シャブリとシャルドネの違いを公式の仕様書で確かめる
検索窓に並ぶ「シャブリ シャルドネ 違い」という言葉には、実は答えがひとつしかありません。この2つは比べる関係になく、片方がもう片方を必ず含んでいます。そこを押さえたうえで、フランスの原産地呼称を所管する国立原産地・品質研究所(INAO)が公示している仕様書と、ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)の公式サイトを突き合わせると、日本語の解説記事で当たり前のように書かれている数字のいくつかが、法令の条文とずれていることが分かります。
この記事では、区分の数、村の数、畑の名前の数という三つの「数」を条文から数え直し、そのうえで温度や合わせる料理といった飲むときの話に進みます。お酒は20歳になってから、量はほどほどに楽しんでください。
シャブリとシャルドネは比べる関係にない

シャブリはフランス・ブルゴーニュ地方の北端にある産地の名前で、シャルドネはぶどうの品種の名前です。層が違うので「どちらが上か」という問いは立ちません。
これは感覚の話ではなく、条文にそう書いてあります。プティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・グラン・クリュの仕様書は、いずれも品種の条をLes vins sont issus exclusivement du cépage chardonnay B.
(ワインは品種シャルドネB のみから造られる)という一字一句同じ一文で書いています。3本の仕様書は公示された年が違うのに、この行だけは完全に一致します。
つまりシャブリを名乗るワインは例外なくシャルドネ100%です。BIVBはこの関係を、英国のワインライター、ローズマリー・ジョージの言葉としてChablis is Chardonnay, but not every Chardonnay is Chablis.
(シャブリはシャルドネである。しかしすべてのシャルドネがシャブリなのではない)と引いています。
シャルドネはシャブリでは別の名でも呼ばれる
BIVBによれば、シャルドネはブルゴーニュ原産で、シャブリではボーヌロワ(Beaunois)という呼び名も使われてきました。ぶどうの系統としてはノワリヤン(Noiriens)という一族に分類され、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、ムロン、ガメイ、アリゴテが同じ一族に並びます。カリフォルニア大学デーヴィス校の研究では、この一族の祖先はおそらくピノ・ノワールとグーエ(Gouais)だとされています。グーエは果汁の質で評価されることのないぶどうで、いまのフランスでは保存用の圃場にしか残っていません。
シャルドネは石灰分の多いやせた土を好み、比較的早く熟します。そのぶん芽吹きが早く、氷点下の恐れが残る時期に育ちはじめることがあるため、春の遅霜に弱いという弱点をBIVBは明記しています。霜の年はシャブリの供給が細ります。
法令上のアペラシオンは4つではなく3つ

日本語の解説では「シャブリには4つの格付けがある」と説明されるのが普通です。BIVB自身も英語の公式サイトでThey are sub-divided into four appellations
(4つのアペラシオンに分かれる)と書き、シャブリ・プルミエ・クリュの頁にはAppellation d’Origine Contrôlée created in 1967.
と、独立したAOCが1967年に生まれたかのように記しています。
ところがINAOの側では、プルミエ・クリュは独立したアペラシオンとして登録されていません。INAOのシャブリの製品ページにある一文はl’appellation Chablis reconnaît en son sein des terroirs ayant la mention premier cru
(アペラシオン・シャブリは、その内部に「プルミエ・クリュ」の表示を持つテロワールを認めている)です。「その内部に」という言い方がすべてを言っています。
仕様書も同じ構造です。シャブリの仕様書は第II章でLe nom de l’appellation d’origine contrôlée peut être complété par la mention « premier cru »
(原産地統制呼称の名称は「プルミエ・クリュ」の表示によって補うことができる)と定めており、プルミエ・クリュ単独の仕様書は存在しません。実際、INAOのサイトでシャブリ・グラン・クリュには製品ページがあり、その下のクリマ単位にもページがあるのに、シャブリ・プルミエ・クリュのページだけが見つかりません。
日本語の公式サイトでも等級の選択肢は3つ
BIVBの日本語公式サイトには、ブルゴーニュのアペラシオンを絞り込む検索フォームがあります。その「品質等級」の選択肢はアペラシオン・グラン・クリュ/地域名アペラシオン/村名アペラシオンの3つだけで、プルミエ・クリュという等級は選択肢に存在しません。プルミエ・クリュが村名アペラシオンの中の表示であることが、ここでも裏づけられます。
| 区分 | 法令上の位置づけ | 初めて認められたデクレ | 現行の仕様書を公示したアレテ |
|---|---|---|---|
| プティ・シャブリ | 独立したAOC | 1944年1月5日のデクレ | 2023年12月11日のアレテ(JORF n°0295(2023年12月21日)) |
| シャブリ | 独立したAOC | 1938年1月13日のデクレ | 2025年9月10日のアレテ(JORF(2025年9月12日)) |
| シャブリ 特級 | 独立したAOC | 1938年1月13日のデクレ | 2024年10月24日のアレテ(JORF n°0266(2024年11月9日)) |
年号にも注意が必要です。シャブリとシャブリ・グラン・クリュは同じ1938年1月13日のデクレで同時に認められました。プティ・シャブリだけが6年遅れて1944年1月5日です。「格が高い順に古い」わけでも「格が低い順に新しい」わけでもありません。
プティ・シャブリは格下のシャブリではない

「プティ」は小さいという意味なので、シャブリの廉価版と受け取られがちです。これについては両方の公式が同じ趣旨のことを、それぞれの言語で書いています。BIVBはthere is nothing "little" about Petit Chablis
(プティ・シャブリに「小さい」ところなど何もない)、INAOはIl n'a de petit que le nom.
(小さいのは名前だけである)です。
制度上も、プティ・シャブリはシャブリとは別の仕様書を持つ独立したアペラシオンで、格下げされたシャブリではありません。土壌の年代も違えば、条文に書かれた数字も違います。
| 区分 | 果汁の糖度の下限 | 自然アルコール分の下限 | 基準収量 | 上限収量 |
|---|---|---|---|---|
| プティ・シャブリ | 153 g/L | 9.5% | 60 hL/ha | 75 hL/ha |
| シャブリ | 161 g/L | 10% | 60 hL/ha | 75 hL/ha |
| シャブリ 一級 | 170 g/L | 10.5% | 58 hL/ha | 73 hL/ha |
| シャブリ 特級 | 178 g/L | 11% | 54 hL/ha | 64 hL/ha |
下限が上がるほど、ぶどうはより熟していなければならず、収量は絞られます。プティ・シャブリの自然アルコール分の下限は9.5%、特級は11%で、その差は1.5ポイントです。収量は基準で60から54へ、上限で75から64へと下がります。なお、ここでいう「自然アルコール分」は補糖する前の値で、瓶に書かれる度数とは別物です。度数そのものの話はワインのアルコール度数の記事にまとめています。
3本の仕様書に共通する禁止事項も、ワインの性格を決めています。L’irrigation est interdite.
(灌漑は禁止する)、L’utilisation de morceaux de bois est interdite
(木片の使用は禁止する)、Les pressoirs continus sont interdits.
(連続圧搾機は禁止する)の3つです。2つめはオーク樽の禁止ではなく、木片すなわちチップの禁止です。樽で熟成させたシャブリは条文に反しません。植栽密度は3本とも1ヘクタールあたり5,500本以上と定められています。
シャブリを名乗れる村は20ではなく17

BIVBの英語サイトは、シャブリが造られる村として20の地名を挙げています。一方、2025年9月10日のアレテで公示されたシャブリの仕様書が挙げるのは17 のコミューンで、しかも「2025年の公式地理コードに基づく」と明記されています。INAOの製品ページも、シャブリとプティ・シャブリの両方について17 communes autour de Chablis
(シャブリ周辺の17のコミューン)と書いています。
差の3つはFyé、Milly、Poinchyです。これらはコミューンではなく、シャブリ村の中の地名です。2010年に意見公募にかけられた版の仕様書は、一級クリマの一覧表でこの3つをChablis (Fyé)
、Chablis (Milly)
、Chablis (Poinchy)
と括弧つきで書いており、シャブリ村に属することがそのまま読み取れます。
| 数え方 | 出所 | 数 | 含まれるもの |
|---|---|---|---|
| コミューン | 仕様書(2025年9月公示) | 17 | 行政区画としての村 |
| 地名 | BIVB英語サイト | 20 | 上の17に Fyé・Milly・Poinchy を加えたもの |
| 特級のコミューン | 仕様書(2024年10月公示) | 1 | シャブリのみ |
同じずれは特級でも起きます。BIVBは特級についてmainly produced in the village of Chablis, but also at Fyé and Poinchy
(主にシャブリ村で、フィエとポワンシーでも造られる)と書きますが、グラン・クリュの仕様書の地理的範囲はsur le territoire de la commune de Chablis dans le département de l’Yonne
(ヨンヌ県のシャブリ・コミューンの領域において)の一文だけです。INAOの製品ページはさらに踏み込んでla seule commune actuelle de Chablis
(現在のコミューンとしてはシャブリただ1つ)と書いています。「現在の」という限定語が、フィエやポワンシーがかつて別の単位だったことを示しています。
特級は7つのクリマとされるがラ・ムトンヌという名もある

グラン・クリュの仕様書は、アペラシオン名の後に付けられるクリマ名を7 つ、次の順で列挙しています。アルファベット順なので、日本語の解説でよく見る並びとは順序が違います。
| # | クリマ名(仕様書の表記) | カナ表記 |
|---|---|---|
| 1 | Blanchot | ブランショ |
| 2 | Bougros | ブーグロ |
| 3 | Grenouilles | グルヌイユ |
| 4 | Les Clos | レ・クロ |
| 5 | Preuses | プリューズ |
| 6 | Valmur | ヴァルミュール |
| 7 | Vaudésir | ヴォーデジール |
そして仕様書のどこにも、この7つのあいだの序列は書かれていません。「レ・クロが特級の頂点」といった評価はしばしば語られますが、条文はそれを裏づけていません。7つは横並びです。
8つめの名として語られるラ・ムトンヌ
シャブリの特級を調べると、7つのほかに「ラ・ムトンヌ」という名前が出てきます。これについてINAOは、7つのクリマを列挙したあとに次のように書いています。Il existe également un nom d'usage utilisé depuis des siècles pour désigner une vigne du Chablis Grand Cru : "la Moutonne" située à 95 % sur Vaudésir et 5 % sur Preuses.
(シャブリ・グラン・クリュのあるぶどう畑を指すために何世紀にもわたって使われてきた慣用名も存在する。すなわち「ラ・ムトンヌ」であり、95 パーセントがヴォーデジール、5 パーセントがプリューズに位置する。)
言い換えると、ラ・ムトンヌは8つめの特級畑ではなく、2つの特級畑にまたがる区画に付けられた慣用名です。仕様書のクリマ一覧には入りません。この点をひとことで書くなら、「公式のクリマは7、慣用名を数えるなら8」となります。
一級のクリマ名は畑の名前と一致しないことがある

ここがシャブリでいちばん実用的な知識かもしれません。シャブリの仕様書は一級のクリマを40 挙げていますが、それらは17 の群にまとめられており、各群の先頭に置かれた名前を「主要なクリマ」と呼びます。そして条文はこう続きます。
Le nom du climat principal, indiqué en tête de chaque groupe distingué par un tiret dans la liste ci-dessus, peut, conformément aux usages, être donné aux vins provenant de tous les climats constituant le même groupe.
(上記の一覧でダッシュによって区切られた各群の先頭に示された主要クリマの名称は、慣行に従い、同じ群を構成するすべてのクリマに由来するワインに与えることができる。)
つまりラベルに「フルショーム」と書かれていても、ぶどうがフルショームという名の区画で穫れたとは限りません。同じ群のコート・ド・フォントネ、ロム・モール、ヴォーロラン、ヴォープランのいずれで穫れたものでも、フルショームを名乗ることが認められています。
| 主要クリマ | カナ表記 | 同じ群のクリマ数 | 同じ群に属する他のクリマ |
|---|---|---|---|
| Beauroy | ボーロワ | 3 | Côte de Savant、Troesmes |
| Berdiot | ベルディオ | 1 | (この群は1つだけ) |
| Chaume de Talvat | ショーム・ド・タルヴァ | 1 | (この群は1つだけ) |
| Côte de Jouan | コート・ド・ジュアン | 1 | (この群は1つだけ) |
| Côte de Léchet | コート・ド・レシェ | 1 | (この群は1つだけ) |
| Côte de Vaubarousse | コート・ド・ヴォーバルース | 1 | (この群は1つだけ) |
| Fourchaume | フルショーム | 5 | Côte de Fontenay、L'Homme Mort、Vaulorent、Vaupulent |
| Les Beauregards | レ・ボールガール | 2 | Côte de Cuisy |
| Les Fourneaux | レ・フルノー | 3 | Côte des Prés-Girots、Morein |
| Mont de Milieu | モン・ド・ミリュー | 1 | (この群は1つだけ) |
| Montée de Tonnerre | モンテ・ド・トネール | 4 | Chapelot、Côte de Bréchain、Pied d'Aloup |
| Montmains | モンマン | 3 | Butteaux、Forêts |
| Vaillons | ヴァイヨン | 8 | Beugnons、Chatains、les Épinottes、Les Lys、Mélinots、Roncières、Sécher |
| Vau de Vey | ヴォー・ド・ヴェイ | 2 | Vaux Ragons |
| Vau Ligneau | ヴォー・リニョー | 1 | (この群は1つだけ) |
| Vaucoupin | ヴォークパン | 1 | (この群は1つだけ) |
| Vosgros | ヴォグロ | 2 | Vaugiraut |
群の大きさには偏りがあります。もっとも大きいのはヴァイヨンで、自分自身を含めて8 のクリマが同じ名前を名乗れます。次がフルショームの5、モンテ・ド・トネールの4と続きます。一方、ベルディオやヴォークパンのように群が1つだけのクリマも8 あります。
プルミエ・クリュと書かれていないラベルもある
同じ第II章には、アペラシオン名の後にpremier cru
の表示を付けずにクリマ名だけを続ける書き方も認められています。「Chablis Fourchaume」のように一級の表示のないラベルでも、一級の条件で造られたワインということがあります。ラベルの文字数だけで格を判断すると読み違えます。
BIVBはこの40という数について、一級の範囲には79 のリュー・ディ(小地名)があり、INAOがそれをラベルに書ける40 のクリマにまとめた、と説明しています。そのうえでIn reality, however, only twenty of them are commonly used.
(実際には、そのうち20ほどしか一般には使われていない)とも書いています。
2つの土壌がプティ・シャブリとシャブリを分けている

シャブリの畑は、ジュラ紀の2つの時代にできた土壌の上にあります。キンメリジャンと、より新しいポートランディアンです。後者は現在ではチトニアンと呼ばれます。BIVBはThe Petit Chablis appellation is mainly grown on Portlandian soils
と書き、シャブリ、一級、特級は主にキンメリジャンの上にあるとしています。
| 土壌 | 年代の目安 | でき方 | 主に対応する区分 |
|---|---|---|---|
| キンメリジャン | 150 百万年前 | 浅く温かい海に炭酸塩が積もり、陸からの浸食物である粘土が混ざった。泥灰土と小さな牡蠣の化石を含む | シャブリ・一級・特級 |
| ポートランディアン(チトニアン) | 135 百万年前 | 海面が高く、陸からの浸食物が少なかったため、より硬い石灰岩になった | プティ・シャブリ |
この硬さの差が、いまの地形をつくりました。40 百万年前のアルプス造山運動で押し上げられたとき、硬いポートランディアンの石灰岩は割れ、柔らかいキンメリジャンの泥灰質石灰岩は圧力を吸収しました。その後の浸食が柔らかい層を削り、斜面と台地が分かれます。こうして台地や斜面の上部にプティ・シャブリ、斜面にその他の区分という現在の配置になりました。プティ・シャブリの畑は標高およそ230〜280メートル、特級はおよそ100〜250メートルです。
キンメリジャンの土に含まれる小さな牡蠣の化石には名前があります。Exogyra virgulaで、コンマのような形をしていることからこの名が付きました。BIVBはこの土壌について、地質学者ジャック・ファネのThe vineyards of the Chablis region have just one religion: Kimmeridgian
(シャブリ地方のぶどう畑には宗教がひとつしかない。キンメリジャンである)という一文を引いています。
2つの土壌の名前はどちらもイングランド由来
BIVBはこの節にA subsoil with an English accent
(英国訛りの土壌)という見出しを付けています。キンメリジャンはイングランド南部ドーセット州のキンメリッジ村、ポートランディアンはイングランドのポートランド島に由来する地層名だからです。フランスの産地の個性を説明する言葉が、海を挟んだ地名で成り立っていることになります。
ミネラルという言葉が意味していること
シャブリの説明に必ず出てくる「ミネラル」について、BIVBは踏み込んだ説明をしています。まずミネラリティという語がメディアや書物に現れたのは1980年代で、比較的新しい言葉です。一方で「火打ち石」という表現は18世紀から使われており、1836年のアンドレ・ジュリアン『Manuel du Sommelier』の一節をBIVBは引いています。Among the different aromas of terroir, some are found to be pleasant when not too pronounced, such as that of flint in the wines of Chablis.
(テロワールに由来するさまざまな香りのうち、強すぎなければ心地よいとされるものがある。シャブリのワインにおける火打ち石の香りがそれである。)
そのうえでBIVBは、岩石としての鉱物と、根が吸い上げる栄養としてのミネラルは別のもので、ワインに含まれる鉱物成分の濃度は人の口では感じ取れないほど低い、と明記しています。香りの正体としては、ドゥニ・デュブルデュー教授が同定したベンゼンメタンチオールという分子が、白ワインに煙や火打ち石の香りをもたらすことが挙げられています。つまり「土の味がする」という説明は、公式サイト自身が退けている言い方です。
提供温度は8度から14度まで区分ごとに違う

白ワインはよく冷やして、という言い方は、シャブリに関しては正確ではありません。BIVBは4つの区分それぞれに別の温度を示しており、もっとも低いプティ・シャブリの8度と、もっとも高い特級の14度では6度の開きがあります。
| 区分 | BIVBが示す提供温度 | 飲み頃の目安 |
|---|---|---|
| プティ・シャブリ | 8℃(食前酒として)/9〜10℃(食事と) | 収穫の2年後が目安 |
| シャブリ | 10〜11℃ | 若いうちでも、5年以上置いても |
| シャブリ 一級 | 10〜11℃ | 5年から10年 |
| シャブリ 特級 | 12〜14℃ | 収穫から10〜12年以降。15年、20年も珍しくない |
特級の12〜14度という温度は、生産者側でも確認できます。ルイ・ミシェル・エ・フィスは、自社のグラン・クリュ「グルヌイユ」の頁にServir entre 12°c et 14°c. Aérer avant dégustation.
(12度から14度のあいだで供すること。試飲の前に空気に触れさせること。)と書いています。BIVBの数字と一致します。
グラスについてBIVBが挙げる条件は3つです。手の熱が伝わらないように脚があること、香りを上部に集めるために下がふくらみ上が狭まるチューリップ型であること、そして注ぎすぎないことです。デカンタージュは必須ではなく、Most Chablis wines can be served directly from the bottle.
(ほとんどのシャブリはボトルからそのまま供してよい)としたうえで、若いものは供する30分前に移すと香りが開くことがある、という書き方になっています。道具の話はデカンタの記事とカラフェとの違いの記事にまとめています。
シャブリには公表された定価が存在しない

「シャブリ 値段」「シャブリ 価格」で調べると、いくつもの金額が並びます。ただしその金額はどれもメーカー公表の定価ではありません。BIVBの公式サイトにもINAOの製品ページにも、シャブリの希望小売価格にあたる数字はひとつも載っていません。両者が公表しているのは面積、収穫量、輸出比率といった産業統計までです。
| 公表している主体 | 公表しているもの | 価格の記載 |
|---|---|---|
| INAO | 仕様書(品種・収量・糖度・範囲)と製品説明 | なし |
| BIVB | 面積・収穫量・構成比・提供温度・飲み頃 | なし |
| 生産者 | 畑・醸造・熟成・提供温度 | サイトにより異なる |
| 小売・通販 | 実際の販売価格 | あり(店舗ごとに変動) |
これは日本のウイスキーのように「メーカー希望小売価格」が公表される商品とは仕組みが違います。ヴィンテージごとに出来と量が変わり、為替と輸入経路でも変わるため、比べるべきは定価ではなく、いま買える店の価格になります。この記事の比較表でも金額の列は置かず、購入先のリンクで確認していただく形にしています。
BIVBが公表している数字のほうは、産地の規模を掴むのに役立ちます。2023年の実作付面積は5,866 ヘクタールで、区画として指定されている範囲は6,800 ヘクタールあります。つまり指定された土地がまだ全部は植えられていません。フィロキセラと2つの大戦を経た1955年には550 ヘクタールまで縮んでいました。
| 区分 | 構成比 | 2023年の面積 | 2023年の収穫量 | 2019〜2023年の平均 |
|---|---|---|---|---|
| プティ・シャブリ | 20.5% | 1,286 ha | 77,038 hL | 61,170 hL |
| シャブリ | 65% | 3,710 ha | 221,467 hL | 193,799 hL |
| シャブリ 一級 | 13% | 770 ha | 44,076 hL | 39,360 hL |
| シャブリ 特級 | 1.5% | 99 ha | 5,511 hL | 4,462 hL |
2019年から2023年の収穫は合計で298,792 ヘクトリットルをわずかに超え、BIVBはこれを39.8 百万本に相当すると換算しています。1ヘクトリットルは100リットルで、BIVBの換算では133 本です。ブルゴーニュ全体の生産量に占める割合は19 パーセント、ワイン生産者は364 、協同組合は1つで生産の4分の1を占め、販売数量の67 パーセントが輸出です。
料理との合わせ方と、家での置き場所

生牡蠣とシャブリという組み合わせは有名ですが、BIVBの記述はもう少し幅があります。プティ・シャブリはサンザシやアカシアといった白い花に、レモンやグレープフルーツの柑橘が重なり、火打ち石を思わせる土台がある、とされます。シャブリには青リンゴ、レモン、リンデン、ミント、アカシア、甘草、刈りたての干し草が挙げられ、モーソロン(妖精の輪のきのこ)という香りの表現がシャブリと特級の両方に出てきます。熟成すると色が黄金色に寄り、スパイスの調子が出てきます。
| 区分 | BIVBが挙げる主な香り | 合わせやすい料理の方向 |
|---|---|---|
| プティ・シャブリ | サンザシ・アカシアの白い花、レモン、グレープフルーツ、火打ち石 | 前菜、サラダ、軽い魚介 |
| シャブリ | 火打ち石、青リンゴ、レモン、リンデン、ミント、甘草、干し草 | 生牡蠣、白身魚、刺身 |
| シャブリ 一級 | クリマにより、閉じたミネラル系から繊細な花の系まで | 鶏肉のクリーム煮、貝、白身魚のソテー |
| シャブリ 特級 | 火打ち石のミネラル、リンデン、ナッツ、蜂蜜と杏仁の気配 | 甲殻類、コクのある魚料理、熟成チーズ |
保管についてBIVBが挙げる条件は具体的です。コルクを乾かさないように寝かせる、暗く振動のない場所に置く、温度は10〜12度で安定させる、湿度は70〜80パーセント、塗料やガスなど匂いの強いものと同じ場所に置かない、段ボール箱は湿気を吸うので避ける、という順です。さらにThe smaller the bottle, the faster the development of the wine.
(ボトルが小さいほどワインの変化は速い)と述べ、ハーフボトルはマグナムより短い期間しか置けないとしています。常温での保管の限界はワインの保存の記事で扱っています。
ラベルの読み方についてBIVBが挙げる注意点をひとつだけ。“Domaine” and “Château” are exclusively reserved for wines produced from grapes vinified at the place where they are grown.
(ドメーヌとシャトーの語は、ぶどうが育った場所で醸造されたワインにのみ認められる)。輸入ワインには輸入者名の表示が義務づけられている、という記述も同じ頁にあります。
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ここではブルゴーニュワインの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。
格付け別に比べるシャブリの銘柄一覧

プティ・シャブリから特級まで、区分をまたいで並べた一覧です。前の見出しで書いたとおり公表された定価が存在しないため、金額の列は置かず、区分と造り手の性格で選べる形にしています。実際の価格は各購入先のリンクからご確認ください。
| 画像 | 銘柄・スコア | 定価 市場相場 |
特徴 | リンクサス酒販 本命 |
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ウィリアム・フェーヴル シャブリ 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
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ドメーヌ・ロン・デパキ シャブリ グラン・クリュ ラ・ムトンヌ 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ・グラン・クリュ(特級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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仕様書の7クリマには入らない慣用名ラ・ムトンヌ。 |
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13位評価の高い特級
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クリスチャン・モロー シャブリ グラン・クリュ ヴァルミュール 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ・グラン・クリュ(特級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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特級ヴァルミュール。7つのクリマのひとつ。 |
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14位入手困難
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ドメーヌ・ラヴノー シャブリ 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ(村名)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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入手が難しいことで知られる造り手の村名シャブリ。 |
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| 15位入門クラス | ドメーヌ・ラロッシュ プティ・シャブリ 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC プティ・シャブリ(独立したアペラシオン)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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台地と高い斜面のポートランディアン土壌から。 |
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| 16位村名の定番 | ドメーヌ・ラロッシュ シャブリ サン・マルタン 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ(村名)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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ラロッシュの村名シャブリ。公式のキュヴェ名はサン・マルタン。 |
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| 17位一級の入口 | ラ・シャブリジェンヌ シャブリ プルミエ・クリュ グランド・キュヴェ 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ + premier cru の表示(一級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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協同組合の一級。公式は土壌をキンメリジャンの粘土石灰質と記載。 |
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| 18位主要クリマ | ラ・シャブリジェンヌ シャブリ プルミエ・クリュ フルショーム 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ + premier cru の表示(一級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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同じ群に4つのクリマが属する主要クリマ。 |
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| 19位単独クリマ | ドメーヌ・ラロッシュ シャブリ プルミエ・クリュ コート・ド・レシェ 750ml ★★★★☆4/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ + premier cru の表示(一級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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群が1つだけの一級クリマ。左岸の急斜面。 |
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| 20位特級クリマ | ルイ・ミシェル シャブリ グラン・クリュ グルヌイユ 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ・グラン・クリュ(特級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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生産者公式が最も小さい特級と記す区画。ステンレスのみで醸造。 |
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| 21位特級クリマ | ルイ・ミシェル シャブリ グラン・クリュ ヴォーデジール 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ・グラン・クリュ(特級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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ラ・ムトンヌの95パーセントが位置するクリマ。 |
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| 22位特級クリマ | ドメーヌ・ラロッシュ シャブリ グラン・クリュ レ・ブランショ 750ml ★★★★★5/ J.S.A.認定ソムリエスコア |
AOC シャブリ・グラン・クリュ(特級)/価格は各購入リンクでご確認ください |
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仕様書の7クリマの筆頭に置かれるブランショ。 |
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この表の「定価 市場相場」欄には金額を入れていません。シャブリは公表された定価がなく、実際の価格はヴィンテージ・為替・輸入経路で変わるため、各行の購入リンクから現在の販売価格をご確認ください。金額を入れていない都合上、価格順の並べ替えと価格帯の絞り込みは働きません。各行に表示される当店の価格欄は、この並べ替えが読む値とは別のものです。情報は2026年7月時点で確認したものです。
選ぶ順序としては、まず区分を決め、次に樽を使うか使わないかで絞ると外しにくくなります。ステンレスタンクのみで醸造する造り手はシャブリに一定数あり、ルイ・ミシェル・エ・フィスは特級グルヌイユの頁でもEn cuve inox exclusivement
(ステンレスタンクのみで)と明記しています。樽由来の香りを避けたいときは、この方向が分かりやすい目印になります。
シャブリについてよくある質問

シャブリとシャルドネの違いは何ですか。
シャブリは産地の名前、シャルドネはぶどう品種の名前です。比べる関係にはありません。プティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・グラン・クリュの仕様書はいずれも「ワインは品種シャルドネB のみから造られる」という同一の一文を持つため、シャブリを名乗るワインは例外なくシャルドネ100%です。
シャブリの格付けは4つですか。
BIVBの公式サイトは4つのアペラシオンと説明していますが、法令上のアペラシオンは3つです。プルミエ・クリュはAOCシャブリに付けられる表示で、単独の仕様書は存在しません。INAOも「アペラシオン・シャブリは、その内部にプルミエ・クリュの表示を持つテロワールを認めている」と書いています。
シャブリはいくつの村で造られますか。
2025年9月10日のアレテで公示された仕様書が挙げるコミューンは17です。BIVBの英語サイトは20の地名を挙げていますが、差の3つであるフィエ、ミイ、ポワンシーはコミューンではなくシャブリ村の中の地名です。特級の範囲はシャブリ・コミューン1つだけです。
シャブリのグラン・クリュはいくつありますか。
仕様書が列挙するクリマは7で、ブランショ、ブーグロ、グルヌイユ、レ・クロ、プリューズ、ヴァルミュール、ヴォーデジールです。ラ・ムトンヌはINAOが「何世紀にもわたって使われてきた慣用名」と説明する呼び名で、95パーセントがヴォーデジール、5パーセントがプリューズに位置します。8つめの特級畑ではありません。
ラベルのクリマ名は畑の名前と同じですか。
同じとは限りません。仕様書は一級の40のクリマを17の群にまとめ、各群の先頭にある主要クリマの名称を同じ群のすべてのクリマ由来のワインに与えてよいと定めています。たとえばフルショームの群にはコート・ド・フォントネ、ロム・モール、ヴォーロラン、ヴォープランが含まれます。
プティ・シャブリは品質が低いのですか。
格下げされたシャブリではなく、別の仕様書を持つ独立したアペラシオンです。畑は主にポートランディアン(チトニアン)の土壌にあり、自然アルコール分の下限は9.5%、基準収量は60 hL/haです。BIVBは「プティ・シャブリに小さいところなど何もない」、INAOは「小さいのは名前だけである」と書いています。
シャブリは何度で飲むのがよいですか。
BIVBは区分ごとに温度を変えています。プティ・シャブリは食前酒として8度、食事と合わせるなら9〜10度、シャブリと一級は10〜11度、特級は12〜14度です。特級の12〜14度という数字は、ルイ・ミシェル・エ・フィスがグラン・クリュの頁に記す指示とも一致します。
シャブリの定価はいくらですか。
公表された定価はありません。BIVBの公式サイトにもINAOの製品ページにも希望小売価格にあたる数字は載っておらず、公表されているのは面積、収穫量、輸出比率といった統計です。ヴィンテージや為替、輸入経路で変わるため、購入先ごとの実売価格を比べる形になります。
シャブリは樽を使わないワインですか。
仕様書が禁じているのは木片すなわちチップの使用であり、樽そのものではありません。3本の仕様書に共通して「木片の使用は禁止する」という条文があります。ステンレスタンクのみで醸造する造り手も、樽を併用する造り手も、どちらも仕様書に反しません。
シャブリはどのくらい置けますか。
BIVBの目安では、プティ・シャブリは収穫の2年後、シャブリは若いうちでも5年以上でも、一級は5年から10年、特級は収穫から10〜12年以降で、15年や20年も珍しくないとされています。保管は寝かせて10〜12度、湿度70〜80パーセント、暗く振動のない場所が条件です。
20歳未満の方の飲酒は法律で禁じられています。妊娠中や授乳期の飲酒、また飲みすぎは身体に負担をかけます。適量を守ってお楽しみください。




















