シャボーとは|ナポレオンの年数と値段・瓶の商標【2026】
「シャボーのナポレオンは何年ものか」を調べると、答えの置き場所が無いことに行き当たります。アルマニャックの原産地呼称を定めた仕様書にも、業界団体アルマニャック全国業際事務局(BNIA)の熟成カテゴリ表にも、「ナポレオン」という語は一つも書かれていません。日本の法令にも0件です。ところが隣のコニャックの仕様書には、この語が条文の中に書いてあります。
この記事では、シャボーが実際に何を公表しているかを公式サイトと、かつて日本で取扱っていたサントリーの資料から拾い直します。いま額を公表しているのはフランスの自社ECだけで、ナポレオン70clが72.50ユーロ、X.O.スペリオールが105.00ユーロ。日本向けの希望小売価格を出している主体はいません。そのうえで、この銘柄のもう一つの顔である変わり種の瓶が、日本で誰のものとして登録されているのかを商標法の条文で追います。形そのものを名札にする制度は日本にもあり、酒類の区分だけで488件が生きています。ところがシャボーが日本に持つ名札は、1986年に登録された欧文字が一つあるだけでした。
シャボーとは|「世界一売れる」と名乗る銘柄と、登記の中の小さな会社

シャボー(Chabot)は、フランス南西部ガスコーニュ地方で造られるアルマニャックの銘柄です。16世紀の海軍提督フィリップ・ド・シャボーに名を借り、旧公式サイトは自らを「世界でいちばん売れているアルマニャックのブランド」「96か国で買える」と書いていました。
その名を持つ法人をフランス政府の企業検索で引くと、思っていたより小さな輪郭が出てきます。商号はARMAGNAC CHABOT、SIRENは306665886、形態はSAS。本店は40240 Labastide-d'Armagnacで、ここはジェール県ではなくランド県です。設立日は1976年1月1日、主業種コードは46.34Z=飲料の卸売で蒸留業でも農業でもなく、従業員数区分は非雇用(NN)。開示されている唯一の決算は2018年で、売上551,695ユーロ。「世界でいちばん売れている」という自称と、この登記上の輪郭は桁が合いません。造りや詰めを別の主体が担っている可能性はありますが、公表資料からは追えませんでした。
「1828年」と「1888年」と「1976年」
創業年の表記は一つに定まっていません。現行の公式サイトのトップは「The oldest Maison of Armagnac established in 1828」と掲げますが、同じサイトのExpertiseページは「rooted in Gascony since 1888」と書いています。同一サイト内で1828年と1888年が併存しているわけです。旧公式は「1828年にワインと蒸留酒の商いで名を成し、1963年に初めて国外へ持ち出した」としていました。1828年を裏づける一次資料は見つかりません。この記事では「1828年はブランドの自称、法人の設立は1976年」と分けて扱います。
日本の輸入元は、確認できない
日本ではかつてサントリーが取扱っていました。同社の商品情報サイトのアーカイブには、2008年1月時点で「シャボー エクストラスペシャル/XO/ナポレオン/V.S.O.P.」が並んでいます。アーカイブで確認できる最後の掲載は2017年で、現在のブランデーのページにシャボーはありません。なお同社のページに「輸入元」という語は無く、記述はサントリーが取扱うブランデーのラインナップ紹介にとどまります。
そして現在、日本で輸入元を名乗る法人は確認できません。流通しているのは二次流通品か個人輸入で、ある専門店の商品ページは輸入業者の欄に「個人で日本へ持ち込み」と明記しています。この一点が、あとの価格の章にそのまま効いてきます。
関連商品ラインナップ

下に並ぶのは、当店の在庫から自動で表示されるカードです。掲載しているのは在庫の一部で、入荷と完売のたびに入れ替わります。同じ銘柄でも旧ボトルと現行品が別の商品として並ぶことがあるので、ラベルと箱の状態は各ページで確かめてください。
「シャボーとは|ナポレオンの年数と値段・瓶の商標【2026】」に関連するおすすめ商品
ここではブランデーの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
ブランデー全体からさがす場合はブランデーの一覧へ。なお当店にシャボーの在庫は現在ありません。在庫を実測した時点で商品ページがあるアルマニャックは、ラベルド リーヴ 1993-2021、ドメーヌ ド ラサール 1972、モンテスキューのミニチュアボトルの3銘柄です。シャボーは日本での正規流通が確認できず、当店の仕入れ経路にも乗っていません。
ブランデー30銘柄を価格帯で比較

下の表は、当店が実際に扱っているブランデー30銘柄を一覧にしたものです。コニャックのVSから、アルマニャックのヴィンテージもの、国産ブランデー、最高峰のルイ13世までが同じ物差しの上に載ります。並べ替えと絞り込みは表の上のボタンで切り替えられます。
表の価格欄について二つ断っておきます。ここに出ている額は当店での取扱価格の目安であって、メーカーや輸入元の希望小売価格ではありません。ブランデーの多くはオープン価格で流通しており、額を公表する主体が銘柄によって異なります。もう一つ、旧ボトルや古酒は同じ銘柄名でも中身の熟成構成が現行品と違うため、価格差をそのまま品質差として読まないでください。
この表の価格は当店での取扱価格の目安であって、メーカーや輸入元の希望小売価格ではない。ブランデーの多くはオープン価格で流通しており、額を公表する主体が銘柄によって異なる。旧ボトルや古酒は同じ銘柄名でも中身の熟成構成が現行品と違うため、現行品との価格差をそのまま品質差として読まないこと。在庫と価格は入荷と完売のたびに変わるので、最新は各商品ページで確かめてほしい。なお当店にシャボーの在庫は現在なく、この表にアルマニャックは2銘柄が入っている。
30銘柄のうちアルマニャックは2銘柄で、シャボーは1件も入っていません。等級表記そのものの読み方はブランデーXOとは|格付け7段階と値段の目安に、原料ごとの分かれ方はブランデーの原料と種類の違いにまとめています。
ナポレオン・VSOP・XO|公表されている年数と、公表されていない年数

現行の公式サイトが各商品ページに書いている内容を、そのまま拾い出すと次のようになります(2026年8月26日時点)。
| 商品 | 容量 | 度数 | 公式が書いている熟成 | 瓶についての公式表記 |
|---|---|---|---|---|
| VS | 75cl | 40.0% | 記載なし | sleek and modern bottle |
| VSOP GOLD | 70cl | 40.0% | 最低7年 | sleek and modern bottle |
| NAPOLEON | 70cl | 40.0% | 記載なし | dark frosted bottle |
| X.O. SUPERIOR | 70cl/1.5L | 40.0% | 最長35年 | crystal-cut decanter |
| XO COEUR | 50cl | 40.0% | 記載なし | heart-shaped decanter(素材の記載なし) |
| EXTRA | 70cl | 40.0% | 一部が最長50年 | ガラス職人によるデカンタ |
| PRESTIGE No.8 | 70cl | 40.0% | 1938・1962・1964・1966・1968・1972・1974・1976 | 記載なし |
| SINGLE 48 years old | 70cl×3 | 48.8% | 48年・限定100セット | 記載なし |
目に留まるのは、ナポレオンだけが年数を書いていないことです。VSOP は「最低7年」、XO は「最長35年」、エクストラは「最長50年」と幅の一端を示しているのに、その中間にあるはずのナポレオンには数字が置かれていません。
18年前には、年数が公表されていた
かつては違いました。サントリーの商品情報サイトの2008年1月時点のページには、4本すべてに熟成年数が入っています。V.S.O.P.が「5年以上熟成」、ナポレオンが「6〜20年間熟成」、XOが「23年から35年間熟成」、エクストラスペシャルが「40〜50年熟成」。
ところが2014年7月時点の同サイトでは、XOとナポレオンの二つから熟成年数の記載そのものが消えています(同じ2014年のV.S.O.P.には「5年以上熟成」が残っています)。XOの額は5,600円(税別)になりますが、2008年の10,000円は参考価格、こちらは希望小売価格で、並べて引き算できる数ではありません。
したがって「シャボーのナポレオンは何年ものか」への、いま一次資料で言える答えはこうなります。メーカーは現在、年数を公表していない。18年前に日本の取扱元が公表していた値は6〜20年だった。
価格と相場|希望小売価格を出す主体が、いま日本にいない

いまシャボーの額を公表しているのは、フランスの自社ECだけです。VS 43.00/VSOP GOLD 50.00/NAPOLEON 72.50/X.O. SUPERIOR 105.00(1.5Lは220.00)/XO COEUR 110.00/EXTRA 300.00/PRESTIGE No.8 780.00/SINGLE 48年3本組 1,500.00(ユーロ)。ただしこれは自社が売っている価格であって、希望小売価格ではありません。日本向けの希望小売価格を公表している主体は確認できませんでした。
呼び方が「参考価格」から「希望小売価格」に変わった
興味深いのは、日本で取扱いがあった時期に、サントリーの商品ページで額の呼び方が入れ替わっていることです。2008年1月時点のページには、次の注記が付いていました。
※輸入酒・輸入ワインは、オープン価格制の商品であり、希望小売価格は設定していませんが、輸入酒に関しては、あくまで販売店様の目安として参考価格を提示しています。
サントリー商品情報サイト(2008年1月12日時点のアーカイブ)
2013年4月時点では、この注記が「※価格は販売店様の自主的な価格設定を拘束するものではありません。」に差し替わり、額の見出しは「参考価格」から「希望小売価格」へ変わっています。日本で公表されていた額を時点ごとに並べると次のようになります。
| 時点 | 商品(700ml) | 額(税別) | 呼び方 | 熟成年数の記載 |
|---|---|---|---|---|
| 2008年1月 | V.S.O.P. | 4,000円 | 参考価格 | 5年以上熟成 |
| 2008年1月 | ナポレオン | 6,000円 | 参考価格 | 6〜20年間熟成 |
| 2008年1月 | XO | 10,000円 | 参考価格 | 23年から35年間熟成 |
| 2008年1月 | エクストラスペシャル | 15,000円 | 参考価格 | 40〜50年熟成 |
| 2013年4月 | V.S.O.P. | 3,100円 | 希望小売価格 | 5年以上熟成 |
| 2013年4月 | ナポレオン | 4,000円 | 希望小売価格 | 6〜20年間熟成 |
| 2013年4月 | エクストラスペシャル | 11,800円 | 希望小売価格 | 40〜50年熟成 |
| 2014年7月 | V.S.O.P. | 3,100円 | 希望小売価格 | 5年以上熟成 |
| 2014年7月 | ナポレオン | 4,000円 | 希望小売価格 | 記載が消えている |
| 2014年7月 | XO | 5,600円 | 希望小売価格 | 記載が消えている |
| 2026年8月 | 全商品 | 公表なし | — | 公式ECのユーロ価格のみ |
額そのものより、右の二列の動きに目を向けてください。呼び方の列は2008年と2013年の間で入れ替わり、熟成年数の列は2014年にナポレオンとXOの二つからだけ消えます。同じ2014年のV.S.O.P.には残ったままです。そして最後は行そのものが日本から消えています。
いまの日本での目安
正規流通の窓口が無いため、日本で見かけるシャボーは二次流通品か個人輸入品です。額の判断材料は、公式ECのユーロ価格と国内の二次流通の実勢の二つしかありません。ガチョウの磁器デカンタや香港免税店向けのSHAKOのように、すでにカタログから消えた品は瓶の希少性で値が動くため、同じXOでも通常のクリスタルカット瓶とは別の相場になります。
「ナポレオン」は、アルマニャックの条文にもBNIAの表にも無い

年数も額もメーカーが書かないのなら、規則のほうが決めているのだろうと考えるのが自然です。ところがアルマニャックの原産地呼称(AOC)を定めた仕様書には、等級名が一つも登場しません。現行の仕様書は2025年3月27日のアレテで承認され、官報 JORF n°0077 texte n°31 として公示されています。全13ページを検索すると、VSOP・XO・Napoléon・hors d'âge はいずれも0件。熟成について書かれているのは次の一文だけでした。
8.a) Durée minimale de vieillissement — Les eaux-de-vie […] destinées à la consommation humaine directe sont conservées pendant une période minimale d'un an, décomptée à partir du 1er avril suivant la mise en vieillissement, dans des récipients en bois de chêne.
AOC Armagnac 仕様書 第8章a(樫の木の容器で最低1年)
法令が数えているのは「コント」という勘定だけ
仕様書が唯一名指しで引く国内法令が、2007年3月14日のアレテです。その第5条が熟成の数え方を定めています。蒸留した日から翌年3月31日までがコント00、その翌4月1日から樽にあるものがコント0、さらに翌年の4月1日からコント1、以後1年ごとに一つ上がる。異なるコントを混ぜたときはいちばん若い原酒のコントが全体のコントになる。この省令にも等級名は0件です。数字の勘定だけが法令にあり、その数字を商業上の呼び名に結びつける条文が無い。
BNIAの公式カテゴリ表にも、ナポレオンは載っていない
では等級名はどこにあるのか。アルマニャック全国業際事務局(BNIA)が公表しているカテゴリ表がそれにあたります。2010年以降、業界として表記を簡素化する方向で決められたもので、VS/***が樽で最低1年、VSOPが最低4年、XO/HORS D'ÂGEが最低10年、MILLÉSIMEが収穫年の4区分です。この4区分にナポレオンは入っていません。
等級を解説する個別ページも6本だけで、ナポレオンのページは存在しません。XOの最低熟成が6年から10年へ引き上げられたのは2018年4月1日からで、この改定を伝えた業界誌の記事には「Napoleon – 6-9 years」という一行がありますが、これはその報道にしか出てこない値です(同記事は団体名をBNIAではなくBNICと誤記してもいます)。
日本側も同じです。e-Gov法令検索が収録する約9,550本を横断すると、「ナポレオン」「アルマニャック」「コニャック」はいずれも0件。EUの蒸留酒規則((EU) 2019/787)も第13条第6項で「熟成期間または年数はいちばん若いアルコール成分を指す場合にかぎり表示できる」と定めるだけで、等級名を一つも定義していません。
ところが隣のコニャックの仕様書には、条文の中に書いてある
同じフランスの制度でも、コニャックの側はまったく違います。INAOが公開しているコニャックの仕様書は、熟成の勘定と等級名を条文の中で対応づけています。
Au compte 6 pour les mentions : « Napoléon », « Très Vieille Réserve », « Très Vieux », « Héritage », « Très Rare », « Excellence » et « Suprême » ;
AOC Cognac 仕様書 Partie I の I.b)(2026年2月2日のアレテによる改正版)
コニャック側の段階表はブランデーXOとは|格付け7段階と値段の目安に、等級表記の全体像はブランデーのナポレオンとはで整理しています(後者はアルマニャックのナポレオンも「コント6以上」と書いていますが、この値はコニャックの仕様書の規定で、アルマニャックの仕様書とBNIAのカテゴリ表では確認できません)。
つまりナポレオンは、アルマニャックの側にだけ置き場所が無い呼び名です。隣り合う二つの原産地呼称で、片方は等級名を条文の中で勘定ごとに名指しし、もう片方は一語も書いていない。
瓶の形は名札になるか|商標法が入れた「立体的形状」と、届かない救済

シャボーが知られているもう一つの理由が、瓶の形です。ガチョウをかたどった磁器のデカンタ、ハート形のボトル、軍帽をかたどったSHAKO。中身より先に形を覚えられている銘柄です。では日本の制度は、形そのものを名札として扱ってくれるのか。入口は商標法(昭和34年法律第127号)第二条第一項で、商標とは「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」であると定義されています。
一枚目の壁と、その救済
形は商標になり得る。ただしここから壁が二枚あります。一枚目は第三条第一項第三号で、商品の形状(包装の形状を含む)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は登録を受けられません。ただの形は目印にならないという趣旨です。ただしこの壁には救済があります。
2 前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。
商標法第三条第二項
使い込んで、その形を見ればあの会社だと分かるようになったのなら通してよい。コカ・コーラのコンツアーボトルもヤクルトの容器も、この第三条第二項で登録されました。
二枚目の壁には、その救済が届かない
第四条 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
十八 商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。…)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
商標法第四条第一項柱書および第十八号
「政令で定めるもの」の中身は商標法施行令第一条の二にあり、立体的形状、色彩又は音と書かれています。この号の文言は平成26年改正で「機能を確保するために不可欠な立体的形状」から書き換えられました。注目したいのが柱書の「前条の規定にかかわらず」という一句です。前条=第三条は第二項を含みます。第三条第二項で一枚目の壁を越えても、第十八号に当たればそこで再び止まる(この読み方は次章で見る知財高裁の判決要旨が逐語で確かめています)。第三条第二項の側も、救う相手を「前項第三号から第五号まで」に限っていて、第四条には一語も触れていません。
第四条には、特定の号だけ適用を外す仕掛けが三つあります。第二項は第六号、第四項は第十一号。そして第三項です。
3 第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。
商標法第四条第三項
第三項が拾うのは、時の経過で該当しなくなり得る号だけです。両隣の十七号(ぶどう酒・蒸留酒の産地表示)と十九号はどちらも入っているのに、間の十八号は入っていない。形が「当然に備える特徴」かどうかは時点で動かないからで、十八号は初めからこの逃げ道の外に置かれています。使い込んでも救われず、出願時点で見てもらうこともできない。特許庁の商標審査便覧は、この号の趣旨を「商標権者に…生産・販売の独占を事実上半永久的に許すこととなり、市場における適切な競争を阻害するおそれがある」ためと説明します。
なお語そのものも捻れています。e-Govで全法令を横断すると「立体的形状」は13文ありますが、「立体商標」という語は9文しかなく、商標法での4文はすべて附則です。本則の6万3千字あまりを検索しても0回。この語を定義しているのは商標法施行規則と商標登録令施行規則で、法律の本則では一度も使っていません。
十年で更新できる名札と、二十五年で終わる名札

前章の審査便覧が言う「事実上半永久的」は、比喩ではありません。商標権は第十九条第一項で十年、第二項で回数の上限を置かずに更新できます(更新の仕組みそのものはマイタイとは|作り方と名前は、どの法律が守るのかで条文ごと扱いました)。手続を続けるかぎり、名札は永遠に持ち続けられる。同じ「形」を守るもう一つの制度は、そうではありません。
第二十一条 意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。
意匠法第二十一条第一項
意匠法第二十一条は第二項までで終わり、更新に相当する項が置かれていません。起算点も違い、商標は「設定の登録の日」から、意匠は「意匠登録出願の日」から。出願から登録までの期間が、意匠側では持ち時間に食い込みます。
二十五年で終わる制度にも、同じ蓋がしてある
その意匠法にも、機能的な形を締め出す条文があります。第五条第三号の「物品の機能を確保するために不可欠な形状…のみからなる意匠」がそれです。二十五年で必ず終わる制度の側にも、同じ蓋がしてある。しかも「機能を確保するために不可欠」という言い回しを持つ全法令3文のうち、もう一つは保護期間3年の不正競争防止法です。3年・25年・無期限の三つが同じ蓋を持つ以上、蓋の有無は期限の長さだけでは決まっていません。
裁判所は、その期限の長さを制度の棲み分けの理由に置いていました。
商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美観の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有する点を踏まえると…公益に反するからである
知財高裁 平成19年6月27日判決(平成18年(行ケ)第10555号)
意匠法第五条第三号の蓋は「特許で取るべき形を意匠で取らせない」ための蓋。商標法第四条第一項第十八号の蓋は「期限つきの制度で取るべき形を、期限の無い制度で取らせない」ための蓋です。同じ形を締め出していても、二つの蓋が向いている先は違います。
十八号で落ちた公表裁判例は、いまのところ0件
これだけ厳しい号なのに、知的財産裁判例集で十八号に触れる判決は20件、争点に挙げたのは1件だけです。その1件も「十八号には当たらない」と判断して終わっています。なお数えたのは公表裁判例だけで、特許庁の審決までは追っていません。
趣旨として引いたのが上の平成18年(行ケ)第10555号で、懐中電灯の立体形状について使用による識別力の取得を認めた例です。判決要旨は十八号について「同法3条2項の適用を排除している」と明言していますが、十八号の該当性そのものは判断していません。争点に挙げたのが知財高裁 令和元年11月26日判決(令和1年(行ケ)第10086号)。照明器具のシェード形状の立体商標を無効にしようとした事件で、請求は棄却されました。判決は、同じ機能を出せる形が「シェードの枚数、形状、向き又はそれらの組合せなどにおいて」他にも採り得る以上、不可欠な形状とは認められないと述べています。
要点はここです。「その形でないと機能が出せない」と言えるためには、代わりになる形が他に無いことまで要る。ガチョウの形も、ハートの形も、軍帽の形も、酒を入れるために必ず採らざるを得ない形ではありません。シャボーの変わり種の瓶は、十八号で止まる形ではありません。残るのは第三条第二項の使用実績を示せるかです。
CHABOTの日本の名札は、文字がひとつあるだけ

では実際に、シャボーは日本で何を押さえているのか。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で照会すると、酒類の区分で見つかるのは1件だけでした。登録番号第1881594号、出願1984年6月29日、設定登録1986年8月28日。商標の表示はCHABOT、称呼は「シャボー,チャボット」。権利者はアルマニャック シャボで、住所欄は「フランス国」のみ。区分は第33類「ブランデー,その他の洋酒」。そして2026年4月1日に更新登録され、存続期間満了日は2036年8月28日です。
商標見本はゴシック体の欧文字だけで、瓶の図形要素は含まれていません。データ上も立体商標のフラグは付かず、第三条第二項の適用も記録されていません。ふつうの文字商標が1件、ほぼ40年前から続いていて、4か月余り前に更新されたところという状態です。
ガチョウもハートも、立体商標にも意匠にもなっていない
形の側は空白でした。権利者名に「アルマニャック」を含む商標は2件で、「アルマニャック シャボ」名義は上の1件だけ。立体商標だけに絞ると0件です。意匠のほうも「CHABOT」で4件出てきますが、いずれもドイツの清掃機器メーカーの窓用清掃機の部品で、同名の別物でした。
制度が使われていないわけではありません。存続中の立体商標を第33類(酒類)だけで数えると488件あり、サントリーは制度が施行された1997年4月1日の初日にボトル形状を出願しています(登録第4175113号)。その488件は形状のみからなるものばかりではなく、第三条第二項の適用が記録されているのはキリンの缶入り酎ハイの缶形状(登録第6127292号)の1件だけです。区分をまたいで飲料容器まで広げても、コカ・コーラのコンツアーボトル(第5225619号・第32類)とヤクルトの容器(第5384525号・第29類)を足した3件。3件とも一度は拒絶されてから、審判か訴訟を経て通っています。
ガチョウの瓶が、実際には何だったのか
肝心のガチョウ瓶について、ブランド自身が書いていたのは次の一段落だけでした。
the tame geese on the Chabot estate guarded the cellars ... a handmade, limited edition porcelain decanter, detailed with 12-carat gold. The White Geese contains X.O. Private Reserve while the Gold and Blue Geese contain Extra Private Reserve – a highly valued gift.
旧公式サイト Goose ページ(2013年9月2日時点のアーカイブ)
ここから確定できるのは、素材が磁器であること、手作りの限定品であること、金彩は12カラットであること、白いガチョウにはXO、金と青にはExtraが入っていること。逆に公式は容量も度数も発売年も製造元も一切書いていません。海外オークションや販売店の記述では、製造はリモージュのHaviland、限定16,000本、700ml・40%とされますが、これらは流通側の記載です。
そしてこの瓶は、公式ラインナップから消えています。2019年1月時点のナビゲーションにはGooseの項目が実在しますが、2020年8月時点のメニュー10本からはGooseの文字が消えました。同じリモージュ産磁器のSHAKOは香港の免税店向けの品で、競売の記載ではラベルに容量も度数も書かれておらず50clと推定されています。
形で覚えられている銘柄が、確認できる範囲では、その形を制度の上で何一つ押さえていない。引いたのは権利者名と商標見本なので、別名義で登録されていれば今回の照会には出てきません。しかもその形は、いまカタログにも残っていません。
味わいと飲み方|四十度をどう開かせるか

公式が度数を書いている8品は、48年の単一熟成品(48.8%)を除いてすべて40.0%です。差が出るのは度数ではなく、ブレンドされた原酒の年齢と、樽から受け取った要素の量です。アルマニャックはコニャックと比べて力強く素朴で、香りの幅が広いと言われます。半連続式の蒸留機が主流で、留出時の度数が低いぶん原料由来の成分が残りやすいためです。りんごのブランデーと比べると輪郭がつかみやすくなります(カルヴァドスとは)。
四つの飲み方と、保管で気をつけること
まずはストレートで、常温のまま少量をグラスに。次にトワイスアップ。常温の水を同量まで加えると、40%では閉じていた果実や花の香りがほどけます。氷は入れません。食後にはロックも気軽で、氷が溶けるにつれた変化そのものを楽しむ飲み方になります。VSやVSOPのような若いタイプはソーダで割っても輪郭が崩れませんが、長期熟成のXOやエクストラを割るのは樽の要素が水に散ってしまうためすすめられません。
蒸留酒は瓶に詰めた時点で熟成が止まります。家で寝かせても価値は上がりません。気をつけるのはコルク栓の乾燥と、直射日光による液色の変化です。立てて、暗く、温度の振れない場所に置く。磁器のデカンタは中身が見えないので、液面の減りに気づきにくい点に注意してください。
飲まないシャボー・洋酒の査定・買取はリンクサス酒販へ

贈答で受け取ったまま棚に置いてある、実家の整理で出てきた。シャボーはこの二つの相談がとくに多い銘柄です。ブランデーの買取では、宅配・出張・店頭の三つの形で全国からお預かりしています。
査定で見るのは次の点です。未開栓であること。液面がショルダーより下がっていないこと。コルク栓が痩せていないこと。ラベルに水濡れやカビの跡がないこと。化粧箱が残っていること。
磁器のデカンタは、ガラス瓶とは見るところが変わります。公式が容量も度数も公表していない品が多いため、底面のシリアル番号、箱の型番、金彩の擦れ具合が年代と真贋の手がかりになります。ガチョウ瓶のように限定本数が知られているものは、番号が読めるかどうかで評価が変わります。
ウイスキーや日本酒も一緒に、という場合はウイスキーの買取と日本酒の買取もあわせてご相談ください。まとめてお預かりするほうが、送料の面でも手間の面でも負担が小さくなります。
シャボーでよくある質問

シャボーのナポレオンは何年熟成ですか。
現在のメーカーは公表していません。公式サイトのNAPOLEONのページには熟成年数の記載がなく、VSOPには「最低7年」、XOには「最長35年」と書かれているのにナポレオンだけ数字がありません。日本の資料でも2013年時点では「6〜20年間熟成」でしたが、2014年に消えています。この等級名はAOCアルマニャックの仕様書にもBNIAのカテゴリ表にも載っていません(コニャックの仕様書にはコント6として載っています)。
シャボーの定価はいくらですか。
日本向けの希望小売価格を公表している主体は現在ありません。フランスの公式ECがNAPOLEON 70clを72.50ユーロ、X.O. SUPERIOR 70clを105.00ユーロで売っていますが、これは自社の販売価格です。2010年代に日本で取扱いがあった時期の希望小売価格は、ナポレオン700mlが4,000円、XO 700mlが5,600円(いずれも税別)でした。
シャボーとはどんなお酒ですか。
フランス南西部ガスコーニュ地方で造られるアルマニャックの銘柄です。16世紀の海軍提督フィリップ・ド・シャボーに名が由来します。運営法人はランド県のARMAGNAC CHABOT(SIREN 306665886・SAS)で、登記上の業種は飲料の卸売、設立は1976年です。
創業1828年と書かれているのを見ましたが本当ですか。
ブランドの自称です。現行の公式サイトはトップで「established in 1828」と掲げる一方、別ページには「rooted in Gascony since 1888」とあり、表記が一致していません。企業登記上の設立は1976年で、1828年を裏づける一次資料は確認できませんでした。
ガチョウの形のボトルはいまも買えますか。
公式ラインナップからは消えています。2019年1月時点にはGooseの項目がありましたが、2020年8月時点のメニューからは無くなっています。旧公式によれば、手作りの限定磁器デカンタで12カラットの金彩、白いガチョウにXO、金と青にExtraが入っていました。容量と度数は公式が公表しておらず、流通側の記載では700ml・40%です。
ハート形のボトルの中身は何ですか。
XOです。現行の公式サイトではXO COEURとして50cl・40.0%、GoldとSilverの2色が掲載されています。旧公式ではsilver・pink・goldの3色でした。素材について公式は書いていません。
シャボーの瓶の形は商標登録されていますか。
日本ではされていません。J-PlatPatで確認できるシャボーの商標は、第33類「ブランデー,その他の洋酒」の欧文字商標「CHABOT」(登録第1881594号・1986年8月28日登録・2026年4月1日更新)の1件だけで、立体商標のフラグは付いていません。ガチョウ形やハート形は立体商標としても意匠としても登録が確認できませんでした。
瓶の形はそもそも商標にできるのですか。
できます。商標法第二条第一項が「立体的形状」を商標に含めています。ただし形だけの商標は第三条第一項第三号で原則登録できず、第三条第二項の「使用をされた結果」需要者が識別できるようになった場合に限って通ります。さらに第四条第一項第十八号があり、この号に第三条第二項の救済は及びません。
不要なシャボーはどこに売るのが安心ですか。
お酒の買取を専門に扱う店をおすすめします。リンクサスでは宅配・出張・店頭の三形式で全国から承っています。日本に正規流通の窓口が無い銘柄なので、比べる基準は二次流通の実勢と瓶の希少性になります。磁器デカンタは底面のシリアル番号と化粧箱が評価を左右します。






































