酒の三分割 | 衆議院小選挙区 | 福島環境局の支所 | 税務署 |
|---|---|---|---|---|---|
| 廣木酒造本店(飛露喜) | 河沼郡会津坂下町 | 会津 | 第三区 | 浜通り南支所 | 会津若松 |
| 宮泉銘醸(寫樂・會津宮泉) | 会津若松市東栄町 | 会津 | 第三区 | 浜通り南支所 | 会津若松 |
| 猪苗代地ビール | 耶麻郡猪苗代町 | 会津 | 第三区 | 浜通り南支所 | 会津若松 |
| 大木代吉本店(楽器正宗) | 西白河郡矢吹町 | 中通り | 第三区 | 浜通り中支所 | 白河 |
| 松崎酒造(廣戸川) | 岩瀬郡天栄村 | 中通り | 第二区 | 浜通り中支所 | 須賀川 |
| 笹の川酒造(山桜・963) | 郡山市笹川 | 中通り | 第二区 | 浜通り中支所 | 郡山 |
| 大七酒造(大七) | 二本松市竹田 | 中通り | 第一区 | 県北支所 | 二本松 |
この表で気づくのは、七つのうち浜通りの造り手が一つも入っていないことです。相馬やいわきにも蔵はありますが、この記事で取り上げた七つに限れば、名前が県外まで届いているのは会津と中通りの造り手でした。「福島でしか買えない酒」を探すとき、実際に歩くことになるのは、法令のどの表にも三つ揃っては書かれていない、その二つの地方ということになります。
全国新酒鑑評会|「九年連続」ではなく「九回連続」

福島の酒を語るときに必ず出てくるのが、全国新酒鑑評会の金賞受賞数です。当店のこの記事も、以前は「九年連続日本一」と書いていました。原典に当たると、この書き方は正確ではありませんでした。
福島県自身は「九回連続」と書いている
福島県の公式サイトは、令和三酒造年度の結果を伝える頁でこう書いています。「福島県内の蔵元からは32銘柄が入賞、そのうち17銘柄が金賞に選ばれ、金賞受賞数で史上初の9回連続日本一(通算11度目)となりました」。「年」ではなく「回」です。
同じ頁の表には、その理由にあたる注記が付いています。令和元酒造年度は新型コロナウイルス感染症の影響で金賞の選定そのものが行われず、入賞酒だけが選ばれました。したがって一位が並ぶのは平成二十四酒造年度から令和三酒造年度までの九回で、暦の上では十酒造年度にまたがります。「九年連続」と書くと、選定が無かった年を数え落としたことになります。
もう一つ、この九回のうち平成二十五・平成二十九・令和二の三回は同一位です。それぞれ山形県、兵庫県、長野県と並んでいます。単独の一位が九回続いたわけではありません。
連続は令和四酒造年度で途切れ、その後戻った
記録は令和四酒造年度で途切れます。独立行政法人酒類総合研究所が公表した入賞酒目録に付された金賞の印を製造場ごとに数えると、この年の一位は山形県で、福島県は五番目でした。
そのあと福島は戻ってきます。令和五酒造年度は兵庫県に次ぐ二番手、令和六酒造年度は兵庫県と並んで一位、令和七酒造年度は単独の一位です。福島県も令和七酒造年度を二年連続の金賞受賞数日本一として公表しています。二〇二六年八月の時点でいえば、「九回連続のあと一度離れ、いま二年続けて一位に戻っている」というのが正確な言い方になります。
主催は共催で、出品は一製造場一点
主催者の書き方にも直すところがありました。酒類総合研究所が公表する審査結果は、毎年「独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会との共催により実施しました」と述べています。どちらかが主催して他方が後援する形ではなく、共催です。金賞の賞状も、研究所理事長と中央会会長の連名で授与されます。
出品は一つの製造場につき一点です。これは福島県の頁が注記で説明しています。審査結果のほうは、明治四十四年の第一回から数えて令和七酒造年度が百十四回目にあたるとし、「現在、全国規模で開催される唯一の清酒の鑑評会」と自ら位置づけています。なお出品できる場の数と実際に出す点数は別で、国税庁の調査によれば福島県内で令和六酒造年度に清酒を造った場は五十四場でした。
安積蒸溜所と笹の川酒造|郡山でつくるウイスキー

福島の酒は日本酒だけではありません。郡山市笹川の笹の川酒造は、公式サイトの会社概要に創業を明和二年(一七六五年)と記し、その敷地の中に安積蒸溜所を持ちます。日本酒の蔵がウイスキーもつくっている、という形です。
二〇一六年の蒸溜所と、二つある創業年
安積蒸溜所は二〇一六年に始動しました。創業の地から移した土蔵の建物を蒸溜所に仕立てたもので、公式サイトはその経緯を蒸溜所の頁で説明しています。なお同じ公式サイトでも、蒸溜所の頁は「冬」、会社概要の沿革は「三月より蒸留開始」と書き方が分かれます。蒸溜所が中身をつくる銘柄には、山桜とYAMAZAKURAのほか、企画元の異なる963とAXIS 963があり、シングルモルトからブレンデッド、樽で後熟したカスクフィニッシュまで幅があります。
沿革の書き方には一つ注意が要ります。会社概要は創業を明和二年としますが、同じ公式サイトの中で「猪苗代湖の南に創業した一七一〇年(宝永七)」という記述も出てきます。宝永七年は、猪苗代湖南の舟津で酒札の記録が残る年です。この記事では会社概要に合わせて明和二年を採ります。
963という名前は郵便番号から来ている
963は郵便番号の上三桁です。郡山市の郵便番号はすべて963で始まります。市外局番ではありませんので、そこは混同されやすいところです。ただし963で始まる郵便番号は郡山市だけのものではなく、田村市や三春町など周りの市町村にも及びます。前の章で見たとおり、郡山市は選挙では第二区、環境局の区分では浜通り中支所、税務署は郡山でした。制度ごとに違う名前で呼ばれる土地を、この銘柄は郵便番号の三桁で呼んでいます。
なお963は、笹の川酒造が単独で立ち上げた銘柄ではありません。郡山市の酒類卸である福島県南酒販が企画し、中身をつくるのが笹の川酒造と安積蒸溜所という組み立てです。ラベルに蔵の名前だけが載っているわけではない、という点は覚えておくと選ぶときに迷いません。
福島の地酒の買取と査定

贈答で受け取ったが飲む機会がない、蔵出しの本数を確保しすぎた、といったご相談を福島の銘柄でもいただきます。リンクサスグループでは日本酒とウイスキーを分けて査定しており、どちらもLINEでの写真査定に対応しています。
日本酒は製造年月が効き、ウイスキーは効かない
飛露喜や寫樂のような生詰・生酒に近い設計の酒は、製造年月が新しいほど評価が上がります。目安として製造から六か月以内、未開封、冷暗所での保管、化粧箱があること。この四つが揃うかどうかで、同じ銘柄でも査定は大きく動きます。一年を過ぎたものは、銘柄の人気にかかわらず評価が落ちます。
逆にウイスキーは年数の経過で評価が下がりにくく、終売や年次限定のボトルはむしろ上がることがあります。安積の年次エディションはその典型で、前年のものが翌年のものより高くなる場面が出てきます。
写真は四枚あれば足りる
査定を早く出すために、ラベルの表と裏、肩口の製造年月の刻印、キャップと液面が分かる角度の四枚をお送りいただくと確実です。基本は四枚で、箱がある場合はもう一枚を足してください。日本酒はこちらから、ウイスキーはこちらから、それぞれ専門の窓口へつながります。日本酒の買取はリンクサスの日本酒買取ページ、ウイスキーはウイスキー買取ページをご覧ください。
福島の地酒に関するよくある質問

福島でしか買えない日本酒の代表はどれですか?
飛露喜(廣木酒造本店・河沼郡会津坂下町)と寫樂(宮泉銘醸・会津若松市)が代表格です。どちらも蔵が卸し先を選ぶ特約店流通のため、量販店の棚には並びません。県外の地酒専門店に入ることはありますが、入荷は不定期です。廣戸川と楽器正宗は県内流通が中心で、こちらは造る量そのものが多くありません。
飛露喜と寫樂はどう違いますか?
飛露喜は廣木酒造本店の銘柄で、無濾過生原酒という飲み口を広めた蔵として知られます。味の中心にふくらみのある旨味があります。寫樂は宮泉銘醸が手がける銘柄で、バナナを思わせる華やかな吟醸香が持ち味です。参考定価では飛露喜の純米吟醸と寫樂の純米酒が同じ水準ですが、実勢価格と入手の難易度は飛露喜のほうが上になります。
「会津・中通り・浜通り」は法律で決まった区分ですか?
いいえ。二〇二六年八月二十三日に e-Gov 法令検索の全法令横断検索で調べたところ、「中通り」は現行法令に一件もありませんでした。「浜通り」は人事院規則九―五五と地方環境局組織規則の二本に四文だけ、「会津」は四十六本の法令に五十五文ありますが、うち四本は廃止か失効で、残りも大半は会津若松市や南会津郡といった市町村・郡の名前です。「中通り」が現行法令に無い以上、三つが揃う条文はありえません。
「浜通り南支所」が会津を担当しているというのは本当ですか?
本当です。地方環境局組織規則第六十三条第二項の表は、浜通り南支所の管轄区域を「会津若松市、いわき市、喜多方市、南会津郡、耶麻郡、河沼郡、大沼郡、双葉郡のうち広野町、楢葉町、川内村及び大熊町」と定めています。会津地方の市町村はすべてここに含まれます。位置の欄は双葉郡広野町です。同じ表の浜通り中支所は郡山市や白河市を管轄しており、「浜通り」を名乗る三つのうち、名前と中身が一致しているのは浜通り北支所だけになります。
福島県内の税務署はいくつありますか?
十です。財務省組織規則の別表第九に、福島、会津若松、郡山、いわき、白河、須賀川、喜多方、相馬、二本松、田島の十署が載っています。所轄国税局は仙台国税局です。耶麻郡は二つに割られていて、磐梯町と猪苗代町が会津若松税務署、それ以外が喜多方税務署の管内です。酒類の製造免許と販売業免許は、製造場や販売場の所在地を受け持つ署が扱います。
福島県のウイスキーはどこで造られていますか?
郡山市笹川の笹の川酒造と、その敷地内にある安積蒸溜所が中心です。笹の川酒造は公式サイトの会社概要で創業を明和二年(一七六五年)としており、安積蒸溜所は二〇一六年の冬に動き出しました。山桜とYAMAZAKURAのほか、郡山市の福島県南酒販が企画する963とAXIS 963の中身もここでつくられ、シングルモルトからブレンデッド、カスクフィニッシュまで揃います。
全国新酒鑑評会で福島県は何回日本一になっていますか?
福島県の公式サイトは、令和三酒造年度の時点で「金賞受賞数で史上初の9回連続日本一(通算11度目)」と書いています。令和元酒造年度は金賞の選定そのものが行われなかったため、「九年連続」ではなく「九回連続」が正確です。連続は令和四酒造年度で途切れましたが、令和六酒造年度と令和七酒造年度は再び一位で、福島県も二年連続の金賞受賞数日本一として公表しています。
全国新酒鑑評会は誰が開いているのですか?
独立行政法人酒類総合研究所と日本酒造組合中央会の共催です。研究所が公表する審査結果に、毎年その旨が明記されています。金賞を受賞した製造場には、研究所理事長と中央会会長の連名で賞状が授与されます。出品は一つの製造場につき一点です。明治四十四年の第一回から数えて、令和七酒造年度が百十四回目にあたります。
飛露喜や寫樂を東京で買えますか?
特約店流通のため、扱いのある地酒専門店に限られます。入荷のたびに短時間で売り切れることが多く、確実に押さえたい場合は取り寄せが早い方法です。当店では飛露喜の四種を扱っており、在庫は商品ページの表示が最新です。フリマアプリの出品は保管状態が分からないため、贈答や長期保管には向きません。



























