ウイスキーの魅力は、その奥深さにあります。世界中の土地や蒸留所で異なる原料が使われ、それぞれの風土や伝統が味や香りに反映されるのが特徴です。
大麦、トウモロコシ、ライ麦、小麦・・・同じウイスキーでも、使用される穀物によってその風味や個性は大きく変わります。だからこそ、「どんな原料で作られているか」を知ることは、ウイスキーをもっと楽しむための第一歩。
この記事では、そんなウイスキーの“原料”にフォーカスし、代表的な種類や味わいの違い、選び方のポイントまでを徹底解説します。
「ウイスキーの世界をもっと深く知りたい」「自分に合う1本を見つけたい」という方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
【基本編】ウイスキーの主な原料とその特徴
ウイスキーの原料は穀物
ウイスキー | ブランデー |
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ウイスキーは全世界で作られている有名なアルコール飲料の一つです。大麦麦芽などの穀物を原料にして作られる蒸留酒であり、蒸留後に樽熟成されるのが基本となっています。
なお細かな原料や製法、そして熟成のルールは、ウイスキーの生産国や種類ごとにルールが異なります。
しかし穀物を原料にして糖化・アルコール発酵させるという基本の作り方や、樽での熟成がなされていることはどの国でも変わりありません。
なお有名な蒸留酒にはウイスキーのほかブランデーもありますが、ウイスキーが穀物から作られるのに対し、ブランデーは白ぶどうなど果実から作られるという明確な違いがあります。
香りが特徴的なブランデーに対し、ウイスキーは穀物の味そのものを堪能できる飲み物だと言われています。
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麦から作られるビールとは何が違うの?
ウイスキー | ビール |
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麦芽を原材料にして作られるお酒といえば、ビールが有名です。ビールも麦芽をアルコール発酵させるという段階までは同じですが、ウイスキーとは大きく異なる飲み物です。
ウイスキーとビールの決定的な違いは“蒸留”にあります。ビールは麦芽を醸しただけの醸造酒ですが、ウイスキーはそこから蒸留という工程が加わるのが最大の特徴となっています。ウイスキーは蒸留が加わるためアルコール濃度が高くなり、いわゆる“強いお酒”になります。
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一般的に市販されているビールのアルコール度数が約5%であるのに対し、ウイスキーのアルコール度数は約40%前後になっています。濃度の高いお酒であるため、水割りにしたり、炭酸割り(ハイボール)にしたりとさまざまな飲み方ができるのもウイスキーの特徴です。
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【風味比較】ウイスキー原料ごとの香り・味わいの違い
名前 | 主な原料 | 特徴 |
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モルトウイスキー | 大麦麦芽 |
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コーンウイスキー | とうもろこし など |
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ライウイスキー | ライ麦 など |
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ウィートウイスキー | 小麦 など |
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グレーンウイスキー | とうもろこし、ライ麦、小麦、モルトなど |
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ウイスキーの原料には、大麦麦芽以外にもさまざまな穀物が採用されています。選ばれる原料が異なると、ウイスキーの味わいにも変化が生まれます。
ここからはウイスキーの原料による違いや特徴を、それぞれ紹介していきます。
【モルトウイスキー】豊かなうまみと高い香りが魅力に
ウイスキーの王道にもなっているのが、大麦麦芽(モルト)を使って作られるモルトウイスキーです。
大麦を発芽させて大量のデンプン分解酵素を作り出し、それを活用してアルコール発酵を進めていくという製法が大まかなモルトウイスキーの作り方になります。
モルトウイスキーは数あるウイスキーの中でも深く強めな香りと味わいで、高級品と呼ばれるような銘柄が多いです。特に単一の蒸留所で作られるシングルモルトウイスキーは、世界的にも高い価値が認められています。
なお同じ“モルトウイスキー”という名称でも、国や生産地によって定義が変わるので注意です。スコットランドや日本で作られるモルトウイスキーは必ずモルト100%が原料ですが、アメリカの場合はモルト51%以上でもモルトウイスキーを名乗ることができます。
モルトを楽しみたい方におすすめ:グレンファークラス105
- ウイスキーの種類:シングルモルトウイスキー
- 生産国:スコットランド
- アルコール度数:60%
グレンファークラスは、モルトを原料に作られるスコッチの一つです。105のボトルは、一般的なウイスキーとは違い加水をしないカスクストレングスでボトリングをしているので、アルコール度数が60%と高めになっています。
素材そのままの味をダイレクトに味わえるのが魅力で、濃い味ながら滑らかなニュアンスもあります。モルトの濃厚さを堪能したい方におすすめの1本です。
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【コーンウイスキー】とうもろこし由来の甘い味わい
コーンウイスキーは、名前の通りコーン=とうもろこしを原料に作られるウイスキーのことです。
なおとうもろこしを含むウイスキーはいくつか種類がありますが、コーンウイスキーを名乗るためには原料の80%以上がとうもろこしである必要があるとアメリカのルールで定められています。
コーンウイスキーは熟成までの過程が重視されるモルトウイスキーとは違い、あまり熟成を加えられずにそのまま瓶詰めされるのが特徴です。
そのためモルトウイスキーに比べダイレクトなアルコール感が強いですが、それでいて原料の甘さを感じられるというのがポイントです。
コーンウイスキーの代表銘柄といえば:プラットヴァレー
- ウイスキーの種類:コーンウイスキー
- 生産国:アメリカ
- アルコール度数:40%
プラットヴァレーはアメリカで製造されているコーンウイスキーの代表銘柄です。
アメリカといえばバーボンが主流ですが、プラットヴァレーはバーボンとは違い、バーボンよりもコーンの比率が高くなっています。また熟成に使われる樽もバーボンとは異なり、“内側を焦がしていない樽”が使われているのが特徴です。
コーン由来の独特な甘味、そして軽快な飲み口を感じやすい1本です。ソーダで割ったり、氷を入れてロックにしたりと風味を楽しめる飲み方がおすすめです。
【ライウイスキー】シャープな口当たりでスパイシー
ライウイスキーはライ麦を原料として作られるウイスキーのことです。
コーンウイスキーと同様、アメリカでよく作られているウイスキーの一種です。またカナダのウイスキーも、ライ麦を主体としたものが多いです。
なおライ麦は原料のうち51%以上であればライウイスキーを名乗れますが、中にはライ麦だけを100%使って作られるような銘柄も存在します。
ライウイスキーはモルトに比べシャープな口当たりとなっていて、時にはほろ苦、辛口と言われることもあります。オイリーな印象が強く、ストレートで飲むほかカクテルベースとして選ばれることも多いです。
オランダ産のレア銘柄:ズイダム ミルストーン 100ライウイスキー
Millstone - a rye whisky from Dutch producer Zuidam, It's 100% rye, 100 months old & is bottled at 100 Proof US. pic.twitter.com/s4VXHGnNXO
— The Quick Brown Fox (@thefoxmcr) June 25, 2015
- ウイスキーの種類:ライウイスキー
- 生産国:オランダ
- アルコール度数:50%
ズイダム蒸留所はオランダ国内、ベルギーとの国境近くにある蒸留所のことです。ここではシングルモルトウイスキーのほか、珍しいライウイスキーも製造されています。
ズイダム ミルストーン100ライウイスキーは100%ライ麦から作られているのが特徴で、ライ麦由来の仄かなスパイシー、ピリッとしたニュアンスを感じることができます。スパイス感に蜂蜜のようなニュアンスも混ざっており、非常に個性が豊かな味です。
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【ウィートウイスキー】小麦が原料でホイートウイスキーとも呼ばれる
ウィートウイスキーは小麦を原料としたウイスキーです。ホイートウイスキーと呼ばれることもあります。ウィートウイスキーの原料となる小麦は、全体の51%以上と定められています。
ウィートウイスキーは小麦ならではのマイルドな味わいと、ほのかな甘味が特徴です。
こちらもアメリカがメインの産地ですが、コーンウイスキーやライウイスキーに比べて生産量は少なく希少性が高いです。
小麦を原料とする:バーンハイム オリジナル ウィートウイスキー
- ウイスキーの種類:ウィートウイスキー
- 生産国:アメリカ
- アルコール度数:45%
バーンハイム オリジナル ウィートウイスキーは、ケンタッキー州で作られる小麦を原料としたウイスキーです。コーン主体のバーボンよりもスムーズな印象の1本で、軽いスパイスのようなニュアンスや酸味も感じられます。
強めのバーボンに疲れた時、癒されたい時にぴったりな1本です。ケンタッキー州でウィートウイスキー認定を受けた第一号の銘柄でもあるので、ウィートウイスキーを飲んでみたいという方にピッタリです。
【グレーンウイスキー】すっきり甘いサイレントスピリッツ
グレーンウイスキーは、さまざまな穀物から作られるウイスキーです。原料にはとうもろこしやライ麦、小麦などが使われます。もろみはこれらの原料をもとに、モルトを加えて作られます。
グレーンウイスキーは蒸留の過程で連続式蒸溜機が使われます。これにより雑味がほぼ取り除かれるので、すっきりとした甘い味わいになるのが特徴です。
個性の強いモルトウイスキーに対し、静的な特性を持つことから「サイレントスピリッツ」と呼ばれます。クリアでライトな酒質をしています。
スマートな味わいでモルトよりも安価で作りやすいため、ブレンデッドウイスキーの原料になることも多いです。一方で近年はこだわりを持って作られる、シングルグレーンのウイスキーブランドなども多く登場しています。
グレーンらしい軽快さはハイボールにピッタリ:サントリー 知多
- ウイスキーの種類:グレーンウイスキー
- 生産国:日本
- アルコール度数:43%
サントリー知多は、日本のサントリーが保有する知多蒸留所で作られるシングルグレーンウイスキーです。とうもろこしを主原料にしたウイスキーで、サイレントスピリットと言われるほど穏やかな性質であるのが特徴です。
知多蒸留所は全世界でも珍しい“グレーンウイスキーの作り分け”を行なっているのが特徴で、軽快で滑らかな中にも味の奥行きを感じることができます。特にハイボール向けのウイスキーとして人気を集めています。
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【ブレンデッドウイスキー】モルトとグレーンの融合でバランス良好
ブレンデッドウイスキーは、スコットランドや日本で主に作られます。モルトウイスキーにグレーンウイスキーを混ぜ合わせたものであり、バランスの取れた味わいに魅力があります。
なおスコットランド・日本以外の国のブレンデッドウイスキーは、定義が異なることがあります。
例えばアイリッシュウイスキーのブレンデッドには、モルトウイスキー、グレーンウイスキーのほか未発酵大麦で作られる「ピュアポットスティルウイスキー」が混ぜられます。
またアメリカンウイスキーのブレンデッドの場合は、バーボンにライウイスキー、コーンウイスキーなどが混ぜられることもあります。国を代表する味わいを知れる、というのもポイントに挙げられるでしょう。
バランスの良いブレンデッドが好きなら:ジョニーウォーカーブラックラベル
- ウイスキーの種類:ブレンデッドウイスキー
- 生産国:スコットランド
- アルコール度数:40%
ジョニーウォーカーブラックラベルは、ジョニ黒の相性で親しまれているブレンデッドウイスキーです。スコットランド各地のモルトにグレーンがバランスよくヴァッディングされていて、豊かなフレーバーと整った味わいを堪能できます。
非常にバランスが取れたスコッチなので、ストレートからハイボールまで幅広く楽しめるのが魅力です。日本でも手に入りやすい銘柄として人気を誇っています。
【その他】米やそばなど珍しい原料が使われたウイスキーも
ライスウイスキー
ライスウイスキーはライス=お米を原料とした、一風変わったウイスキーです。メジャーな存在ではありませんが、日本でわずかに作られるウイスキーです。
ライスウイスキーの中にはお米100%ではなく、お米をベースにしつつ、中にはモルトが混ぜられているものも存在しています。
そんなライスウイスキーはお米由来の透き通るような色味や、雑味の少ないスマートな味わいが特徴となっています。
キヌアウイスキー
キアヌは南米アンデス山脈の近くで数千年前から栽培されているという疑似穀物です。近年では国連にも“スーパーフード”と認められるほど、高い栄養価を持つことで知られています。そしてNASAからも、宇宙食として選ばれているような存在です。
キヌアウイスキーはそんなキヌアをベースに作られています。近代的なウイスキーであり、ライトでフルーティーな味わいと軽快な飲みやすさを持ち合わせています。
そばウイスキー
そばウイスキーは、その名の通りそばを使って作られるウイスキーのことです。こちらも珍しい種類のウイスキーで、フランスのブルターニュ地方やアメリカのシカゴにある蒸留所で作られています。
そばのほのかな香ばしさが感じられるのが特徴で、モルトやコーンなどを原料に作られるウイスキーとは異なる個性があります。
【産地】バーボンやスコッチなど国別・産地別ウイスキーの違い
ここからはウイスキーの原料や特徴の違いを、国別・産地別に解説していきます。「世界5大ウイスキー」にフォーカスを当てて解説していくので、ぜひウイスキー選びの参考にしてみてください。
スコッチにはモルトのほかブレンデッドもある
スコッチウイスキーはスコットランドで作られるウイスキーのことです。世界のウイスキーの中でももっとも有名で、市場では大きなシェア率を誇ります。
スコッチといえば大麦麦芽(モルト)を原料にしたウイスキーが代名詞ですが、モルトウイスキーのほか「ブレンデッドウイスキー」も作られています。スコッチのブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーにグレーンウイスキーを混ぜたものと定義されています。
ちなみにグレーンウイスキーはとうもろこしなどの穀物をベースとして作られていて、モルトウイスキーに比べ穏やかで個性が少なめです。そんなグレーンウイスキーが混ぜられたブレンデッドスコッチウイスキーは、モルトウイスキーに比べ個性が強すぎず、非常に飲みやすいのが特徴となっています。
<スコッチウイスキーの代表銘柄>
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アイリッシュウイスキーは大麦ベース
アイリッシュウイスキーはアイルランドで製造されるウイスキーです。現在はスコッチに比べると銘柄や流通量が少ないものの、実はスコッチに匹敵する長い伝統や歴史を誇るウイスキーとなっています。
アイリッシュウイスキーの原料は大麦がベースとなっています。そこにライ麦や小麦、そしてモルトなどが加えられて製造されています。ピート由来のスモーキーさが印象的なスコッチに比べて、雑味が少なく穏やかな印象の味をしています。
<アイリッシュウイスキーの代表銘柄>
- ブッシュミルズ
- タラモアデュー
- ジェムソンスタンダード など
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アメリカのバーボンはとうもろこし主体で甘め
スコッチ・アイリッシュに次ぐ高い知名度を誇るのが、アメリカ産のアメリカンウイスキーです。アメリカではコーンウイスキーやライウイスキーなどさまざまな種類のウイスキーが作られていますが、特に有名なのはケンタッキー州で作られるバーボンです。
バーボンはとうもろこしが主な原料となっていて、濃厚な甘味があります。ガツンとインパクトのあるウイスキーがお好きな方におすすめできます。
<アメリカンウイスキーの代表銘柄>
- メーカーズマーク
- ジムビーム
- ワイルドターキー など
【関連リンク】アメリカンウイスキーとは?高級バーボンや種類・おすすめ銘柄10選
カナディアンウイスキーはライ麦ベース
カナディアンウイスキーの主な原料はライ麦です。ただしライ麦だけでなく、とうもろこしなどが混ぜられていてマイルドな味に抑えられているものが多い印象です。
そんなカナディアンウイスキーは5大ウイスキーの中ではもっともライトな酒質で、ウイスキー初心者の方でもトライしやすいです。
<カナディアンウイスキーの代表銘柄>
- カナディアンクラブ
- クラウンローヤル
- カナディアンミスト など
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ジャパニーズウイスキーはスコッチと基本が同じ
ジャパニーズウイスキーはスコットランドを手本に作られています。
そのため大麦麦芽が原料となったモルトウイスキーや、モルトにグレーンを組み合わせたブレンデッドウイスキーなどが主流となっています。スコッチよりも日本人の口に合うように作られているのが特徴で、オリエンタルな香りのウイスキーなどがあります。
同じモルトが原料のウイスキーでも、水や熟成樽の違いを堪能できるのがウイスキーの面白いところです。ぜひ飲み比べて、お気に入りの1本を探してみてください。
<ジャパニーズウイスキーの代表銘柄>
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【法律・基準】ウイスキー原料に関する各国の規制
ウイスキーの原料には、各国で定められた法的基準があります。これらの規制は、原料の種類や使用割合、製造工程、熟成年数などに関わり、その国のウイスキーの“個性”や“品質保証”にも深く関わっています。
ここでは、スコッチ、バーボン、アイリッシュ、日本の4つの主要産地における原料基準を見ていきましょう。
スコッチウイスキーの原料基準
スコットランドで製造されるスコッチウイスキーには、厳格な法律が存在します。「スコッチウイスキー規則(Scotch Whisky Regulations 2009)」に基づき、原料から熟成方法に至るまで細かく定められています。
大麦麦芽100%のモルトウイスキー
スコッチの「シングルモルトウイスキー」は、単一の蒸留所で造られた大麦麦芽100%のウイスキーであることが条件です。
加水以外の添加物は禁止されており、蒸留にはポットスチルを使用し、スコットランド内で最低3年間オーク樽で熟成させる必要があります。
モルト由来のリッチな風味と、蒸留所ごとの個性が色濃く表れるのが特徴です。
グレーンウイスキーの穀物規定
一方、グレーンウイスキーは、大麦麦芽以外の穀物(トウモロコシ、小麦、ライ麦など)を使用し、連続式蒸留器で造られます。
グレーンの種類に制限はありませんが、最低限として発芽した大麦が糖化のために一部使用される必要があります。
この規定により、スコッチのブレンデッドウイスキーには、軽やかで穏やかな味わいのグレーンウイスキーが欠かせない存在となっています。
バーボンウイスキーの法的要件
アメリカのバーボンウイスキーは、「連邦アルコール法(Federal Standards of Identity for Distilled Spirits)」に基づき、厳密な原料および熟成条件が定められています。
コーン51%以上使用の条件
バーボンの名を冠するには、原料の51%以上がトウモロコシであることが必須です。残りはライ麦や小麦、大麦などが使われます。
このトウモロコシの高配合が、バーボン特有のまろやかな甘さや厚みを生み出しています。
また、蒸留後のアルコール度数や瓶詰め時の濃度にも上限があり、品質の均一性が保たれています。
チャーリングされたオーク樽熟成の義務
さらにバーボンは、内側を焦がした新しいアメリカンオーク樽(チャーオーク)で熟成させることが義務付けられています。
この“チャー”の工程により、ウイスキーはバニラやキャラメル、スモーキーな香りをまとい、独特の深い色合いと風味が生まれるのです。
熟成年数に関しては、法律上の最低年数は定められていませんが、「ストレートバーボン」と名乗るには最低2年以上の熟成が必要です。
アイリッシュウイスキーの原料制限
アイリッシュウイスキーは、大麦麦芽(モルト)と未発芽の大麦(グリーンモルト)を組み合わせて造られる「ポットスチルウイスキー」が特徴的です。また、小麦やトウモロコシなどを使ったグレーンウイスキーも広く生産されています。
EU規則およびアイルランド国内法により、アイリッシュウイスキーも最低3年間の熟成が義務付けられており、蒸留回数は原則として3回。この3回蒸留によって生まれる、軽やかで滑らかな口当たりが、世界中のファンを魅了しています。
日本ウイスキーの2021年新基準と原料規定
近年、国内外から注目を集める日本のウイスキー。かつては原料や製法に関する法的な定義が明確でなく、国産表示に対する信頼性が問われることもありました。
その流れを受け、2021年に「日本洋酒酒造組合」が自主基準を制定。これにより、「ジャパニーズウイスキー」と名乗るには以下の条件を満たす必要があります。
- 日本国内での糖化・発酵・蒸留・熟成を行うこと
- 原料には麦芽を使用し、日本国内で採水した水を使うこと
- 木製の樽で、最低3年以上日本国内で熟成させること
この基準によって、日本ウイスキーの透明性と品質が向上し、世界市場においてもそのブランド価値が高まりつつあります。
【注意点】原料別ウイスキーの選び方とポイント
ウイスキー選びにおいて、ラベルのデザインやブランド名に目が行きがちですが、“原料”に注目することで、より自分好みの一本に出会える可能性が高まります。
ここでは、ウイスキー初心者からコレクター、ギフト需要まで、それぞれの目的に応じた“原料ベースの選び方”のポイントをご紹介します。
初心者向け|モルト・グレーンの違いを押さえる
ウイスキーをこれから楽しみたいという初心者にとって、最初に押さえておきたいのが「モルトとグレーンの違い」です。
モルトウイスキーは大麦麦芽100%が原料で、コク深く香り豊か。ナッツやハチミツ、ドライフルーツのような風味が特徴で、「ウイスキーらしさ」を感じやすいタイプです。初心者でも飲みごたえがあり、1本目にぴったりの銘柄も豊富。
グレーンウイスキーはトウモロコシやライ麦、小麦などの穀物が使われており、ライトでスムースな味わい。アルコール感が柔らかく、割っても飲みやすいため、ハイボールなどでも人気があります。
迷ったときのヒント:
「香り重視でストレートでも楽しみたい → モルト」 「飲みやすくカジュアルに楽しみたい → グレーン」
コレクター向け|希少原料・プレミアムボトル情報
ウイスキーコレクターや愛好家にとっては、原料の希少性やその背景にある物語が選定基準になることも。原料にこだわったプレミアムボトルは、飲むだけでなく“所有する価値”も高まります。
- オーガニック大麦使用のシングルモルトや、特定地域で栽培された単一品種のライ麦など、限定生産ならではの素材に注目
- “ヘリテージグレイン”(伝統品種の穀物)を使用したボトルも、原料そのものにストーリー性があり、コレクター心をくすぐります。
- 日本では、国産大麦100%で仕込んだジャパニーズウイスキーもプレミアム志向の層に人気。
補足ポイント:
希少原料は生産量が限られるため、「限定品」「数量限定」などの表示を見逃さないことが重要です。
ギフト購入時に原料別で選ぶポイント
贈り物としてウイスキーを選ぶ場合、相手の好みや飲み方の傾向がわからないことも多いもの。そんなときは原料から風味を想像して選ぶと失敗が少なく、喜ばれる可能性が高くなります。
- 香り豊かで高級感のある贈り物には…
大麦麦芽100%のシングルモルトウイスキー。ボトルデザインも重厚で、贈答シーンに映えます。 - カジュアルに楽しめるウイスキーを贈るなら…
トウモロコシを主原料としたバーボンやグレーンウイスキー。飲みやすく、ハイボール好きな方にも喜ばれます。 - 個性的で話題性のあるギフトに…
ライ麦ウイスキー(ライウイスキー)や、ブレンデッドモルト。ちょっとしたサプライズや、“通”な印象を与える1本に。
ギフト選びのコツ:
「ウイスキー好き」な方にはモルト系を、「お酒はたしなむ程度」の方にはグレーンやバーボン系を選ぶと安心です。
まとめ
ウイスキーは、原料によって風味も個性も大きく変わる奥深いお酒です。モルトの香ばしさ、コーンの甘さ、ライ麦のスパイシーさ、小麦のまろやかさ──それぞれの原料に、魅力があります。
今回ご紹介したように、ウイスキー選びの際に「原料」に注目することで、より自分好みの味に出会いやすくなります。また、贈り物としても、相手の好みに合わせた原料を選ぶことで、特別な一本になるはずです。
これを機に、ぜひ原料にこだわったウイスキー選びを楽しんでみてください。そして、もし飲まずに眠っているウイスキーがあれば、思い切って価値ある一本として手放すのもひとつの選択です。
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