アペロールスプリッツの黄金比が公式で3通りに割れる理由

氷を入れた大ぶりのワイングラスに注がれたオレンジ色の食前酒

アペロールスプリッツの黄金比が公式で3通りに割れる理由

オレンジ色のあの一杯は、材料も手順もごく簡単です。ところが「正しい割合」を調べ始めると、出てくる数字がひとつに定まりません。国際バーテンダー協会の原文、ブランドの国際サイト、そして日本の輸入元。この3つはいずれも一次資料でありながら、注ぐ量が違います。この記事では、その3つを原文のまま並べたうえで、原産地呼称の規則書とメーカーの栄養表示という2種類の公表値だけを使って、味と強さがどこで決まるのかを数字で確かめます。

アペロールスプリッツとは何か

食前酒として供されるオレンジ色のカクテル
食前酒の一杯として供されるスタイル

アペロールは、カンパリグループが消費者向けに運営する栄養情報ポータルで 11% vol. と公表しているイタリア産のリキュールです。同じページには30mlあたり50 kcal(210 kJ)とも書かれています。これをスパークリングワインで割り、炭酸水を少し足して氷とオレンジで仕上げたものが、いわゆるアペロールスプリッツです。

日本の酒税法では、アペロールのようにエキス分を持つ混成酒はリキュールに分類されます。同法第三条第二十一号は、リキュールを「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が二度以上のもの」と定義しています。一方でプロセッコは同条第十三号の果実酒にあたり、こちらは「アルコール分が二十度未満のもの」という枠のなかにあります。種類の違う2つの酒を混ぜてつくる、というのがこの一杯の骨格です。

公式が示す作り方と分量

スパークリングワインを使ったカクテルの作り方
スパークリングワインを使った割り方の基本

まず、3つの一次資料をそのまま並べます。表記はいずれも原文どおりです。

3つの一次資料が示す分量
出どころ その資料での名称 スパークリング アペロール ソーダ 仕上げ
国際バーテンダー協会(IBA) Spritz 90 ml Prosecco 60 ml Aperol Splash of Soda water(分量の記載なし) Garnish with a slice of orange.
aperol.com(国際版) Aperol Spritz 90 Ml Prosecco D.O.C. 60 Ml Aperol 30 Ml Soda water 1 SLICE Orange
CAMPARI JAPAN(日本の輸入元) アペロールスプリッツ プロセッコ 45ml アペロール 45ml お好みでソーダを少量 オレンジスライスを飾る

IBAの原文には ソーダの分量が書かれていない

IBAのカクテル一覧で該当する項目は、New Era カテゴリーの Spritz です。Ingredients 欄は3行で、上から 90 ml Prosecco60 ml Aperol、そして Splash of Soda water。3行目だけ数字がありません。Method 欄は Build all ingredients into a wine glass filled with ice.Stir gently. の2文で、そのあとに NOTE: として There are other versions of the Spritz that use Campari, Cynar or Select instead of Aperol. が続きます。

つまりIBAは、アペロールで作るものだけをスプリッツと呼んではいません。カンパリ、チナール、セレクトに替えた版がある、と自分で書き添えています。そして肝心のソーダは「ひと注ぎ」としか言っていない。ここが、後述する度数の話にそのまま効いてきます。

aperol.com の3対2対1と手順

ブランドの国際サイトは、同じ配合を数字で埋めています。見出しは APEROL SPRITZ 3-2-1 RECIPE: STICK TO THE GOLDEN RULE!、本文は This timeless Aperol Spritz ratio means 3 parts of Prosecco, 2 parts of Aperol, and 1 part of soda water.。表の単位は Cl / Ml / Oz の3列で、Ml 列が 90 / 60 / 30 です。同じページの冒頭には APEROL SPRITZ COCKTAIL RECIPE APPROVED BY THE IBA. とあります。

手順は5つに分かれていて、1 Fill a large wine glass generously with ice.2 Pour in 9 cl of Prosecco D.O.C.3 Add 6 cl of Aperol.4 Top up with 3 cl of soda water.5 Garnish with a slice of orange.。最後に Serve in a wine glass. が置かれています。注目したいのは2番目で、単に「スパークリングワイン」ではなく Prosecco D.O.C. と原産地呼称まで指定している点です。

日本の輸入元は1対1をすすめている

日本語の一次資料は、これとはっきり違います。CAMPARI JAPAN(リリース当時の社名はCT Spirits Japan)が配信した複数のプレスリリースは、作り方を「ワイングラスに氷を満たす」「プロセッコ(辛口スパークリングワイン)45mlを注ぐ」「アペロール45mlを注ぐ」「お好みでソーダを少量入れる」「オレンジスライスを飾る」の5手順で書き、末尾に「※アペロールとプロセッコは1:1の割合がおすすめです」と添えています。

この1対1という書き方は、2021年11月30日のハーフボトル発売告知、2022年12月26日の検索ランキング告知、2023年3月23日のポップアップバー告知と、少なくとも3本のリリースで繰り返されています。同じブランドが、国際サイトでは3対2、日本語のリリースでは1対1をすすめている。どちらかが間違いというより、案内の相手と場面が違うと考えるほうが自然です。

公式どうしで割れている3つの点

イタリアワインの原産地呼称の階層図
原産地呼称の階層。プロセッコはDOCにあたる

IBAの項目名はスプリッツであってアペロールスプリッツではない

IBAの公式カクテルは全部で102品です。そのなかに Aperol Spritz という項目はありません。あるのは Spritz 1件だけです。想定される別綴りのURLを直接叩いても、いずれも404が返ります。

IBA公式カクテルにあるものと無いもの
調べた名称 カテゴリー IBA102品での在否 備考
Spritz New Era 実在する 材料はProsecco / Aperol / Soda water
Aperol Spritz 存在しない 直URLが404。一覧にも無い
Campari Spritz 存在しない NOTE欄に「カンパリに替えた版がある」と書かれているのみ
Select Spritz 存在しない 同上。セレクトも名前だけ登場する
Hugo 存在しない 直URLが404
Venetian Spritz 存在しない 直URLが404
Spritz Veneziano 存在しない 直URLが404

ですからaperol.comの APPROVED BY THE IBA は、「アペロールスプリッツという名前がIBAに登録されている」という意味ではありません。IBAのSpritzがアペロールを使う配合であることを指した言い方だと読むのが妥当です。なお両者は前2つの数字が90と60で完全に一致し、違うのは3つ目のソーダだけです。

比率が割れても度数は割れない

ここがこの記事のいちばん面白いところです。プロセッコDOCのスプマンテは、規則書が総アルコール分の最低を 11.00% vol と定めています。一方アペロールの公表度数は 11.0% vol.この2つは同じ数字です。

同じ度数の液体をどんな割合で混ぜても、できあがりの度数は変わりません。計算すると、3対2で混ぜた150mlも、1対1で混ぜた90mlも、ともに11.00%です。比率をいじって変わるのは味の重心であって、強さではない。強さを動かしているのは、実はソーダの量だけです。

世界No.1と世界売上第3位が同じ会社から出ている

もうひとつ、肩書きの表記も一定していません。日本の輸入元は、2023年3月のリリースで「世界売上第3位*のリキュール」(*IWSR2021データ/フレーバードスピリッツカテゴリー数量)と書き、2023年8月のリリースでは「イタリアNo.1*リキュール」(*Kantar TNS, March 2020)、2025年1月のリリースでは「世界No.1リキュール」と書いています。出典が違えば順位も変わる、という当たり前のことが、同じ会社の配信のなかで並んでいます。順位を引用するときは、必ず調査名と年まで一緒に書くのが安全です。

プロセッコの選び方と辛口表示の落とし穴

スパークリングワインの甘辛区分の違い
甘辛の呼び名と残糖の対応関係

プロセッコDOCが定めている数値

プロセッコは品種名ではなく原産地呼称です。主体となるブドウはグレラで、規則書は他品種の混入を最大15%まで認めています。産地はベッルーノ、ゴリツィア、パドヴァ、ポルデノーネ、トレヴィーゾ、トリエステ、ウーディネ、ヴェネツィア、ヴィチェンツァの9県です。

プロセッコDOCの規定値
タイプ 総アルコール分の最低 総酸度の最低 無還元エキスの最低 規則書が認める味わいの幅
「Prosecco」(スティル) 10.50% vol 4.5 g/l 14.0 g/l secco から amabile まで
「Prosecco」spumante 11.00% vol 4.5 g/l 14.0 g/l brut nature から demi-sec まで
「Prosecco」spumante rose 11.00% vol 4.5 g/l 14.0 g/l brut nature から extra dry まで
「Prosecco」frizzante 10.50% vol 4.5 g/l 14.0 g/l secco から amabile まで

スプマンテの最低が11.00%、スティルと微発泡が10.50%。ブドウの段階では自然アルコール分9.0% vol以上が求められます。スプリッツに使うのはスプマンテですから、下限は11.00%と考えて差し支えありません。

エクストラドライはブリュットより甘い

ここは日本語の記事で最も取り違えられている点です。「エクストラドライ」は名前に反してブリュットより甘い区分です。保護協会が公表している残糖の範囲は次のとおりです。

プロセッコDOCスプマンテの甘辛区分
表示 読み方 残糖
Brut Nature ブリュット ナチュール 0〜3 g/L
Extra Brut エクストラ ブリュット 0〜6 g/L
Brut ブリュット 12未満 g/L
Extra Dry エクストラ ドライ 12〜17 g/L
Dry ドライ 17〜32 g/L
Demi-sec ドゥミ セック 32〜50 g/L

ブリュットは12未満 g/L、エクストラドライは12〜17 g/L。名前の印象と逆で、辛い順に並べるとブリュットナチュール、エクストラブリュット、ブリュット、エクストラドライ、ドライ、ドゥミセックになります。「Dry」と付いた瞬間に甘くなる、と覚えてしまうのがいちばん早いかもしれません。

アペロール自体に甘みがあるので、辛口寄りを選ぶと全体が締まります。ただしaperol.comが指定しているのは Prosecco D.O.C. という呼称までで、甘辛区分については何も言っていません。日本語のリリースは「プロセッコ(辛口スパークリングワイン)」と括弧書きで補っています。辛口を推しているのは日本の輸入元のほうだ、というのが正確な言い方です。

代用を考える前に確かめること

プロセッコが手に入らないときに他のスパークリングで代えることはできますが、そのとき度数が変わる点は意識しておきたいところです。プロセッコDOCスプマンテの下限は11.00%で、これはアペロールと同じ数字でした。もし度数の高いスパークリングを使えば、同じ分量でも仕上がりは11.00%より上がります。逆に低いものを使えば下がる。「代用できるか」ではなく「どちらへずれるか」で考えると迷いません。

当店ではシャンパンワインのコレクションから泡のボトルを探せます。スパークリングの度数の考え方はワインのアルコール度数の平均にまとめました。

度数とカロリーを公表値から計算する

お酒の種類ごとのアルコールとカロリーの比較
度数とカロリーの関係を整理した図

3通りの分量で度数を計算する

プロセッコを11.00%、アペロールを11.0%として、3つの分量それぞれで計算します。いずれも公表されている下限値と公表度数だけを使った計算値です。

3通りの分量で計算した度数と純アルコール量
分量の出どころ プロセッコ アペロール ソーダ ソーダを除く量 度数 純アルコール量
IBA(ソーダを加えない状態) 90 ml 60 ml 記載なし 150 ml 11.00% 13.2 g
aperol.com の3対2対1 90 ml 60 ml 30 ml 180 ml 9.17% 13.2 g
CAMPARI JAPANの1対1 45 ml 45 ml 少量(分量指定なし) 90 ml 11.00% 7.9 g

3対2の11.00%と1対1の11.00%が同じになるのは、2つの材料の度数が同じだからです。そして3対2対1でソーダを30ml入れると9.17%まで下がります。

この9.17%という計算値には、独立した裏づけがあります。カンパリグループが缶入りの「APEROL SPRITZ」について公表している度数が、ちょうど9% vol.なのです。逆に、できあがりを9%にするために必要なソーダの量を計算すると約33.3mlとなり、3対2対1の30mlとほぼ重なります。別々に公表された2つの数字が、計算をはさんで一致した形です。

カロリーは公表値がある部分と無い部分に分かれる

カロリーについては、公表値がある材料と無い材料がはっきり分かれます。カンパリグループの栄養情報ポータルは自社製品の値を出していますが、プロセッコ側は保護協会も規則書もカロリーを公表していません。

各社ポータルの公表値とプロセッコ側の不在
製品 度数 1回量 エネルギー エネルギー アレルゲン表示
アペロール 11.0% 30 ml 50 kcal 210 kJ 記載なし
APEROL SPRITZ(缶) 9% 200 ml 186 kcal 778 kJ sulphites
Aperol Soda(缶) 3% 125 ml 85 kcal 353 kJ 記載なし
カンパリ 25% 30 ml 73 kcal 306 kJ 記載なし
チナール 16.5% 30 ml 59 kcal 248 kJ 記載なし
プロセッコDOC 11.00%以上 公表なし 公表なし

アペロールは30mlで50 kcalですから、3対2対1で使う60mlなら100 kcal、1対1で使う45mlなら75 kcalです。ここまでは公表値の単純な比例です。

一杯全体の値を知りたい場合、いちばん確かな手がかりは缶の公表値です。缶は200mlで186 kcal、つまり100mlあたり93.0 kcal。3対2対1のできあがり180mlに当てはめて計算すると約167.4 kcalになります。ただしこれは缶と自作が同じ組成だと仮定した換算値で、公表値ではありません。

純アルコール量で見た一杯の重さ

厚生労働省が示している純アルコール量の式は「摂取量(ml) × アルコール濃度(度数/100) × 0.8」です。これに当てはめると、3対2対1の一杯は13.2 g、1対1でソーダなしの一杯は7.9 gになります。

「節度ある適度な飲酒」の目安は1日平均で純アルコール約20 g程度とされています。3対2対1の一杯はその66.0%、1対1の一杯は39.6%にあたります。軽い食前酒という印象がありますが、2杯飲めば目安を越える計算です。

酒販店に並ぶ洋酒のボトル
当店で取り扱う洋酒のラインナップ

アペロールと組み合わせやすいリキュールやスピリッツを集めています。在庫と価格は変動するため、詳細は各商品ページでご確認ください。

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ここではその他スピリッツの在庫から一部を掲載しています。価格・在庫・箱の有無は各商品ページでご確認いただけます。

材料30銘柄の比較表

並べられたリキュールとスピリッツのボトル
比較表で扱う材料のカテゴリー

アペロールやカンパリといったアペリティーボ系のビター、ベルモット、そしてネグローニ系へ広げるときに使うジンやバーボンまでを、度数とタイプで横断的に並べた表です。価格は各モールの実勢を参考として載せているもので、最安値の一覧ではありません。

アペロールスプリッツとネグローニ系に使う材料30銘柄 比較表
アペロールスプリッツは、アペロールを辛口のスパークリングワインと少量のソーダで割る食前酒です。国際バーテンダー協会の「Spritz」はプロセッコ90mlとアペロール60mlで、ソーダは分量の記載がありません。aperol.comは90対60対30の3対2対1、日本の輸入元は45mlずつの1対1をすすめており、公式のあいだで分量が割れています。この表は、アペロールやカンパリといったアペリティーボ系のビター、ベルモット、そしてベースを替えたときに使うジンやバーボンまでを度数とタイプで横断的に並べたものです。ネグローニやアメリカーノと共通の材料一覧を使っているため、説明文にはネグローニを基準にした記述が含まれます。価格は楽天・Amazonの実勢を参考値として掲載しており、最安値を案内する一覧ではありません(2026年7月時点)。
価格は 2026/08/25 更新
画像 銘柄・スコア 定価
市場相場
特徴 リンクサス酒販
本命
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ネグローニの主役。鮮烈な苦味と赤い色を決める不可欠のビター。

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20 ルクサルド ビッター ロッソ 750ml 25%
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世界で最も知られる赤ベルモット。手に入りやすくネグローニの基準に。

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24 チンザノ ロッソ 1000ml 15%
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ジンをバーボンに替えるとボウルヴァルディエに。甘く香ばしい変化球。

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29 プロセッコ スパークリングワイン 750ml 11%
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ジンをスパークリングに替えるとネグローニ・スバリアートに。泡で軽やか。

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カンパリを黄色いスーズに替えるとホワイトネグローニ風に。苦味は上品。

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価格は各モールの実勢(2026年7月時点)です。アペロール・カンパリ・ベルモット・ジンはいずれもオープン価格のため、メーカー定価の欄は空欄で描画されます。「最安」の表示は当店に在庫がある行へ一律に付くもので、他店との価格比較を示すものではありません。楽天・Amazonの欄は同一品が見つからない場合は空欄になります。在庫・価格は変動するため、最新情報は各リンク先でご確認ください。

ビルドの手順と泡を保つコツ

グラスのなかで立ち上る細かい泡
泡の立ち方が味の印象を左右する

注ぐ順番と手数

aperol.comの手順は、氷 → プロセッコ → アペロール → ソーダ → オレンジの順でした。日本語のリリースも同じく、氷を満たしてからプロセッコ、アペロール、ソーダ、オレンジの順です。2つの資料が一致しているのはこの順番で、割れているのは分量だけ、という整理になります。

公式の手順と原文
手順 動作 一次資料での書かれ方
1 大ぶりのワイングラスに氷をたっぷり入れる aperol.com は generously with ice と書いている
2 プロセッコを注ぐ 先に注ぐことで、あとから入れる材料が自然に混ざる
3 アペロールを加える 色が下から立ち上がる。ここで見た目が決まる
4 ソーダを注ぐ IBAは分量を書いていない。3対2対1なら30 ml
5 軽く混ぜる IBAの原文は Stir gently.。強く混ぜない
6 オレンジスライスを飾る IBAは Garnish with a slice of orange.

ステアの強さについては、IBAが Stir gently. とわざわざ書いています。炭酸を含む材料が2つ入っているので、混ぜすぎれば泡が抜けます。氷を多めに入れておくのは、冷やすためであると同時に、溶けた水で薄まる速度を落とすためでもあります。

グラスとガーニッシュ

グラスは、IBAが a wine glass filled with ice、aperol.comが a large wine glassServe in a wine glass. と書いています。どちらもワイングラスで一致していて、専用のグラスを指定してはいません。大ぶりのものが選ばれるのは、氷をたっぷり入れたうえで液体が入る余地を確保するためです。

ガーニッシュはオレンジのスライス。IBAは a slice of orange、aperol.comの表は 1 SLICEOrange。日本語のリリースも「オレンジスライスを飾る」で揃っています。ここは3者とも例外なく一致している数少ない項目です。

グラス選びについてはスプリッツァーの作り方も参考になります。

名前の由来とヴェネトの歴史

ヴェネト州に広がるプロセッコの畑
プロセッコの産地であるヴェネトの風景

1919年のパドヴァとバルビエリ兄弟

アペロールの誕生については、カンパリグループの国際サイトがAperol originated in 1919 in Padova, it was a product of the Barbieri Brothers who launched the revolutionary idea of an aperitif with an alcohol content of only 11 percent. と書いています。同じ年表には 2003 The Acquisition of APEROL ともあり、カンパリグループの傘下に入ったのは2003年です。

日本語の資料はもう少し踏み込んでいて、2022年12月のリリースは「パドヴァの青空市で余ったオレンジが袋の中で自然発酵し、偶然生まれたドリンクに目を付けたバルビエ兄弟が改良を加え、1919年に「アペロール」として正式に売り出しました」と説明しています。兄弟の名前の表記が英語版の Barbieri と日本語版の「バルビエ」でずれている点は、引用するときに気をつけたいところです。2026年6月のボトル刷新リリースでは「バルビエリ兄弟」と表記が戻っています。

そのボトル刷新は2026年5月末から日本でも順次切り替えが始まっており、ショルダーの波紋デザイン、細くなったシルエット、小さくなったフロントラベル、そして裏ラベルへのスプリッツの作り方の掲載が特徴として挙げられています。同リリースは「中身のレシピは変更なし」とも明記しています。

スプリッツという言葉の扱い

スプリッツという語がドイツ語の spritzen(吹きかける)から来た、オーストリア統治下のヴェネトで兵士がワインを水で薄めたのが起源だ、という説明は広く流布しています。ただしこの由来を明記した一次資料は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。aperol.comが書いているのは The ritual born in Veneto という一文と、ヴェネトの伝統的なつまみを cicchetti と呼ぶことまでです。

アペリティーボという習慣そのものについては、日本語のリリースが「アペロールとチンザノが生まれたイタリアでは、家族や友人と夕食前のひと時に簡単なおつまみとともに食前酒を楽しむ「アペリティーボ」という大切な習慣があります」と説明しています。カンパリベルモットも同じ食前酒の文脈にある材料です。

バリエーションと関連カクテル

スパークリングワインを使ったカクテルのアレンジ
泡のカクテルはベースを替えて広がる

ベースを替えたスプリッツ

IBAのNOTE欄が挙げているのは、カンパリ、チナール、セレクトの3つです。いずれもイタリアのビター系リキュールで、度数と苦味の強さが違います。カンパリグループのポータルにはカンパリ25%とチナール16.5%の公表値があります。

ベースを替えた場合の違い
名称 ベースの度数 どこに書かれているか 味の方向
Spritz(アペロール) 11.0% IBAの本文に記載 オレンジの甘苦さ。もっとも軽い
カンパリに替えた版 25% IBAのNOTE欄に名前のみ 苦味が強く色が濃くなる
チナールに替えた版 16.5% IBAのNOTE欄に名前のみ アーティチョーク由来の香り
セレクトに替えた版 IBAのNOTE欄に名前のみ ヴェネツィアで親しまれるビター
APEROL SPRITZ(缶) 9% カンパリグループの栄養情報ポータル 200 mlで186 kcal
Aperol Soda(缶) 3% 同ポータル プロセッコを使わない炭酸割り

缶のAperol Sodaが3%なのに対し、缶のAPEROL SPRITZが9%であるのは、後者がスパークリングワインを含むからです。同じブランドの2つの缶を比べると、プロセッコが度数のどれくらいを担っているかが見えてきます。

プロセッコで割るという発想は、他のカクテルにも共通しています。ネグローニのジンをスパークリングワインに置き換えたものはネグローニ スバリアートと呼ばれ、カンパリとスイートベルモットに泡を合わせます。ただしIBAの102品に独立した項目はありません。

アメリカーノはカンパリとスイートベルモットをソーダで割るもので、こちらはIBAの The Unforgettables に 30 ml Bitter Campari30 ml Sweet Red VermouthA splash of Soda Water として載っています。ここでもソーダは A splash で、分量が書かれていません。IBAはソーダの量を指定しない書き方を、複数のレシピで一貫して採っているようです。

詳しくはアメリカーノの作り方ネグローニの作り方カンパリソーダをご覧ください。

自宅で楽しむための買い置きと保存

自宅で食前酒を囲む食卓
自宅で用意するときの組み立て

買い置きの単位と価格の目安

aperol.comには人数から必要な本数を出す簡易表があり、1人あたり1杯の想定で アペロール70cl、プロセッコD.O.C. 75cl、ソーダ50cl が各1本と示されます。家庭で用意するなら、この3本が最小構成です。

日本での希望小売価格が公表されているのは、ハーフサイズの発売時に出たリリースだけです。2022年3月1日発売分として次の2品が案内されました。

2021年11月30日のリリースが公表した希望小売価格
品名 容量 アルコール分 希望小売価格(税抜) 単品POSコード
アペロール 350ml 11% 900円 8002230000388
チンザノ プロセッコ D.O.C. 375ml 1,030円 8000020016854

この2品はいずれもハーフサイズで、通常の700ml前後のボトルの価格は公表されていません。アペロールの表記は「アルコール%:11%」で、栄養情報ポータルの11.0% vol.と一致します。原産国はイタリアです。

保存については、開栓後のリキュールは香りが落ちていきます。プロセッコは開けたその日に飲みきる前提で、小さいボトルを選ぶほうが結果的に無駄がありません。375mlという容量が用意されているのは、まさにそのためでしょう。

よくある質問

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この記事によく寄せられる質問
アペロールスプリッツの黄金比は3対2対1ですか。

3対2対1はaperol.comが「golden rule」として掲げている比率で、プロセッコ90ml、アペロール60ml、ソーダ30mlにあたります。ただし日本の輸入元であるCAMPARI JAPANは、プレスリリースで「アペロールとプロセッコは1:1の割合がおすすめです」と案内し、それぞれ45mlずつと書いています。どちらも一次資料なので、単一の正解として覚えるより、出どころとセットで覚えるのが正確です。

IBAの公式レシピではソーダを何ml入れますか。

IBAは分量を書いていません。Ingredients欄の3行目は「Splash of Soda water」で、数字がありません。前の2行はProsecco 90 ml、Aperol 60 mlと明記されているので、ソーダだけが意図的に量を定めていない形です。

アペロールスプリッツの度数は何度ですか。

プロセッコDOCスプマンテの規定下限11.00%とアペロールの公表度数11.0%で計算すると、ソーダを加えない状態では11.00%になります。3対2対1でソーダを30ml加えると9.17%です。カンパリグループが缶入りのAPEROL SPRITZについて公表している度数は9% vol.で、計算値とほぼ一致します。

比率を変えると度数はどう変わりますか。

プロセッコとアペロールの度数が同じ11.00%なので、この2つの比率を変えても度数は変わりません。3対2でも1対1でも11.00%です。度数を動かすのはソーダの量だけで、味の重心を動かすのが比率だと考えると整理しやすくなります。

プロセッコは辛口を選べばよいのですか。

辛口を推しているのは日本の輸入元で、リリースでは「プロセッコ(辛口スパークリングワイン)」と補足しています。aperol.comが指定しているのは Prosecco D.O.C. という呼称までで、甘辛区分には触れていません。なお表示の読み方には注意が必要で、エクストラドライは残糖12〜17 g/Lとブリュットの12未満 g/Lより甘い区分です。

エクストラドライとブリュットはどちらが辛口ですか。

ブリュットのほうが辛口です。プロセッコDOC保護協会が公表している残糖の範囲は、ブリュットナチュール0〜3 g/L、エクストラブリュット0〜6 g/L、ブリュット12未満 g/L、エクストラドライ12〜17 g/L、ドライ17〜32 g/L、ドゥミセック32〜50 g/Lの6区分です。名前の印象とは逆になります。

アペロールスプリッツのカロリーはどのくらいですか。

一杯全体の公表値はありません。公表されているのは材料側の値で、アペロールは30mlあたり50 kcalです。缶入りのAPEROL SPRITZは200mlで186 kcalと公表されているので、これを3対2対1のできあがり180mlに当てはめて計算すると約167.4 kcalになります。プロセッコ側のカロリーは保護協会も規則書も公表していません。

アペロールスプリッツはIBAの公式カクテルですか。

IBAに登録されている名称は「Spritz」で、「Aperol Spritz」という項目はありません。全102品の一覧にも無く、想定される別綴りのURLを直接叩いても404が返ります。Spritzの材料がProsecco・Aperol・Soda waterであるという意味では、アペロールを使う配合が公式に採録されている、という言い方が正確です。

プロセッコがないときは何で代用できますか。

他の辛口スパークリングでも作れますが、度数がずれる点は意識しておきたいところです。プロセッコDOCスプマンテの下限は11.00%で、これはアペロールと同じ数字です。これより度数の高いスパークリングを使えば仕上がりは11.00%より上がり、低ければ下がります。

純アルコール量ではどのくらいの一杯ですか。

厚生労働省が示す式(摂取量ml × 度数/100 × 0.8)で計算すると、3対2対1の一杯は13.2 g、1対1でソーダを加えない一杯は7.9 gです。節度ある適度な飲酒の目安が1日平均で純アルコール約20 g程度とされているので、それぞれ66.0%と39.6%にあたります。

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